はい、批判とか批判とか批判とかは覚悟してます。
だってこうでもしないとイタチの立場がさぁ(泣
というわけで、ヒルゼンとイタチのやり取りは妄想純度100%です。
次回からそろそろ原作の第一話ぐらいに入っていきたいな……と思います。
その前にカカシ先生登場させるつもりだけど。
ハルトとツクヨの組手から数日。
九喇嘛はナルトの精神世界で考え事をしていた。
それは、木の葉の里の中でも大きな事件の一つ、"うちは惨殺事件"が、もうそろそろ起こる時期が来ているのだ。
そのことを、ハルトに告げるかどうか考えていた。
前の時代のイタチが、何を思い、何を考えてあの事件を起こしたのかは、九喇嘛もナルトの精神世界で聞くとなしに聞いていたため、一応はわかっている。
サスケが木の葉を抜ければ、暁に入り、八尾の人柱力であるキラー・ビー襲撃や、オビトに助力することになるだろう。
しかし、サスケが里抜けしたからこそ、ナルトは自来也のもとで修行を積み、英雄とまで呼ばれる存在になったのもまた事実。そして、サスケ奪還の任務を機に、シカマルやチョウジ、ネジそしてサクラが己の無力を知り、さらなる力を身に着けようと必死になり始めたことも。
そういった面で、ナルトたちの今後を考えると、イタチの凶行とその真意を伝えるか否か、迷うものがあった。
だが。
――サスケの闇を晴らすこと程度なら、こやつと儂でできるだろうな
真実は伝えることはできない。
それは、イタチ本人から聞くべきものだ。
だが、サスケと言う、将来的に大きな戦力となる忍びを失うことは木の葉にとって不利益と言うのもまた事実。
何より、イタチの凶行を知れば、ハルトたちが黙ってはいないだろう。
――そこまでしてやる義理はないだろうが……まぁ、世話になった礼くらいにはなるか
九喇嘛は、時をさかのぼってもなお、治ることのなかったひねくれた考えのもと、ハルトにある事を語ることを決めた。
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その日、ハルトは学校の校門前で珍しい人間に出会った。
うちはイタチ。ハルトやツクヨと同期ではあるが、わずか八歳で首席卒業を果たし、十三歳で暗部入りしたほどの人材だ。
一応、同期ではあるが、それでも自分よりも若い、いや、幼い人間が首席ということに、正直驚きを感心を隠せなかったことは言うまでもない。
なお、ハルトが暗部入りしたのは学校を卒業してすぐであったため、暗部では一応先輩にあたるわけだが、同期と言うこともあり、気さくに接するように話していた。
「よ、イタチ。久しぶりだな」
「ハルト?珍しいところで会うな」
「あぁ。ちと、弟の迎えだ」
困ったような、しかしどこか優しい笑みを浮かべながら、ハルトはそう答えた。
ちらり、とハルトがイタチを見ると、何を聞きたいか察したのか、イタチは、俺も同じようなものだ、と答えた。
「……しかし、改めて思えば、お前の立場も大変だな」
「……あぁ。だが、弟を守ることに繋がると考えれば、苦ではないさ」
ハルトが言うイタチの"立場"とは、二重スパイのことを意味していた。
うちはは、過去の戦争の功績により、自治を認められた特別な一族だ。だが、それゆえに木の葉中枢とはつながりがなく、また、木の葉もうちはとのつながりを持っていなかったため、木の葉とうちは、二つの勢力のスパイとして、イタチが抜擢されたのだ。
「……仮に、木の葉がこれ以上、うちはを虐げるとしたら、うちはの怒りはどんな形で現れるんだろうか……」
「……おそらく、クーデターだろうな」
「三代目は、そうなる前にどうにかしようとしているが、難しいかもな」
「あぁ……暗部とて、一枚岩ではない。なにより、今はあの"ダンゾウ"がいる」
ダンゾウ、という名に、ハルトは三ケタ単位の苦虫をかみつぶしたかのような顔になった。
志村ダンゾウ、というのは木の葉上層部の人間の一人であり、タカ派で知られる男だ。ゆえに、平和主義であるヒルゼンとはウマが合わず、唯一、木の葉を守るという目的だけで協力し合っている関係だ。
ハルトとしては、一族の教えがあるため、タカ派であるダンゾウのことはあまり好ましく思っていない。
何より、保護対象であるナルトをただの兵器としか見ていないように思えてならないのだ。
もっとも、それはヒルゼンを除く上層部全員が思っていることであるため、ヒルゼン以外の上層部の人間を好ましいとは思っていない。むしろ、ヒルゼン以外の全員、そのまま挿げ替えられてしまえばいいのに、とさえ感じている。
ハルトの言葉に、イタチはただ沈黙で返すだけだった。
「"沈黙は金雄弁は銀"って言葉があるが、お前の場合、沈黙が過ぎるぞ。イタチ……
呆れたようなため息をつき、ハルトはイタチにそう語った。
実際問題、八歳で学校を首席卒業した人材だ。下忍のころからその手腕はすさまじく、わずか三年で中忍試験に合格、そのまま暗部入りするほどだ。
当時は写輪眼がまだ開眼していなかったのか、それとも使いこなせていなかったのか、いずれにしてもハルトのように特別な技術があったわけではないから暗部入りは遅かったが、それでもその腕前はもはや並の上忍では苦戦させられるであろうとすら思われている。
そしてその優秀さゆえに、イタチは孤独なのだ。
「……あまり抱え込むな。それと、いざとなりゃ三代目が体張ってくれるはずだ……それまで、爆発しないようにおさえてくれや」
「……できる限りそうするが、もしだめだったら……」
「そんときは、俺の暗部時代の仲間に頼るさ……せめて、
ハルトは薄く、しかしやさしく微笑みながら、イタチに言葉を返した。
イタチはその言葉が返ってくるとは思わなかったのか、意外そうに目を見開いた。
むろん、それを見逃すハルトではない。
「どうした?うちは一族のことを想った発言が、木の葉の元暗部から出るとは思わなかったってか?」
「あ、あぁ……そんなところだ」
「そうさな。まぁ、俺もわりかしどうでもいいって思ってる節はあるが……」
そこまで言って、ハルトは校門に目を向けた。
それにつられ、イタチの視線も校門へと向いた。
向けられた二人の視線の先には、ハルトとイタチ、それぞれが大切にしている
「さすがに、弟と同い年くらいの連中を見捨てるほど、俺も心を鬼にはできないよ」
ハルトはそう言いながら、向かってくるナルトに向かって手を振った。
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その晩。
イタチは三代目の執務室にいた。
目の前には、三代目火影猿飛ヒルゼンその人がいた。
「……どうあっても、止まりそうにはない、か……」
「はい……それとなく、火影にうちはを虐げる意思はないと伝えてはきたのですが……力及ばず、申し訳ありません」
「それは構わん……もとより、お前にはうちはに対するスパイのような役目を頼んでいた身だ。そこまで期待を背負わせるのは、かえって負担になろう」
ヒルゼンは愛用しているパイプを口に加え、そっと煙を窓の外に吐き出しながらイタチの謝罪に答えた。
「……イタチよ。お前に一つ、極秘の任務を与える」
「極秘任務、ですか?」
「うむ……実はある情報筋から、今回のクーデターに乗じ、木の葉に何かを仕掛けようとしている輩がいるらしい……お前も、接触はしたのであろう?」
ヒルゼンの言う情報筋というのは、九喇嘛のことだ。
昼間、おそらく学校の昼休み時間だったのだろう、ナルトの体を借りた九喇嘛が話がある、と言って、ナルトが生まれた日におこった出来事を、九年前の九尾事件のことを語ってくれた。
その際に、九喇嘛に写輪眼で幻術をかけた仮面の男がいたことと、これは自分の勘だが、と前置きをしたうえで、うちはと木の葉に何らかの形でちょっかいをかけてくるのではないか、と警告をしてくれた。
むろん、全部が全部を信じるわけではないが、木の葉の安全は儂とナルトの安全につながるということを忘れるんじゃねぇぞ、と言われたからには、何もしない、というわけにもいかなかった。
そして、イタチはその男に見覚えがあり、かつ接触している。
「……はい」
「その男を調査してほしい。連絡は……おそらく、定期的には不可能だろう。なんらかの手段を使い、木の葉に届けてくれればそれでいい」
ヒルゼンはそう言い、背を向けた。
その背は、いつも子どもたちに見せている背中ではなく、年相応の悔恨を背負った人間のものに見えた。
「……すまぬ。お前には重荷ばかり押し付ける」
「いえ……木の葉を守るためなら、どうということはありません。それに、これはシスイの遺志でもありますから」
「……シスイに何かあったのか?」
出てくるとは思わなかった名に、ヒルゼンは険しい目つきでイタチに問いかけた。
イタチはその眼に屈することなく、淡々と答えた。
「……死にました。ダンゾウに眼を奪われて」
「なんと?!」
「ダンゾウが何をしようとしているのか、俺にはまだはかりかねます……ですが、いっそ俺に、シスイ殺しの罪を着せ、抜け人として木の葉を抜けさせてください」
そうすれば、この極秘任務にはかっこうの隠れ蓑になるでしょう。
悲しげな表情で微笑みながら、イタチはヒルゼンに提案した。
ヒルゼンは再びイタチに背を向け、すまぬ、と小さくつぶやいだ。
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そして、その晩。
うちはの惨劇は起きたのだった。
これにより、うちは一族は、ほぼ壊滅状態に追い込まれた。
しかし、うちはにとって幸いだったのは、年端もいかぬ子どもたちは殺されずに済んだ、ということだろうか。
それでも、うちはの憎しみは、同族であるイタチへと向けられた。
そして、イタチに憎しみをぶつけるうちは一族の中には、実行犯の実の弟であるサスケも含まれていた。
残されたうちは一族の子供たちは、三代目火影がもっとも信頼している孤児院に預けることになり、暗部と火影を含め、木の葉の上層部が、彼らへ接触することを厳しく禁じられた。
これは、ヒルゼンがイタチからシスイの死にダンゾウが関わっているということと、ダンゾウが何をしでかすかわかったものではない、という二点から成立させた、火影命令だった。
唯一、関与が許されたのは、忍術学校の教師と木の葉の里の人々、そして、一般の下忍、中忍のみだった。