NARUTO~尾獣逆行伝~   作:風森斗真

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ここからオリジナルキャラの登場です。
ヒナタにも子守役が付いてますが……まぁ、そこはそれ。コウに続くもう一人の世話役、ということで。
オリキャラのキャラ設定とか説明は、機会があれば投稿しようと思います。


出会いと再会と~未来の火影と白眼の姫~

 ナルトに自分の存在を教えてから、九喇嘛はナルトの話し相手になるだけではなく、忍術の修行や自分のチャクラをコントロールする方法を教えるようになった。

仙人としての修行もつけようかとも考えてはいたが、そこまでしてやるつもりはなかったし、何より、ナルト本人は持ち前の不器用さゆえに螺旋丸や螺旋手裏剣といった緻密なチャクラコントロールを有する術の習得にはかなりの時間を有してしまう。

 前の時代もそうだったが、自然エネルギーを取り込む仙人化は、下手をすれば死に直結する。

 加えて、チャクラ量も少ないため、螺旋丸や螺旋手裏剣は前の時代のそれとは比べ物にならないほど小さいため、未完成中の未完成と言わざるを得ない出来だ。

 そういった諸々の理由で、仙人化は自来也あたりにでもやらせるべきだろう、という結論に至った。

 それらの修行に力を注いだかいあってか、螺旋丸だけは、どうにか九喇嘛のチャクラを使うことで、実践に使って問題ないレベルにまで完成させることができた。

 前の時代と同様、影分身を使わなければ作ることはできないが、そのあたりは、意外性ナンバーワンと謳われるだけのことはある、と感心していた。

 そうして、過ごすうち、九喇嘛はこの時代と自分が飛んできた時代を"ずれ"させ始めた。

 その最初の一歩が、ナルトに保護者をつけさせる(・・・・・・・・・・・・・)ことだった。

 むろん、三代目火影(ヒルゼン)四代目火影(ミナト)の弟子であるカカシ、ナルトの名付け親でもある自来也ではない。

 その保護者と言うのは、意外にも、ヒルゼン直属の暗部に所属する少年であった。

 名は葛葉ハルト。下忍ではあるがその戦闘力は高く、特に剣術はうちは一族きっての天才と謳われるうちはイタチと並ぶほどだ。

 が、その戦闘力とは裏腹に、心根は非常に温厚な、そして穏やかな人間で、夕刻になれば必ずと言っていいほどナルトを迎えに来るし、ナルトの住むアパートで食事を作って、一緒に食卓についてくれる。

 そしてさらには、修行をつけてくれる。それも、九喇嘛の存在を受け入れたうえで、だ。

 そうなるようになったのは、数日前にさかのぼる。

 

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 それは、忍者学校(アカデミー)の入学式の日のことだった。

 三代目火影である猿飛ヒルゼンが、新たな忍びとなる若者たちの顔を一目、見に来た時のことだった。

 すべての工程が終わり、ヒルゼンはアカデミーから去ろうとしたときだった。

 自分の跡を継いで影の名を背負い、そして、暴走した九尾をその命と引き換えに封印した四代目火影の忘れ形見、ナルトが目の前に現れたのだ。が、その意識は九喇嘛と入れ替わっていた。

 それが証拠に、ほほにある三本のあざは色濃くなり、瞳は青いそれから赤いそれへと色が変わっていた。

 そのことに気づいたヒルゼンは、顔にこそ出していないが、驚愕していた。

 よもや、ミナトとクシナが命をかけて行使した封印が、ほんの数年でここまで緩むとは思っていなかったのだ。

 「……何用じゃ、九尾」

 「へっ、気づいていやがったか。安心しろ、三代目のジジイ。儂はナルトの体を奪い取ってはいないし、奪う気もない。ちと、頼みがあって、こうしてわざわざでむいたわけよ」

 ヒルゼンは九喇嘛のその言葉を聞き、ナルトの瞳を通して、九喇嘛の意思を見つめた。

 そこに嘘偽りはなく、驚いたことに憎しみや怒りと言った負の感情が一切見えないのだ。

 何かある、と感じたヒルゼンは、よかろう、とうなずいた。

 それをみた九喇嘛はにやりと笑った。

 「信頼できる暗部から一人、こいつの世話役を任命してほしい」

 「……ふむ?それくらいならばよかろう。追って連絡す……」

 「三代目。その役目、俺に任せてもらえませんか?」

 しゅっ、と風を斬る音が聞こえたかと思うと、ヒルゼンの背後に彼と同じくらいの身長の暗部の人間が姿を現した。

 顔は狐を模した仮面で隠されているが、その奥から見える青い瞳はミナトを連想させた。

 忍は仮面を外すと、ナルトを、いや、九喇嘛をまっすぐに見つめてきた。

 「俺はクシナ様に教えを乞うた人間です……わが師の忘れ形見、他のやつらに任せるわけにはいきません」

 「……わかった。九尾よ、これより葛葉ハルトがナルトの保護者につく」

 「ふん、お前にしてはやけに素直だな」

 九尾は胡散臭いとばかりに鼻を鳴らした。

 いくら平和主義者とはいえ、ヒルゼンが尾獣の要求をそう簡単に飲むとは思わなかったのだ。

 その反応に、ヒルゼンはからからと笑った。

 「ナルトに危害を加えるような人間が入れば、ハルトが飛んでいっていたからな。そのたびに儂が制止していたが……今回は止まりそうにないのでな」

 「……なるほど」

 その言葉だけで、九尾は納得した。

 以前の時代のナルトにも、一応、暗部の人間が監視と言う名称でついていたことがある。

 おそらく、その時についていたのがハルトだったのだろう。

 だが、必要以上の干渉を避けるため、食事を作ってやったり、本当に殺されそうになったりしたときにしか姿を現すことがなかったのだ。

 「それに、俺も少なからず九尾の狐とは縁がありますから」

 「……どういうことだ?」

 「俺の一族は、狐と口寄せ契約をしている一族なんですよ」

 「なっ?!儂をそんじょそこらの狐と一緒にするな!!」

 ハルトの言った言葉が気に入らなかったのか、それとも言われると思ったこととはまったく無関係のことを言われたからなのか、九尾は驚愕の声をあげた。

 ハルトはその突込みに、ただただ静かに苦笑するだけだった。

 

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 それから数日。

 ハルトは夕刻以降はナルトのアパートで過ごしていた。

 意地っ張りな部分があるナルトだったが、やはり九喇嘛以外に同居してくれる人間がいることをうれしく思っているらしく、ハルトを兄と呼び慕うようになった。

 現にこの日も。

 「兄ちゃん!今日も修行見てくれってばよ!!」

 「あぁ、わかってる……そうだな、またチャクラコントロールの修行にするか?」

 「うげっ……」

 「ははは、苦手だからって及び腰になるなよ?」

 このような、実の兄弟のようなやり取りがされるのだった。

 その様子を見ていた人物が一人。

 それに気づいていたのは、九喇嘛とハルトだけだった。

 だが、あまりにも気になったので。

 「おーい、そこの子。ナルトに何か用事か?」

 「……ひゃっ!!」

 思わず声をかけてしまったのだが、極端な人見知りなのか、すぐに木の陰に隠れてしまい、出てくる気配がなかった。

 「……ナルト、行ってあげな」

 「え?」

 「あの子は、ナルトとお友達になりたいんだよ。ほれ」

 「わ、わかったってばよ」

 ハルトに促され、ナルトは木の陰に隠れてしまった人物のもとへとぱたぱたとかけていった。

 しばらくして、ナルトは、木陰に隠れていた人物の手を取って引っ張ってきた。

 ハルトはその人物、いや、少女の瞳を見た。

 「……日向一族の」

 「は、は……い……あ、あの、ご、ごめ……」

 「兄ちゃん!ヒナタは何も悪いことしてないってばよ!!」

 どうやら、ナルトは彼女のことを知っているらしく、少女の名を言いながら、ハルトとヒナタの間に立った。

 さらにややこしいことに、ハルトが少女――ヒナタをいじめたと勘違いしたらしく、ヒナタの前に立ち、両手を大きく広げ、きっとハルトをにらみつけた。

 「いや、それはわかってる。てか、怒ってないからな?!俺は全然、怒ってないぞ?!」

 その姿に、思わずハルトは苦笑してしまったことは言うまでもない。

 そんな中、ハルトの耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 「ヒナタ様ぁ、どこですかぁ」

 「……ん?この声」

 「あ、ツクヨお姉さん」

 ヒナタは声のした方へ、ぱたぱたと駆けて行った。

 その先には、ハルトの顔見知りである日向一族のくの一がいた。

 「やっぱりツクヨか」

 「あら?ハルトじゃない。久しぶりね」

 ツクヨ、と呼ばれた少女は色素の薄い、薄紫の瞳をハルトに向け、微笑んだ。

 日向ツクヨは、ヒナタの従姉妹であり、ハルトの同期だ。

 もっとも、忍者学校を卒業した後、ハルトはその戦闘力の高さを買われ、うちはイタチとともに暗部入りしたため、その後の接点はあまりないが。

 「学校卒業して以来だから、三年ぶり、くらいか?」

 「そうね、あなたとイタチはすぐに暗部入りしちゃったから……そういえば、イタチは元気?」

 「あぁ。今は別の班だけど、時々顔を合わせることはあるよ」

 昔なじみの顔が懐かしく、ハルトとツクヨは保護対象の存在(ナルトとヒナタ)を忘れて、すっかりおしゃべりに夢中になってしまっていた。

 その様子を、ナルトの目を通してみていた九喇嘛は。

 《……何、いちゃいちゃしとるんだ。このガキは……》

 と、あきれたようなため息をついていたことは言うまでもない。




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