TALES OF THE ABYSS ~ Along With the Nargacuga ~   作:SUN_RISE

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どうも、SUN_RISEです。

大変遅くなりました。思った通りに研修がハードなもので、なかなか書く時間がとれませんでした……。体力・気力的にはそれなりに余裕があるので、今後も時間を見つけてちょくちょく書いていきます。とまあ、それはおいといて……。

気付けば本小説、お気に入り100件を突破しておりました。これも、皆様のナルガ愛・テイルズ愛のお陰です。

今後もエタる事無く、最後まで突っ走って参りますので応援よろしくお願い致します。

では、本編を始めましょう。どうぞ、お楽しみ下さい。



第4迅:旅立ちの時

新しい朝を迎えた。森はまだ薄暗いが、やや白みがかった青い空が頭上に広がっている。

……どうやら、早起きしてしまったみたいだな。眠気も無く、スッキリした目覚めだ。

一応昼間に活動する事もあるが、ナルガは基本的に夜行性のはずなのだが……。

 

やはり、ナルガ()に『俺』という異質な(人間の)精神が混じっているからなのだろうか。……あるいは、俺がナルガの生態を勘違いしているだけかもしれない。

まあ、いずれにせよ些細な問題だが。むしろ夜しか活動できない状態だと不便だし、今の状態はありがたい。

 

……とりあえず、その話は置いておこう。

 

重苦しい雰囲気は……感じないな。鳥のさえずりやら、獣の遠吠え(ライガ成体程ではない)やらが聞こえてくるし、どうやらアリエッタは森を出たようだな。これなら、行動を開始しても問題無さそうだ。

 

さて、今日の方針を確認しておこう。……と言っても、今からチーグルの木に行って長老と話すだけなんだがな。

言葉が通じなければ、そのままリターン。言葉が通じれば、音素(フォニム)について聞いてみることにしよう。

 

よし、身体は問題無……くもないな。

 

すごく腹減った。そういえば、昨日の昼から何も食べてない。

 

狩りをしつつ、チーグルの木へ向かうとしましょうか。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

(迅竜狩猟中…)

 

……ふう、食べた食べた。ライガクイーンが死んだからか、今日は小ライガを全く見かけなかった。お陰で、悠々と食事ができたよ。それにしても、毎日似たような魔物ばかりで食べ飽きてきたな。

……チーグルを捕って食おうとは思っていないが、そろそろ森を出ないと本当に手を出しかねん。ナルガ()になってから、どうも本能に逆らう力が弱くなっているからな……。

 

……ところで、今更ながら一つ気付いた事がある。

 

木とか地面とか、傷だらけだな。切れた枝がブラブラと垂れ下がってるし、地面はビターンを何度もぶちかましたせいで穴だらけ。

這いずるように地面を歩くナルガ()からしたら、足も頭上も障害物だらけで歩きにくいったらありゃしない。移動するだけなら飛べばいいんだが、狩りをするにはどうしても這いずり移動が必要だからな……割と死活問題になりかねん。

 

……あ、もしかして、この跡をルーク達に見られたか? 昨日もこの辺りで狩りをしてたし、十分あり得るな。

むぅ……これだけ酷い有り様になってるのに気付かないとか、どれだけ鈍いんだよ俺…。飲み水の確保と空腹を満たす事に躍起になって、周りが見えてないとか人間失格……いや、ナルガ失格だな……。

 

 

……まあ、過ぎた事を考えてても始まらないか。場所を変えて狩りをすれば枝葉は邪魔にならないし、どちらにせよ俺の存在は半分バレてるんだから、痕跡を見つけられたところであまり関係無いだろう。

 

閑話休題。

 

お腹も一杯になったし、この後はチーグルの長老の所に行くわけだが……、ここで大きな問題が一つ。

 

ナルガ()の事をどこまで話すべきか、という事だ。

この世界では、弱い魔物でも音素(フォニム)を扱える者はいる。例えばチーグルなら火を吐けるし、ライガ(チビ)は電気玉を吐ける。

強い魔物となれば、なおさら自在に音素(フォニム)を操れて当然だろう。

 

その状態で、長老に『音素(フォニム)の扱いが分からないから教えてくれ』などと言ったらどうなるか。

……不審がられるに決まってる。強い魔物(多分、周りにはそう見えているはず)のナルガ()が、どうして音素(フォニム)を扱えないのか、と。

 

ナルガ()がこの世界の存在ではない事を長老は知らないのだから、当然といえば当然の疑問なのだが……。この疑問にどう答えるかが、目下の問題だ。さて、どうするか……。

 

 

バカ正直に『この世界の魔物じゃない』と言うのは却下だ。

俺は、周りからのナルガ()の認識を『見た事の無い魔物だな』ぐらいに留めておきたい。そうでないと、ヤバイ奴らに追い回されそうで怖い。ヴァンとかマルクト軍とかキムラスカ軍とか神託の盾(オラクル)騎士団とか、な(ほぼ全部じゃねえか)。

チーグルを信用しない訳じゃないが、情報はどこから漏れるか分からないからな。迂闊な事は言わないに限る。

 

 

じゃあ、誤魔化すか?

 

……どうやって?

 

頭打って記憶喪失とか言っておけば……ダメか。魔物に記憶喪失なんて概念があるのかすら怪しい。ナルガ()が言うのもなんだが、魔物なんて本能で生きてるようなもんだしな……。

 

……じゃあ、あれだな。一応音素(フォニム)は扱えるけどどうにも不安定だから、みたいな感じで言ってみるか?

ぶっちゃけそれしか思い付かないし、それでいくか。『案ずるより産むが易し』って偉大な先人も言ってるんだしな、意外と何とかなるかもしれない。

 

よし、チーグルの長老の所へ行ってみるとしよう。

 

 

(迅竜移動中…)

 

 

チーグルの木までやってきた。

一応、森の破壊を最小限度に抑えるために移動は這いずりのみ、出くわした敵を倒す時はビターンを使わず、尻尾を横から打ちつける攻撃で仕留めた。

……だが、どうにもイライラする。這いずり移動は遅いし、妙に疲れるから嫌なんだよな。ビターンにしたって、地面に叩きつけた時のあの音が心地良いからやってるんだが……それが無くなると、ささやかな俺の楽しみが失われてどうにも落ち着かない。

 

(待て)

(あ? 今ちょっとイライラしてんだから後に……ん?)

 

聞き覚えのある声だな……。ああ、紫の毛色って事は、

 

(なんだ、長老か)

(そうじゃ。ソーサラーリングは無いが、どうやら話は通じるみたいじゃな)

(そうだな。まあ、俺としてもありがたい)

 

……愚痴ばかりでもない、か。ソーサラーリングが無くても、チーグルの長老とは会話できるようだな。

ライガ(成体)といい、フレスベルグといい……もしかしたら、一定以上の知能を持つ魔物とは意志疎通ができるのかもしれないな。……てことは、チーグルの森でうろついてる巻き貝とかちび狼は、魔物の中でもバカって事か?

ん? 一瞬、周りの気温が下がったような……まあ、気のせいだろう。どこかの氷精じゃあるまいし。

 

(……ふむ、ありがたいとは?)

 

まあ、そこは気になる所だよな。どう言い出すか考えてたから、長老の方から聞いてくれて助かったよ。

 

(ああ、今日は教えて欲しい事があってな)

(教えて欲しい事とは?)

(そうだな……)

 

さて、事前に考えてた通りに言ってみるか。

 

(ちょっと音素(フォニム)の扱いが不安定でな。コツとか教えて貰えないかな、と思って来たんだが)

(なんと、魔物から教えを請われるとは珍しい事もあったものじゃな。しかし……)

 

そりゃ珍しい事だよな、魔物が魔物に教えを請うなんてまず無い事だし。それでも落ち着いているあたり、流石はチーグルの長老といったところ……、

 

(まあ、納得じゃな。その状態じゃ、まともに音素(フォニム)を扱えるとは思えん)

 

……へ?

 

ちょっと待て。

 

今、何て言った?)

 

(む? その状態じゃ、まともに音素(フォニム)を扱えるとは思えん、と言ったが?)

 

驚きすぎて、心の声が表に出てきちまったじゃねぇかよ。

いかんいかん、落ち着け落ち着け……。

 

 

……よし、落ち着いた。とにかく落ち着いた。

 

(それ、どういう事だ?)

(なんじゃ、自分で気付いとらんかったのか。今のお主は、風の音素(フォニム)が体から漏れ出しておる……それも、尋常じゃない量が、な)

(風の音素(フォニム)が……?)

 

……ワケが分からん。

音素(フォニム)が漏れ出してるって……もしかして、ゲーム後半で瘴気を晴らした後のルークみたいな状態って事か? 音素(フォニム)の結合が緩くなってるとかなんとかっていう、アレ……。

 

(おいおい、まさか俺死ぬのかよ!?)

(そんな事、一言も言っておらん)

(じゃあ、どんな状態なんだ?)

(そうじゃのう……)

 

もったいぶるなよ、言うならスッと言ってくれスッと。展開が急すぎて、流れが落ち着くと逆に不安になるんだよ。

 

(なんというか、お主の体から風の音素(フォニム)が生まれて、溢れてきておる……といった感じかのう)

音素(フォニム)が、生まれて……?)

(そうじゃ。まあ、そんな量の音素(フォニム)が体にあるのでは、制御もままならんじゃろう)

 

……心当たりが無いとも言えないな。ティアやジェイドに存在を察知されたし、ライガやフレスベルグにも接近に気づかれたし。

 

なるほど、これが原因か。しかも、長生き(何歳なんだろうな?)の長老が『尋常じゃない』と言うのだから、相当な量なのだろう。

 

しかし、どういう事だ?

ナルガ()異世界(モンハン)のモンスターだ。モンハン世界のモンスターの体がなにで構築されているかは知らないが、元々体に風の音素(フォニム)を宿していた、なんて事はまずあり得ない。

この世界に適応して、進化したって事か? それなら十分に考えられる。何せ、超寒冷地の凍土に住み着くベリオロス、その亜種が真逆の環境下である灼熱の砂漠に住み着いている、なんて事も普通に起きるからな。この世界に適応して、ナルガ()の体が音素(フォニム)で構築し直されていても不思議ではない。

 

ただ、それだと体から風の音素(フォニム)が溢れている理由の説明がつかない。体で音素(フォニム)が作り出されるって、どこのプラネットストームだよ。

 

……まさか、コレが神様の特典とかいう奴か? 会った覚えは全く無いのだが。

現時点だと、そう考えるのが自然なんだろうが……それなら常時無敵とか、身体能力超強化とか、永久に空を飛べるようになるとか、そっちの方が()()()()()し嬉しいんだけどな―――

 

(―――どうしたのじゃ? そんなに考え込んで)

 

おっと、思考にひたり過ぎてたか。あまりに無言だと不審がられるし、何か言っておくか。

 

(……色々と想定外過ぎて、状況整理が追いつかなかったんだよ。まあ、それも今ようやく一段落したけどな)

(そうだったか)

 

……その状況は、俺にとって芳しいものとは言えないがな。

音素(フォニム)が多いほど、それを用いた技や譜術の威力は上がる。ただし、扱うエネルギーが多くなる分だけ、制御は難しくなる。

視力の良いジェイドが眼鏡をかけている理由も、譜眼(ジェイドが持つ赤い眼、通常の数倍の音素(フォニム)を取り込める)の影響により譜術が暴走するのを抑えるためだったはずだ。

 

(せっかくだし、この音素(フォニム)をどうにかして利用したいんだが、何か方法はないか?)

 

こうは言ってみたものの、今のナルガ()が『眼鏡の無いジェイド』に近い状態だと考えると……、

 

(流石に厳しいのう)

(……そうか)

 

音素(フォニム)を扱うのは厳しいかもな。ジェイドクラスの譜術士(フォニマー)ならともかく、素人のナルガ()が無理に使おうとしたところで、音素(フォニム)が暴走して自爆する未来しか思い浮かばない。

譜術、一度は使ってみたかったんだがなぁ。この調子じゃ、音素(フォニム)の訓練すらままならないな……。

 

(邪魔してすまなかったな)

(構わぬよ)

 

現状が分かっただけでも、よしとしよう。拠点に戻って、今後の行動を考えるか……。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

取りあえず拠点に戻ってきたが……。

 

まさか、ナルガ()の体から風の音素(フォニム)が溢れ出ていたとはな。神様の特典だかなんだか知らないが、まあ面倒なものを押し付けてくれたものだ。

……これに関しては、戦いの中でコツを掴んでいくしかないかもな。

 

よし、森を離れるか。

強い相手と戦う経験を積んでおいた方が良さそうだからな。このままここにいても、ナルガ()にやれる事は無い。

 

それに、早めにルークなりアリエッタなりに接触しておいた方が、今後のナルガ()の行動範囲が広がりそうだ。

 

そうと決まれば、まずは行き先だな。

ルーク一行とアリエッタ、両方に対して安全に、しかもまとめて会えるタイミングは……フーブラス川か。

確か、あそこで両方がかち合って一悶着あったはずだし。

 

今はタルタロスが六神将に襲撃されている頃だろうし、ナルガ()のスピードなら先回りしてフーブラス川で待ち構える事もできそうだな。

 

よし、早速行動開始だ。

 

世話になったな。さらば、チーグルの森よ。……なんて格好付けてみたりしてな。

 




読んで頂き、ありがとうございます。

音素(フォニム)が体から溢れ出すって……まさに、携帯用プラネットストームですね。

さて、そろそろまともな戦闘描写も書いてみたいと思う今日この頃。
雑魚散らしばかりじゃナルガ()の強さがどの程度か分からないし、どこかにちょうどいい強敵はいないかなぁ…。倒れてもあまり問題の無い相手ならなおよし。

では、次話もお楽しみに。

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