NARUTO~尾獣逆行伝~   作:風森斗真

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……やりたいからやった。反省しているけど、後悔はしていない。
いや、最近、九喇嘛とのやりとりや活躍する場面が少ないなっては思ってますけど、封印されてるからね、この段階では。
再不斬戦までは、ひとまずこのまま、かな……。
ちなみに、今回のお話は卒業してすぐの演習を意識してます。
サスケとナルトは一応は和解してますけど、サクラがまだ、ね。
他の逆行ネタにもあるように、やっぱり一発合格させてあげたいし。


集団戦闘は突然に 一、

 うちはサスケのファンは、実のところかなり多い。

 その理由は、いくつかある。

 何よりまず顔が良いこと。そして、エリートであること。中には、一匹狼な雰囲気を醸し出していることや、冷静沈着(クール)であることを理由にしている女子もいる。

 同級生である、春野サクラもまた、彼に恋い焦がれている少女の一人だ。

 だが、ナルトと組手をしてから、サスケの意外な一面を見せられたサスケのファンは、サスケをもっと理解したいという好奇心に駆られるようになった。

 当然、サクラもその一人だ。が、生来、内気な性格であるがゆえに、なかなかサスケと話す機会を持つことができなかった。というより、サスケの前から逃げてしまうのだが。

 これではいけない、とわかっていたサクラは、一念発起し、サスケのあとをつけてみようと考えたのだった。

 考えがやや犯罪者じみてはいたが、そこはそれ、彼女も忍者の卵だ。追跡の練習と考え、実行することを決意した。

 

 放課後、この日は珍しくナルトの兄代わりとして有名な葛葉ハルトと、ヒナタの世話役である日向ツクヨが校門の前に立っていた。

 サスケは二人の姿を見るや、警戒するような視線を向けたが、後から来たナルトが警戒しないでも大丈夫と話したためか、サスケは警戒を解いたようだった。

 ナルトに遅れて、ヒナタやキバ、シカマルたちが次々と二人の前に集まってきた。

 そして、彼らは一斉に同じ方向へ歩き出した。

 サクラがそのあとを追っていくと、そこは"危ないから近いってはいけない"とイルカから再三再四言われてきた森の前だった。

 そのことを知り、これ以上、追跡を続けるかどうか、考えてしまったが、サスケが何をしているのか気になってしまい、言いつけを守っている場合ではない、という考えに至り、サクラは追跡を再開した。

 追跡してしばらくすると、カッカッ、と木と木がぶつかり合う音が聞こえてきた。

茂みから、音のした方へ目を向けると、ハルトとサスケが、そしてツクヨとナルトが組手をしていた。

 しかし、サクラが驚いていたのは、ハルトの剣速についてこれているサスケではなかった。

 「……ナルト‼︎」

 「おうっ‼︎」

 サスケがナルトの名を呼んだ瞬間、サスケの背後からツクヨと組手をしていたはずのナルトが現れ、ハルトと斬り結び始めた。

 万年ドベで有名なナルトが、下忍とはいえ、現役の忍とわたり合えていることに、サクラは純粋に驚愕していた。

 だが、もっと驚くべきことは、ドベのナルトとエリートのサスケの息がぴったりだということだった。

 いや、"ぴったり"というよりも、もはや以心伝心といった感じだ。

 それほどのコンビネーションで、相手をしているハルトと互角に渡り合っているのだ。

 ――サスケくん、やっぱり凄い

 もう少し間近で見てみようと、サクラが一歩足を踏み出した瞬間にパキリ、とやけにはっきり明確に、足元の木の枝が折れる音が聞こえた。

 それはナルトたちも同じだったようだ。

 特に元暗部のハルトは、その音に敏感に反応し、一瞬でサクラの背後に回り、猫を持つかのような格好で持ち上げた。

 「……お前らの友達か?」

 「サクラ?!なんでここにいんのよ?!」

 「……え?サクラさん??なんで??」

 ハルトに持ち上げられたサクラを見て、いのとヒナタの二人は、反応こそ違えど、疑問符が浮かんでいたことは同じだった。

 学校の生徒であることがわかると、ハルトはサクラを地面におろした。

 

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 「……で、あとをつけてきた、と」

 「は、はい……」

 サクラ本人から、なぜこの場にきたのかを問いただしたハルトはそっとため息をついた。

 それと同時に、ヒナタが最初にナルトとまともに話をした時のことを思い出していた。

 今でこそ、ツクヨとナルトのおかげで多少引っ込み思案ではあるが、明るくなったヒナタだが、こうなるまでは物陰からしかナルトを見ることが出来ない、内気な子だったのだ。

 ちなみに、いまナルトとサスケの二人は、ツクヨが一人で相手をしている状態だった。

 ハルトは少し考えるようなそぶりを見せて、周囲にいる学校の生徒たちの数を数え始めた。

 「……()()()……九人、か。ちょうどいいかな?」

 「……え?」

 「ナルト、ストップ!!それとツクヨ、ちとこっち来てくれ!!」

 人数を数え終えて、ハルトは組手をしていたツクヨとナルトに声をかけた。

 ハルトの近くに来たツクヨは、何事か、と問いかけてきた。ハルトは周囲にいるナルトたちに聞こえないようにするためか、ツクヨに何かを耳打ちすると、何かに得心したような顔をし、ツクヨはうなずいた。

 ツクヨのその顔に、サクラは言い知れぬ不安を覚えた。

 

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 ハルトが思いついたこと、それは、三人組(スリーマンセル)での集団戦の練習だった。

 提案したハルト曰く、卒業試験後の演習がチームワークを必要とする場合が多いため、なのだそうだ。

 それを聞いていた九喇嘛は、ふと誰かの顔を思い出しそうになったが、誰だったか、と思案し始めた。

 しかし、思い出そうとしても思い出そうとしても、いったい誰だったか見当もつかなかった。

 ――まぁ、そのうち思い出すじゃろう

 九喇嘛は、くぁっ、と大きくあくびをすると、目を細め、ナルトがどのように動くのか、半分以上興味がなさそうな視線を外に向けながら、見学を決め込んだ。

 「うっし!んじゃ、チームはくじ引きで分けっからな〜……だからいの、後で文句言うなよ?」

 「うっ……はい……」

 くじ引きで平等に班分けをするというのに、自分が組みたかった相手ではないことに、一番文句を言いそうないのを牽制しつつ、ハルトは皆にくじを引かせ始めた。

 その結果、チームはキバ、サスケ、サクラのチーム、木の葉ではおなじみの猪鹿蝶のチーム、そして、ナルトとシノ、ヒナタのチームの三つに分かれることとなった。

 その結果に、女子三人の反応はそれぞれな訳で。

 ――よっしゃー!サスケくんと一緒だ‼︎ざまぁ見ろ、いのぶた‼︎しゃーんなろーーーっ!!

 ――くっ……よりによっていつものメンバーとは……

 ――な、ナルトくんと一緒……が、頑張らないと‼︎

 その様子を眺めていたハルトとツクヨの脳裏にはなぜか、果てしなく不安だ、というまったく同じ言葉が浮かんでいたのはいうまでもない。

 

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 ハルトが話したチームワークの訓練というのは、いたってシンプルなもので、ハルトとツクヨが持っている鈴をチーム内で連携して奪い取る、というものだった。

 それを聞いた九喇嘛は、脳裏に引っかかっていたものの正体に思い至った。

 ――あぁ、なるほどな。カカシの影響をもろに受けているわけだな、このガキは

 学校の卒業生たちが下忍となって最初に受ける演習が存在しているのだが、内容は担当上忍によって変化する。

 カカシの場合はチームワークを何よりも重んじているため、連携して行動させることを目的とした演習内容にしていた。

 おそらく、暗部でも同じようなことをしていたのだろう。ましてハルトは卒業後すぐに暗部入りした人間だ。

 チームワークの大切さを叩き込むには、やはりこれが一番だったのだろう。

 チーム分けが終わったあと、ほんの少しの間、チーム内で打ち合わせをし、ハルトは再びルールの説明を始めた。

 「……んじゃ、もう一回、ルールを確認するぞ。まず、お前たちの目標は、俺かツクヨが持っている鈴を奪い取って、そこの丸太に吊るすこと。チーム同士で協力して奪い取っても構わない。もちろん、忍術の使用もありだ……殺さない程度に俺らも頑張るから」

 「ニシシ、んじゃ早速‼︎」

 ある程度説明を終えると、ナルトは隠し持っていたクナイをハルトに向かって投げつけた。

 なんとなく、そうくるのではないか、と思っていたハルトは、飛んできたそれをひらりとかわした。

 しかし、事前に打ち合わせていたのか、回避した先でシノの奇怪蟲が群れをなしていた。

 さすがにまずいか、と思い、懐から呪符を抜き出したが、それよりも一瞬早く、ツクヨが八卦空掌を放ち、蟲を散らせた。

 どうにか体勢を立て直したハルトはそっとため息をついた。

 「……まだ開始の合図してないでしょうが」

 「へへへ……ごめんってばよ」

 「……ったく……んじゃ、スタート」

 悪びれもしない笑みを浮かべながら謝るナルトに、呆れたような、しかし優しげな笑みを浮かべながらため息をついたハルトは、開始を宣言したと同時に煙玉で姿をくらました。

 それに乗じて、ツクヨもその場を離れたらしい。

 煙が晴れると、先ほどまでハルトとツクヨがいた場所には、人影すらなかった。

 「……ヒナタ、頼む」

 「はい……白眼‼︎」

 「キバ!」

 「おぅよ‼︎赤丸‼︎」

 「アンアン‼︎」

 感知力に優れたヒナタとキバが、それぞれのチームのリーダーに指示され、消えた二人の探索を開始した。

 感知能力がないシカマルたちは、ハルトたちの方から仕掛けてくることを警戒し、互いに背を預け、周囲を警戒した。

 「……いた、三時の方向!!」

 「そこだ!!」

 ヒナタとキバが同時にハルトとツクヨの位置を感知し、キバは手裏剣を、シノは蟲たちをその位置へ飛ばした。

 二人に遅れて、ナルトとサスケは同時に地面を蹴り、駆けだした。

 隠れていたハルトとツクヨは手裏剣と蟲の波状攻撃を回避したが、あとから駆け出してきていたサスケとナルトが二人に攻撃を仕掛けていた。

 むろん、それを受け止めることはできたが、足止めされたことに変わりはなかった。

 ――やれやれ……やっぱ少し鈍ったかな?

 手加減しているということもあるが、暗部にいた頃であれば、ナルトの追撃は回避できたはずだった。

 しかし、ここ最近はナルトの保護という任務のため、暗部から下忍に戻り、ランクが低く、かつ、戦闘とは無縁の任務を受けることが多かった。

 自身の感が鈍ったことを、自覚してはいたがその事実を突き付けられ、少しばかりいら立ちを感じざるを得なかった。

 「まーだまだこっからだってばよ!ハルト兄ちゃん!!」

 ナルトはそう言いながら、地面を蹴り、再びハルトに切りかかった。ハルトは木刀を引き抜き、それに応戦したが、その背後にはすでにヒナタが控えていることには気づかなかった。

 「はっ!!」

 「くっ!!」

 無防備な背中に掌底を受け、ハルトは一瞬、息が止まった。

 その隙を逃さず、ナルトは腰に下げていた鈴に手を伸ばした。

 が。

 「水遁、"蛟縛(みずちしば)り"!」

 ツクヨの声とともに出現した水の蛇に巻き付かれ、動きを拘束され、地面にたたきつけられた。

 その一瞬を逃さず、ハルトは空いていた手で呪符を引き抜き、ヒナタに向かって投げつけた。

 「風遁符、"風衝拳(ふうしょうけん)"!」

 指から流したチャクラが呪符に刻まれた文字に反応し、風遁チャクラへと形質変化し、ヒナタに襲い掛かった。

 とっさに腕を交差させ、防御はしたが、ハルトとの間合いが開いてしまった。

 「サンキュー、ツクヨ!」

 「私たちもチームなんだから、当然でしょ?」

 いつの間にいたのか、背後に立っていたツクヨに礼を言うと、ツクヨはにっこりとほほ笑んだ。

 その笑顔に、少しだけ見惚れてしまったハルトだったが、演習中であることを思い出し、頭を左右に振って気持ちを切り替えた。




オリジナル忍術説明

蛟縛り:水遁
水の蛇を複数造りだし、対象者を拘束する術。
ある程度の操作が可能で、口や鼻をふさいで窒息させることもできる。

風遁符"風衝拳":風遁
「風遁符」という使用者のチャクラを風遁チャクラに形質変化させる呪符を使う符術。
単に突風で相手を突き飛ばすだけの術だが、呪符に流し込むチャクラ量によって加減がきく。

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