東方魔法録   作:koth3

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追記 祝五十話
これからもがんばります。
koth3


関西呪術協会の終結

 外から鳥の可愛らしい鳴き声が聞こえる。静寂の中に染みわたるその鳴き声が、人心地つかせると同時に、目覚まし時計のアラームのように響いているが、暖かで柔らかく心地よい布団から出たくなく、ネギは寝返りを打った。

 ふかふかと体を包み、ぬくい温度の布団は、少しの肌寒さも相まって、怠惰の心を捉えて離さない。寝ぼけた頭でネギはもう少しだけ寝ようかなと考えた。

 

「…………え? 布団!?」

 

 寝ぼけていた頭に妙な引っ掛かりが生まれ、一拍置いてネギ現状の異様さに気づき布団を手荒く剥ぐ。わずかな布団の隙間から冷たい外気が一気になだれ込む。

 波音もせず、陽に暖められた草の香りが漂う部屋にネギはいた。障子越しに届く柔らかな光に、一気に寝ぼけていた目が覚め、ネギは呆然としてしまう。そして自分の体をぺたぺたと触り始める。触った部分は腫れや痛みもなく、普段通り、いやそれ以上に調子が良かった。覚えている限り、灼熱の痛みが体の内側で襲い、暴れ続けていたというのに。

 慌てて杖を探すと、すぐそばに、布団の横にスーツと一緒に置かれていた。杖を素早く握ってあたりを警戒し始める。

 

「なにが起きているの? それにあれだけ使った魔力が全快している?」

 

 そして次に気が付いたのは、魔力がネギの体に満ち溢れている事だった。リョウメンスクナとの戦いの前に、かなりの量、それこそ一日休んでいた程度では回復しきれないほどの魔力を使った。だというのに、現存魔力は枯れ果てているどころか水源である泉のごとく満ち満ちている。

 わけのわからない状態に思わずにぎる杖を眺めて考え込んでしまう。

 

「どういうこと? なにが起きたの?」

「起きたか、兄貴!」

「カモ君?」

 

 魔力が僅かに籠る聞きなれた声がした方へ顔を向けると、カモが手鏡をどこからか引っ張り出しており、それに姿を映して丁寧に毛づくろいをしていた。毛並みに満足が行ったらしく、一度うなずいて小さなカモサイズの櫛をしまってからネギの肩までするすると登ってきた。良く見ると、足に小さくはあるが清潔な包帯が巻かれている。一瞬怪我をしているのではないかと心配になったネギだが、けろりとした顔つきに先ほどの軽快な動きから、ほとんど治っているらしいと分かり、胸をなでおろした。

 

「カモ君、なにが起きているの? リョウメンスクナは? 木乃香さんは? それに明日菜さんは」

「木乃香姉さんは無事さ。リョウメンスクナに関しては、俺っちよりも説明してくれる人がいるぜ。姐さんならすぐ会えるさ。それにそろそろ朝食の時間だ。その時に皆と会えるだろうから、そこで色色聞けばいいさ」

 

 カモの話す内容に、ネギは余計現状が分からなくなってしまう。リョウメンスクナの一撃をもらって吹き飛ばされてからが、さっぱり分からない。体の傷がなくなったのも、木乃香が無事なことも、明日菜がどうしているかも。

 特に木乃香と明日菜は生徒だ。ネギが守らなければならない者たちである。無事な姿を攻めて一目見なければ安心できるはずがない。

 カモに、朝食よりも先に二人に会えないかと尋ねようとした時、ネギの後ろからふすまの開く音がし、振り返るとここにいるはずのない――麻帆良に呪術で囚われ、離れることのできない――見慣れた金髪の少女がいた。

 

「起きたか。ほらさっさと来い」

「え、エヴァンジェリンさん?」

 

 とうとう、ネギの頭は現状を理解することを放棄した。

 

 

 

 多少の足音こそあるものの、物静かな渡り廊下を歩きながら見る限り、関西呪術協会は元通りになっていた。一部に騒動で出来てしまった破壊の跡が残っていたが、それ以外はすっかりと綺麗にされている。

 様々な書類や呪具を持って足早にすれ違う人々の姿に、ネギの目は自然と追い出す。石化魔法という最も忌まわしい魔法をかけられたが、無事元の姿に戻れた関西呪術協会の人員の背中を。

 気が散ったまま歩いていたネギに、エヴァンジェリンが前を歩きながら語りかけてきた。慌てて彼女の方を向くが、エヴァンジェリンはネギのことなど気にせずただ前を向いて歩いている。

 

「さて、坊や。どうせ、なぜ私がここにいるかと聞きたいのだろう? いちいちギャーギャー喚かれながら聞かれるのも鬱陶しい。最初から全てを教えてやる。お前の救助要請で、爺が送った助っ人が私。それが答えだ。リョウメンスクナは私が倒した」

 

 簡潔に、あくび交じりにそう語ったエヴァンジェリンの後頭部を、ネギは茫然と眺めた。人を蟻のように吹き飛ばすような化け物をたった一人で倒す。ネギには決してできない圧倒的な力。それはまるでナギ・スプリングフィールド(英雄)と同じように思えた。

 

「ふん、それでお前の体が無事なのは、お前が持っていた魔法薬を使ったからだ。良くあんなものを持っていたな? どうせ爺が用意した代物だろうが。後で感謝しておけ。あれがなければ貴様は死んでいたんだからな。それとだ。関西呪術協会からさっさと私たちは出るぞ。爺の孫娘と、刹那だけを残してな」

「ど、どういうことですか?」

 

 途中の言葉で冷や汗をかき魔法薬という言葉にユギへ感謝をしたネギだが、その後のエヴァンジェリンの言葉に、かみつかざるをえなかった。狙われている木乃香に、その護衛である刹那。二人だけを残してこの場から離れるわけにはいかない。現状が分からずまだ危険があるのかもしれないというのに。教師として、立派な魔法使いとして。

 だがその心はエヴァンジェリンにバッサリと切り捨てられてしまう。

 

「馬鹿者。もう危険はない。すべては昨夜で終わったんだ。それに関西呪術協会で起きたゴタゴタに、私たちが関わってはいけないんだよ。下手を打てば内政干渉と取られ、関西だけでなく、東北や沖縄。あるいはアイヌの生き残りである術師たちが関東魔法協会を侵略者と完全に認定する可能性があるんだぞ。それくらい分かれ。それに木乃香と刹那は元来あちら側だ。あちらの話を聞く必要がある。だがな、私たちにそんな資格はひとつもない。理解しろ、坊や。餓鬼の我が儘に付き合ってくれるほど、組織というのは温くない。関東魔法協会の人間がいてはできない話もあるんだ。なに、向こうも朝食を済ますくらいは待ってくれるさ」

 

 納得できないネギは、しかし反論することが出来なかった。エヴァンジェリンの言葉が正しいと、頭は理解してしまったから。関東魔法協会の人間である自分がいては、迷惑だということを。

 なにも言えないが、それでもネギはうつむいて足を止めた。それがネギにできる精一杯の抗議だった。エヴァンジェリンの足音もついで止まる。ため息をネギは聞いた。

 

「はぁ。坊や。後で、詠春がお前の親父について話をするそうだ」

 

 優しく言われたその言葉に、ネギは大きく心を揺さぶられた。

 

 

 

 

 午後を過ぎ、人気のない指定された場所に向かったネギたちは、無事何事もなく詠春とその傍らにいる木乃香と刹那に再会した。

 スーツに身を包んだ詠春は、どこぞの企業戦士のようだ。長の姿より様になっている。

 今日、初めてあった詠瞬は昨日より幾分頬がこけているように見えるが、それ以外不調な様子は見当たらない。石化魔法の後遺症などはないようだ。

 

「あっ、ネギ君!」

 

 こちらに気が付いたらしく元気よく木乃香は手を振り、刹那は軽く会釈をしてきた。

 

「木乃香さん、刹那さん。それに長さんどうもお待たせしました」

「いえいえ、来たばかりですから。今回の件申し訳ありません、ネギ君。いろいろ内輪もめに巻き込んでしまい」

 

 第一声で謝りながら、詠春はネギたちを迎えた。その声にはわずかな疲れが込められている。疲れているというのに、案内を態々してくれるということに、ネギは感謝を覚えた。

 ネギたちを案内しながら、詠春とエヴァンジェリンは魔法関係の話を進めていく。はたで聞いているネギは、あまり口を出せなかった。純粋な魔法ならばともかく、政治がかかわるとネギにはさっぱり分からない。ただ、今回の騒動における死者が主犯である天ヶ崎千草一人であるということと、犬上小太郎はあまり重い罪に問われないということだけは理解できた。

 死者というその言葉に、ネギは気分が沈む。命を懸けてまで戦う必要はないというのに。ネギには天ヶ崎千草が理解できず、恐ろしい狂った人間にしか見えなかった。

 だが、小太郎の罪が重くないという言葉に、気が楽になった。同い年ということもあるが、ぶつかり合った相手が牢に閉じ込められるというのは悲しいことだった。

 

「ここですよ、ネギ君」

 

 一件の家を前に、詠春は立ち止まった。草木が生い茂り外見が見えないが、魔法に欠かせない天文を調べるための天体ドームがあるなど、ネギの持つ父のイメージと、ぴたりと合うような家だ。

 家へ入ると中は細長く、壁の至る所に本棚が所狭しと並べられ、様々な書物が置かれている。近くにあった書物を抜き取り広げてみると、どうやら魔法がかけられているようで、いたる所に暗号化された文章が書かれていた。ネギの頭脳をもってしても、そう簡単に解けそうにない。鍵となる魔法が基礎から変質していたりなど、基礎的でありながらその実高度なトラップが仕掛けられているからだ。

 

「さすが、父さん! これ一冊だけで、こんな高度な魔法がかけられているなんて!」

 

 夢中になって読み進めていたネギだが、詠春に声をかけられ読み込んでいた本から顔を上げた。ほほえましげなその表情に、恥ずかしい姿を見られたと、顔が熱くなる。あわてて本を閉じて、誤魔化そうとした。

 ナギの家についての感想を詠春に聞かれ、ネギは言葉を尽くして感謝を伝える。その際にこの家の鍵を渡され、いつでも来ていいと言われネギは一瞬喜んだが、すぐにずっと気になっていたことを尋ねた。

 

「僕の父さんについて聞いていいですか?」

「ふむ、そうですね。木乃香に刹那君、そして明日菜君にも聞いてもらった方がいいでしょう」

 

 上層階のバルコニーに呼び出された三人と、エヴァンジェリンを含めたメンバーを一度見回し、詠春は口火を切った。

 

「これを見てください」

 

 詠春が手に取ったのは机にあった写真立てだ。その写真には、若い詠春に、タカミチに似た中年の男性、大柄で褐色な男、ネギとそう変わらない少年に、ローブを頭からすっぽりとかぶり、一冊の本を胸に抱いた中性的な人がいる。そしてそのまん中に目を釣り目にしたネギとそっくりな赤毛の男の人がいた。

 

「真ん中にいるのが、ナギ、サウザンドマスターです。私はかつて、彼とともに大戦と呼ばれる争いに参加して戦いました。その戦いは、世界の命運を左右する、それほど大きな戦いだったのです。それを終わらせ、平和を造り上げたあいつを、いつしか人々はサウザンドマスターと称えるようになりました。しかし、十年前、突如あいつは姿を消したのです。誰にも、なにも言わずに」

 

 それ以上のことは分からないと首を振り申し訳なさそうに告げる詠春に、ネギは心の底から感謝を伝え、バルコニーから家全体を眺めた。在りし日の、ネギが知らない父の姿を求めながら。

 

「ネギ君、これを持っていきなさい」

「え?」

 

 そうしていると、最後に詠春から一巻の紙を渡された。それの正体はまだわからないが、自由時間も押しており、ネギはそれを大切に持って生徒たちともに家を後にした。

 

 

 

 ネギをナギの家に案内した後、詠春は疲れ切った体に鞭を打って、関西呪術協会へ舞い戻った。

 いまだ昨日の天ヶ崎千草の襲撃とリョウメンスクナ召喚による後処理が終わっていない。有能な部下がたくさんいるため、ネギのために僅かな時間が取れたが、それでもやはり忙しいことに変わりはない。やはり自分は事務などではなく、刀を担いで戦う方が気は楽だ、と大量の書類を前に詠春は思う。とはいえ、戦友の忘れ形見に娘とその親友と出かけられたのは、心安らぎ少しだけ肩の荷が取れた。

 未処理の書類を取り出し、机に置く。仕事はまだまだある。早いところ終わらせなければならない。この仕事を終わらせたら、詠瞬には関東魔法協会の融和を進めるという仕事がある。手間取るわけにはいかない。第二、第三の天ヶ崎千草を生み出してはならない。

 

「やれやれ、そうしないためにもいろいろ頑張らなければなりませんね。次はこの書類ですか」

 

 文机に置いた書類を眺め、詠春は筆を取ろうとした。

 

「いや、もうその必要はない」

「っ!?」

 

 素早く振り返り、近くに置いておいた無銘の、しかし名刀に匹敵する刀の柄に手をかける。襲撃された昨日の今日。警戒は密にしていたというのに、それをあっさりと抜かれた事実に、詠春は驚愕を覚えた。汗で刀の柄が湿っていく。

 

「動くな」

 

 いくつものまったく異なる符が、眼前に突きつけられる。関西呪術協会において、最高権力に匹敵する九人の幹部が、詠春へと符を向けていた。

 この状態では神鳴流のどの技を放つよりも、彼らの術が発動する方が速い。相打ちにすらできない。

 だが、なによりも。

 

「ば、馬鹿な! なにをしているか、分かっているのですか!」

 

 詠春はこの状況を理解する事が出来なかった。幹部までもが、関西呪術協会を裏切ると、詠春は考えていなかった。

 戦慄きながら叫んだ言葉に、幹部たちは冷たく、白けた瞳に敵意だけを光らせて返答する。

 

「ああ、当然な。どうせ、貴様は我らがクーデターを起こしたとでも思っているだろうが、違う。これは関西呪術協会の意志だ。今の長はいらないというな。貴様の無能さには腹が立つが、感謝するよ。お前への呆れで我らの意志がひとつになったことだけは」

 

 それと同時に、幾人もの荒々しい足音が渡り廊下から聞こえてくる。恐らくは本山にいる呪術師だろう。今ここにいるのは、詠春についてきてくれる長派といわれる穏健派ばかりだ。このままここに来れば、長である詠春を守るために戦おうとしてしまう。しかし目の前にいるのは幹部。一介の陰陽師にどうにかできるものではない。だからといって、声を上げることもできない。それだけの隙を見せるわけにいかない。

 部屋を開けたのは、自分に忠誠的な、信頼できる部下だった。

 

「な、ぜ?」

 

 だが彼女たちは顔色ひとつ変えずに、幹部たちへ符を向けるのでなく、詠春へと向けてきた。その眼に、憎しみを込めて。唖然として、詠春が柄を握る力が緩くなる。

 淡々と、一人の少女が前へ出てきて言葉を紡ぎだす。

 

「貴方は言いました。戦いはおろかだと。そして憎しみは、いつしか戦いを呼び寄せてしまうと。だから憎しみを持ってはいけないと。たとえどれほど憎くても、災厄の鎖を断ち切るために、関東と手を結ぶ必要があると。私たちはその考えに共感して、貴方についていきました。関西呪術協会がバラバラになっていったのを理解しても、それが最善だと信じて。それが、どうですか。誰よりも関西呪術協会を愛していた天ヶ崎千草が本山を襲いました。多くの仲間が関東の魔法使いたちが使う呪術で石化しました。すべて、貴方が言った通りにしていたがためです。私たちは貴方を信じられなくなりました。戦わないことが平和へとつながるというその言葉を。それに、貴方は私たちを見ていないじゃないですか。先ほど、貴方は石化魔法から解放された私たちより、一人の少年を優先しました。そこで理解してしまったのです。貴方は私たちを見ていない。当の昔に、私たちは貴方に見捨てられているということを」

 

 そう言う彼女の言葉に、周りの長派が無言で涙を流す。

 ようやく詠春は覚った。自分がしてきたことは、無駄どころか、彼女らを傷つけてきたということを。自分についてきてくれた相手を裏切ったということを。

 

「ここは陰陽師の居場所。神鳴流剣士などいらない。さっさと去ね!」

 

 その言葉とともに、詠春は関西呪術協会の長ではなくなった。それを突きつけられ、なにも言うことが出来ないでいた。

 黙って詠春は立ち上がる。幸い、政務の忙しさで私物はほとんどない。服などはいくらでも後で用意できる。だから服もいらない。せめてと木乃香の写真が入ったアルバムに、あとは刀さえあれば、それでいい。生きていける。彼にはそれだけで事足りた。

 そこまで考え、詠春は理解した。先ほど考えていた、刀を持つ方が気楽だというのは、生ぬるい。自分は刀しかなかった男だと。

 荷物をまとめるのに五分もなかった。本当に必要な物だけは簡単に用意できた。

 詠春は本山を出ていく。道行く人々はすべて敵意と警戒をあらわにし、ひどい場合には符を向けてくることもあった。もし刀を持っていなければ、符を投げつけてきたかもしれない。そう思うと、悲しくなった。

 近衛家に婿入りして、長として頑張った。木乃香を守るために。だが、それは誰にも理解されなかった。いや、理解されないではない。自分が間違えていたと、詠春はいやでも突きつけられた。木乃香だけを考えていたがゆえに、他者をないがしろにしていた。それで着いて来てくれる者などいるはずもないというのに。

 本山の門を出た瞬間、新たな結界が背後で張りなおされる。それは、詠瞬がもう二度と足を踏み入れられないようにするための結界だ。本山の結界は、悪しき者などを阻む。関西呪術協会は、詠春を妖と同列に扱うことにしたということだ。

 

「私は、どこで間違えたのでしょうか?」

 

 額に手を当て、詠春は呟いた。言葉に出さずにはいられなかった。夢のようにふわふわと曖昧で、それでいて現実の苦しみが襲う。

 

「そんなもの簡単だ。お前は刀を持って戦うだけで良かった」

 

 声がした。振り向くと、烏帽子をかぶった、神々しさすら感じられる男がそこにいる。門に背中を預け、こちらを見ている。

 警戒とともに、一応誰何(すいか)する。

 

「誰ですか、あなたは?」

「お前なんぞに教えるほど、我が名は安くない」

 

 怒りすら詠春は湧かなかった。

 

「お前のようなものは、刀を手にして前に出ることしかできん。それは歴史が証明している。見てみろ、武士が建てた幕府は、せいぜい三代までしかうまくいかん。それはなぜか分かるか? 分からんだろう。武士は戦うことがすべてだ。それをはき違え、同じ貴族だからと上位の貴族の仕事である政治を奪った。それがお前たちの間違いの原因だ。武士は刀を持って戦うだけでいい。それを忘れた者にまともなことができるはずもないだろう」

 

 そう言い、男は門の中へ入っていった。

 後に残された詠春は、なにも言わず背を向け、山を下りていく。涙すら流れず、ただ打ちのめされて。




 詳しい説明というか言い訳みたいなものですが、そもそも本部を襲撃され、その長が本部を無視して客を案内するって、どうなの? という疑問から、長派の人間が離反するきっかけにしました。というより、見ず知らずの相手を優先されたら、そりゃ人心が離れていくのも仕方がないと思うのです、作者は。
 また作中に出てきた高度な魔法云々は、完全にネギの深読みです。基本的な魔法はネギの方がナギより上手いです。力任せのナギの魔法では、術式が歪んでしまうのでは? 特に細かい魔法は。(登校地獄は実際めちゃくちゃっぽいですし)

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