NARUTO~尾獣逆行伝~   作:風森斗真

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なんだかんだでどうすべきか、いまだに迷走中。
ナルトの成長はサスケが里抜けしたことに起因している部分が大きいわけですし、そのサスケが里抜けしたのはイタチを倒すための力を手に入れるためなわけで……。
このままじゃサスケ、里抜け出来ないじゃん(--;
ま、おいおい考えます。


葛葉の少年、うちはの少年に光差すことを願う

 天を仰ぎ、サスケはただ静かに泣いていた。

 その下で、ナルトと九喇嘛はそっとため息をついていた。

 殴られている間、九喇嘛はずっと、サスケの心が読めていた。

 深い、ただひたすら深い憎悪と、その憎悪を生み出すきっかけとなっている兄の愛。そして、同族からの蔑みの視線。

 ナルトは、生まれた時からこのどす黒いものを受けてきた。本来なら、愛情を与えられるべき時期に、それとは正反対の感情を向けられていたのだ。

 九喇嘛が精神世界にいるということもあるが、その幼児体験ゆえにナルトは人の悪意や哀しみといった、負の感情には敏感に反応できるのだ。そして同時に、その対処もなんとなくではあるがわかっている。

 だからこうして、サスケが落ち着くまで殴られることにしたのだが。

 ――はっきり言って、そろそろ腹が立ってきたってばよ

 一方的にやられるのは、ナルトも好みではない。

 だから、サスケの手が止まった瞬間を狙い、頭突きをかました。

 予想外の攻撃にサスケは対処しきれず、吹き飛び、初めて地面に背をつけた。

 「気は、済んだかってばよ」

 「……あぁ……おかげさまでな」

 ナルトの問いに、サスケは不敵な笑みで答えた。

 そして、差し伸べられたナルトの手を握り、助け起こされるのだった。

 手を握ったとき、ナルトは、なぜかサスケが笑っていたように思えた。いや、そうであってほしいと願った。

 ナルトとサスケが手を取り合い、立ち上がったのを見て、イルカは和解の印を結ぶよう指示し、二人は、互いの人差指と中指で握手をかわした。

 

 なお、和解の印を結んだ後、サスケに殴られ続けた痛みに耐えかねたナルトが気を失い、ヒナタがそれを背負って保健室に連れて行ったというのは、また別の話。

 

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 その日を境に、サスケとナルトの組手は、実戦さながらの激しいものとなった。

 もっとも、初日のようにどちらかが一方的に殴りつけるような光景は見られなくなったため、イルカも止めに入ろうとすることはなくなった。

 ナルトとサスケの組手を見学している同級生たちは、二人のそのすさまじいまでの戦いに歓声を上げることなく、ただただじっと見ていた。

 そんな中、チョウジが隣に立っていたシカマルに問いかけた。

 「……シカマル、もしサスケかナルトの相手が僕らの中の誰かだったら、あそこまで戦えるかな?」

 「あそこまで、ってのはさすがに無理だろうが……あいつらと互角に渡り合うことはできるだろうぜ。そのために特訓を重ねてきたんだからな」

 シカマルは二人の組手を観戦しながら、チョウジに答えた。

 チョウジもいのも、そしてキバとシノ、ヒナタも二人から目線を離してはいない。いや、離すことが出来ないのだ。

 一瞬でも気を抜けば、ナルトの攻撃もサスケの攻撃も見切ることができない気がしていたから。

 ――たく、本当にあいつ、ドベのナルトだったのかって疑いたくなるぜ

 二人の組手を見ながら、シカマルは苦い顔をしていた。

 だが、ナルトがサスケとここまで渡り合えるようになったのは、ハルトに葛葉流剣術とそれに派生する体術を教わっているためだ。それも、基礎の基礎については自分たちに自身の秘密を話すよりも前にすでに完璧だったという。

 それを知っているのは、ハルトとツクヨ以外は、ナルトの友達である自分たちだけだ。

 だが、それでもなお、ナルトとの間に壁のようなものがある気がしてならない。

 もっとも、シカマルは体を動かすよりも頭を動かす方が性に合っているので、体術でナルトと張り合う気はまったくない。

 むしろ、張り合おうとしているのはキバの方で。

 「くっそぅ、ナルトのやつ。また強くなったんじゃねぇか?」

 「……キバ、お前はナルトと戦いたいようだな。なぜなら、ここ最近、ナルトにばかり組手の相手を頼んでいるからだ」

 「……わ、悪いかよ……あいつは俺にとって友達で、同じ夢を追う(火影をかけた)ライバルなんだから、当然だろ?!」

 「別に悪いとは言っていない。なぜなら、俺もナルトと戦ってみたいからだ」

 と、シノも一緒にナルトと戦ってみたいという衝動に駆られていた。

 それだけ、ナルトという存在()が二人の中で大きなものになっているという証拠なのだろう。

 「……僕たちも、うかうかしてられないね」

 「……だな、めんどくせぇが」

 キバとシノの言葉に触発されたのか、戦いそのものを嫌うチョウジが珍しく自分から強くなりたいと思ったようだ。

 シカマルはそれを聞いて、口では面倒くさいと言いながらも、その顔はどこか晴れやかだった。

 

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 その日の放課後。

 ナルトはそそくさと教室をあとにした光景を見たサスケは、なぜかナルトを追っていた。

 自分と同じ目をしているナルトが、いったいどこに行こうとしているのか。

 そんな好奇心からの行動だった。

 ナルトに気づかれないように――いや、普通についていっても気づかないかもしれないが――後ろをつけていくと、校門の前で、一人の年上の忍に向かって、ナルトは手を振っていた。彼もそれに答えて、ナルトに手を振った。

 ――兄弟、か?でもあいつ、確か家族はいないって……

 その光景を見ていたサスケは、かつて、イタチが自分を迎えに来てくれた場面が脳裏に浮かんできた。

 それを思い出すと、イタチに対する憎しみや疑念が膨れ上がり、それらの黒い感情が殺気となって表れた。

 が、ナルトにばれたらまずい、とすぐにその殺気を仕舞い込み、移動を始めた二人の追跡を始めた。

 自分が尾行されているということにも気づかずに。

 

 ナルトを追うこと数分。

 学校を卒業した忍が演習や修行に使っている演習所があるといわれている森の前に、サスケはいた。

 ナルトと下忍は、迷うことなくその森に入って行っていた。

 ――イタチに手裏剣術を習おうとして森に連れてってもらったことはあるが……まさか、ナルトも?

 そんな疑念を脳裏に浮かべていると、不意に後ろから声をかけられた。

 「サスケじゃねぇか、何してんだ?」

 「……なっ?!いつのまに」

 「……さっきから、ずっといた。なぜなら、学校を出てからナルトを追跡していたようだが、俺たちもその後ろをついて行っていたからだ」

 シカマルに声をかけられ驚愕していたところに、シノからの冷静な返しが来た。

 追跡対象者二人(ナルトと下忍)を見失わないようにすることに意識が行ってしまっていて、自分が尾行されていることに全く気付かなかったようだ。

 「で、どうしたのさ?サスケ??」

 チョウジだけはいつもの調子を崩さずにサスケに問いかけてきた。それがサスケの精神の安定を手助けしてくれていた。

 「あぁ。ナルトのやつがさっさと帰り支度したから、何事かと思って後を尾行()けたんだが……」

 「……ふ~ん?」

 サスケの答えに、にやにやよいやらしい笑みを浮かべながらいのが答えた。

 その笑みが何を意味しているのか、猪鹿蝶で一族としての付き合いのあるシカマルとチョウジのほほには汗が一筋、垂れていた。

 シカマルとチョウジの様子から何かを察したらしく、キバとシノは気まずそうにそれ以上何か言うのをためらっていた。が、その気まずそうな空気を破ったのは、このメンバーの中で、おそらくナルトに次いで天然であろうヒナタだった。

 「……よかったら、サスケくんも一緒に来る?」

 が、その問いかけが何を意図しているのか、サスケが理解できるわけはなく。

 「……は?」

 と、素っ頓狂な声をあげてしまった。

 

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 葛葉ハルトは、別段、感知に優れているというわけではない。

 しかし、鉄の国の侍から生まれたとされている葛葉一族にとって、気配を感じ取ることは必要不可欠なことだった。

 そのため、自分たちが尾行けられていることは百も承知だった。特に殺気の類を感じたわけではないので、あえて放置していたのだが、気にならないといえば、嘘になる。

 だが、気になるといえばもう一つ。

 「……ナルト、お前、最近一人で来ることが多いけど、みんなと喧嘩したのか?」

 「違うってばよ。あいつらより先に来て、修行したいんだってばよ!」

 その答えとナルトの顔を見て、ハルトはほっとしたようなため息をついた。

 ナルトとヒナタたちに何かあったのでは、と邪推してしまったが、どうやら、それは杞憂だったようだ。

 ほぼ同時期に修行を初めて、さらにサスケとの組手でより意欲を増したようだ。

 そのことはうれしく思うのだが、剣術とチャクラコントロールしか教えていないのに、一人でやる必要はあるのだろうか、と疑問を覚えていたことは、言わずもがな。

 そうこうしていると、ヒナタたちが珍しい来客(サスケ)と一緒にハルトたちの方へちかづいてきた。

 ハルトは驚愕することなく、サスケに目線を合わせた。

 「……うちはサスケくんだね?俺は葛葉ハルト、君のお兄さん(うちはイタチ)とは同期の友人だ」

 「……っ!?」

 イタチの名を聞いた瞬間、サスケの目は険しくなった。

 その反応は、ハルトにも予想できていた。

 何しろ、クーデターの首謀者(サスケ以外の家族)だけにとどまらず、自分と同世代か一つ上、あるいはそれよりも若い世代以外のうちは一族を皆殺しにし、その憎しみを生き残った自分に向けさせたのだ。

 イタチは、サスケに対して深い愛情を注いでいたことは、ハルトも知っていた。おそらく、サスケも、イタチが自分を大切にしていたことは感じていただろう。

 それだけに、その反動は大きかったようだ。

 その眼を見て、ハルトはサスケにイタチが何を託したのか、イタチの意図がどこにあったのか、サスケに語るべきかどうか、迷った。

 だが。

 ――まぁ、口止めはされていないが、イタチを殺させないためには仕方ないか

 と考え、サスケにある程度のことを語ることを決意した。

 すべてを語るつもりはない。すべて(真実)はイタチから聞くべきなのだから。だが、ナルトたちと修行することで、イタチと渡り合えるようになるために、仲間と切磋琢磨することを覚えることが出来るなら。

 それが、ハルトの願いだった。


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