王国と白鬼   作:かみこん

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TSものが書きたかった(小並感) 駄文です。


第一話 始龍

春秋戦国時代・・・・それは並み居る英雄達が数十万の軍勢を率いて凌ぎを削り中華の大地を血で染め上げた混沌の時代。

軍勢の規模もさることながら武将、文官どれも化物揃いであり技術や文化もまた世界一といっても過言では無いほどの文明を誇る。

その繁栄を誇った中華の舞台に1つ異質な物が入り込んだ。

 

 

・・・・・・・・

 

 

首都咸陽。王宮が置かれ秦の中で最も繁栄している都市なのだが、聳え立つ王宮の煌びやかさとは正反対に陰鬱な雰囲気に包まれていた。城内はいつもより兵士が多く俄かに殺気立っている。それもそのはずである。先日王弟成蟜が反乱を起こし咸陽を乗っ取った。

何れは賢王になると言われた嬴政が追放され民衆たちの間では圧政の始まりに動揺と恐怖が広がり始めていた。

 

所変わってとある王宮から街を見渡せる場所。そこに美しい少女がいた。腰まで届く長い銀髪に紅い瞳、人形のように整った顔立ちに透き通るような白い肌はこの国はおろか世界を見渡しても滅多に見れるものではないだろう。

あまりにも人間離れした姿形にたまたま通りかかった人々は驚き思わず二度見してしまう。

 

とうの少女はそんな人々を意に介さず何かを考えるようにずっと街並みを眺めていた。

 

(やべぇ、早く家に帰りたい)

 

 

・・・・・・・・

 

 

わたくし麗は転生者である。それも前世は男、今の絶世の美少女とは似ても似つかないくらいの不細工な男だった。なぜこちらの世界に来たかは分からないけど、気づけば奴隷として売られていた。

 

あまりの急展開さに最初は凄まじく混乱したけど、たまたま私を買ってくれた人がとても有名な武将だったらしく色んな質問をしても的確に教えてくれた。

そのおかげでようやく気付けたのだ。

 

ここが前世の漫画で見たキングダムという魑魅魍魎の世界だということに。

そして私を買った上に後見人にまでなってくれた人が天下の大将軍六将王騎その人だと気づいた時は思わずチビりましたね、少しだけ。

 

その王騎将軍のスパルタ(何度も死にかけた)訓練の元戦場を駆け巡り未だ未熟者ながらもそこそこの将になれた。

 

転生から何十年も経って成長した今だからこそわかったのだが、容姿が戦場のヴァルキュリアに出てくるセルベリア・ブレスにそっくりなのだ。この銀髪に赤い瞳、そして胸にはエベレストの如く突き出ている見事な双丘、イエスおっぱい。惜しむらくはその重力に逆らうおっぱいが自分についているということか。

武力の面で言えばセルベリアのようにヴァリキュリア化して無双できるわけではない。世知辛い世の中である。

 

そして久しぶりに戦場から咸陽に帰ってみれば王弟がクーデターを起こしてる真っ只中だったのである。

王騎将軍は「コココ、久しぶりに楽しい事が起こりそうですねぇ」と笑っていた。

 

王騎将軍は昌文君の首(偽)を持ち帰った後だったのでもう直ぐ嬴政が山の民を率いて咸陽に乗り込んで来るだろう。

私はこれからどうしようかと、思考を巡らせていたところ場内が俄かに騒がしくなってきた。

どうやら山の民達が咸陽に到着したらしい。

戦闘に巻き込まれるのも嫌だし遠くへ離れようとした矢先に後ろから声をかけられた。

 

「オヤ、誰かと思えば麗。こんなところにいましたか」

 

1番厄介な人に見つかってしまった・・・・

振り返れば案の定王騎将軍が騰副官と兵士を引き連れていた。

 

「ンフフ、ここではよく戦場が見えませんのでもっとよく見えるところに移動しましょう。もちろん貴方も来ますよね、麗?」

 

有無を言わせぬ迫力に私の返事は既に決まりきっていた。

 

「勿論です」

 

いや、あの王騎将軍を目の前に断るとか自殺行為だからね?私はまだ死にたくないよ。

 

 

*********

 

移動したところは広場が見渡せる場所でちょうど戦闘が始まったところだった。

戦力的には魏興の部隊が圧倒しているが個々の武では山の民が圧倒しておりリアル蛮族無双をしている。その圧倒的な武力を誇る山の民の中でもやはり楊端和がさらに突出している。いやていうかあの人強過ぎるでしょ。

 

「あなたはどちらが勝つと思いますか?」

 

目の前のじゃれあいを愉快そうに見つめる王騎将軍は私にそう問いかけた。

 

「大王の方ですね」

 

「ほぅ、理由を聞かせてもらっても?」

 

原作を知ってるからというのもあるだろう、しかしそれ以上にここから見る大王の姿は小さいながらも王たるべくして輝いている。ただそんなものは大王が勝利する十全たる理由にはならないだろう。

 

「・・・・乙女の感です。それに大王が勝った方が面白いではないですか」

 

その答えに王騎将軍は意外だったとばかりに吹き出した。

 

「コココ、まさかあなたの口からそのような言葉が出るとは意外でしたねェ、騰?」

 

「はっ!乙女とは抱腹絶倒ものです」

 

王騎将軍はともかく騰、テメーは絶対に殺す。

騰への殺意を抑えながらしばらく戦闘を見ていると王騎将軍から右龍へ行くように言われた。

あれこれ騰の役目なんじゃ?

 

*********

 

王騎将軍から借り受けた2名の兵士を引き連れて右龍の間を進んでいく。本当はもっとほしかったんだけど言えませんでした。

道が死体で埋め尽くされている事が戦闘がいかに激しかったかを物語っている。

すでにハゲは倒された後だったか・・・・

驚いている兵士2名を尻目にどんどん道を進んでいく。

道中、人間のものとは思えない叫び声が何度も木霊す。

兵士二人は平気を装っているが完全にビビってる。私もランカイとは絶対に会いたくないんだけどなぁ。

どうか信達が倒しておいてくれますように。

 

ランカイとは戦闘になりませんようにと祈りながら歩いてるととうとう王座の間へとついてしまった、そして王座の間へと続く目の前の扉を開けると絶賛戦闘中でした。

 

最悪のタイミングで入ってしまったなと頭を抱えていると山の民達はランカイと戦いながら明らかにこちらを警戒しており信は倒れていながらも私を睨んでいた、器用だなこいつ。

タジフが倒れているのを見ると戦闘はどうやら終盤に差し掛かったあたりらしい。

 

別に参戦する必要はなかったので兵士二人に目配りをして隅へと移動させる。

 

文官達は信達を倒せと喚いているが無視だ無視。ただ言われっぱなしも嫌だったので何か言いかえそうと文官たちを見つめたのだが一斉に黙り込んでしまった。

え?まだ何も言ってないんだけど、後ろに控えている兵士二人を見ると少し顔を青くしていた。ランカイかそれとも信達にびびったのかこいつら?

 

まあ、目の前であんな化け物染みた戦いを見せられればそりゃビビるよね。私も怖いよ。

 しばらく山の民達の戦いを傍観しているとこちらに戦う意思はないということを感じとったのか再びランカイとの戦いに集中し始めた。

 

バジオウが縦から横へと縦横無尽に移動し剣戟を浴びせかけランカイの気を引いているうちにシュンメイがさらに傷を負わせていく。

 

お互いがヒット&アウェイの戦法で攻撃していくのでランカイの処理が追い付かずどんどん傷を付けていく。高度な武芸を使いながらも息ぴったりなところもまた二人の練度の高さを窺わせる。

 

サーカスのようなアクロバティックな戦いに感心しているといつの間にか信と成蟜が大声で言い争っていた。そしてドヤ顔の信と勝手に倒れていく側近達。ああ、成蟜が見事に論破されたシーンか。

 

そこからは少し急展開だったが、壁から助言を受けた信が人間離れしたハイジャンプでランカイの肩に剣を突き刺し倒すまで原作通りだった。

 

原作序盤の重要シーンに立ち会えて感動していると信と山の民がこちらを見て思いっきり身構えていた。

そんなに怪しい者じゃないですよ。

 

「で、そこの白い姉ちゃんはやんのか?」

 

睨みつけてくる信に自然と笑みが湧いてくる。

初めてお姉ちゃんって言われたんだけど、ちょっとだけ胸がキュンとしちゃったよ。何か新しい性癖に目覚めそうだ。

 

急に笑ったことを不可解に思ったのか剣を構えた信に敵対する気はないということを伝えるためゆっくりと歩き始める。しかし、何も言わず安易に近づいたのがいけなかったのか山の民達にもさらに警戒されてしまう。

 

「いや、こちらに戦う気はない。それに君と戦ってもさっき以上の戦いは出来ないだろうからな」

 

「カカカ、俺は大丈夫だぜ?」

 

「バカ信!この御方は将軍だぞ!!!」

 

挑発してきた信に壁が急いで近寄ってゲンコツを食らわせる。というか私ずっと最前線にいて今まで会ったことなかったのによく将軍だって知ってたな。

 

「麗将軍どうか無礼をお許し下さい。この者は元々下僕の身でして礼儀作法が身についていないのです」

 

「大丈夫だ、別に気にしてない。それよりもあいつらをどうにかしたほうがいいんじゃないか?」

 

 その言葉にこっそり左龍の間へと逃げようとしていた成蟜の側近たちがドキリとその肩を震わせ我先にと逃亡を図る。成蟜は未だに何か喚いているが無駄なことだろう。完全に詰みの状態だ。

 

「麗!何をしている、俺を守らぬか!!!」

 

 突然、私を呼ぶ声が部屋に響き渡った。声が発せられた方向を振り返ってみれば王弟成蟜しかいないのでおそらく成蟜が私を呼んだのだろう。

しかし、成蟜とはこれまで一度も会ったことがなかったので少し困惑してしまう。あの王弟が将軍であるとはいえ元奴隷である私のことを知っているとは考えられなかったからだ。咸陽にだって数えるほどしか来ていない。けれど、ここは助ける気はないとはっきりと言ったほうが良いだろう。

 

「恐れながら成蟜様。ご自分でつけた火の不始末はご自分でなさるしかないかと」

 

 成蟜は唯一の頼みの綱がなくなったことにショックをうけたのか力無く項垂れた。

 

 慌てた竭氏が部下を殴り飛ばしては押しのけて、左龍の間へと続く扉を真っ先に開けた瞬間、待ち構えていた騰が扉の周りにいた側近たちの首を一斉に切り落とす。

血相を変えて竭氏は必死に逃げ続けていたが、最後はあっけなく山の民に首を落とされた。秦の頂点の後一歩のところにまで上り詰めそのすべてを手に入れようとした男の野望はここに潰えたのだ。

 

これで一段落かと辺りを見渡せば一人の男が尿を垂れ流しながら河了貂のほうへと突っ込んでいく。河了貂はよそ見をしていて近づいてくる男に気付いていない。別に無視していても助かるのだが、目の前で刺されそうになっている人を見過ごす訳には行かない。

 

河了貂と向かってきた男の間に立ち塞がり剣を引き抜いて肩から袈裟斬りにする。接近に気付かなかった河了貂は驚いたように口を開いたまま惚けていた。

 

「あ、ありがとう・・・ございます」

 

数秒と経たないうちに我に帰った河了貂は気まずそうに礼を言ってきた。私は河了貂の頭をぽんぽんと叩く。

河了貂可愛いhshs。

 

「礼には及ばん。ただ周りには気をつけた方がいい」

 

そんな感情を億尾にも出さず無表情で言い終えた私は剣を鞘に納め左龍の間へと向かう。どうせこのまま中央の広場へ行っても王騎将軍は帰ってるだろうしこのままここにとどまる意味もない。

全員が私と河了貂に注目してる隙に成蟜がこれ幸いと中央の広場へと抜け出してしまった。

 

成蟜が嬴政からフルボッコにされるシーンは見てみたい気もするが、私がいるとややこしい事態になりそうなのでさっさと帰るに限る。

信が何か言いたそうにこちらを見ていたが気にするのもめんどくさかったので左龍の間へ入った。

あれ、兵士二人ついてこないんだけど・・・・

 

 

*********

ランカイに吹き飛ばされて目を覚ましたのとちょうど同じ頃、俺達が沙慈を倒した通路から白い髪の、何ていうか俺と同じ人間なのか疑うくらいの美人な女性が出てきた。

あとおっぱいが物凄く大きい。

年齢は俺よりも少し上くらいか?

 

剣も持てなさそうなひ弱な見た目だったが、一瞬だけ凄まじい殺気を放って騒いでいた成蟜の側近達を黙らせていた。

その殺気を感じ取った俺は全身から冷や汗が吹き出し沙慈やムタとは比較にならないくらい濃密な死を感じ取った。

 

殺気に立ち尽くしたのは俺だけじゃない、山の民やあのデカい化け物でさえも恐怖で動きが止まったくらいだ。そのおかけでその後の闘いも随分楽になった。

 

相当な実力者だと感じ取ったので闘ってみたいと思ったが、軽くいなされてしまった。

その後、壁から聞いた話によるとあの女性は麗といってながら史上最年少で将軍になったほどの実力者で王騎?っていう凄く強い大将軍の後継者とまで呼ばれており最前線の戦場で暴れ周り大戦果を上げ続けたらしい。

どうりで只者では無かったわけだ。

 

あいつがテンを庇って敵を切った時も速すぎてまったく見えなかった。

テンとあいつの距離はそこそこあった筈なのにそれを一瞬で詰めて剣を引き抜き相手を切るまでの速さが尋常じゃない。

 

あれを見て戦わなくて良かったと思ってしまったくらいだ。

沙慈も相当な強さだったが、上には上がいるらしい。そう考えると知らず知らずのうちに手が震えてきた。

 

「どうしたんだ、信」

 

俺があの時の事を思い出してると政が声をかけてきた。こいつも中華の統一っていう凄い目標を言ってたな。そして俺が順調に昇進していけばいつかあの将軍と肩を並べて戦える日がくるのか?もんもんと一人で悩んでると政が変な顔をしていた。

 

「なんて顔してるだお前は。気持ち悪いぞ」

 

「なっ!気持ち悪いとはなんだ!少し思うところがあっだけだ」

 

気恥ずかしくなって顔を背けると政が吹き出していた。人が悩んでるのに。

 

「はははは、すまない。どんな時でも猪のようだったお前が悩んでるとは少し意外だっただけだ。ただその悩み俺にも聞かせてもらえないか?」

 

さっきまで笑っていたのとは裏腹に佇まいを直し真剣にこちらを見る政に毒気を抜かれた信は王宮で麗に会ったことそして王宮で何が起こったのかを洗いざらい吐き出した。

 

「そうか、そんな事があったのか・・・・。麗将軍の話は王宮にこもっていてもよく話を聞く。非常に合理的で武力のみならず軍略の才にも長け初出陣以来負けなしらしいな。ただ普段は滅多にしゃべることはなく自分にも味方にも非常に厳しいことから味方からも恐れられてると聞く。それでもやはり飛び抜けた傑物であることは間違いないだろう。お前は麗将軍と会って気圧されたのか?」

 

やはり彼女は凄い将軍らしい。壁から少し話を聞いていたが改めて聞くとその凄さがわかる。

 

「はは、やっぱりすげー人なんだな。でもな政、俺は別に怯えたわけでも恐れたわけでもねえ。あんな凄い将軍と一緒に戦える事に、そしていつかあの将軍を超える大将軍になると思うとなんつーか、こう胸が熱くなって震えてくるんだよな」

 

そういった俺に政は呆れた顔で溜息を吐いた。

 

「やっぱりお前はバカだな・・・でもお前らしい意見だ」

 

「まあ見とけって。一段一段だけど必ず将軍になるからよ」

 

星で埋め尽くされている空を見上げ拳を掲げる。今にも落ちてきそうな星達は二人を照らすように爛々と輝いていた。

 

500年もの争乱を重ねた時代・・・春秋戦国時代。

その時代がついに動き出す。


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