NARUTO~尾獣逆行伝~   作:風森斗真

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いつの間にかお気に入り登録数が三ケタに行っていたという……大丈夫なのか?これ……
はい、タイトルの通り、初戦闘です。
が、前編後編に分けていきます。
ここからオリジナル忍術や体術がびしびし出てきます。
なお、瞳術については作者の独自解釈が混じっています。あらかじめご了承を。


初めてのうれし涙、初めての組手

 その日の放課後、ナルトが出てくるのを待っていたかのように、ヒナタとキバ、シノ、そして猪鹿蝶の三人組が立っていた。

 《ナルト。どうやら、腹くくるときが来たようだな》

 ――あぁ、みたいだってばよ

 《ふっ。まぁ、せいぜい頑張れよ》

 ――うっさい!わかってるってばよ!!

 心の中から声をかけてきた九喇嘛に怒鳴ると、ナルトはヒナタたちの所へ歩いていった。

 そして、深呼吸を一回して、意を決して問いかけてみた。

 「……みんな、俺に聞きたいことがあるって顔、してるってばよ」

 「へぇ?察しが良いな。ま、めんどくせぇがその通りだ」

 「俺たちは全員、気になっていることがある……なぜなら、ナルト。お前が自分のことを一つも話してくれないからだ」

 「今日こそ話してもらうぜ、ナルト!」

 皆の反応は個々人でそれぞれだったが、思っていることは一つ。

 ナルト(友達)の過去が知りたい、それだけだった。

 「……わかったってばよ。けど、ここじゃなんだから、場所変えていいか?」

 ナルト自身、話すことは別に構わないと思っている。だが、あまり多くの人にこのこと(九喇嘛のこと)を聞かれるのは、あまり得策ではないとナルトは考えていた。

 その提案に何かを察したらしく、シカマルは、めんどくせぇ、とぼやきながら、猪鹿蝶の一族が使っている演習場に案内した。

 「ここなら、滅多に誰も来ねぇから秘密の話をするにはもってこいだ」

 「すまねぇ、シカマル……んじゃ、話すことにするってばよ」

 シカマルに礼を言い、ナルトは自分の過去を語り始めた。

 自分の両親のこと、九尾事件のこと、自分の中に封じられた九喇嘛のこと、それが原因で迫害されてきたこと。

 それらすべてを話し終えたとき、その場にいた全員の表情は、その話のスケールの大きさにただ唖然としている、といった具合だった。

 「……まじでめんどくせぇ事情だな」

 「まじかよ。つことは、ナルトの両親は里を救った英雄ってことじゃねぇか」

 「なのに大人たちはナルトにひどいことしてきたんだね……」

 「チョウジ、それは仕方のないことだ……なぜなら、話と言うのは人と人との間でどんどん歪んでいってしまうものだからだ」

 「けど、だからって死にかけるようなことしなくても……!」

 「……ナルトくん、つらかったよね……ごめんね、気づいてあげられなくて……」

 ナルトの両親とナルト自身の隠された秘密に対する驚き、それまでの大人たちの態度への怒りと呆れ、これまで受けてきたナルトの痛みへの悲しみ。反応こそそれぞれ違っていたが、それでも、ここにいるみんなは、目の前にいる自分を人柱力(化け狐)としてではなく、"うずまきナルト"として受け入れてくれていた。

 「いまは、そんなこと別にどうでもいいってばよ。俺にはハルト兄ちゃんがいる、九喇嘛がいる。シカマル、キバ、シノ、チョウジ、いの、それにヒナタがいる。今は、それだけで満足だ」

 両手を頭の後ろで組み、ニカッと笑いながら、ナルトはそう話していた。

 しかし、その眼尻には、光るものがあったことは、言うまでもない。

 むろん、それを見逃すほど、忍びを目指す子どもたちの目は節穴ではなかった。

 「……おっしゃあ!俺は決めたぜ、ナルト!!俺は一生、お前を裏切らねぇ!!ずっと友達でいてやる!!」

 「ま、肩の力の抜き方だったらいつでも教えてやるよ」

 「何かあったら、相談してよ?僕だって、ナルトの力になりたいんだから」

 「俺にも気軽に相談してくれ……なぜなら、それが友達というものだからだ」

 「学校の子たちが何かしてきたら、すぐ私たちに言いなさい!力になってあげる!!」

 「わ、私も……力に、なるよ。ううん、力になりたい」

 向けられた言葉はそれぞれ違う。しかし、ナルトに向けられたその笑顔は、今まで大人から向けられてきた悪意や憎悪ではない。

 ハルトや三代目火影から向けられるような、温かな、慈しみや愛情に満ちたそれだった。

 それが温かくて、くすぐったくて、照れ臭くて、何より、うれしくて。

 ナルトの目からは、自然と涙があふれていたのだった。

 

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 ナルトが自分の過去をヒナタたちに話している様子を、ハルトは木の上から見守っていた。

 心配だった、というのが本音だが、どうやら、それは杞憂だったらしい。

 「よかったな、ナルト……」

 「あぁ、本当によかった」

 ナルトの過去を聞いても、それを受け入れてくる友が、同級生の中にいた。そのことを、本人と同じくらいうれしく思ったハルトがぽつりとつぶやくと、それにこたえる声があった。

 声のした方へ視線をやると、そこには、忍者学校でナルトの担任教師をやっているうみのイルカがいた。

 「……尾行し(つけ)てたんですか。イルカ先生」

 「まぁね。というか、君も気づいていただろ?」

 「あはは……ばれました?」

 かつて、自分も学校にいた頃に世話になった教師の呆れたような微苦笑に、ハルトも微苦笑で返し、答えた。

 が、その顔もすぐに温かな微笑みに変わり、ナルトとナルトを囲む子供たちに視線が注がれた。

 「……そういえば、まだお礼を言ってませんでした。イルカ先生、ナルト()に面と向き合ってくれて、ありがとうございました」

 「おいおい、よしてくれ……俺は礼を言われるようなことをしちゃいない」

 イルカは、学校で唯一ナルトと教師として向き合っている教師だ。

 だが、彼の両親は、九尾暴走事件のとき、九尾により殺されてしまった。それが原因で、一時期はほかの教師と同じように、ナルトに対してはどこか一線を引いて接していた。

 だが、両親を幼いころに亡くしたがゆえ、ナルトの痛みや苦しみ、悲しみを一番理解できていることも事実だった。いや、迫害されていなかった分、ナルトの方が受けてきた痛みは強いだろう。

 ナルトの姿を、かつての自分の姿に重ねたイルカは、せめて、教師として面と向き合ってやること。それが、自分にできる唯一の罪滅ぼしだと考えていた。

 「要は、俺のエゴなのさ。あいつを"うずまきナルト"として認めて、受け入れて、向き合ってやってるのは……」

 「……でも、向き合ってくれていたことに変わりはないですよ。それに、それを言ったら、俺の場合は"恩返し"ってことになっちゃいます」

 ハルトは困ったような笑みを浮かべた。

 葛葉一族は、もともと、封印術や結界術といった特殊な術を扱うことに長けた一族だ。

 が、ハルトは封印術の扱いが今一つで、どうしたらいいものか、と悩んでいた時期があった。そんな折、うずまき一族のクシナから、封印術のいろはを教えてもらい、様々なアドバイスをもらっていた。

 だから、ハルトにとってクシナは師匠にあたるのだ。

 むろん、おなかもだいぶ目立っていたため、妊娠しているということはハルトにもすぐにわかった。

 だから、もし恩を返すのだとしたら、クシナのお腹の中にいる子に、何かしてあげよう。

 九尾事件が起こる前に、ハルトはひそかにそう誓っていた。

 「……結局、俺らは俺らの都合で、ナルトと向き合っていたってことかな」

 「そうかもしれませんね……ナルトがそれをどれだけ否定しても、その事実だけは変わらないでしょうね……」

 しかし、今ナルトの前にいるヒナタたちは、恩返しや贖罪なんて事情(その程度のこと)は関係なしで、ナルトと向き合うと誓ってくれた。

 それは、おそらく彼にとって一生の財産になる。

 教師ではないが、ハルトはなぜかそう確信していた。

 

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 その日を境に、ナルトとヒナタの秘密の特訓にキバとシノ、そして猪鹿蝶の三人組も加わり、いつも以上ににぎやかになっていた。

 忍びの訓練として、にぎやかなのはいかがなものか、と最初は思っていたハルトとツクヨだったが、楽しそうに笑うナルトとヒナタを見ているうちに、そんなことはどうでもいい、と感じるようになっていった。

 そのうち、ナルトたちからハルトの忍術が見てみたい、という要望が出てくるようになった。

 どうしたものか、と困り果てると、ツクヨの方から、忍組手(実戦)で見せてやればいい、と提案され、ハルトとツクヨが組み手をすることになった。

 「……組み手をするのは勝手だが、なんで俺が呼ばれたんだ?」

 「すみません、イルカ先生……」

 「だって、いつもいつもこそこそ見張ってたんですもの。たまには、ね?」

 ツクヨの意地悪そうな笑みに、イルカはただただため息をつくだけだった。

 実のところ、イルカも、放課後にナルトたちがどこかに行っていることを気にかけ、こうして尾行してくるようになったのだ。

 むろん、ハルトやツクヨがいることと、夕刻、あまり遅くならない時間に皆を返していることから、眼をつむってきてはいたが。

 が、ハルトとツクヨにはその尾行がばれていたようで、こうして審判に駆り出されることとなったのだ。

 「それじゃ、使う忍具や刀は木製の物、忍術の使用は……まぁ、よしとしよう。ただし、相手を殺さないように、いいな?!」

 「「はいっ!!」」

 「では両者、対立の印を……忍組手、はじめ!!」

 イルカの合図とともに、ハルトとツクヨは地面を蹴り、互いの間合いを詰めた。

 ツクヨはすでに白眼を開眼させていたため、ハルトの動きと経絡系と呼ばれる、チャクラの流れる経路は手にようにわかっていた。

 だが、そんなことはハルトは百も承知だった。

 「葛葉流抜刀術、無刃之太刀(むじんのたち)!」

 自身の周囲、約三百六十度そのすべてを捉える白眼と柔拳、その二つを攻略するために、ハルトがとった戦略は、動体視力ではとらえきれない速さで攻撃を繰り出すことだった。

 刀を抜く、と見せかけ、柄がしらを突き出し、そのまま、刀を鞘に納めたまま横薙ぎに殴りつけた。

 一撃目から二撃目に移るその速さに、ツクヨの動体視力はついていけず、地面を蹴り、再び間合いを離すことでしか回避できなかった。

 「……ナルト、一つ聞く。ハルトと言うお前の兄替わり、暗部の人間か?」

 「え?そうだけど……それがどうかしたのかってばよ、シノ?」

 「あぁ。居合の構えを取っていたのに、なぜ刃を抜かなかったのか、それで納得がいった……なぜなら、あの戦い方は下忍にしてはかなり洗練されているからだ。そして、おそらくあれが白眼に対抗する、おそらく唯一の戦術だからだ」

 「白眼に対する、戦術?」

 シノの言葉に疑問を投げかけたのは、他でもない、白眼を持つ日向一族の少女だった。

 シノは、うむ、とうなずき、解説を始めた。

 「木の葉には、瞳術を持つ一族が二つ存在している。一つは、ヒナタ、お前の一族の"白眼"。そしてもう一つは、サスケの一族、うちはの"写輪眼"だ」

 白眼は、相手のチャクラ、そしてチャクラが流れる経絡系と呼ばれるつぼのようなもの、そして何より、術者の視界ほぼすべてを感知することが出来る眼だ。

 対する写輪眼は、チャクラ感知だけではなく、相手の視界に訴える幻術やあらゆる動きを見切る動体視力を持つ眼だ。

 遠方からの攻撃を見極め回避する白眼と、幻術だけでも厄介だというのにどれほど近くにいても一瞬で動きを見切る写輪眼。

 この二つの瞳術は、忍びの世界でも恐れられているものだ。

 だが、白眼にも欠点はある。

 それは、動体視力に限り、術者本人のそれに大きく左右されてしまう、という点だ。

 いくら遠方からの攻撃に対処しやすい白眼でも、接近戦になれば意味をなさない。それゆえに、柔拳という体術を身に着け、相手の動きを見切る訓練を重ねるのだ。

 が、仮に目の前にいる相手がその動体視力を上回る速度で連続攻撃を仕掛けてきたら、どうなるだろうか。

 答えは、火を見るより明らかだ。

 納刀した状態からの攻撃、抜刀と鞘による連続攻撃、抜き身の刀と逆手に持った鞘の二段攻撃。あるいはその逆。

 とてもクナイと拳だけで処理しきれる攻撃ではなかった。

 「くっ!水遁、"泡沫乱舞(ほうまつらんぶ)"!!」

 「おっと!!」

 ツクヨは空いている手で印を結び、ふっと息を噴出した。

 その息から、いくつもの泡沫が飛び出し、ハルトに襲い掛かってきた。

 ハルトは、それらを回避しようとしたが。

 「八卦空掌!!」

 「ちょっ?!」

 ツクヨはチャクラにより筋力を強化された右掌をつきだすと、空気が押され、風が生じた。その風に押された泡沫が、ものすごいスピードでハルトの方へと向かって行った。




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