「根」の女   作:蒼彗

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カカシ先生強化計画。
ちょっと早めに万華鏡写輪眼出せるようになればいいと思った(ただし、数年は基本写輪眼縛りで)

次で波の国入ります。






カカシ改造計画

どうしてこうなった。

それが、カカシの正直な気持ちである。

 

ナルト達に上忍として忍が如何なるものか、サバイバル演習によって実感してもらおうと思った。カカシが親友から受け継いだ忍としての心得を、ナルト達が少しでも感じてくれればと考えていた。しかし、それも全て一人の闖入者に覆されたのだ。

 

うちはイルマ。

同姓同名の別人かと思えばなんとかつて里を裏切った大罪人本人で、しかも上層部は知っていたのだから呆れてしまう。

 

頭を抱えて悩みたいところだが、今のカカシにはそれすら出来ない。何故なら、カカシの両手は診察台に縛り付けられているのだから。

 

「さて……準備の方は整いました」

 

白衣にマスク、珍しく右手を露出させているのはチャクラメスを使う為だろう……ここらが年貢の納め時かもしれない。

 

カカシは目蓋を閉じた。ほんの少し前をおもいだしながら。

 

 

 

 

イルマに引き擦られる様に立たされたカカシは火影執務室へと飛んだ。その内側と外側がくっつき、裏返る様な感覚をカカシは知っていた。

 

飛雷神の術。

 

四代目火影が得意とした術をこうも易々と扱うのだ、流石うちはと感嘆すべきなのだろう。けれど、腹の中で巣食う何かがイルマに反感を覚えさせていた。カカシはその混沌とした感情のまま、三代目に跪くイルマを眺めていた。

 

「三代目、対象者二名の戦力を確認しましたーーCode:「渦」は多重影分身、Code:「トマト」は火遁等の忍術と体術が得意ですがどれもお遊びの域を出ません。ですが、どちらも伸びしろは十分あります。子供である事を鑑みて、適切な指導をして下さる方をお願いします」

 

「分かった。その人選は此方で手配しよう」

 

三代目はイルマに鷹揚な態度で答えた。その如何にも信頼し合っているという感が、カカシの苛立ちを煽る。そもそも、正式に説明された訳ではないのだ。

 

「また、「左」と「兄」の使用許可を申請致します」

 

「……ほう。して、それはカカシの為か」

 

三代目との話題が自分に移った事を知ったカカシはイルマを一瞥してから、三代目に話し出した。

 

「三代目!先程から全く事情が読めないのですが。せめて、説明をして下さい」

 

三代目はイルマに話すよう促すと、側にいた暗部を人払いの為に下がらせた。イルマは何処かで見た事のある仮面の暗部が完全に立ち去るのを見送ってから、口を開いた。

 

「うちはマダラを知っていますか?」

 

思いがけない名前にカカシは面食らった。

 

初代火影・千手柱間と手を結び、里を作り……そして、里を裏切ろうとして柱間に殺された男だ。この話は木ノ葉の人間ならば誰でも知っている御伽噺でもあり、歴史でもある。

 

何故、この場でそんな男の名前が出たのだろう。

 

カカシの反応からイルマは理解する。

 

「知っている様で良かったです。彼は私の従兄でしてね、お兄様…柱間殿に殺された事になってます。公的には」

 

イルマは右手で左肘に触れた。無意識なのか、不安げに視線が彷徨う。伝えて良いものなのか、思い巡らせているようだ。

 

一つ息を吸って、イルマは一気に吐き出した。

 

「ですが、マダラは生きていたのです」

 

「なっ!そんな筈ないだろう!」

 

カカシの苛立ちと驚愕の混じる声にイルマは首を振る。忍の神と謳われた千手柱間と、その弟千手扉間は忍としては最高の存在であろう。それでもその目を欺けない訳ではないのだ。

 

「確かに、柱間殿と二代目と私がその死体を確認しました……でも、残念ながら幾つか、仮死状態になる方法はあります」

 

イルマは多くを語らない。語りたくてもうちはの瞳についてイルマも断片的にしか知らないのだ。それでも僅かながら聞き覚えている事もある。

 

秘術・イザナギ

事象を捻じ曲げ、術者の意の儘にする禁術だ。うちは一族の秘術であり仲間同士の殺戮の要因であり、己が眼を潰して行使する諸刃の剣である。その禁術をうちはの寵児たるマダラが使えない訳がない。

 

他にも方法がない事もない。そのどれを使ったかは知らないが、マダラは見事千手を欺いたのだ。

 

「二代目に切られた後、私は死体を燃やすべかく、マダラの処へ飛びました。悪用される危険もありますが、何より木ノ葉の未来の為に安らかに死んで貰いたかったのですーーでも、彼は生きていた」

 

イルマの脳裏に最後に見たマダラが映る。涙を流して、イルマの名を連呼するみっともない姿を。いつもボサボサの髪が更に乱れ、端正な顔も酷い有様だった。

 

優しい男だからこそ、歪んでしまったのだ。もし、誰かがマダラに寄り添い支えてやっていたら世界は変わっていたかもしれない。

 

「では、裏切ってないなら……何故、二代目は貴女を切ったのです?マダラを止める為なら反対する謂れもないのに」

 

カカシの疑問は当然だ。里に対する脅威への対処なら、足並みを揃えるべきなのに味方である火影直々に手を下されるなどおかしいに決まっている。

 

イルマは肩をすくめた。

 

「私はうちはイルマ。何処に嫁いでもうちはの女です。イズナの眼を手にして第二のうちはマダラになられたら困りますから。結局、二代目はうちはの私を受け入れたくなかったのでしょう」

 

嘲るイルマを三代目は悲しそうな表情で眺める。イルマの事も二代目の事も知っているだけあって、思う節もあるのだろう。だが、それを口にする事はない。

 

賢者は知っているからこそ黙るのだ。

 

「私がこの時代へ飛んで来たのは、一つ、うちはマダラから木ノ葉を守る為。二つ、うちは一族をフルボっ…ごほん、あのムダに高い誇りを根底から折る為。そして、忍の強化と連携を高める為、です」

 

イルマはそれだけ言うと、にっこり微笑んだ。たおやかな乙女の様でいて、見る人が見ればやっぱり何人か殺している笑顔である。

 

「さあ、お付き合いお願いします。カカシ先生」

 

 

そして冒頭に戻る。

カカシはまな板の上の鯉ヨロシク手術台に括り付けられていた。「根」の拷問部屋の隣、処置室である。消毒薬と薬品ーーたぶん近くにホルマリンプールでもあるのだろうーーの臭いが漂う陰気臭い部屋だ。

 

処置室本来の使い方であると処置室からマトモに出られた人間は殆どいないが、イルマは本当に手術の為に使うらしい。らしい、というのは憶測と推定で実際の所は分からないという意味だ。第一、イルマ自身が手術をすると言うのも初耳で、これが拷問でない事を祈るばかりだ。残念な事に、拷問器具が揃っている。そして、もしイルマが医療忍術を扱えるならば拷問など容易く行える。治す事は壊すよりも難しいのだ。

 

また、如何に三代目火影他上層部が信頼しているとは言え、真実を知って半日も立たぬ内にイルマから改造されるなど何処の誰が想像出来よう。ましてや、カカシの眼はカカシだけのモノではない。

 

カカシは両目蓋をしっかりつむった。

 

「はい、目蓋開けて下さい。麻酔させないと痛くて痛くて死にますよ」

 

「待って下さい。まず、これは何をしようとしているんですか?イルマ様」

 

これは、英雄になったオビトの眼だ。オビトを奪われて、リンを目の前で失った痛みを全部見てきたかけがえのない存在だ。そんな眼をそう易々と傷付けさせたくはない。

 

これはカカシの小さな、けれど立派な抵抗だった。

 

「カカシくん?」

 

「嫌です。説明してくれるまで抵抗します」

 

イヤイヤと、首を振って目蓋を開ける事のないカカシはまるで子供のようだ。手術台に縛り付けられているから余計、そう映る。それでも、ぽっと出の素性も不確かな相手に「強くなれるから」とついて行ける程幼くもないし、力を渇望する程貪欲でもない。

 

急ぎ過ぎたか、とイルマは反省し、手術台に寄り掛かった。

 

「強化の一環……と言えばいいかしら?その左眼は貴方のチャクラ循環を妨げていますから、貴方と左眼が馴染む様に細工をします」

 

「具体的には?」

 

「里で秘密裏に開発している細胞シートを少し埋めます。痛みも眼球への損傷もありません。多少の違和感はあるかもしれませんが、それも直に慣れるでしょう」

 

カカシはイルマの言葉を反芻する。何かは分からぬが、火影の許可を貰わねばならない様な技術を使ってまでカカシの強化させようとしている。これまでのイルマから見て、カカシをムダに傷付ける事も写輪眼を手にすべく騙そうする可能性も薄い。写輪眼の事を抜きにしても、カカシは有能な忍だ。今ここでカカシを潰せば、ナルトやサスケを守ろうとするイルマの努力は全て水の泡になるだろう。

 

成る程、イルマはカカシを本当に助けようとしているのかもしれない。だけれども、それでも疑問は残る。イルマが恐れる相手に関してだ。

 

「何故、其処までしてオレを強化させようとする?うちはマダラが生きていたとしても相当な年寄りか寿命で死んでいるか、のハズ」

 

他に警戒する相手はいるのに、いつまでマダラを恐れるのか。イルマ自身が未来へ来られたからマダラも同様だと思っているのだろうか。

 

だが、イルマの言葉はカカシの予想を超えていた。

 

「この時代に最初に来た時、私は四代目火影の最期を看取りました……九尾を里に口寄せし、四代目火影とその奥方を弑逆したのは、仮面のうちはだった。既に危惧していた通り、マダラの意思を継ぐ者が現れているということです」

 

静かな声だけが響く。

冷たいリノリウムの床やタイル張りの壁に反響して、無機質な蛍光灯の明かりと共に落ちてくる。

 

イルマの声は、微かに震えていた。其処にあるのは怒りと哀しみと、血族に対しての諦念だ。うちはの人間が木ノ葉にどれだけの迷惑を掛けたか分からねども、その幕引きはせめてうちはの人間がすべきであろう。

 

しかし、いつまでもイルマが居られる訳でなし、今後の憂いを断つ為にも、木ノ葉の人間を強くしていきたいのだ。

 

「それに、うちはの人間が眼をうちは以外に渡した意思を尊重してやりたいのです。写輪眼は酷使すればするほど、磨耗して視力が落ちて最終的には失明します。其れ(左眼)にしても不本意でしょうし、其れ(左眼)も貴方の目となってまだ世界を見て行きたいでしょう」

 

サバイバル演習でカカシを煽ったのは、何も本当にプライドを折りたかっただけではない。カカシの身体を巡るチャクラの流れを感知したかったのだ。結果としては想像通り、カカシはチャクラの大半を左眼に奪われていたいたし、全身を巡るチャクラの流れも悪くなっていた。

 

反則でもなんでもイルマは、カカシの左眼をカカシが上手く使えるようにしてやりたいのだ。

 

カカシは恐る恐る目蓋を開いた。イルマはカカシの方を向いて、優しく微笑んでいた。そんなイルマの気安い様は、誇り高きうちはらしくなく、まるでオビトを思わせる。それがカカシの調子を狂わせる要因なのかもしれない。

 

「……お手柔らかに頼みます」

 

イルマはカカシの左目蓋を固定すると、目薬をさした。二度三度冷たい液がカカシの左目に入っていくのを確認し、右手にメスを持つ。

 

サクッと。

眼球を0.0数ミリ切り、その僅かな隙間に皮膚よりも薄く小さい「左」と「兄」と呼ばれる細胞シートを入れた。ついでにチャクラを針のように尖らせ、感覚で経絡を刺激する。今はまだ入れたばかりの細胞片もそのうちカカシの左眼に根付き、写輪眼の助けになるだろう。

 

「これで手術は終わりです。定着する数年は死にそうな戦闘以外は使わない様にして下さい。あとは今まで眼にばかり取られてたチャクラを循環させないと」

 

刺していたチャクラ針を解除、点穴を押さえておく。点穴とは、即ち急所。往々にして急所は優しく触れれば気血水のバランスを整える事が出来る。身体に張り巡らされた経絡系の澱みを取るように揉みほぐせば、カカシの手足はだいぶ温かくなってきた。

 

……其処までは良かった。

イルマもカカシの強張りが取れて行くのが文字通り手に取る様に分かって楽しかったし、カカシも身体の調子が良くなるのを感じていたから。

 

ただ、詰まっていた管を押し流せば何処かからゴミが出てくるのは必然で。

 

「ぎゃー」

 

イルマは叫んだ。

カカシの黒いマスクが、真夏の深夜番組ばりに血塗れになったのだ。一言で言えばスプラッター、違う言葉で表すなら、ゴア表現である。

 

イルマが乱暴にマスクを剥がせば、スッと通ったの鼻から流血していた。しかも、両方の鼻の穴からだ。それでも、何故か格好良いのは顔立ちが整っているからだろう。

 

イルマはカカシの鼻に脱脂綿を詰めると、医療用の白いマスクを付けてやった。武士の情け、ならぬ忍の憐れみだがイルマ自身の為でもあった。

 

カカシの素顔は、目の毒だ。

既婚者のイルマですらちょっとよろめいたのだ、これが其処らのお嬢さんならイチコロで落ちる。いっそ、写輪眼よりも光る貌(フェイス・フラッシュ)で戦えるレベルだ。ドブ川を清流に変えるに違いない。

 

イルマは顔にまで飛んだ鼻血を拭きながら、白衣を脱いだ。

 

「若さにかまけてメンテナンス怠ると後が怖いですよ。私で良ければ時々食事作ります」

 

カカシ、夕食ゲット。

それから時々食材を持ち寄って、イルマの家に集まる七班が見られたという。





カカシ改造計画(物理)

イメージ的には、仮○ラ○ダー。いや、そんなに詳しくないですが。

というか、なんでしょう、この一話完結みたいなの!(◎_◎;)

足りないのはやっぱり戦闘か!一心不乱の大戦闘か!!
血湧き肉躍る戦闘が書きたいですね。折角、警告タグが付いているならば、レクター博士もビックリな表現を目指していきたいです。

もっと、もっとネタ詰めたいです!安西先生!(深夜テンソン)

……多機能フォームの反乱によって、前回も今回も一字明けが出来ないのですが、もうどうすればいいの分からなくなって来ました。パソコンすら通じないとは……。

 時に、修正がPDFに反映されてないのは、仕様なんでしょうか。閑話編集してから3日経っているはずなんですけどね。


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