どちらの展開でもシリアルに仕上げようと思っていたので、非常に楽しく書く事が出来ました( ´ ▽ ` )ノ
この度はカカシ先生に大変ご迷惑をお掛けいたしました。ご了承頂ければ幸いです。
カカシは木の上でイチャパラを読みつつ、状況の整理をしていた。
ビビっていたナルトがカカシの挑発に怒り、クナイを投げつけようとした手をナルト自身に突きつけたこと。それに切れたイルマがカカシに突っ込んでグダグダ演習が始まった事は残念だが皆概ね隠れられる事が出来たようだった。カカシは影分身で周囲を哨戒しつつ、本体は休んでいる。そんな時だった。
「あら?白昼堂々とこんな本を読んで、ダメじゃないですか……カカシ先生」
場違いな、優しい声。
それはカカシの背後から聞こえた。腐っても元暗部の「写輪眼のカカシ」の背を取れる下忍などそうそういない。
一番近い太い枝に腰掛けて、ソレは微笑む。
「お前……何者だ?」
咄嗟に距離を取り、クナイを構えるカカシに対してイルマは茶目っ気たっぷりに戯けてみせた。
「まぁ、おおよそは貴方のご想像通りでしょうね。私の名前はこれまでもこれからも一人だけなんで」
「お前、本当にうちはイルマか!」
歴史上では、うちはイルマは、「うちはの阿修羅姫」とも呼ばれた女はマダラの裏切りに気を病み、死んだ従兄弟達を探そうと里抜けしようとして二代目火影に殺された。
もし、生きていたとするなら、既に百に手が届きそうになっていてもおかしくない。だが、カカシの目の前にいる人物はどう見積もっても十代の域を越えない。誰かの身体を乗っ取るような、禁術でも使ったのだろうか。
「狙いは、何だ!サスケか?いや、それとも…」
様々な憶測を巡らせるカカシにイルマはパフスリーブから肩を抜き、カカシに見せ付けるように晒した。色々とポロリしないのは、少女の姿だからか可愛らしいキャミソールの所為か。一部のマニア垂涎の格好だが、問題は其処ではない。
「三代目から聞かされてないので?セ・ン・パ・イ」
其処には暗部の一員である刺青がしっかり主張していた。
「もしや、護衛役か?いや、でも何故」
「九尾とうちはの生き残りですよ?まだ弱い内に唾着けたくなる輩なんて里の内外沢山いる、という事です」
ニッコリ。
これ以上ない位の笑顔だ。これは何人か仕留めた表情である。
カカシは身構えたまま、混乱する頭を整理していた。
カカシの知識では、「うちはイルマ」は里を裏切った人物である。しかし、イルマの主張が正しければ三代目はイルマを知り、暗部に置いてナルトやサスケの護衛をさせている事になる。
イルマの腕を斬ったとされている二代目。その弟子である三代目ならば、イルマの人となりも知っていて警護につかせているに違いない。前提条件からして間違っているとすれば、里を裏切ったという伝承も何処まで本当か分からない。
カカシには、イルマという人物が判別出来なかった。
「……もし、これが戦場ならば貴方が遅れて来た時点で未熟な忍は死んでました。時間を違えるとはそういう事であると、貴方は知っていますよね?」
九尾の人柱力とうちはの正統な生き残りを攫うのなら、イルマ一人だって手段を選ばねば出来る。ましてや、四代目と始めて会った時に倒した仮面の男ならば言わずもがな。あの、うちはの目を持つ男は九尾を引き出す事で里を襲い、シスイの瞳でもってうちはを襲った。
イルマは常に警戒していた。
更に、戦とは力と力のぶつかり合いだ。それが侍であれ、忍であれ、大砲であれ、チャクラであれ、結局はどちらの力が片方を押し切れば負ける。故に、戦場で一番大切なのは機を読むこと。
頭を潰す事で相手の威勢を削ぎ、集団としての纏まりを失わせてから各個打破が定石。策によってはわざと遅らせる事もあるが、経験のない下忍引き連れて下手を踏む事もない。ぶっちゃけ、出来るなら尾獣玉のような遠距離攻撃や呪印でじわじわ削ればいいのだ。
「貴方は、コレで部下を死なせたも同然。回顧より目の前を見てもらわないと困る。重ねて言うと、その眼ーー」
紫水晶の眼が細められた。カカシの隠された眼を痛ましげに眺めて、続ける。
「合ってませんね。血縁関係のない人間の眼ですか?それもそのチャクラはうちはの眼」
「親友の眼だった」
カカシの返答にイルマは頷いた。
イルマはうちは一族が嫌いだった。高慢で他族の血の混じった同族を蔑み、そのクセ、力のある者に阿諛追従する。マダラを追いやった事を許せはしなかったし、これからも許す気はない。今のうちは一族には関係ない話だが、時折見せる「うちは」らしさが鼻についていたのも事実だ。
それ故、うちはの眼を、うちは以外に託せるような子孫がいた事を喜ばしく思っていた。思いながらもその子孫とは会えないことが悲しい。
「……まったく、何処ぞの仮面の男に爪の垢を煎じて飲せてやりたいものです」
そう独り言を呟くイルマを、カカシは警戒を緩める事なく見つめた。そして、不意に疑問が口をついて出てくる。
「お前は……いや、貴女は何故、里を裏切った事になっている?それにうちはマダラの従姉妹なら、なんで今も里に従っているんだ?」
「老婆心ながら、申し上げましょう。我が子を愛おしく思わぬ親が何処にいます?」
里を裏切った女にしては、随分と情の深い言葉である。鬼子母神もかくや、という穏やかな表情で微笑む。だが、忘れてはならない。如何に柘榴を食もうと子等への想いが深かろうと鬼女は鬼女なのだ。むしろ、裏切られても尚誰かを愛する様が狂気の所以やもしれない。
「コレは宣戦布告です。もう一生遅れて来られぬように、そのプライド折らせて頂きます」
カカシは思わずクナイを投げた。けれども、イルマがいた場所にはカラスが一羽残っているだけで、そのカラスもアーホーと一声なくと飛んでいってしまった。
残されたカカシは、拳を握ると額当てを上げる。
「……久々にオレも本気出すか」
*
イルマが言った通りの展開に、サクラはカカシに同情を禁じ得なかった。
始まる前に、イルマは「カカシ先生、下忍だからって舐めてるみたいだし、本気出してもらえるように頑張って煽るね」などとにこやかに言っていたが、どんな非道な事をして本気を出させたのだろうか。カカシの隠れていた方の眼が露わになっている上、妙に殺気立っている。肩に乗っかっているのはトリの落し物なのか、なんだか白いのが付いている。それも殺気立つ原因の一つだろう。
「イルマさん、凄いわ……」
サクラは呆れと尊敬の念を覚えた。よもや、カカシもサバイバル演習で糞害に会うとは思ってなかったに違いない。
しかも、まだ始まったばかりだ。サクラは茂みに隠れたまま、合図あるその時を待った。
*
木々生い茂る森から少し離れた平原に一人立つ。見晴らしの良い場所は一対複数の戦いには不利だが、本来ならば下忍が束になってもカカシには勝てない、そういうものだ。それを全てイルマという例外がカカシの調子を狂わせている。
だが、何時、イルマが襲いかかってくるか分からない現状を打破する為には写輪眼を使わねばならず、写輪眼を使う限り短期で終わらせなければ、カカシが持たない。
「何処だ…何処にいる!」
カカシは周囲を見回す。
イルマもうちはだ。
伝承では専らマダラの片腕として補佐をしていたというが、写輪眼持ちならば話は別だ。同じ写輪眼使いなら、当然生来の持ち主であるイルマの方が効率良く使えるだろうし、ムダなチャクラを食うこともないだろう。
まず、茂みから飛び出したのはワンピース姿だ。クナイを投げて牽制するソレにカカシは本気で掛かった。
「お前、ナルトか」
しかも、分身と来た。
猪突猛進なナルトが分身のみを陽動に使う辺り、誰が忠告したかよく分かる。イルマにナルトを傷付ける気がないのがよく分かる。
下忍と上忍だ、そう長持ちするものではない。変化を解いたナルトはもう一度クナイを投げた。見当違いに飛んで行ったクナイを無視して、カカシはナルトの分身を幻術で鎮圧する。それに合わせて、クナイに変化していたイルマとサスケが術を発動させた。
「火遁・豪火球の術!」
火遁がカカシ目掛けて飛んでいく。それを難なく避けるカカシにイルマはあの悪ガキめいた笑みを送った。
「風遁・
サスケの火遁を巻き込みながら、風はカカシを取り巻いていく。逃げようにも、土の中からカカシの足を白い手が抑える為にそれも叶わない。
影分身のイルマさん、三時間待ちの努力の賜物である。
「なっ!土遁か」
カカシは千鳥を地面に叩きつけ、手の拘束から逃れると渦から抜けるべく跳躍した。炎と風の刃はカカシを逃さまいと渦を巻き、徐々に狭まっていく。一人しか抜けられぬ竜巻から抜け出る事でいっぱいのカカシはすっかり忘れていた。
これが、サバイバル演習だというコトを。
清涼な音が、響く。
カカシの身体から紐の切れた鈴が離れていく。
「しゃーんなろー」
サクラは貯めていたチャクラというチャクラを脚に使った。一瞬の瞬発力さえ高まればいい。目指すは、風で断ち切られた紐と鈴三つ。
「討ち取ったり!」
サクラは鈴を掴んだが、バランスを崩す。あわや、地面に叩きつけられるかと思いきやナルトがスライディングでサクラを庇った。
「サクラちゃん、大丈夫だった?」
「……有難う、ナルト」
英雄は遅れてやって来る、そういうものだ。サスケは鈴を握ったサクラごとお姫様抱っこをすると、カカシから距離を置く。
「サクラ、離すなよ」
「はい!(メルヘンゲットー!)」
それが鈴を守るものだとしても、サクラの小さな胸がときめくのは当然だろう。
折角助けたのに美味しいトコロをサスケに取られ、不貞腐れたナルトはサクラ達から目を離す。そして、カカシの上にイルマがのし掛かり、クナイを突き付けているのを見た。
時計のベルが12時丁度を告げる。
*
後ろ手に縛られ、腹ばいになったカカシは囚われの姫君よろしく転がっていた。
「さて、カカシ先生はこれから物理的に落とすからいいとして……」
「理不尽!」
喚くカカシを椅子にして、イルマは肘を膝に置き、頬杖をついた。
「サクラちゃん、今回はカカシ先生から鈴を取ることが出来たけど、これが一人だったら出来たかな?」
「ムリです」
サクラは鈴がカカシから離れるまで、ずっと見ていたので知っている。
ナルトの変化を皮切りに、一対複数で掛かってもカカシは簡単にさばいていた。体術・幻術・忍術、そのどれをとっても下忍が敵う訳がない。不意をつく、なんてレベルではないのだ。
「……そうですね。カカシ先生は手を抜いてくれてましたし、これはあくまでも演習です。この演習の真の目的は?」
ナルトやサスケに話を振れど、二人とも答える事はない。急に真の目的は?などと問われても分からないのだろう。イルマは少し低い声で話し出した。
「例えば、これが任務だとします。鈴三つは巻物なりだと考えて下さいーーさて、これを敵から奪わないと任務完了にならず、一人死にます」
風が止んだ。
舞い上がっていた木の葉が落ち、土が崩れる音が響く程に辺りは静寂に包まれる。
なんとも血生臭くおどろおどろしい話だ。しかし、忍とはそういう存在である。闇に隠れ、影に紛れて、人を欺く。
「任務を受けなければ里の皆が危険に晒されます。だから、任務を達成出来ない人間は仲間を助けられない人間より、責められる」
サスケもサクラも、ナルトも息を呑む。けれども、一番大きい叫びを呑み込んだのが誰だかイルマは知っていた。椅子代わりにしているのだ、当然だ。
「けれど、私から言わせれば仲間を守れない奴は……もはや、人間ではなく、何時かは捌かれる血と肉でしかない」
塗炭の苦しみを吐き捨てるように、イルマは呟いた。その瞳は悼む思いが蝕んでいるのではないかと錯覚してしまうほど冷たく冴えている。何も救えぬかつての己を卑下する様でもあった。
「ましてや、守ろうとせずに動かない奴なんて尚更です」
「ネェちゃん……」
ナルトは泣きそうな表情のイルマを見た。今は本当にイルマの言う事が理解出来ていないのかもしれない。それでも、誰かを守りたいという気持ちは芽生えてくる。他者から憎悪や憤怒をぶつけられて傷ついて来たナルトだからこそ、大切な感情に気付けるのかもしれない。サスケもサクラも、地面を眺めて考え込む。
一生懸命考える若人らにイルマは微笑んだ。
「格上でも協力すれば倒せる事もある。今日の演習で、仲間で任務を受ける大切さは分かったでしょう?」
イルマは話を纏めた。
子供達も微笑む。純粋な表情はこれからいくらでも伸びる若葉を思わせた。イルマは彼らの事を誇らしく感じた。
気分は孫を慈しむ祖母である。
感覚としては
「ぴゃっ」
そんな感動的な場面に水を差したのは、不埒な両手だ。カカシにとっても非常に不本意な結果だった。
柔らかい。
運が悪い事に、縄を解こうともがいたカカシの両手がイルマの太ももを揉んだのだ。タイツとスパッツに包まれてあるとはいえ、実年齢はともかく乙女の柔肌に触れたのは確か。
顔を真っ赤にしたイルマの瞳は、怒りで潤む。
「よーし!お姉ちゃん、この間漫画で見た
イルマはカカシの顎の下に両腕を差し込むと、丁度、腰の辺りから後ろへ海老反りになるように無理矢理引いた。
「痛い痛い!人間は逆には折れないから!背骨折れるって」
カカシの抵抗など全く気にせず、イルマは歌う。
「うーでーがピョンと鳴るゥ~」
「それ、違う漫画だってばよ」
ナルトの突っ込みもなんのその、イルマはカカシを弄るのをやめない。一つには、単純にイラっとしたから嫌がらせがてら……という事もあるが、此処でカカシが痛い目にあわないと後が怖い。
主に、某お偉いさんとか。
それでも、ちょっと仕事が増える程度だ。木ノ葉の利益にならない事はあまりしない。これがイルマの旦那様だったら、取り敢えず死地に送らせること間違いないだろう。冷静でいて、意外に私情を交える人間なのだ。
くわばらくわばら。
そうして、サバイバル演習はなし崩しで終わった。
「あ、私、この後ちょっとカカシ先生に用事があるので。皆さんはお先にお帰り下さい」
しかし、カカシの受難は続く。
別名・イルマさんはっちゃけるの巻。
そりゃ、溺愛する子と(シスイさんとマブダチな)イタチの弟&純粋なうちはっことピンクの可愛い女の子がいればはっちゃけますよ
カカシは犠牲になったのだ。
神々(アンケート)の悪戯の犠牲にな。
正直、ネタについて来れる若人がいるかどうか不安ではあります。
……そして、この文章を三回書いて三回とも電波の所為で消えました。投稿フォームがね、反応してくれないのです。押すと全文消えるという(;´Д`A
あとで修正します。頭の1字下げも頑張ります。