……んーこれは厳しいかな?くーちゃん自身のISは撹乱には向いてるけど戦闘には向いてないみたいだし。
…ここはおれが囮になって……え? いや、それは駄目だくーちゃん、それはないって!
▼▼▼▼
今さっき急に専用機持ちが集められた、IS委員会からの要請らしい。その内容が……
「千冬姉、上代翔の戸籍が偽物だったってどういうことだよ……!」
「そのままの意味だ、あいつは本当は“居なかった”んだ」
だからその意味がわからねぇんだよ! ちゃんとテレビにも写ってたし、千冬姉も山田先生も実際に見たんだろ!?
「正確に言うなら……あいつは純粋な人間ではない。つくられたクローン人間だ。今までアイツの家族が取り上げてこられなかったのもそのせいだ」
「なっ……!?」
保護プログラムのおかげじゃなかったのか……?
「どこいらの馬鹿どもが私と束をモデルにしてつくったらしい……恐らく失敗したんだろう、今こうなってるということは」
「では何故今まで普通の生活をしていたのでしょうか?」
「言い方は悪いが……日本では人一人殺すとどうやっても証拠が残る、偽の戸籍をつくって一般人とした方が楽だったんだろうな」
「でも何で今になってこんなことが……!」
「落ち着けマドカ……恐らく何者かが報道機関などにリークしたのだろうな」
「で姉さんは上代を捕らえてどうする気ですか?」
「全力を尽くして悪いようにはならないようにする。お前の友達なんだろ? だったら尚更だ」
「……はい」
……では行くぞ、あいつはIS学園近くに既に居るらしい。
千冬姉がそう言い、俺たちは上代翔を捕らえに出ることとなった。
▼▼▼▼
さてスコールさんたちが来てから一週間がたった。
束先輩にお願いされてたお使いのために、IS学園近くまで来たわけだが……なんだこのニュース?
『……ということにより男性IS操縦者上代翔は人工的につくられたクローン人間であることが判明しました。政府は一部の人間が独断でつくったものとし関係者の処分内容を検討してるとのことです。また上代翔は篠ノ之束博士、初代ブリュンヒルデである織斑千冬さんに近づけてつくられたクローンであり危険であると思われIS部隊による捕獲が決まりました。』
「なっ!? どういうことですか!?」
「急展開すぎワロタ!」
「いってる場合ですか! 今すぐラボに戻らないと……!」
いやーキツいんじゃないかな……ほらIS学園らしき面子が来たよ。どっかから監視されてたかな? タイミングよすぎだし、いつもいいタイミングで現れるヒーローみたいだね。こっちからしたらヒーローじゃなくて、嫌なタイミングで出てくる悪の手先に見えるんだけど。
「上代翔……と銀髪の小娘、大人しくしてくれ」
「しかも織斑千冬さんまで登場とか詰んだ」
「さっきからえらく他人事ですねかーくんさん、何か策でも?」
「いや現実に認識が追い付かないんだよ、ニュース見てから5分たたない内にこれだよ、タイミングはかってたんじゃねーのこれ?」
「……ですよね。私の黒鍵で撹乱します、その隙に逃げましょう」
「教師っぽい人と学生が合わせて10人以上だよ?」
「何とかします……!」
……さすがに厳しそうだが、うーん天災と世界最強のクローンな自分には何か隠された力とかないかな?
はぁぁぁぁぁぁ!! よし、ないな。おれが力んでも出てくるものなんて屁くらいしかない!
「うーん……で投降したとしたらどうなるんですか?」
「悪いようには全力を尽く」
「―ッ! 嘘です! なら何故かーくんさん一人捕らえるのにこんなにも教師と専用機持ちを連れてきたのですか!? 何故かーくんさんが束様と織斑千冬、あなたをモデルにしたクローンであると世間に知らしたのですか!? 明らかにかーくんさんを危険視してるからではないですかッ!」
「ッ! 世間に公開したのは私たちでは……それに私たちは…!」
「黙れ! あなたたちが何ですか、あなたたちがどう頑張ったところで世界に敵うわけがない! それにあなたたちにはその覚悟すらない! そんな人間を信用なんて……私が世界で信用できるのは束様とかーくんさんだけです!」
「……そうか、それでも悪いが一旦捕らえさせてもらう」
くーちゃんが本気でここまで思ってくれてて、あの織斑千冬やこれだけのISをまとった人間を前に引かずに自分という人間……クローン? を渡すまいとしてくれる。とそこでマドッチの声が聞こえた。
「うん…なら逃げろクロエ! そこに私の名前がなかったのは些か悲しいが私にとってはお前たちは友達だ!」
「なっ!? マドカ!?」
「くっ! なにをする!」
専用機持ちの学生の中にいたマドッチが近くにいた織斑一夏と束先輩の妹を抑えてくれていた。
「おいマドカ何をしている!」
「悪いが姉さん、あの二人は友人だ! どうなるかもわからんのにみすみす捕らえさせることはできない!」
「チッ、嫁! 箒! AICで一緒に止めさせてもらうぞ!」
「ちょ!? AICとか反則だ! ズルいぞ!」
「反則とかあるか!」
「ラウラはそのまま止めておけ! 残りは上代翔を捕らえろ!」
くっ、マドッチが3機分を引き付けて……引き付けて? くれてはいるが如何せんまだまだ多い! ぶっちゃけ1機ですら無理だけどさ!
「かーくんさん逃げてください! 残りは私の黒鍵で引き付けます!」
「いや! くーちゃんだけを残しては行けないって! 一緒にいくよ!」
「行ってください! 逃げ足ならかーくんさんの方が速いです、それに私は捕まったところですぐにどうこうされることはありません! また束様と合流するなりして助けてください!」
「……ッ! 絶対! 絶対絶対に! 絶ぇぇぇぇぇ対に来るからな! 一人でも!」
「はいっ! ……一人でも?」
「ああ! 絶対に一人でも!」
……逃げろ逃げろ逃げろ! 他は考えるな! 最悪なのはくーちゃんに時間を稼いでもらったのに、二人ともそろって捕まることだ!
――この日おれは初めて望まぬ逃亡をした。
▽▽▽▽
「上代翔だけ逃がしたか、悪いがお前だけにこれだけのISは使わん。二手に分けて追わさせてもらうぞ」
「させません。例え、世界がかーくんさんを追ったとしても私が絶対にさせません」
「……ほう、どうするつもりだ? 比喩なく現在世界が上代翔を追っているぞ?」
……確かに無理をすることになります。それでもこんな不気味な目をしている、純粋な人間でない私にとって私に卑下も侮蔑も同情もなく普通に接してくださるのはあの二人だけなんです。
――だから!
「例え世界が敵にまわろうと束様と翔さんだけは! 世界を騙りなさい! ワールド・パージッ!」
私は二人守る!
目の前の織斑千冬も、まわりにいるその他の人間も。逃げるのを手伝ってくださったマドカさんも全てワールド・パージで! ここにいるIS持ち全てを同士討ちさせ落とす!
そうしてワールド・パージで見せてる幻影で同士討ちをさせていたのだが……何故か違和感が拭えない。一人動かずに、いえこちらを見てい……!?
織斑千冬がこちらへ真っ直ぐ向かってくる! ワールド・パージは織斑千冬にも確かに作用してるはずなのに!
「止まれぇぇぇぇ!!」
「確かに凄いな、大気中の成分に干渉、変質させ幻影を見せる能力か……しかし」
なんでワールド・パージが、束様に貰った力が効かないのですか……! ここまで規格外ですか織斑千冬ッ!!
「そんな小細工でどうにかできると思われたとは……舐めるな小娘が」
「グッ、カハッ……誰にも、私達の自由は奪わせ……な」
気づけば私の視界から織斑千冬は消え首筋に強烈な打撃を受けた。
すみません、束様……かーくんさ……
▽▽▽▽
「……誰にも、私達の自由は奪わせ……な」
「……すまないな」
幻影を見えていた……マドカ曰くクロエか。クロエを気絶させたところ全員正気に戻ったようだ。
「ハッ!? 千冬姉! 上代は!?」
「逃げたよ、こいつがお前たちに幻影を見せている間にな」
「そうか……上代は逃げられたか」
「おい、マドカ」
「ん? なんだ姉さん、私は間違ったことはしてないと思っているぞ。実際姉さんは捕らえたあとに全力で悪くはならないようにしようとしてくれていたとは思う」
「ならどうしてだよ!」
「けどな一夏、それでもどうなってたかはわからない。殺される可能性だって低くないんだ。だったら私は友達のために動くし、次があっても同じようにするよ」
……ハァ、この妹は誰に似てこうも頑固な友達思いになったのか。
マドカの言うことも確かにわかるが……
「取り敢えずクロエとお前はISで拘留するぞ」
「わかったよ姉さん……ファンタは?」
「抜きだ」
「………わかった」
残りは上代翔を捕らえなければならないが……ふむ、クロエをIS学園に連れていかねばなるまい。今回は諦めるしかないな。
ここまで読んでくださった方に感謝を!
さてそろそろ書いた自分が辛いです、伏線もないまま見切り発車でシリアス()に突っ走るとこうなります。
キツい人はもう読んだらダメです。やめなさい、人に戻れなくなるわ!って感じです。
8/17 改行や感嘆符、疑問符のあとのスペース入れ。あと少し弄りました。