東方魔法録   作:koth3

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最終課題

 結局ネギたちは捜索されることもなく、試験日に遅れてやってきた。殆どの教師は生徒が無事であったことに安堵して、それと同時にネギに怒りを覚えた。生徒と一緒に行方不明になって、さらには生徒たちと一緒に今頃学校へ登校したのだ。本来なら、無事麻帆良へ帰ったのなら、何をおいても連絡するべきだというのに。しかし、ネギはそんな事をしなかった。連絡の重要性を知らなかったからだ。

 それでいながら、ネギは他の教師に詳しい話を求められても誤魔化すばかりで、きちんと最後まで話をしなかった。魔法が関係しているために、一般人である彼らに話さないというのは、魔法使いとしては正しかった。しかし、それは教師としては不正解だった。ネギは知らず知らずのうち、教師の一部、つまりは魔法先生のみに、認められ、一般の教師たちからは認められなくなっていく。

 ネギの修行は今この時、完全に失敗していた。周りから不審を覚えられてはいけないというのに、不審しか与えていないネギが、如何して修行を続けることを認められる? 普通なら修行は失敗と判断されて、学園に戻されるだろう。しかし、ネギは違う。例えいくら怪しまれて、不審に思われてもネギだけは麻帆良学園は放さない。どれだけ一般人と感性が離れたとしても、結局ネギに求めているのは只の英雄という分かり易い旗頭。それだけ作れれば良いのだ。

 だから、学園の上層部は今回の件を起こして、ネギに相応しい人材をマークさせた。戦闘能力、状況判断能力。そしてネギを支える心理的なサポート。それらを誰がどれくらいできるか。それを調べるために。

 それを一瞬で理解した黒は、だからこそ下らないと判断して彼らの論争には触れなかった。どのような結果が出ようとも、黒は別に良かった。例え、学園から追い出されても、イギリスへ帰るときに事故を起こして死を偽造して自由に行動する事が出来る。だから、積極的に関係する必要もない。傍観して、最適な状況を見極め続けていた。

 

「どうやら、私たちは最終試験は失敗のようですね」

 

 今、黒たちの前には巨大な電光板があり、そこには最下位2-Aと大きく表示された看板がある。それを見たネギが何かを振り払うかのように大広間から出て、走っていくのを傍目で確認しながら落ち着き払いながら生徒たちに挨拶を交わしていく。

 

「今まで短い間ですが、ありがとうございました」

「そんな、ネギ先生だけではなく、ユギ先生までいなくなってしまうなんて!」

 

 大げさに反応する生徒もいれば、中には困惑する生徒もいる。

 

――先生! 先生が居なくなってしまったら、私は如何すれば!!

 

 涙を流しながら、さよは黒の胸に飛び込みすり抜けていく。

 

――もう! 何ですり抜けちゃうんですか! 普通こういうときは抱きしめて安心させるとか――

「大丈夫ですよ。別にいなくなりませんから(・・・・・・・・・・・・)

――へ?

 

 さよがすっとぼけた声を上げた時、電光掲示板の表示が切り替わり、そこには『審議中』と書かれていた。

 黒はこの事を知っていたのだ。というより、ネギが居なくなったせいで、本来の教科以外にもテストを作成する必要が出来てしまい、黒は2-Aの英語と理科の採点を行う羽目になった。その為、今回騒動を起こした生徒たちのテストが無い事を知っており、あの結果は不適切であるという事も理解していた。

 単純に先ほどの行動は、落ち込んだフリだったいう事だ。

 

――じゃあ!

「最下位はさすがに脱出できているでしょう。あとはどれくらい上がっているかですね」

 

 明るい声をさよは上げ、喜び始める。さよは今回の件で、クラスの全員に負い目が有った。さよは死者の魂であり、現在は亡霊と呼ばれるような状態だ。つまりは、生きていない(・・・・・・)。だというのに、クラス名簿に書かれており、自動的に定期テストなどで零点を取ってしまう。何せ、そもそもテスト事態を受けられないのだから、仕方がない。だから、常々他の全員に負担をかけてしまっていると思い込んでいた。それなのに、今回はさらに自分の所為でネギと黒が辞めてしまうかもしれないと、ショックを受けていた。

 だが、それがなくなったのだ。さよの周りの空気が、普段よりもずっと軽くなっていく。しかし、それに反比例している存在も近くにはいた。

 

「さて、それでは春休みの期間、愚兄と数名の生徒には、新田教諭の説教と補習を受けてもらいますか」

――は、はわわわぁあああ!!

 

 のちにさよは語った。笑顔が威嚇というのは本当だったと。

 良い笑顔を浮かべたまま、黒は新田教諭に近づいていく。そして、

 

「あんの、莫迦どもが!!!!!」

 

 新田活火山が噴火した。只でさえ、噴火寸前だった状態なのに、行方不明になった生徒たちの探していた物を言われたことで、限界を越えてしまったようだ。顔を真っ赤に染めて、室内にいるすべての生徒が新田教諭を見るほどの怒声を上げてから、ドスドスと足音激しく去っていく。

 

――な、何したんですか?

「いえ何、ズルをしたのなら、その報いを受けるのは当然でしょう? 因果応報ですよ」

 

 クスクスという笑い声の後に、数名の生徒の悲鳴と、ネギの叫び声が学園内に響き渡った。




新田先生大激怒。彼女らにはたっぷりのお説教が行われて、泣きながら罰を受けることに。ズルは良くないという事ですね。

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