東方妖火煉   作:超絶暇人

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一話 幻想入り

東方妖火煉(とうほうようびれん)……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現代に、とある放火魔が居た。

 

その者は数々の建物を燃やしてきた。たった一つのオイルライターで…

 

 

ある日、放火魔は捕まった。そして捕まった時、弾みで愛用のオイルライターを落とした。

オイルライターは落とされたまま拾われず、数日たったある日、オイルライターは消えた。

 

そしてオイルライターは幻想郷のある場所に落ちていた。

 

 

全てから忘却されたモノの終着点、“無縁塚”に…

 

 

突然オイルライターはカタカタと揺れた。

その直後、オイルライターの蓋が開き、火が灯ってオイルライターごと燃え出す。

 

暫らくして火は大きくなり、人の形となった。

 

すると火は更に色濃く真っ赤に燃え、次第に剥がれていった…

 

全ての火が剥がれた時、そこに“あった”…いや、居たのは橙色の鮮やかな長髪の全裸の少女だった。

 

少女は閉じていた目蓋を開き、周囲を見渡した。

それから彼女は口を開いた。

 

「ここ…どこ…」

 

様子からはわからないが、少女はとても不安だった。

見知らぬ場所に自分が居る事に大変 驚いていた。

 

「私は……」

 

少女は額に指を当てて記憶を探る…

 

そしてわかった。自分はオイルライターだ と…

 

つまり、彼女は生まれたてのオイルライターの妖怪なのだ。

生まれたばかりである彼女は謂うなら幼い赤ん坊。だが体はちゃんとした成長体。

 

何故だか怖くなった彼女はその場に座り込んでしまった。

 

 

 

 

 

暫らくして、誰かがやって来た。

 

リアカーを引いて少女の方へ向かって来る。

 

と、突然少女の目の前でリアカーと足音が止まった。

 

少女は顔を上げた。

 

 

「これは驚いた、無縁塚に裸の女の子とは…」

 

目の前に立っていたのは男。それも背が高く、白髪で眼鏡を掛けた人間。いや…妖怪か?

 

少女は男から何となくだが、自分と同じようなモノを感じていた。

 

ふとした時、男はリアカーを置いて少女の後ろ方面へ歩き、何かを探し始めた。

少しすると、男は何かを取り出し、少女の方へ歩み寄った。

 

「これを着なさい。袖が破けてるが、裸で居るよりは良い」

 

男は服をそっと少女の目の前に差し出した。

 

言われるままに少女は服を着てみた。

 

紫色で、フード付きの服。袖は両方とも肘の手前で破けている上、妙に服の胴が縦に長く、(もも)の半分まで達する。

 

ついでに男が見つけた長い靴下やロングブーツも履き、これで裸の心配は無くなった。

 

それから男はこう言った。

 

「良かったら僕の家に来るかい? 折角だからご馳走するよ」

 

男は暖かい笑顔を浮かべた。

 

少女は うん と頷き、男の家に行った。

 

 

 

 

 

着いた場所は古びた家で、入り口の屋根上に「堂霖香(こうりんどう)」と書かれた看板があった。

 

少女は変な字の配列が読み辛くて何となくでしか読めなかった。

 

男は家の戸を開けた。

 

「さあ、どうぞ」

 

少女は言われるがままに入る。

 

家の中は見た事の無い物ばかりの物がたくさん置かれていて、まるで道具屋のようだ。

 

「実はここ、僕の店でもあるんだ。見てわかる通りの古道具屋さ」

 

思った通りであった。

男はリアカーから様々な物を下ろすと、店の奥に入って行った。だが戻ってきて奥の入り口前で少女に言った。

 

「今、何か作るから、待っててくれ」

 

少女は男の言葉に頷く。男は微笑んでからまた奥へ行った。

 

 

暫し、少女は男の店の中を眺めた。

自分の記憶に確かな残りモノがあり、それが店の中に置いてある品物とそっくりである事に、無言ながら驚いている。

 

何なのだろう、この感覚は…

 

少女は徐々に胸の中心が熱くなっていくのを感じた。

少女の中で何かが目醒める…いや、“芽生え”ようとしていた。

 

「すまない、待たせてしまったね」

 

男はそう言いながら料理を持って歩いて来た。

 

と、男が料理を持ってきた直後だった…

 

「うぅん、こっちもゴメンね。何だかお世話になっちゃって」

 

そう言ったのは先ほどの無口無表情の少女だった。

 

彼女に感情や性格が芽生えたのだ。

性格は優しくも明るく、感情も喜を中心に押し出されている。

 

男は驚いた。

 

「これは驚いた。君、さっきとは違うね」

 

男の反応に対してクスクスと笑って返した。

 

「だって、これが本来の私だもん。私はオイルライター…私を持っていた元の主はかくかくしかじかで捕まっちゃったの」

 

男はテーブルに料理を置き、興味深そうに眼鏡の位置を中指で突いて直した。

 

「そうかい。取り敢えず、今は御飯としよう話はその後に聴かせてくれないか?」

 

「わかった」

 

少女と男はテーブルの前に座り、いただきます と言った少女は料理を口にした。

 

「美味しい。ねぇ、料理得意なの?」

 

「いやなに、全て本で得た知識だよ。この料理だって、作り方は本を見ながらやったんだ」

 

「へぇ、凄い」

 

少女は黙々と料理を食べた。

作った側である男は少女が美味しそうに食べてる姿を見て嬉しくなった。

 

ふと、男は何かを思い出したかのように少女に問い掛けた。

 

「そうだ、君の名前、まだ訊いてなかったね。僕は森近 霖之助(もりちか りんのすけ)。君は?」

 

男、霖之助に訊かれた少女は周りを見回した。

 

目に入ったのはストーブ の中の火。紅蓮に灯る暖かな火を見て彼女は思い付いた。

 

「レン…煉。私は煉、篝火 煉(かがりび れん)

 

 

 

 

 

 

 

続く




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では…

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