月と星が輝く夜に、金髪紅眼の男が歩いていた
「ハハハッ!深夜にしか、入荷しない超人気のシュークリームを手に入れたぞ!」
金髪紅眼の男が高々と両手で持っているのは、シュークリームの入った箱である、勿論ただのシュークリームではない
何故か、近くのコンビニで深夜にしか入荷しないシュークリームがあるという噂を金髪紅眼の男は聞いて買いに行ったのだ
「…………」
しかし、そんな男に忍び寄る三つの影があった
影の共通点は一つだけあった、それは背中から鴉の様な翼が生えた人間、堕天使である
「あいつね……この地域で一番危ない奴は…」
「ああ……奴は危険だ」
「今は浮かれてるから、チャンスは今っす!」
この堕天使達の名はカラワーナ、ドーナシーク、ミッテルトという下級堕天使達である
この三人の他にあと一人程いるが、それは後の話である
この三人は今、何をしているのかと言うと、狩りである
聖書の神が創り上げた神器を持つ人間や異能を持つ人間を見つけ次第始末しているのだ、で今回のターゲットは、目の前でシュークリームの入った箱を抱えて小躍りする男だった
「この前のガキが悪魔になってしまったからな…手は出せないが、あそこの男はバックはいない……始末できる」
ドーナシークはそう言って、光の槍を投げるが
「ぬおっ!………」
突如、季節に合わない突風が吹き、光の槍の狙いがずれた
光の槍は金髪紅眼の男に向かわずに、男が持つシュークリームの箱に
「なぁ!」
命中した、男の手元には箱の取っ手しか残らなかった
しかし、堕天使三人は勘違いをしていた、この金髪紅眼の男を得体の知れない力を持つ人間と思っていた事だ、男の名はギルガメッシュ、古代メソポタミアの王にして世界名だたる英雄の宝具の原典を持つ最初の英雄なのだから、そして彼等は未だ気づいていない、王が楽しみにしていた甘味をドブに捨てる様な行為をした事に
ーーー
「…………」
ああ…なんたる事だ……、とギルガメッシュは悲しむ、彼の手にあるのはシュークリームを入れていた箱の取っ手だ
「許さん…………許さんぞォォォォォオ!」
そして、悲しみは怒りに変わる、ギルガメッシュの片手にはそこらに落ちていた鉄パイプが握られていた
「鴉共がァァァァァァ!」
ギルガメッシュは振り向きざまに鉄パイプを投げる、投げられた鉄パイプは、摩擦熱で赤くなっていく
「グガァ!」
ギルガメッシュの耳に雑音が入る、どうやら鴉に命中したようだ
「あと二匹……」
ギルガメッシュはいつの間にか、そこらに落ちていた角材を二本、手に取っていた
「くっ!ミッテルト!行くわよ!」
「人間如きが!思い上がるな!」
二匹の堕天使は光の槍を手にして、ギルガメッシュに向かっていく
「そんな木材で何がっ!」
ミッテルトと呼ばれていた堕天使は言葉を途切らせて、自身の身体を見る、自身の胸を貫く様に角材が貫いていた
「ミッテルト!くそォ!」
カラワーナという名を持つ堕天使は光の槍を突いたり斬りつけようとするが、ギルガメッシュには当たらない
「武器を使っても、その程度か……恥を知れ!」
ギルガメッシュはそう言うと、角材をカラワーナの頭に目掛けて、振り落とす、音速で振るわれた角材はカラワーナの頭部と共に砕け散った
「ふん…………」
ギルガメッシュは徐々に黒い羽根になる死体を一瞥すると、肩を落として帰っていった
はい、こんな感じです
次回もお待ち下さい