NARUTO~尾獣逆行伝~   作:風森斗真

3 / 12
生涯の友達

 ハルトは、同期との思わぬ再会と出会いをした。

 積もる話があるから、とナルトとヒナタの二人には足にチャクラを集中させ、吸着や筋力を増強させるための特訓のため、互いに押し合いをするように言っていた。。

 ハルトはその様子を見ながら、ツクヨにナルトの過去について、少し話していた。

 「……そう。そんな事実が」

 「コウさんがヒナタに、ナルトに近づくなって言っていたのは、おそらくこの辺りが原因だろうな……」

 ハルトは薄く微笑みながら、ナルトという少年の真実の一端をツクヨに語った。そして、その笑みを陰らせた。

 ――もしかしたら、三代目が制止してくださらなければ、俺もこの里を壊滅に追いやる可能性があったかもしれない……

 ミナトとクシナがどのような思いでナルトに九尾を封印したのか、ハルトは知らない。それでも、生まれてくるであろう命を慈しみ、会える日を楽しみにしているかのようなあの雰囲気と、クシナが亡くなる前にヒルゼンに伝えていた言葉は、今もはっきりと覚えている。

 それゆえに、何も知らない里の大人たちが、一方的にナルトを迫害することは許せなかった。しかし、ヒルゼンの命ということもあり、ハルトはその感情を必死に抑え、ただただ、"暗部の人間"として、ナルトに接してきた。

 今は専属の護衛という任を受け、感情を抑える必要もなくなってきたが、今も、そのどす黒い感情は、ハルトの胸の奥にある。

 そして、その感情のままに、一族に伝わる力を振るってしまうかもしれない。

 その恐怖が、今になって襲い掛かってきていた。

 その表情に何か察したのか、ツクヨは明るく微笑みながら、ハルトの前に出た。

 「その時は、私が……ううん、私たち同期で止めるわよ、絶対」

 「ははは……頼りにしてる」

 ツクヨの力強い微笑みと言葉に、ハルトは微笑を浮かべた。

 

-------------------------------------------------------------------------------------

 

 ハルトとツクヨが丸太に背を預けて話をしている間、ナルトとヒナタは互いに押し合いをしていた。

 が、人見知りが激しく、ナルトとまともに話したことがないヒナタは、顔を真っ赤にし、ナルトから顔をそらしていた。

 その態度が気に入らない、というよりも純粋に気になり、ナルトは押し合いをしながら、ヒナタに問いかけた。

 「なぁ、ヒナタ。さっきから俺の顔、全然見てないけど……俺、お前に何かしたか?」

 「……え?」

 「いや、お前になんか悪いことから顔そらされてんのかって思ったんだってばよ……もし、ヒナタにひどいことしたんな……」

 「ち、ちがうの!そうじゃなくて……」

 ナルトがそこまで言いかけると、ヒナタは珍しく強い口調で否定した。

 「わ、私……は、恥ずかしくて、ちょっと……だ、だから、ナルトくんが私に何かしたわけじゃなくて……」

 《要するに、この小娘は恥ずかしくてお前の顔をまともに見ることができん、というわけだ……まったく、お前も罪作りな男だな》

 ヒナタの回答を聞いていた九喇嘛は、ナルトの精神世界でにやりと笑いながらそう解説した。

 それが聞こえていたナルトは当然、顔を赤くしてしまうわけで。

 「……そ、そうか……だ、だったら、いいってばよ」

 ナルトは両手を頭の後ろで組み、顔をそらして、そう答えた。

 今まで、ハルトと九喇嘛以外からは敵意と憎しみ以外の感情を向けられてこなかったナルトにとって、ヒナタのこの反応は初めてのものだった。

 それゆえに、どう接すればいいかわからず、戸惑ってしまったようだ。

 もっとも、ナルトの精神世界に住んでおり、ナルトの感情がその場にいるだけでわかってしまう九喇嘛がそれを見逃すはずはなく。

 《なんだ?ナルト、お前、照れてるのか?》

 と意地の悪い笑みを浮かべてからかっていたのは言うまでもない。

 ――う、うるさいってばよ九喇嘛!

 ナルトは心のうちで九喇嘛に反論すると、咳払いを一つして、足にチャクラを集中させた。

 「さ、ヒナタ。もっかいいくぞ!!」

 「うん!」

 ナルトの合図で、二人は再び押し合いを始めた。

 今度は、ヒナタもナルトも、しっかりと互いの顔を見ていた。

 が、そんなときに、ある意味で幸運な事故が起きてしまった。

 九喇嘛が体内に封印されている影響と、封印から漏れ出た九喇嘛のチャクラの影響で、ナルトは同い年の子どもよりもチャクラ量が多い。

 それに加え、ナルトとヒナタの筋力にも差はあった。

 それらの要因により、ヒナタの方がナルトより先にチャクラが切れてしまい、さらにそれに気づかずにナルトに押され、バランスを崩してしまった。

 そして、手を組んで押し合っていたナルトも同じようにバランスが崩れたわけで、ついでにあまりに唐突な出来事であったため、足に集中させていたチャクラが一気に分散し、足を地面に吸着させることが出来なくなってしまい、一緒に倒れこんでしまったのだ。

 そこまでなら、まだいい。が、最悪――人によっては幸福――なことに、倒れたときに顔と顔の位置が重なり合い、そのまま、二人の唇が重なったのだ。

 「……」

 「……」

 《……》

 これには、当の本人たちだけでなく、傍観していた居候(九喇嘛)も驚愕し、思考が停止してしまった。

 何が起こったのか、状況を把握したナルトは互いに顔を赤くして、ヒナタから離れ、なぜか正座になって背を向けた。

 一方のヒナタは、何が起こったのか理解した瞬間、元来の内気な性格と憧れの人に偶然の事故とはいえキスされたことで、脳の許容領域を一気に超えてしまい、顔全体から首筋まで真っ赤に染め、頭からは湯気を出してそのまま気絶してしまった。

 数分後、ナルトはツクヨから笑われながら叱られ、ハルトからは苦笑いされながら慰められるのだった。

 

-------------------------------------------------------------------------------------

 

 ナルトに、葛葉ハルトという保護者がついたことで、ナルトを取り巻く環境は前の時代とは随分と変化した。

 まず第一に、あの内気で一途にナルトを想っていた少女、日向ヒナタが、積極的にナルトと過ごすようになったのだ。それは、前の時代にはいなかった、ヒナタのもう一人の世話役(ハルトの同期)がナルトとヒナタを積極的に交流させていた成果ともいえなくはない。

 が、何よりあんなこと(不幸で幸運な事故)があった後でも、ヒナタはナルトと変わりなく接していたことが大きな要因なのだろう。

 あの日から、ヒナタは頻繁にナルトと話すようになった。ナルトも、最初は少しばかり恥ずかしそうにしていたが、時が経つにつれ、それは徐々に薄れていった。

 そして、そのことが、ナルトに友人を作るきっかけをくれた。

 最初は、ヒナタがナルトと過ごしていることが多いことを気にしたキバが、シノとシカマルに話し、ナルトかヒナタに直接聞いてみればいい、という結論にいたり、二人が話しているところに乱入したのがきっかけだった。

 が、徐々にナルトに話しかけるようになり、一緒に遊ぶようにもなった。

 そして、それに引きずられるかのように、シノ、シカマル、チョウジ、いのの四人がその輪に加わるようになった。

 だが、ナルトは、まだヒナタたちに自分の中に封じられた九喇嘛のことについては話していない。

 白眼を持つヒナタと、頭の回るシカマルはナルトには隠された何かがある事には感づいているようだったが、それを話してしまったら、自分から彼らが離れていってしまうのではないか、という恐怖感があった。

 現に、ハルトが保護者としてナルトと過ごすようになって数日したころに、九喇嘛から自分の中になぜ九喇嘛がいるのかを聞かされていた。

 そこで知ったのが、自分が四代目火影の息子で、九喇嘛の力を悪用させないために、ナルトに託したのだということ。そして、両親はその封印のために、命を落としたのだということ。

 それを聞いたとき、ナルトはそのことを最初にハルトに話した。

 ハルトはただ、そうか、と静かにつぶやき、ナルトの頭をやさしくなでてくれた。

 そして、こんなことを言っていた、と記憶している。

 「ナルト、お前がもし学校で友達を作ったら、きっとそのことを話すかどうか、迷う時が来ると思う。けどな、それを聞いても、お前をお前として見てくれると信じてみな……なにも自分から話す必要はない、その子から聞かれたら、でいい。"うずまきナルト"って忍び見習いの真実の一端を話してやればいい……もし、それを聞いても友達でいてくれるなら、きっとその子は、お前にとって、一生の、本当に大切な友達になる」

 そのことを、忘れるなよ。

 そう話すハルトの顔は、微苦笑ではあったけれども、どこか温かいものを感じた。

 だから、ナルトはもし自分の秘密を聞かれたら、迷わずに話そうと心に決めていた。

 そして、その日は、思ったよりも早く訪れるのだった。




なんだかむちゃくちゃというか無理矢理な感がいなめないような(汗
まぁ、でもいいよね。ぶっちゃけ、こうでもしないと原作通りの超鈍感になりそうだし、なにかきっかけになるような事故はあってもいいよね!
さてさて、いつの間にかお気に入り登録数が増えていたという事実。実のところ、私が今まで投稿した作品の中で一番多いんですよね、この作品が。
う~む、時代の流れ、というやつか?
あ、次回から同期主要メンバー全員集合……できたらいいな……。
ではまた次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。