グッモーニン、現在朝9時。結局昨晩にマドッチとメールでやり取りした結果遊園地に来ることになった。
今日はワンピースを着てるくーちゃんと一緒に遊園地入り口まで来たのだが。
「はじめまして!俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれ!いやーようやく会えたな!」
「おおう、何度か顔は合わせてんだけどね。まあ改めまして上代翔だよ。上代でも翔でもなんでもいいよ」
「そうか、なら翔!今日は楽しもうな!」
「織斑一夏……テンションが高いですね、かーくんさんに会っただけでここまでとは本当にソッチ系ではないのですよね?」
「ああ……多分」
織斑くん、もとい一夏のテンションが高すぎるしぐいぐい来るな。朝からトップギアだ、くーちゃんにも自己紹介しなよ。今日は四人で遊ぶんだし……いや、
「おっ!すまん、同じ男性操縦者に会えて舞い上がってた。織斑一夏だ、よろしくな!えーと……」
「クロエ・クロニクルです、取り敢えずクロニクルとお呼びください」
「そうか、よろしくなクロニクル!」
くーちゃんをクロニクル呼びする人が始めてで新鮮だ。それにしてもくーちゃんは一夏から距離とろうとしてない?やっぱ後ろの嫉妬と殺気が混ざったナニかをふりまいてる人たちが原因?
「……はい、間違いなくIS学園の生徒でしょう。それも織斑一夏に惚れている一年生の専用機持ちたちですね」
「国際色と髪の色が豊かなストーカーだね」
「ああいう人とは目を合わせてはいけませんよ、さあ行きましょう」
「はいはいっと、マドッチと一夏行こーか」
「おう!」
「……ホント色々とすまない」
マドッチも気づいてるようだ。うん、気づかぬは本人だけって言うけど一夏は全く微塵も気づいてない。束先輩なら気づいた上で無視するだろうけど一夏はそもそも気づきすらせずスルーとはある意味大物かもしれない。
「ようこそ、チルド遊園地へ。何名様でしょうか?」
「学生二名、無職二名で」
「……はい?」
「学生二名と無職二名です。後ろにいる二人が学生二名私たちが無職です」
「えっと……あの、えー……」
何故かおれとくーちゃんが人数を言うと受付の人の顔が引きつっている。
「どうかなされましたか?」
「い、いえ!学生二名と大人二名ですね!」
「違います、学生二名と子供の無職二名ですよ?ほら、私たち大人には見いないですよね?」
何やら受付のお姉さんが困った顔をしていて中々チケットが買えない。前回はどう入ったんだっけ?……あ、あらかじめネットで束先輩が買ってくれてたんだ。
しかたないので料金表を自分で見ることにするがおかしいな。
「一夏……遊園地って無職は入れないんだね、料金表に無職の欄がないや」
「いやいや無職って欄があったら、むしろ無職の人たちが本当に遊園地に来れなくなるぞ?」
「おいクロエ、翔。学生証のないやつは大人扱いになるんだ、そろそろ後ろがつっかえてきて迷惑がかかる。早く買おう」
「そうなんだ、マドッチありがと。どうもすみませんでした」
「では大人二名、学生二名で」
「はい、学生二名が一人1600円で大人二名が一人2300円になります」
そうか、無職は大人扱いだったのか……胸を張れ世界中の無職諸君!君たちもおれも遊園地では立派な大人だよ!え、なにマドッチ、違う?そうかやっぱり違うか。
「さて、何から乗ろう。まあお化け屋敷は無しの方向でくーちゃんにマドッチはオーケー?」
「はい、あれはいらないですね」
「ああいらんな」
「ハハッ、なんだ?3人ともお化け屋敷は苦手なのか?」
「いやマドッチはなにが出てきたか冷静に見てくーちゃんはバイトでやってるであろうお化けを
「それはお化け屋敷の方が不憫になりそうだな、お化け以上に怖いものってなんだ?」
「一夏の姉だよ」
因みに束先輩も本気出せばお化けより怖いと思う。あの二人に比べれば世界中どこを探しても恐ろしいものなどない、数十メートル蹴り飛ばされて海に落ちたことをおれは忘れない。
「あー、千冬姉の前からはお化けも妖怪も裸足で逃げ出すだろうな。お化けに足はないけどな!」
「いや姉さんからは逃げれないだろ」
「確実に仕留めますね、たとえ実体がなくても」
「……否定できないな。まあそんなことは置いといて行こうぜ!まずはあのジェットコースターでいいか?」
「ちょ、一夏、そう言いながら手ぇ握って引っ張らないで。くーちゃんヘルプ!」
「かーくんさんもそう言いながら私の手を引っ張ってますよ、いいんですけど。マドカさんヘルプです」
「ぐお!?クロエ服の襟首を引っ張るな!い、息が!?」
ワッハッハ……先頭で一夏が爽やかな笑みを浮かべつつおれを引っ張り、おれはやや必死な顔をしてくーちゃんを引っ張り、くーちゃんはいつも通りの冷静な顔でマドッチの襟首を引っ張り、マドッチはなすがまま引っ張られ事切れていた――え?
……ま、マドッチぃぃぃぃぃぃ!?
「まったく危うく窒息しかけたぞクロエ、せめて手を引っ張ってくれ。あとはしゃぎすぎだ一夏」
「すみませんでした、マドカさん」
「うっ、すまんマドカ」
「まあいいさ、次から気をつけてくれ。一夏は次やったら許さん」
「まあまあ、ほら順番まわってきたしジェットコースター乗ろうよマドッチ」
「よしきた!」
「マドカもはしゃいでるじゃないか!?」
「場所を選べば問題ないさ!」
「ぐっ、正論!?」
一夏は馬鹿だなぁ、マドッチは多分おれたちの知り合いの中でも一番のいい子で常識人だよ?むしろ唯一といっていいかもしれない。
「では乗りましょうか」
「じゃあ翔、隣に座ろうぜ!」
「いいけど何でそんなに嬉しそうなのさ」
「いや……学園には女の子しかいないから、な。気軽に接することの出来るやつがほぼいないんだ……せめて翔が入学してくれれば嬉しいんだけど」
「うん、おれが悪かったから今日は楽しもうか」
「苦労してますね」
「まあ一夏が原因であることが多いが中々にハードな追われ方をしてるからな」
うん、ソッチ系とかじゃなくて日頃気遣わずに居れるとこがなくてストレスが溜まってだけか。なら日頃から好き勝手して楽しんでるおれが今日くらいストレス解消に付き合おうじゃないか!いやーホント好き勝手生きてるよね!
おっと順番がまわってきた、さあさ一夏先に乗りなよ。
▽▽▽▽
その頃とある五人、一人は遠慮して来なかった……というか口にはしないが生徒会長な姉に似た変な行動をするのが嫌で来なかった。
「……おい、一夏のやつもう一人の男の手を取って歩き出したぞ」
「なんで男だとリードするのよ!?」
一夏をストーキン……追っかけて遊園地まで来ていた。既にマドカ、クロエ、翔の三人に気づかれているのだが本人達は知るよしもない。
「む、あの男どこかで会ったような……」
「TVではないでしょうかラウラさん?」
「そうだよ、よくTVに映ってたしね」
「……いや会ったような気がするのだが上代翔という名は聞いた覚えがなくてな」
ラウラが上代翔に会ったことがないか考えているがセシリアとシャルロットはTVで見たのだろうと流す。しかし実際にラウラは会ったことがあるのだ、とある空港で外国に逃亡しようとしていた上代翔に。ただそのとき上代翔が偽名を使ったせいでうまく思い出せないだけであった。
「それにしてもまた新しい女が現れたな」
「またライバルが増えるのでしょうか」
「一夏の友達の妹さんも惚れてたしね」
「弾の妹の蘭ね……」
「む、そうなのか。学校の外にまで嫁に惚れているやつがいるとは」
「それはもうわんさかといるわよ……?」
クロエ本人が聞けば鼻で笑いそうなことを話している箒たちだったが本人たちはいたって真面目であった。
なにしろ小学校、中学校の同級生に近所のお姉さんからお店の店員さんにそりゃもういっぱいいたのであった。因みに織斑千冬もモテていた、男女関係なく。ただ声をかける勇気のあるものが一人もいなかったのだがモテたりある種のカリスマ性があるのは織斑家の特性なのかもしれない。
「おい、一夏達がジェットコースターに行くぞ!」
「追うわよ!」
「うん!」
こうして五人の追走劇もといストーキングは続く。
ここまで読んでくださった方に感謝を!
何か長くなったので半分にして投稿しました。