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三代目から預かったファイルは全部で四冊。
うずまきナルト
春野サクラ
うちはサスケ
の三人に、イレギュラーとしてうちはイルマを加えた四人だ。
うずまきナルトは言わずもがなだが、うちはの二人も一癖も二癖もある存在だと言えよう。兄うちはイタチに復讐を誓うサスケに、うちは以前の出自も経歴も全てが極秘事項として隠されたイルマ。
これで苦労しない筈がない。
また、カカシにはイルマに関して懸念があった。いや、それはイルマ自身ではなく『うちはイルマ』という名前自体にだ。
ある時を境にして存在ごと掻き消された女の名前も『うちはイルマ』という。記述が朧げであれ、記憶は口伝で語られるもの。特にうちはならイルマなど名付けないだろう。
カカシはファイルの写真を思い出していた。
四年前にアカデミーを卒業していれば真っ当に昇進して中忍かそれ以上になっていたかもしれない。仲間意識の強いうちはが養子にした位だ、期待しても良いだろう。うずまきナルトと、うちはサスケを抑えられる程度には。
……そう、思っていた。
「最後、そこのお姉さん。自己紹介してネ」
だが、蓋を開けてみれば劣等生のナルトより復讐に燃えるサスケよりも厄介で扱いに困る存在だった。なんだ、アレ。
「うちはイルマと申します。好きなモノは卵焼き。嫌いなモノは……虫と約束を守らない人、でしょうか」
表情こそ柔らかく、イルマは毒を吐く。外柔内剛、年を経ているだけあって下忍の誰よりも強かだ。
「将来の夢は?」
カカシの言葉に、イルマは儚い表情で遠くを眺めた。
「夢ですか……愛する人の側で子孫に囲まれて老衰したいです。それ以上の喜びはないかと」
老成も此処まで逝くとどうしようもない。カカシとてまだ若者の部類ではある。だが、忍が子孫に囲まれて老衰する大変さは痛感している。
これが大戦を知っている世代ならば、まだ理解できる。だが、書類ではイルマは15才という事になっている。という事は、第三次大戦時には1才前後、九尾の一件でも3才くらいだ。それだというのに、彼女は達観していた。幾千の戦を潜り抜けた猛者の様な将来設計を語られても周りは反応に困るだけだろう。
「ネェちゃん、暗いってばよ」
「またシスイさんとの惚気か……」
案の定、少年達には不評である。しかし、少女は違う。
「イルマさんって、ロマンチストなのね。複雑で繊細な人が好きなのに、その人と添い遂げたいなんて」
少しニュアンスが違うが、恋愛事には食い付く。やはりこれ位の少女に恋愛話を好むものだ。
適度に話を切り上げて、明日の話をするとしよう。カカシは口を開いた。
「ま、お前らには夢がある。それを叶える為にも、まず明日の任務を受けてもらう」
「はっ、どんな任務でありますか!」
おどけるナルトにカカシは真剣な表情で告げる。
「サバイバル演習だ」
「なんで、任務で演習?演習なら忍者学校で散々やったわよ」
サクラの不満をカカシは失笑で抑えた。続く忍び笑いがなんとも不気味である。
「いや、ま!ただな……オレがこれを言ったらお前ら絶対引くから」
「引くゥ……?は?」
ナルトの疑問にカカシは答えた。
「卒業生28人中、下忍と認められるのはわずか10人。残り18人は再び学校に戻される。この演習は脱落率65%の超難関試験だ!」
明日の説明をしながら、カカシはイルマの様子をうかがう。ナルトの様に騒ぐ事もサクラの様にショックを受ける事もなく、サスケの様に敵愾心を燃やす訳でもない。静かに話を聞いて、慌てる三人を楽しそうに眺めている。
まったく大人しいものだ……カカシに対しての嫌悪感を露わにしなければの話だが。時折見せる厳しい視線が明らかにカカシへの怒りを孕んでいた。
試験の内容に関しては、既に知っているのかもしれない。目覚めてからの数年で一度もアカデミーの卒業試験に挑まなかったとしても、同期はいる筈だ。
「くわしい事は皆、プリントに書いといたから、明日遅れないよーに!」
かつては、カカシにだっていたのだから。
*
カカシは驚愕していた。
例え、それがたった一人の人間が企んだ事だとしても、周りがそれに賛同しているとは思ってもなかったのだ。
「あ、カカシ先生ってば、おっそーい!」
ニヤニヤしているナルトも、目を反らすサクラも平然とするサスケもそうだった。
「何してんの!朝ご飯食べない方がいいって言ったデショ!」
ほっぺに米粒。
満たされた表情から察するに、おむすびを食べたのだろう。一人、避暑地にでも出掛けるような格好をしたイルマが微笑んだ。
「あら、コレは昼食です。私、朝早くから働いておりますから我慢出来なくて……皆様には朝御飯になってしまったようで申し訳ありませんでした」
レースの日傘に、童話のお姫様みたいな袖のふわりとしたワンピース、白い手袋とこげ茶のベルトをした姿は瀟洒なお嬢様然としていた。それは決して忍の任務に相応しい格好ではない。
「それに成長期に朝御飯を食べないというのも身体に悪いですもの……幸い、軽食を消化するだけの時間も頂けましたしね」
イルマの言葉が、カカシには「手前、子供に朝御飯抜けとかふざけてんじゃねぇぞ、コラ!大体、遅いんだよタコスケェがよォ!」と聞こえた。いや、間違いなく、聞こえる。丁寧かつ柔らかい雰囲気からは程遠い、恫喝。あからさまな敵意だった。
「なんでこの前から喧嘩腰なんだろーな、この子」
「ふふ、そんなつもりはありませんでしたが何かお気に障る事でも私、しましたでしょうか?」
丁寧な口調でカカシを煽るイルマ。宙に雷遁が走っていないのが不思議なくらいだろう。
サスケは好戦的なイルマに戦慄を覚えた。
その感覚は、かつてイルマの前で納豆を全力で拒否した時にも味わっている。納豆を粗末にしたからと、食材に謝るまで全ての食べ物に納豆を入れられたのだ。あのネバネバがずっと続いてネバネバなのがネバネバしていたのを思い出される。そのお陰か、サスケは磯辺揚げなら食べられるようになったが、出来る事ならイルマを怒らせたくない。
優しい人ほどキレるとヤバイのだから。
「先生!早く始めましょうよ。ただてさえ先生のせいで遅れているのに、イイ年した大人がイルマさんに突っかかるなんてみっともないわよ!」
サクラの口撃に、イルマはニヤリと笑う。その表情は何時もの取り澄ました顔ではなく、ナルトの様なイタズラ好きの子どものような顔だった。
うちは、の名前がついているからだろうか、カカシは目の前で逝った友人を思い出す。年も性別すらも違うというのに、養子の筈のイルマは確かにうちはだった。
「あ、ああーーよし、12時セットOK!」
時計を設定し終えたカカシは、鈴を取り出す。数は三つ。視線が集まる中、それを掲げた。
「これを昼までに奪い取る事が課題だ」
紐の付いた鈴は小さく音を立てる。ちりりと、心を逆立てる。
「もしオレから昼までに奪い取る事が出来なかった奴は、昼メシ抜き!あの丸太に縛り付けた上で、目の前でオレが弁当食うから」
弁当、の言葉に皆は取り乱す事もなくカカシの言葉に頷いた。しっかりとまではいかないが、ちゃんと腹に食べ物を入れた関係で冷静だったのだ。
「鈴は一人一つでいい……必然的に一人が取れない事になる。取れない奴は任務失格だ」
ーーつまり、アカデミーに戻ってもらう事になる。
そう告げるカカシの表情は忍らしい。
「手裏剣を使ってもいいぞ。オレを殺すつもりで来ないと取れないから」
本物の上忍を前にした子ども達は怯え、強がってみせる。よい反応だ。忍は恐怖し、それを克服するしなければ務まらないのだ。一人、ガッツポーズで喜ぶなど知ったことではない。
「よし、言質取った!」
物騒な言葉にカカシは小さく溜め息をついた。
意外性No.1の忍に、うちはの問題児二人と年相応な普通の女の子一人。出来れば、普通の下忍が四人欲しかったとも思うが、このドタバタに慣れたらきっと寂しくなる。
「んじゃ、ま!よーいスタートの合図で」
そして、始まった。
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展開
・カカシ先生にイルマさんの正体を知らせるかどうかです。
知らせる場合
→ちょっとカカシ先生がヘタレな展開になる。
知らせない場合
→原作の通り。ちょっとプラス
イルマさん↑な展開はあまり好ましくないので、そこは適度に力を抜いていきたいのです。
追記
アンケートに関するご指摘有難う御座います。
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