NARUTO~尾獣逆行伝~   作:風森斗真

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今回、葛葉の秘術が発動します。
"なんかどっかで……?"って感じがなくはないですが、原理は異なっているはずなので大丈夫……と思いたい。
なお、ハルトが使った術については、アスマがナルトに風遁チャクラの使い方をアドバイスした時の手裏剣術を想像していただければわかりやすいかと。
あとがきの方にオリキャラの説明と忍術の説明を記載しときます。


組手の行方、葛葉の秘術

 八卦空掌。日向一族に伝わる柔拳の流派、日向流の技から放たれた衝撃波により、ツクヨが放った泡沫は、まっすぐにハルトの方へと飛んでいった。

 泡沫乱舞は、水牢の術という捕縛用の術を泡沫にして複数個放つ術だ。

 一つでも泡沫が体に触れれば、その泡沫が一瞬で触れた相手の体を包み、水の中に閉じ込めてしまう。それが高速で、しかも複数個、一斉に向かってくるのだから回避のしようがない。

 だが、今目の前にいるのは学校を卒業してすぐに暗部入りするほどの戦闘力を持つハルトだ。この程度で終わってくれるほど、軟ではない。

 「風遁、"神風蒼刃(しんぷうそうじん)"……からの!!葛葉流、驟雨之太刀(しゅううのたち)!!」

 ハルトは手にしている木刀と鞘に風遁チャクラを流し込み、まるで舞うかのように回転しながら、周囲の泡沫を切り裂いた。

 その様子を見ていたナルトたちは、思わず、感嘆の声をあげていた。

 「す、すっげぇ!!兄ちゃんもツクヨ姉ちゃんもすげぇってばよ!!!なぁ、ヒナタ!!」

 「……う、うん……あんなお姉さん、初めて見た……」

 ナルトとヒナタは、自分と最もかかわりの深い二人が今まで見せてこなかった一面に感動さえ覚えていた。

 だが、他の五人は、純粋に二人と自分たちの間にある隔たりに、ただただ驚いていた。

 「……まじかよ。レベル違いすぎんぞ」

 「キバ、それは仕方がないことだ。なぜなら、ハルトさんは元暗部、そしてツクヨさんは日向の人間だからだ」

 「いや、理由になってないでしょ……」

 キバの言葉にシノが冷静に返し、その返しにいのが突っ込みを入れた。

 ナルトとヒナタと友達になって、一緒に修行するようになって、自分も強くなったという実感はあるが、今目の前にしている組手は、もはや実戦や殺し合いと言っても差支えないほどのものだ。それほどの戦闘力をもつ二人に修行を見てもらっていたということもそうだが、あの穏やかな二人がここまで激しい戦いをできることに、唖然としていた。

 そんな様々な反応を示すナルトたち(ギャラリー)は眼中にない、とでも言いたそうに、ハルトとツクヨは間合いを取り、にらみ合った。

 「次で決めよう」

 「望むところ!」

 ハルトの提案に、ツクヨは柔拳の構えを取り、答えた。

 それを見たハルトは、手にしていた鞘を地面に突き刺し、懐から長方形の紙片をいくつも取り出した。

 ハルトが今手にしている紙切れ、それこそ、葛葉一族に伝わる"秘術"であり、ハルトが学校を卒業してすぐに暗部入りした大きな要因だった。

 しばらくの間、二人はにらみ合っていた。あまりの静寂に、ナルトたちも声を出すことなく、ただただじっと二人の試合を見続けていた。

 ふと、森の中から一羽の鳥が飛び立つと、それを合図に、二人が同時に動き出した。

 「「はっ!!」」

 ツクヨは地面を蹴り、ハルトとの間合いを一気に詰めた。片やハルトは、手にした紙片を投げつけ、片手で印を結んだ。

 その瞬間、紙片からぱりぱり、と青白いチャクラが漏れ、火花を散らし始めた。

 「雷遁符"縛雷鎖(ばくらいさ)"!」

 印を結び、そう叫んだ瞬間、火花は札同士を連結させ、網を作り上げた。

 「なっ?!きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 「何も考えずに突っ込むから、そういうことになるんだよ」

 雷遁の網にひっかかり、まさに雷に打たれたような衝撃を全身に受け、悲鳴を上げるツクヨを見ながら、ハルトはため息交じりにそうつぶやいた。

 そのつぶやきは、雷遁の術を受けて気を失ったツクヨには聞こえていなかったが。

 

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 「では、両者、和解の印を」

 雷遁の術を受けて気を失ったツクヨが目を覚ますのを待って、イルカは、組手終了の合図と儀礼として和解の印を結ぶよう指示した。

 その指示に従い、ハルトとツクヨは互いの人差し指と中指を絡めた。

 「いい勝負だったよ。ありがとう、ハルト」

 「こっちこそ。久々に楽しい実戦稽古になった」

 互いに互いの健闘をたたえ合い、ハルトとツクヨは微笑みを交わした。

 組手が終わったことを悟ったナルトたちは一斉に二人の元へ駆け寄ってきた。

 「なぁ!なぁ!!兄ちゃん!今の術はなんだってばよ!!??」

 「ツクヨ姉さん……こ、今度私に、稽古をつけてください!!」

 「ハルトさん!今度私にも剣術を教えて!!」

 「あっ、ずりぃぞ、いの!!俺にも教えてくれ!!」

 「……キバ、お前はむしろツクヨさんに教えを乞うべきだ。なぜなら、お前の忍術は体術特科だからだ……ツクヨさん、俺にも体術を教えてくれ。なぜなら、俺の一族の忍術は遠距離型特科だからだ」

 「……ハルトさん、知らねぇことがめんどくせぇから、さっきの術のこと、教えてくれ」

 「……ぼ、ぼくも剣術習ってみようかな……」

 七人が一気に押し寄せてきたため、組手をしていたハルトとツクヨだけではなく、イルカも唖然としてしまった。

 「おいおい、ちょっと待て!説明はしてやるから、少し待て!!」

 「ヒナタ様、柔拳の稽古のことはわかりました。あと、キバくん、シノくん。アドバイスくらいならしてあげられるから」

 ハルトとツクヨは詰め寄ってくる後輩たちをどう対処すればいいのかわからず、戸惑いながら彼らの興奮を抑えていた。

 

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 ナルトたちの興奮がある程度収まり、ハルトはそっとため息をつきながら、最後に使った術が何なのか、説明し始めた。

 「……まず、断っとくが、俺が使ったのは"忍術じゃない"んだ」

 「はぁっ?!忍術じゃないってどういうことだよ?!」

 ハルトの言葉に、シカマルは驚愕の声を上げた。

 年齢が二ケタに届くか届かないか、といううちに知能指数(IQ)が200ちかくに達しているシカマルは、それがどういうことか理解できてしまっていた。

 「う~ん?つまり、どういうことだってばよ??」

 「忍術でないってことになんか問題あるのか??」

 が、学校でも成績が悪い方にあるナルトとキバの頭には疑問符が浮かんでいた。

 「……忍術じゃないってことは、修行をしなくても習得できちまう可能性があるってことだ……てことは、当然、多くの忍者がそれを使うことが出来るんだよ」

 たとえば、チャクラによる吸着や筋力増強などは、忍術ではなく、あくまでチャクラの使い方の一部だ。

 それゆえに、すべての忍びが習得する技術であり、逆を言えば、習得していなければおかしいのだ。

 「忍術ではないが、誰でも習得できるわけじゃないぞ?符術(これ)を使えるのは、葛葉一族以外だと、うちは一族か、それこそ天才って呼ばれる忍だろうな」

 ハルトは苦笑を浮かべながら、そう話した。

 符術とは、文字通り、符を用いた術であり、有名なのは、というよりも忍の世界で唯一使用できる符術は、封印術を行使するときに使う、封印札くらいなものだろう。

 だが、葛葉一族が使う符術は、チャクラの性質を変化させる特殊な術式が記された紙に、自身のチャクラを込めることで、そのチャクラを術式に記された性質へと変えるものだ。

 あとは、その術式に対応した印を結ぶことで、様々な形質の術を行使することが出来るというわけだ。

 それだけ聞けば、だれでもできるように錯覚するが、これは葛葉一族に伝わる秘術であるため、一族にしか使えない秘密が存在している。

 だが、ハルトはそこまで教えるほど開示的な性格をしていない。

 「ま、他の忍びがこれを使えない理由は、お前たちが下忍になったときに担当上忍にでも聞いてみろ」

 「え~!ケチ~!!兄ちゃん、久しぶりにケチんぼだってばよ!!」

 「……あきらめろ、ナルト。秘伝忍術ってのはそんだけめんどくせぇもんなんだ」

 教えてくれ、とせがむナルトを、シカマルはそっとため息をつきながら諭した。

 同年代の友人に諭されたことでナルトも、気にはなっているがあきらめたのか、少しすねたような表情を浮かべていた。

 

 




オリキャラ設定
葛葉ハルト:14歳、下忍(元暗部だが、忍者学校卒業後すぐに引き抜かれたため)
封印や結界術を得意とする葛葉一族の少年。
木の葉隠れの忍者に伝わる剣術である木の葉流とはまた違う流派、葛葉流中伝を修めている。奥義皆伝まではまだ遠いが、その才能は一族の中でも目を見張るものがある、という評価により、忍者学校卒業後、同期のうちはイタチとともに三代目火影直属の暗部となるが、ナルトの保護を火影から命じられたことで正式に暗部を抜け、下忍に戻った。
性格は穏やかだが、恩義があるクシナの忘れ形見であるナルトやその友達に危害を加える存在に対しては激しい感情を見せる。
同期のイタチとは暗部入りした頃からの仲であり、年齢も近かったことから互いに気を許し合っている節がある。
日向ツクヨとは保護者同士と言うことで気が合うらしく、時折、一緒に甘味処であんみつを食べている光景が見られている。
チャクラ性質は風。ただし、基本的に忍術ではなく、剣術と体術、そして一族に伝わる"符術"を用いることが多いため、忍術はからきし。
なお、狐を口寄せするが、戦闘や探索を行わせることはなく、肩に乗せていることが多い。

日向ツクヨ:14歳、下忍(ハルトと同期)
日向の分家。コウの妹にあたり、ヒナタの世話役として共にいることが多い。
引っ込み思案で内気なヒナタに友人ができるかどうか心配していたが、ナルトと接するうちに友人が増えたことを喜ばしく思っている。
なお、コウは「ナルトに近づくな」とヒナタに話していたが、ツクヨは逆に「ナルトと遊びましょうか」と提案することが多い。
本家と分家のいさかいについてはあまり深く考えておらず、むしろ"くだらない"の一言で片づけてしまうため、長老衆からはあまり好ましく思われていない。また、ヒナタは忍に向かないのでは、と案じている。
なお、ナルトのことは個人的に嫌いではなく、ヒナタもナルトを気にかけていることも察しているので、意図的に交流させようとしている節がある。
性格はヒナタとは対照的で明るく、基本的に物怖じしないが、最近はハルトの前では気恥ずかしそうにすることが増えてきている。
チャクラ性質は水。

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オリジナル忍術説明

泡沫乱舞:水遁
水牢の術を複数の泡として飛ばす術。
泡に触れたものを水牢に閉じ込めるのだが、動きそのものは風任せな部分が大きいうえに、動きも遅いため、回避されやすい。
だが、風遁と組み合わせれば相手の動きをけん制・誘導ができる。

神風蒼刃:風遁
手にした武器に風遁チャクラを練りこみ、チャクラ刀にする術。
棒や木刀でもある程度の切れ味を生み出せるようになるが、持続時間そのものは短い。

雷遁符"縛雷鎖":雷遁
使用者のチャクラを雷遁チャクラに形質変化させる「雷遁符」という呪符を使用する符術。
複数の雷遁符をチャクラでつなぎ、網のようにする束縛術。
使用者が込めたチャクラ量にもよるが、持続時間はあまり長くないため、罠として事前に張り巡らせることには不向き。

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2/1 設定文改訂
2/16 説明文追記

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