NARUTO~尾獣逆行伝~   作:風森斗真

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秘伝忍術って解説と言うかなんというかが難しい……。
倍加の術と影真似はまだいいんだよね、単純だから。
心転身はどう解釈したらいいのやら……。
間違ってたらご指摘ください。


集団戦闘は突然に 二、

 ハルトとツクヨは互いに背を預け、まだ動けるサスケたちの動きを警戒していた。

 ハルトの手にはすでに新たな呪符が握られている。

 ――チャクラも込めた……誰かが動いた瞬間を狙って投げるか……ツクヨなら、その隙に乗じて動いてくれるはず

 ――ハルトなら、たぶん、動いた瞬間に符術を使うはず……なら、それに乗じて動くことが私の最善手

 別に互いに打ち合わせをしていたわけではない。しかし、ハルトもツクヨも、自身がどう動けば相手がどう動くか、ある程度の予想が出来ていた。

 それだけ、互いの動きを見切っているということなのだろうが。

 「……ハルト兄ちゃん、俺をなめすぎだってばよ!」

 「……うん?……あ」

 「変化!!」

 ツクヨは蛟縛りを継続していたが、縛れていたのは両足と片腕だけだ。もう片方の腕はどうにか動かせるため、印を結ぶことはできる。

 そして、ナルトが得意な変化の印は、ごくごく簡単なものだ。

 変化の術で蛙に化けたナルトは、蛇の束縛から逃れ、ハルトたちから距離を取った。

 ある程度の間合いまで離れると、変化を解き、手にしていたクナイを再び構えた。

 周囲の警戒に気を配っていたとはいえ、目の前のナルトへの注意が疎かになっていたこと、ハルトは心の内で舌打ちし、同時に、自分の衰えを再認識した。

 「形勢逆転、だってばよ」

 「……そいつは、どうかな?」

 ニヤリと笑ったナルトに、ハルトは不敵な笑みを返した。

 サスケとシカマル、そしてシノは、ハルトのその返事を聞いて、何か仕掛けてくると警戒した。

 が、しかし。

 ――な~んて、カマかけてみたけど。正直、俺、動きようがないのよねぇ……

 不敵な笑みの裏で、ハルトは冷や汗をかきながらどうすべきか思案を巡らせていた。

 影使いのシカマルに、心転身のいの、さらにはまだ写輪眼を開眼していないとはいえ、それなりにできるサスケに、自分の持てる技のほぼ全てを叩き込んできたナルトとヒナタ。攻撃力の高いキバと遠距離攻撃のシノ。そして、連携によって強敵となるチョウジと、いまだ未知数のサクラ。

 この布陣から見て、どう考えても、こちらの形勢が振りであることに変わりはない。

 ――さーて、本当にどうすっかな……

 ハルトは自分が手にしている呪符に目を向けた。

 持っているのは風遁符二枚。

 腰のホルダーにもほかの呪符は忍ばせているが、それを引き抜くまでの間に、何をしてくるのか全く分からない。

 だが、一つだけ希望があるとすれば。

 (……ツクヨ、"泡沫乱舞"は使えるか?)

 (使えるけど……どうするの??)

 (あいつらの動きを誘導する。そのあとに封印術であいつらの動きを制限させる)

 (OK。了解よ!!)

 ハルトの案に賛成したツクヨは、印を結ぼうと、手を動かした。が、その動きは不自然に止まった。

 どうしたのか不審に思ったハルトは、ツクヨの方へ視線を向けた。

 そこには、シカマルと同じポーズを取っているツクヨの姿があった。

 「影真似の術、成功!!」

 奈良一族に伝わる、影を操る秘伝忍術の一つ、"影真似の術"がツクヨを束縛していたのだ。

 いや、ツクヨだけではない。ツクヨの影を経由して、ハルトの影にももぐりこみ、動きを封じ込めた。

 ――あちゃー……まずいかもしんないね、これ

 縛られた状態で、それでも頭の中は冷静でいるハルトは、この状況をどう切り抜けるか考えていた。

 が、なかなかいい策が浮かばない。

 「仕方ない、か……お?口は動かせるのな」

 「……はぁっ?何言ってんすか、ハルトさ……」

 「んじゃま、大人げなく行きますか!」

 口は自分の意思で動かせることを悟ったハルトは、にやりと笑った。

 シカマルはその行為にどのような意味があるのか、はかりかねていたが、すぐにハルトの狙いを理解することになった。

 「オン、アビラウンキャン、シャラクタン!!」

 理解不能な言葉が、ハルトの口から漏れ出た。その瞬間、ハルトのチャクラが異常なまでに膨れ上がっていき、強制的に術を振りほどかれてしまった。

 「おっし、成功!風遁符"旋風壁(せんぷうへき)"!!」

 影真似を振りほどいたハルトは、手にしていた符を使い、符術を発動させた。

 風遁符に込めたチャクラは、風遁チャクラへと変化し、ハルトとツクヨを守るかのように旋風を巻き起こした。

 「さてと……ツクヨ、"泡沫乱舞"を」

 「了解……さっきのからくりについては、あとで教えてもらうわよ。二人きりの時にね」

 こんな(ピンチの)時に、そんなことを聞こうとする余裕があるツクヨに、ハルトは関心と呆れが半々となったような笑みを浮かべた。

 「ははは……そりゃ、ツクヨの覚悟を聞く問いだな」

 「は?」

 「……ほれ、そろそろ術が解けちまうぜ?」

 「あぁ、もうっ!!わかったわよ!!」

 なんだかはぐらかされたような気がして、あまりいい気分にはなれなかったが、ツクヨは"泡沫乱舞"の印を結び、準備を整えた。

 旋風が止んだその瞬間、ツクヨは準備していた"泡沫乱舞"()を放った。

 「水遁、"泡沫乱舞"!!」

 「風遁符、"大旋風"!!」

 ツクヨの術に合わせて、ハルトは手にしていたもう一枚の符で風遁術を発動させた。

 風によって勢いをつけた泡沫は、その形を崩すことなく、まっすぐにナルトたちに向かって行った。

 全員、それを回避するように動いたが、その体格の大きさから、思うように早く動けないチョウジが泡沫に捕えられそうになった。

 「くっそ!!」

 シカマルはそれを見て、影真似の術をチョウジにかけ、泡沫のない方向へ走った。

 その動きに合わせて、同じ速度でチョウジも走り、泡沫の群れの中から抜け出した。

 「あ、ありがとう。シカマル」

 「気にすんなって」

 安全地帯まで走ったシカマルが術を解除すると、チョウジは申し訳なさそうに謝った。

 シカマルはハルトとツクヨから視線をそらさずに返し、思考をめぐらせた。

 わかっていたことではあるが、やはりかなりの強敵だ。

 おまけに、打ち合わせしたわけではないはずなのに、即興でコンビネーションをくみ上げてきたのだ。

 それだけ、二人は多くの実戦経験を積んできたということなのだろう。

 だが、相手をしている自分たちは、打ち合わせをしたとはいえ、経験の差というものがある。

 おそらく、今いる九人全員でチームを組んだとしても、鈴を取るまでには至らないだろう。

 ――さ~て……俺たちはどうすっかな……

 ハルトとツクヨを警戒し、身動きが取れない中で、シカマルの脳みそはせわしなく動いていた。

 

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 一方、泡沫を回避し、森の中へと逃げ込んだナルトのチームもどうすべきか作戦を練っていた。

 「どうにかして、ツクヨさんとハルトさんを引き離す必要がある。なぜなら、二人の術の組み合わせが厄介だからだ」

 シノはハルトとツクヨを警戒しながら、隣にいる二人に提案した。

 ナルトとヒナタもそれには賛成だった。

 「そうだな。兄ちゃんか姉ちゃんのどっちかだけならまだなんとかなりそうだってばよ」

 「うん……お姉さんはともかく、ハルトさんは一人の所を狙った方が良いね」

 実際問題、ナルトとヒナタはハルトの汎用性を目の当たりにしている。

 四人だけでひそかに実戦訓練を行ったことがあるが、ハルトは誰とタッグを組んでも、様々な符術でパートナーをサポートし、その時々で的確な行動を起こすのだ。

 その折に、ナルトとヒナタは将来きっと最強の二人組(ツーマンセル)になる、と笑いながら言っていたことを思い出し、ヒナタは少し、ほほを赤く染めた。

 それを見ていたナルトは、怪訝な瞳をヒナタに向け。

 「……どうしたんだってばよ?ヒナタ」

 と、問いかけたことは言うまでもない。

 なんでもない、とヒナタは否定し、ハルトたちの方へ視線を向けた。

 しばらく黙っていたシノは、一連のやり取りを見て、小さくため息をついてから二人に語り掛けた。

 「……ヒナタ、ナルト。お前たちでハルトさんとツクヨさんを引き離して足止めしてくれ。その間に、俺がどちらかに加勢し、鈴を奪う」

 「おぅっ!」

 「うんっ!」

 ナルトとヒナタはシノの指示に従い、それぞれが最も足止めしやすい相手の方へと向かって行った。

 その様子を、離れた場所から見ていた影が三つ。

 「……ナルトとヒナタが動いたな」

 「みたいね……ねぇ、サスケくん。私たちはどうするの?」

 ナルトたちの様子を見ていたサスケは、彼らが動き出したことを知り、自分たちがどう動くか、サクラに問いかけられ、考え始めた。

 だが、あまりいい案が浮かんでこない。

 いや、案があるにはあるのだ。

 おそらく、ナルトはハルトの、ヒナタはツクヨの足止めをするだろう。その間にシノがどちらかの援護に入り、鈴を奪取する算段なのだろう。

 なら、自分たちはシノが向かわなかった方へ行き、そちらに加勢することが最善手だ。

 「……作戦は、あるにはある……が、その前に、サクラ、キバ。お前たちならどうするか聞きたい」

 一匹狼のサスケにしては珍しいセリフに、サクラもキバ、そして赤丸も硬直し、じっとサスケを見つめた。

 それに気づいたサスケは、なんだよ、と頬をかすかに赤くしながら、怪訝な瞳を向けて問いかけた。

 が、見られている当の本人たちんの胸中は。

 ――あのサスケが、他人に意見を求めた……だと?おいおい、どういう風の吹き回しだ?

 ――サスケくんが、私を頼ってる?……しゃ、しゃーんなろーっ!!一歩前進!!

 と、やはりサスケの印象によって違っていたわけで。

 が、すぐに思考の方向を修正し、自分たちの意見をサスケに伝えた。

 「俺もそれに賛成だ。が、ハルトさんを最優先でつぶした方が良いと思う」

 「私も賛成。ハルトさんとツクヨさんの実力がどうなのかは正直わからないから、どっちから攻めるかは二人に任せるわ」

 「……決まりだな」

 二人の意見を聞き、自分が考えていたこととまったく同じことを考えていたことを知り、サスケはにやりと笑った。

 

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 それぞれの班が、それぞれに行動を決めた頃。

 ハルトとツクヨの前に、ナルトとヒナタが現れた。

 「……お前ら二人か」

 「おぅ!兄ちゃん、覚悟してくれってばよ!!」

 「姉さん、手合わせお願いします!」

 「ふふふ……いい目をするようになりましたね、ヒナタ様」

 それぞれがそれぞれの相手と言葉を交わすと、沈黙が流れた。

 が。

 シノか、サスケたちの班の誰かか、シカマルたちの班の誰か。はたまた、このあたりを歩いていた獣だろうか。森の奥で、ぱきり、と枝を踏み折る音が聞こえた。

 それを合図に、四人は同時に動き、組み合った。

 ハルトの木刀はナルトの持つ木製のクナイと刃を交え、ツクヨの掌底はヒナタの手刀によって軌道をずらされた。

 その後も、どうにか目で終える速さでの攻防が続き、自然と、ハルトとツクヨは距離を離しはじめた。

 その瞬間、森の陰からシノ以外に、サスケとサクラ、キバが飛び出してきた。

 どうやら、この混乱に乗じて、ハルトから鈴を奪おうという算段のようだ。

 そして、ツクヨの方も同じく、シカマルたちの班に攻撃を仕掛けられていた。

 ――あ~らら……まいったね、こりゃ

 ハルトはナルトとサスケ、そしてキバの接近攻撃とシノの遠距離攻撃、そしてその隙間を縫って伸びてくるサクラの腕を回避しながら、どうすべきか考えていた。

 だが、どうにもいい案が浮かんでこない。

 かといって、符術を使おうにも、鞘と木刀で両手がふさがっているため、呪符を取り出すことが出来ない。

 思考をめぐらせることに気を取られすぎたようだ。

 一瞬のスキをついて伸びてきたサクラの手が、ハルトの腰につけられた鈴をつかんだ。

 「……あ」

 「ふふふ。私たちの勝ちよ!」

 サクラは余裕の笑みを浮かべながら丸太の方へと走っていき、指定された位置に鈴を置いた。

 むろん、ハルトもそれを追いかけようとはしたが、ナルトとサスケ、キバ、そしてシノに足止めされ、それは失敗に終わった。

 

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 一方、ヒナタとシカマルたちを相手にしていたツクヨも追いつめられていた。

 ――さすが、猪鹿蝶の連携ね……ヒナタ様だけならまだなんとかなるけど、彼ら三人が一緒になると、さすがに厳しいわ

 ヒナタからの攻撃をいなし、シカマルの影を回避しながら、ツクヨはこの状況をどう打開するか思考をめぐらせた。

 "水牢の術"を使おうにも、ヒナタが目の前にいるこの状況では、印を結ぶことは容易ではない。おまけに、シカマルの影が気になって、チャクラを思うように練ることが出来ないのだから、これはもはやお手上げ状態だ。

 ――やっぱり、ヒナタ様を先に無力化して……っ?!

 不意に、頭の中に何かが入ってくるような、そんな違和感がツクヨを襲い、立ちくらみを覚えた。

 何かがおかしい。

 そう感じたツクヨの脳裏に、いのの声が響いてきた。

 《よし、入れた!》

 ――山中一族の……心転身の術、ね……やるわ、ね、い、の……

 山中一族に伝わる秘伝忍術、"心転身"は術者の精神を対象にもぐりこませ、相手の肉体の主導権を奪う術だ。

 ツクヨはその術にはまり、肉体の主導権を奪われたのだ。

 薄れていく意識の中で、ツクヨは、チリン、と自分の腰につけていた鈴が小さくなったことに気づいた。

 結局、数の暴力とコンビネーションに押し負けるような形でハルトとツクヨはそれぞれが所持していた鈴を取られ、ナルトたちの勝利となった。

 そして、この時の勝負が役に立つときが来るのは、もうすぐそこまで迫っていた。




忍術説明

"旋風壁":符術(風遁符)
風遁符を用いる符術。旋風を呼び出し、頭上以外の術者の周囲をふさぐ術。
符に込めるチャクラ量によって旋風の大きさは左右される。

"大旋風":符術(風遁符)
指向性を持った旋風を呼び出す術。
テマリの"かまいたちの術"のような殺傷力はない。

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