比企谷八幡と黒い球体の部屋   作:副会長

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見下してんじゃねぇよ。俺が頂上(トップ)だ。


Side東条――②

 

 一年前、とある男が、工事現場の作業服という恰好で石矢魔高校に入学した。

 

 入学式――開始数分で開会の言葉を口にするまでもなく教頭先生の心が折れ、分かりやすく無法地帯となったこの式典に、その男は初日から遅れて姿を現した。

 

 これは、そんな男の伝説の始まり――たった一日で、とある新入生が伝説になった話だ。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 石矢魔高校の入学式には、新入生と、教職員しか出席しない。

 だが、意外なことに、入学式の新入生の出席率は、およそ100%に近いのである。

 

 いや、新入生が入学式に参加するのは当たり前のことだとお思いかもしれないが、石矢魔高校は前述の通り、絵に描いたような不良高校、全国随一のクズの巣窟である。

 

 これは、周辺の一般高校は勿論のこと、不良界隈では全国的に知名度の高い事実だ。

 とどのつまり、こんな高校に入学するような奴は、他のどんな高校にも受からなかったどうしようもないバカか、自ら進んで同類の巣窟に飛び込もうというどうしようもないクズの二択である。

 

 前者はともかくとして、後者の方は、当然、お上品に学校側の組んだスケジュール通りに、朝早くから堅苦しい式典に参加するような学校生活は送ってきていないのだ――これまでは。

 

 だが、そんなクズでも――いや、そんなクズだからこそ、石矢魔高校の入学式は決して欠席することはない。

 

 全国随一のクズの巣窟――それ即ち、全国でもトップクラスの同類(ヤンキー)達が集まる場所。

 

 そんな魔窟に、自ら好き好んで飛び込もうという、どうしようもない馬鹿野郎達の(ツラ)を、一刻も早く拝む為――そして。

 自信と、野心と、下らない自惚れ(プライド)で、さぞかし気に食わない目をしているであろう輩共に、一秒でも早く思い知らせてやる為。

 

 テメェが、この石矢魔高校で過ごす楽しい楽しい三年間を――誰の下で過ごすことになるかを、骨の髄まで叩き込んでやる為。

 

 そんな待ちわびた式典が満を持して始まり、今年度の石矢魔高校新入生が勢揃いした体育館で、今か今かと開戦を待つ空間で――明らかに、別格の風格を纏う男がいた。

 

「――おい、アイツって……」「ああ……やっぱり、アイツも石矢魔に」「じゃ、じゃあ、アイツやっぱ本物の……」「なんでアイツ高校来てんだよ……継ぐならさっさと継げよ……」「それじゃあ、アイツがヤクザの組長の息子っていう――」

 

 一人、また一人と。その男から距離を取るように、文字通り席を空ける。

 そんな周囲の反応を嘲笑うように、足を大きく組みながら、何もかもを見下すように――その男は笑った。

 

(……ハッ。石矢魔ってもこの程度か。どいつもこいつも俺と()り合うまでもなく負けを認めてやがる。……これじゃあ中学と変わんねぇな)

 

 くすんだ金色の短い髪。左耳と口端を繋ぐピアス。そして――頬に走る、大きな傷。

 そんじょそこらの不良少年とは一線を画す――本物のヤバさを放つ男。

 

 名を――神崎一。

 後に東邦神姫の一角に名を連ね、石矢魔高校統一に最も近い男として校内最大勢力を率い、全国にまで名を轟かせることになる不良(クズ)の入学であった。

 

「なんでこんなヤツが同学年にいんだよ……」「俺達の代のトップはアイツに決まりじゃねぇか……」「ば、馬鹿野郎ビビってんじゃねぇよ! 所詮、親の七光り野郎だ。タイマンならどうせ大したことねぇに決まって――ッッ!!」

 

 神崎を囲むようにして出来上がった集団の中で、そんなことをコソコソと呟いていると、その中の一人に――唐突にパイプ椅子が飛来した。

 

 悲鳴を上げることもなく、ただ骨に硬い物が激突する嫌な音が響き、鼻が潰れたことで噴き出す血液が散る中、絶句する周囲の人間を掻き分け、ゆっくりとその男――神崎が近づいていく。

 

「…………」

「…………」

 

 今や大多数の新入生が、席から立ち上がり、神崎から距離を取る中――ただ二人。

 制服を着崩したロングヘアの男と、巨漢で三つ編みの男のみが、自らの席に座り続けて状況を見守る。

 

 そして、神崎は自らがパイプ椅子を投げつけて倒した男を見下ろすように立った。

 

「なんか面白そうな話してんじゃねぇか。俺も混ぜろよ」

「……ひっ……ごふ……っ!」

「――で」

 

 血が噴き出す顔面を押さえながら、涙を流しながら必死に距離を取ろうとする少年に――まるで虫を踏みつけるように、右足をゆっくりと上げながら、神崎は――笑う。

 

「誰が、誰に、勝てるって?」

 

 ぐちゅ――という、嫌な音が響いた。

 

 とてもとても、嫌な音。

 

 学校の喧嘩程度しか知らない、本物のヤバさを知らない、学校の不良(ヤンキー)程度ならば。

 クラスの気弱ないじめられっ子をパシリにしていた程度の不良(いじめっこ)程度ならば。

 

 きっと聞いたことすらないような――ヤバい音。

 一線を越えている音。一線を画した――ヤバい者にしか、出せない音。

 

 血を噴き出している顔面を、容赦なく全力で踏み潰すそんな音が、ほぼこの空間にいる全ての者に聞こえる程に、体育館は静寂に包まれていた。

 

 心は弱くとも、これまで伝説の不良高校で過ごし続けてきた教職員達も、絶句していた。

 石矢魔高校の入学式は荒れ狂うのが伝統だった。スケジュール通りに事が進んだ年などここにいる誰もが記憶になかった。すぐに乱戦、乱闘が始まり、それに巻き込まれないようにへこへこと体育館から逃げ出すまでが、彼等にとっての入学式だった。

 

 だが、こんな光景は初めてだった。

 乱戦も、乱闘も――それどころか、分かりやすい喧嘩が始まるまでもなく。

 

 たった一人の男が、たった二撃の攻撃で、自信と野心を持って石矢魔高校に入学してきた名立たる不良達を、恐怖を持って黙らせた。

 

 あの嫌な音で、この男は見極めたのだ。

 本当の不良を――本当の不良品を。

 

 頭がイカれ、螺子が外れた奴等を。こんな音に聞き覚えがある、一線を越えたことのある経験者を。

 

 自分と同じく、一線を画した――本当の、不良を。

 自分と同じく、一線を越えた――人間としての、本当の、不良品を。

 

 神崎は見渡す。

 自分を取り囲むように――自分から離れるように、波のように引いていく有象無象の少年達の向こう側に、二人。

 

 神崎の凶行にまるで動じることなく、未だに入学式が始まるのを待っているかのように、目だけをこちらに向けて、堂々と椅子に座り続ける――不良が、不良品が、二人。

 

 ロングヘアの男と、三つ編みの男。

 彼等は、まるで自分達こそが、神崎という男を見極めているのだというかのように、真っ直ぐに神崎を見据え続けていた。

 

(――はっ。なんだよ、いるじゃねぇか。……面白そうな奴等がよ)

 

 凶悪に笑い始める神崎に、周囲の少年達は怯え、震える。

 

 ロングヘアの男――夏目慎太郎と、三つ編みの男――城山猛は、そんな神崎の笑みを見ても動じず、夏目は更に深く背凭れにもたれかかり、城山はゆっくりと立ち上がろうと――した所で。

 

 大きく、堂々と、体育館の扉が開かれる。

 

 体育館の全ての人間の視線が集中する。そこには――この場にまるで相応しくない、工事現場の作業服姿の男がいた。

 

「いやぁ、遅れた遅れた。あれ? 今日って石矢魔の入学式だったよな?」

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 夏目慎太郎。

 彼にとって世界は、「面白い」か「つまらない」かが全てだった。

 

 彼は優れた容姿を持って生まれた。彼は優れた体躯を持って生まれた。

 彼は優れた頭脳を持って生まれた。彼は優れた才能を持って生まれた。

 

 故に――彼は不良になった。故に――彼は人間として不良品だった。

 

 生まれた時から成功が約束されていて、誕生した瞬間に勝利が確約されていて。

 何の努力も必要なしに栄光に辿り着いていて、およそ人が望みうる全てがその手中にあった。

 

 一般家庭の、善良そのものの両親から生まれた。

 

 笑顔を絶やさない少年だった。近所のアイドルとして扱われ、かけっこもテストもいつも一番だった。

 女の子から貰ったラブレターの数など数えきれない。男の子の友達も多く、放課後のサッカーやドッジボールでは彼の取り合いをしている間に日が暮れてしまったこともある。

 

 そんなとある日、母親にただいまといって二階の自室に帰宅した少年は――ランドセルを床に叩きつけた。

 

 つまらない――そう、夏目慎太郎は、呟いた。

 

 まるで正解の選択肢が光るクソゲーを延々とプレイしているかのような気分だった。

 真っ暗な部屋で、只管にディスプレイに向かいながら、コントローラーの〇ボタンを押し続けるような毎日。

 

 感情が死んでいく。ただ作り笑顔だけが上手くなる。このままじゃ、僕は只の成功者になってしまう。

 

 只の勝者になってしまう。空っぽな栄光を手にしてしまう。

 勝手に動くベルトコンベアに乗せられ、よく分からない何かにされてしまう。

 

 降りなくては――この動く歩道から。

 失敗しなくては。堕落しなくては。ドロップアウトしなくては。

 

 とにかく、一刻も早く、このコントローラーを手放して、真っ暗な部屋を飛び出さなくては。

 

 例え、この部屋の外が何もない闇でも、一歩踏み出せば落下する断崖絶壁でも、奈落の底でも――構わない。

 ただ閉じこもるだけで成功者になれる――こんな楽園のような檻から、どうか僕を出してくれ。

 

 つまんねぇよ――そう、夏目慎太郎は、吐き捨てた。

 

 

 

 そして――その夜。

 

 夏目慎太郎は――生まれ変わった。

 

 

 

 翌日。

 夏目慎太郎は、登校中に見かけたコンビニの前で屯していた不良(ヤンキー)を病院送りにするという暴力事件を起こした。

 

 彼を知る関係者達は、一様に口を揃えて言った。

 そんなことをする子には思えなかった。礼儀正しい、優しい子だった、と。

 

 彼を慕う同級生の女子達が。彼を奪い合っていた同級生の男子達が。

 彼をアイドル扱いしていた近所の人達が。彼を誇りに思っていた家族達が。

 

 一様に、現実を受け入れられないといった様相で絶句する中――ただ、夏目慎太郎だけが、笑顔だった。

 

 その日、彼は、真っ暗な自分の部屋の中で、ベッドに横たわり、天井を眺めながら、救われたように微笑んでいた――ああ、よかった、と。

 

 俺は、()()()()()()()()()()()()()()――と。

 

 

 

 その日から、夏目慎太郎は変わった。

 

 動く歩道を降りて、真っ暗な部屋を抜け出して、面白いものを求めるようになった。

 

 成功よりも破綻を好み、勝利よりも緊迫を欲して、栄光よりも堕落を選び、偉業よりも異形を望んだ。

 

 作り笑顔ではなく心の底から笑うことを覚えた。

 生きることが楽しくなった。食べ物が美味しく感じるようになった。

 

 そして――夏目慎太郎は、不良になった。

 

 人間として、不良品であることを自覚した。

 

 テストで百点を取るよりも、野球でホームランを打つよりも、サッカーでハットトリックを決めるよりも、クラスで一番かわいい女の子に告白されるよりも、先生に褒められるよりも、両親に愛されるよりも――面白いものを求めるようになった。

 

 堕ちるところまで堕ちていき――そして、今日、この日。

 

 夏目慎太郎は、石矢魔高校へと入学し。

 

 

 

 生まれて初めて、敗北を知った。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 気が付いたら、初めて見る天井を見上げていた。

 高い、高い、天井。冷たい床。独特の匂い。

 

 そこまで思って、頭部に強い激痛が走り、思い出した。

 

 自分が、石矢魔高校の体育館で、倒れ伏せていることを。

 

(……何が……起こったんだ?)

 

 頭を押さえながら、ゆっくりと体を起こす。

 

 そして、回想する。

 今日、この日、ことここに至るまで、一体何があったのか。

 

 何があれば、この俺が――夏目慎太郎が、無様に倒れ伏せるといった異常事態に至るのか。

 

 全国随一のクズの巣窟、悪名高い不良高校――石矢魔高校。

 恐らくは自分が知る限り最も面白い奴等が集まるであろうこの高校の入学式に、自分は新入生として参列していた。

 

 その多くは期待外れの有象無象だったが、ほんの数人、夏目の興味を引く面白そうな不良がいた。

 

 くすんだ金髪のピアスの男と、三つ編み頭の巨躯なる男。

 自分と同様に、その二人も自分に目を向けていることも分かった。

 

 そして、金髪ピアスの男が凄惨に笑い、三つ編みの男が立ち上がるのを見て――夏目は更にパイプ椅子に凭れ掛かり、傍観の姿勢を取ったのだ。

 

(――まだいいでしょ。俺は別にトップなんて興味ない。面白いヤツを見つけにきただけだしね)

 

 それに――どうせ、()り合うことになったら、自分が勝つ。

 別に、強い相手を求めて、石矢魔に来たわけではない。その辺りは、特にここには求めていない。

 

 だからこそ、やりたければお好きにどうぞ、といったスタンスを取った。

 自分はそれを高みの見物させてもらうと――上から目線で、見下しながら。

 

 そして、その時だった。

 

 本物が――現れたのは。

 

 

 

「いやぁ、遅れた遅れた。あれ? 今日って石矢魔の入学式だったよな?」

 

 随分と静かじゃねぇの――工事現場の作業服姿の大柄な男は、そう朗らかに言った。

 

 明らかに冷たく、凍り付いていると言っていい程に張りつめている空間で、まるで別世界に住んでいるかのように。

 

「――は? 誰だ、おっさん」

 

 くすんだ金髪の男――神崎一は、そうドスを利かせながら唸る。

 この空間を支配し、己の空気で満たした場を崩されたことを、心底気に食わないといった迫力で。

 

 そんな神崎の怒りに、再び体育館内がピリつく中――作業服を纏った、神崎のそれとは違う、(たてがみ)のような金髪の男は、自身を指さし、キョトンとした表情で言う。

 

「――え? 俺、お前らと同い年なんだけど。あ、今日から同級生だな。よろしく」

『――は?』

 

 はぁぁぁぁああああああ????? ――いきなり高校の入学式会場に現れた、明らかに使い込まれているであろう草臥(くたび)れた作業服を身に纏った男の十五歳宣言に、あれほど凍り付いていた空間がリアクションとツッコミで溢れ返った。

 

「ありえねぇ!」「どうみても二十代後半だろ」「いや三十路越えてるって言われても違和感ねぇぞ」「っていうかどうして作業服?」などなど。

 完全に――色々と台無しな形だが――注目と空気が、神崎から謎の工事マンに奪われかけているのを、自身も呆気に取られていた神崎が感じ始めて舌打ちをした所で――作業服の男の後ろから、更に二人の男が現れた。

 

「ぷはっ! ははははははは! そりゃそうっすよ! そうなるっすよ! 俺も初めて見た時はそう思いましたもん! どう見ても先月まで中坊だったとは思えないっすよ東条さん!」

「……はぁ。だから、せめて着替えろと言ったんだ、虎。せっかく(しずか)が持たせてくれたんだから、今からでも制服を着たらどうだ」

 

 頭頂部が金色で横髪が黒髪のオールバックに丸いサングラス姿の、腹を押さえながら爆笑する男――相沢庄次。

 癖のある長い髪を後ろで纏めている髪型に眼鏡、更に恐らくは作業服の男の分と思われる石矢魔高校の制服を手に持っている男――陣野かおる。

 

 いずれも真ん中に立つ男に負けず劣らずの体格の持ち主だが――ギンッ、と。

 

 先程までの、神崎一が創り出していた空気とは――違う。

 

 冷たくもないのに、背筋が凍る。

 張り詰めてもいないのに、息が詰まる。

 

 重く、苦しく、圧し掛かるような――迫力。

 

「なに言ってんだ、かおる――」

 

 二人の大柄な男の中心に立つ、汚れ(まみ)れの――赤い返り血がこびりついている作業服を纏った、猛獣の鬣のように逆立つ金髪の男が。

 

 一歩、大きく、前に出る――たったそれだけで、体育館全体が、揺れ動いた錯覚を覚えた。

 

「――っ!?」

 

 気が付いたら、夏目慎太郎も、パイプ椅子から立ち上がっていた――反射的に、後ろを振り返り、臨戦態勢を取らずにはいられなかった。

 

(…………なんだ、あの男は――!?)

 

 猛獣のような男は、飢えた獣のように瞳を爛々と輝かせて、己の首筋に手を伸ばす。

 

「ここは石矢魔だぜ。制服だの、校則だの、そんなもんどうだっていいだろう。ここは、()()()()()()じゃねぇだろうが」

 

 そして、ゴギッ――と。大きく音を鳴らす。

 

「さあ、お前ら。遅れちまったが、俺も混ぜてくれよ。石矢魔高校の入学式によ」

 

 気付けば、全員が、その男に呑まれていた。

 

 神崎一も、城山猛も――そして、夏目慎太郎も。

 

 他の新入生も、教師陣も。

 相沢庄次は楽しげに笑いながら背筋を震わせ、陣野かおるは溜息を吐きながら眼鏡を外した。

 

 そして、この場の中心になった男は――たった一言、こう告げた。

 

「さあ――喧嘩、しようぜ」

 

 瞬間――入学式が始まった。

 

 体育館内が、怒号と雄叫びで包まれる。

 

 殴り、蹴り、喧嘩する。

 手当たり次第に戦い、倒れ、立ち上がる。

 

 それは正しく、石矢魔高校という学校を象徴するに相応しい入学式だった。

 

 これが、少し先の未来にて、石矢魔高校最強の男として名を上げ。

 

 やがて――世界を救った英雄の一角に名を連ねることになる男。

 

 東条英虎の、鮮烈なる高校デビューだった。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 回想出来たのはそこまでだった。

 

 ふらつきながらも、よろめきながらも、立ち上がることの出来た夏目慎太郎は、そこから先の記憶がないことに絶句する。

 

(……なんだ、それ。まさか、この俺が、開戦早々に敗退したっていうのか。……この、俺が……っ!)

 

 確かに今はプライベート故に、制服の下は普段着とはいえ、それでも――こんなことは今までなかった。一度だって、なかった筈だ。

 

「――っ!?」

 

 その時、突然襲った頭痛、そして、それによって押し出されたかのように噴き出す――これは――。

 

(――鼻血……だと。まさか、まさかまさかまさか。この俺が、無様に、顔面に攻撃を受けて……気絶してたっていうのか……っ!)

 

 絶句が止まらない。自分の身に受けた現実が信じられない。

 そして――段々と現実を受け入れなくてはならなくなるにつれて、マグマのように怒りが湧き起こってくる。

 

(……っ! なめやがってッ! ふざけやがってッ! 調子に乗るんじゃ――)

 

 顔を上げて、これをやった奴を殺そうと思って――今、再び、絶句した。

 

 

 体育館の床一面に、新入生が敷き詰められていた。

 

 

「……っ!」

 

 一学年、優に百人は超えているであろう、色とりどりの髪色を持つ自称不良生徒達が、まるでお花畑を作るかのように、ぐったりと倒れ伏せていた。

 

 夏目の背後の、体育館のステージ上に垂れ下がっている『石矢魔高校 入学式』の文字が、こうなってくると異様でしかなかった。

 

 いくら、天下の不良高校とはいえ、最初の一日目から、こんな地獄絵図が生まれるものなのか。

 

 

 

 

 

「――こんなのは、我が校といっても前代未聞ですよ!」

 

 体育館から職員室へ向かう道中、今年、石矢魔高校に配属されて十二年目を迎えるベテラン教師である教頭先生が叫んだ。

 

 荒れ狂いに荒れ狂った石矢魔高校において、勤続十年を越える教師は、どれだけ進学実績が悪くてもそれだけで教師仲間に(ある意味)尊敬される偉業であるが、そんな(ある意味)伝説の教師である教頭先生を以ってしても、今年の入学式は異常であるようだった。

 

「一昨年の彼女も相当なものでしたが……今年はそれに負けず劣らずの問題児が、それも複数いるようですな」

「まぁ、問題児ではない生徒の方が希少な学校ではありますが……この分だと、彼等が卒業するまでに、もしかしたら校舎が持たないかもしれませんな」

「冗談ではない! 更に今年の新入生には――あの鑑別所帰りの鬼束みさおがいるんですよ! 今日は彼は来ていないようですが、この上、奴まで登校するようになったら――」

 

「――大丈夫です。アイツはしばらく登校してきませんよ」

 

 教師達の嘆きの連鎖を止めたのは、彼等を職員室まで送り届ける役目を買って出た、陣野かおるだった。

 

 だが、どうやら入学式ということで校内には在校生は誰もおらず、新入生のお友達も校内に待ち伏せのようなことはしていないようだった。陣野の懸念は杞憂に終わり、教師達を送り届けたら体育館に戻ろうと画策した。

 

(――まぁ、どうせもう終わってるだろうが)

 

 懐から取り出した単語帳を眺めるも、そういえば眼鏡を外していたんだと気づき、再び懐に仕舞おうとしたところで、絶句していた教師の一人が、恐る恐る陣野に尋ねる。

 

「あ、あの……陣野、くん、だったか?」

「……ええ。陣野かおるです」

「き、君が入試できちんと点数が取れていた数少ない……そ、それはそうと、さっきのはどういう意味なんだい?」

「……さっきの?」

「ほ、ほら。鬼束くんが、しばらく登校してこないっていう――」

「――ああ」

 

 陣野は、単語帳を懐にしまったところで、足を止めていた教師を追い抜きながら、先頭に立って、何気なしに言う。

 

 

「アイツは、ここに来る途中、虎が潰しましたから」

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 不良達が敷き詰められるお花畑な地獄絵図の中に、立っていたのは夏目慎太郎だけではなかった。

 

 当然ながら当然として、それを作り出した男がいる。

 

 そして、その男は、今も威風堂々と立っている。

 

 鬼束ちひろの返り血で汚れていた作業服を、更に赤く汚しながらも。

 己の血は一滴たりとも流さず、背中は真っ白なTシャツのままに。

 

 一歩も逃げず、一歩も退かず、百人以上の男達を殴り飛ばした――最強の姿。

 

 その背中を眺めて、ボロボロになりながらも両膝に手を着きながら、何とか立ち続ける丸いサングラスの男――相沢庄次は、憧れずにはいられなかった。

 

(……ああ。やっぱり、かっけーな)

 

 

 

 

 

 今朝、この石矢魔高校の入学式へと向かう途中、相沢庄次はドレッドヘアの巨漢に絡まれた。

 

 彼こそは、鬼束ちひろ――中学時代、前代未聞の暴力事件を起こし、一年間を鑑別所で過ごすことになった、この地区の不良達にとっては知らないものはいない程のビッグネームである。

 

(……はっ。ついてねーな。まさか、初日からこんなヤツに目を付けられることになるなんて――ね)

 

 鬼束は、地面に倒れ伏せた相沢の髪を掴んで持ち上げると、楽しそうに笑いながら言う。

 

「――カッ、なかなか楽しかったぜ! 中学ん時には、お前くらい歯ごたえのあるヤツはいなかった」

「……そりゃあ、どーも」

「ああ。お陰で、しばらくは楽しめそうだ。やっぱ石矢魔を選んで正解だったぜ」

 

 そしてドレッドヘアの男は、そのまま拳を握り、腕を引く。

 

「まずは、一人目――ッ!」

 

 が――引いた腕を、握った拳を、前に突き出せない。

 

 鬼束が、ゆっくりと振り向いた。

 

 そこには――虎がいた。

 

「――あぁ? なんだ、テメェは」

「わりぃな。お前の喧嘩の邪魔しちまって。けどよ、そこ通してくんねぇか。遅刻なんだよ」

 

 相沢は、突如として割り込んできた乱入者の姿を見る。

 汗臭そうな工事現場の作業服。鬣のように逆立つ金髪。そして――肩に掛ける、石矢魔高校の制服。

 

「……テメェ、まさか――石矢魔か?」

「ん? そうだぜ。これから入学式なんだよ。だから通し――ッ!」

 

 鬼束は乱雑にパッと相沢を離すと、その拳をそのまま乱入者に向けて放った。

 

 ドガッ、と、拳が男の顔面を捉える――正確には、乱入者の額にヒットした。

 

 たらりと、流れる赤い血――それは、鬼束ちひろの拳から流れたものだった。

 

「……ほう」

「…………」

 

 拳を下し、己のパンチを頭突きで相殺した乱入者を睨み付ける鬼束。

 そして、その眼光を真っ向から受け止め、そして笑う、獣のような男。

 

「――かおる。これ持ってろ」

「……はあ。もう入学式は始まる時間だ。手早く済ませろ」

 

 乱入者は、肩に掛けていた石矢魔の制服を、一緒にいた眼鏡の大男に預ける。

 

「ハッ、そうこなくちゃな」

 

 鬼束も乱雑に手放した相沢から目を切り、作業服の乱入者と向き合う。

 

「……大丈夫か?」

「……あんたら、一体――」

「大丈夫だ」

 

 鬼束と乱入者が顔をくっつけるかのような至近距離で楽し気に睨み合う中、相沢は己に近付いてきた眼鏡の男を見上げる。

 

「お前がそれなりにやることも、そんなお前をそんなにしたアイツがそれ以上にやることも、分かる。その上で言ってる――大丈夫だ」

「……どうして、そんなこと簡単に言えんだ?」

「簡単だ。単純だ。明快だ」

 

 眼鏡の男――陣野かおるは、何の感慨もなく、ただ当たり前の事実だけを告げた。

 

 

「虎は――東条英虎は、それ以上に強い」

 

 

 次の瞬間――凶悪な笑みを浮かべた大男同士が、巨大な拳を交わし合った。

 

 相沢庄次は、己の世界が壊れる音を聞いた。

 

 

 

 その男は――強かった。己の拳が小さく見える程に。

 

 

「……やるじゃねえか。根性あったぜ、お前」

 

 倒れ伏せる鬼束を前に、口元の血を拭いながら、それでも楽しそうに笑う東条。

 そんな東条に、喧嘩が始まる前とまるで変わらぬトーンで話しかける陣野。

 

「……思ったよりも手こずったな」

「ああ、たぶんお前よりつえーぞ、コイツ」

「だろうな。虎に対して一歩も退かない奴を、久しぶりに見た」

 

 そう言って、二人は登校を再開する。

 まるで何もなかったかのように。まるで、これがいつもと変わらぬ日常であるかのように。

 

 

 

 その男は――大きかった。己の心がちっぽけに感じる程に。

 

 

 自分とそれほど身長も、恐らくは体重も変わらない筈なのに。

 その真っ白な背中が、見上げる程に大きく、高く――遠く感じた。

 

(……いや、見上げているのは、俺がまだ――座り込んでいるからだろ)

 

 そこでようやく、自分が一歩も動いていないことに気付いた。

 立ち上がってすらいなかった。それほどまでに――自分は、この男に、見惚れていた。

 

 だが――今だ。今しかない。今を逃せば、自分はずっとこの男を、見上げたままだ。

 

 見えなくなるまで見送ってしまったら、きっともう届かない。

 

 世界が壊れて――この男が壊して、もっと広い世界を知った。

 

(なら――踏み出さなきゃ、嘘だろッ!)

 

 その時――きっと相沢は、笑っていた。

 

「あのッ!」

 

 膝にこれ以上なく力を入れて立ち上がり、相沢は、その背中に向かって声を張り上げた。

 

「俺を……アンタの――」

 

 

 

 

 

(――とは、言ったものの……いやぁー、遠いねぇ)

 

 目の前に広がるのは、自称不良生徒達の凄惨な花畑。

 その前に立つのは、未だ真っ白な背中を見せ続ける――最強の姿。

 

 己もすぐ傍に立っているのに、座り込むことなく耐えているのに、まるで届きそうもない――海や空のようだ。

 

(でけぇ……だけど…………だからこそ、だ)

 

 今にも座り込みそうになるのを、相沢はへらへら笑いながら耐え続ける。

 

 そして――まっすぐに、背筋を伸ばす。このデカい男の隣に、堂々と立ち続ける為に。

 

(俺は……この人についていく。この人となら、なんかきっとデカいことが出来る気がするんだ)

 

 入学式の主役たる新入生に相応しい心持ちで、相沢がこれから始まる高校生活に胸を膨らませる中――彼の背後の扉が開き、陣野かおるが体育館に帰還するのと、同時に。

 

 不良生徒の花畑から、二人の男がゆっくりと立ち上がった。

 

 その男は、顔面以外を綺麗な格好のままで倒れ伏せていた、夏目慎太郎と。

 

 見るも無残に自身の血で汚れた満身創痍の男――神崎一だった。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 夏目は、その男の姿に瞠目した。

 

(アイツは……だが、どうして――)

 

 確かに、この体育館の床に転がっている新入生の中では別格ではあると思っていた。

 それでも、あくまで、面白そう――程度。やり合うことになったら100%勝てると思っていたし、こんな事態に至った今では、正直、眼中になかった。

 

 だが、あの満身創痍の姿を見れば、一目瞭然だ。

 

 あの男は、自分よりも――遥かに、あの最強に立ち向かっていた。

 

 恐らくは、たった一発で沈んでいただろう、この夏目慎太郎よりも。

 

 何発も、何発も。そして、何度も、何度も――立ち上がっていた。

 

「……おいおい、アンタまだやるのかい。流石にもう死んじまうぜ」

 

 いや、本当にいい加減にしとけよ、マジで――相沢は、へらへら笑いながらも、内心で冷や汗を搔きながら言った。

 

 くすんだ金髪を乾いた黒い血で染め上げ、なおもだくだくと流れ続ける額の傷からの新鮮な赤い血で視界を奪われ、真新しかった制服は無残にボロボロとなり、もはやまっすぐに立つことすら出来ずにフラフラで。

 

 それでも――神崎一は、己の負けを認めようとしなかった。

 

 初めは典型的な咬ませ犬だと思った。

 真っ先に東条に向かって特攻し、挨拶代わりの拳で簡単に吹き飛ばされた。

 

 入学式用に並べられた椅子をまるでボウリングのように薙ぎ倒しながら、有象無象のモブキャラの海へと沈められた筈だ。

 

(……そうだ。そこまでは……何とか、思い出せた。正直、俺の中ではそこでコイツに対する見切りはつけたんだ)

 

 夏目の興味はそこで完全に東条へと切り替わっていた。神崎はこの時点で、夏目の中ではモブキャラになった。

 

 自分はこの後、東条へと不意打ち気味に背後から一撃を加えようとしたが――恐らくは、その時、返り討ちにあったのだろう。

 神崎を一撃でKO(ノックアウト)した一幕を見て、警戒して臨んだつもりだったが――それでも、消えない驕りがあった。所詮、高校生の不良気取りだと――只の人間だと、高を括っていた。

 

(違う……コイツは、怪物だ……っ。俺が、今まで出会ったことのない――本当の、)

 

 最強――その言葉が脳裏を過ぎりかけた時、夏目は自分の額を殴りつけた。

 

「…………ッ! 違う…………っ!」

 

 違う。違う。違う。

 そんなわけがない。そんな筈がない。()()()()()()()()()()()()()()()

 もし、そんなものが実在するとしたら、間違いなくその中には自分がいる筈だ。夏目慎太郎にはその資格がある筈だ。

 

 夏目は鼻からだけでなく額からも血を流しながら、己の足を取るように足元まで転がっている新入生を睨み付ける。

 

 違う――俺は、違う。

 

 目を逸らすように、夏目は二人の男を睨み付ける。

 

 威風堂々と君臨する最強――東条英虎。

 そして、そんな男の前に立つボロボロの弱者――神崎一。

 

 夏目の目は、やがて――神崎一に、固定された。

 

(……なんなんだ、アイツは…………ッ)

 

 東条英虎――あの男の異常さは、既にここにいる全員が思い知らされた。

 たった一発の拳で、ここに転がる全員が思い知らされたはずだ。

 

 この男は、怪物だ。この男は――最強だ。

 どれだけ認めたくないことでも、頭では何度も否定し続けていても――それでも、理解、させられた筈だ。

 

 夏目慎太郎は、決して認めないけれど、それでも認めさせられていた。

 

 この男は――違う。

 棲息するステージが違う。見えている景色が違う。住む世界が――違うのだ。

 

 夏目は、相沢は、気付いている。

 既にこの敗北者の海の中でも、意識を取り戻している奴等は、数人だがいる。

 

 それでも、立ち上がっているのは、夏目と、神崎だけだ。

 顔を上げているのを含めても、あの三つ編みの男――城山を加えて、三人だけ。

 

 夏目と城山は――それでも、拳を握れない。

 あの男の一撃を受けて、体よりも先に心が折れてしまった。

 

(……ふざけるな。俺は、こんなにもダサい男だったのか。神に愛されてはいなくても……俺は……俺は……僕は――ッ)

 

 こんな思いをするために、あの真っ暗なゲーム部屋を出たわけではない。

 生まれ変わった筈だ。あの夜に――あの部屋で。

 

 神に愛されていなくても――選ばれた存在ではある筈だ。

 

 なのに――こんな、高校生の不良の喧嘩で、ここまで無様な醜態を晒すような。

 

 そんな程度の、存在なのか。

 

 あの――ボロボロで、ズタズタで、フラフラな、敗者よりも。

 

 夏目慎太郎は――つまらない、存在なのか。

 

「――――ッッ!! 違うっっ!!」

 

 足元に転がる敗者を足蹴に、夏目は駆けた。

 

 住む世界が違う怪物に、格の違いを思い知らされた最強に、無策に愚直に突っ込んでいく。

 

 この時初めて東条は、夏目を一瞥して――そして。

 

「お前――強えが、つまんねえよ」

 

 獰猛な笑みを――神崎に、向けた。

 

「――ッ! ふ――」

 

 その行為に、夏目の頭は沸騰し――。

 

 

「――邪魔だ」

 

 

 神崎一に、叩き落された。

 

(――――な)

 

 全く予想外の角度から打ち込まれた一撃に、夏目は再び体育館の床に倒れ伏せる。

 

 その光景には、夏目だけでなく、相沢も、そして未だ立ち上がることすら出来ない城山すらも瞠目した。

 

 神崎は、ふらりと大きくバランスを崩しながらも、決して倒れずに――胸を張る。

 

 夏目は肉体的ダメージではなく、精神的ショックによって立ち上がることが出来なかった。

 攻撃の重さとしては、東条のそれとはまるで比べ物にならない。

 たまたま全くの無警戒の角度とタイミングから叩き込まれた故に衝撃としては大きかったが、すぐに反撃も可能であった筈の――その程度の攻撃。

 

 だが、この踵落としは、夏目にとっては今までに受けたことのない――そんな一撃だった。

 

 夏目は見上げる。

 

 最強の怪物と――凡庸な弱者を。

 

「……やめておけ。どれだけ足掻こうと結果は変わらない」

 

 冷たく、静かな声で――陣野かおるは、そんな弱者に現実を告げる。

 

「認めろ。そして楽になれ。野良猫では――虎には勝てん」

 

 そんな慈悲深い救いの言葉を――不良は、鼻で笑った。

 

「――知らねぇよ。知ったこっちゃねぇんだよ、んなこたぁ」

 

 不良品は、正しい言葉では動かせない。

 

 間違っていようが関係ない。誰かが決めたルールなどに縛られない。

 

「どうして、そこまで意地になる」

「分かってねぇな。お利口さんは黙ってろ」

 

 従うのは、どこまでも阿呆らしい、単純な感情。

 

「意地は通してなんぼだろうーが」

 

 神崎一は馬鹿だ。神崎一は弱者だ。

 

 神崎一は愚かで――だから。

 

「見下してんじゃねぇよ。俺が頂上(トップ)だ」

 

 神崎一は――折れない。

 

(――――コイツ)

 

 いつの間にか、夏目はボロボロの背中を見ていた。

 

 夏目だけではない。きっと、立ち上がれない城山も、何度でも立ち上がる馬鹿な男の小さな背中を見上げていた。

 

 相沢は笑い、陣野は瞑目する。それでも――誰も、嘲笑(わら)う者はいなかった。

 

 何故なら、ここは――そんな選りすぐりの馬鹿達が集まる、天下随一のクズの巣窟。

 

 県立石矢魔高校なのだから。

 

「――はっ。いいな。楽しい高校生活になりそうだ」

 

 次の瞬間――決着はついた。

 

 東条により神崎が石矢魔高校の()()()()まで吹き飛ばされて――石矢魔高校史上、最も凄惨な入学式は幕を閉じた。

 




こうして、クズ達の青春は、馬鹿な喧嘩に彩られる阿呆らしい入学式によって幕を開ける。

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