東方魔法録   作:koth3

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短いおよび地の文だけですが、なんとか次話を投稿します


『妖怪』の真相

 そも、妖怪、怪異、モンスター、デーモン。あるいは、神使や天使、神々などの幻想は一体どこから生まれたのでしょうか。

 人々と同じように、彼らにも親に当たる存在がいて、そこから生まれたのでしょうか。

 いいえ、違います。彼らに親は存在しません。生物学的な繁殖など行われないのです。ただそこにあり続けるのです。

 では、彼らの始まりとは一体何なのでしょうか?

 その答えこそが、彼らを幻想と言わしめ、同時に人類共通の敵であり、味方であり続けた理由なのです。

 彼ら幻想は、人々の心が生み出したのです。

 自分たちの血をすすっているかのように生きる貴族が怖い。だからヴァンパイアが生まれた。

 心を読まれるのが怖い。だから(さとり)が生まれた。

 人々が突然消えるのが怖い。だから神隠しを行う妖怪が生まれた。

 すべてすべて人の心が世の中に投射した恐怖なのです。恐怖の影が実体化した存在。それこそが幻想なのです。そしてだからこそ、妖怪はいつまでも存在し続けるはずでした。永久に渡り、人々の脅威として。

 当たり前です。どれだけ科学が発達しようとも、心の動きまでは制御できません。何かに恐怖を感じることは生物として至極当然です。恐怖を完全に克服するなどできやしないのです。だから、恐怖を糧とする妖怪は、幻想は消えるなど、ありえなかったはずでした。

 しかし、人間は愚かでした。ええ、本当に愚かとしか言い様がないのです。

 人は、恐怖が消えないのであれば、恐怖をごまかすことを選んだのです。

 あるときです。それはあるときあなたたち人間の深層心理の奥からあふれ出した考えだったのです。全世界で全く無関係な人々が、全く同時に、全く同じ儀式を行いました。その結果、幻想たちの消滅が始まりました。

 その儀式の詳細は、語るもおぞましいものです。しかしあなたたちにはお伝えしましょう。特にネギ君。君は知らねばならない。でなければ、なぜ君の弟があのような暴挙に出たのか、分からずじまいでしょう。

 かつて闇は、人の隣にありました。それは当然のことです。しかしいつしか人は驕り、高ぶりました。どうにかしてその闇を取り除けないかと。

 当然ですが、それは不可能です。闇とは自然そのもの。自然をなくすことなどできはしないのです。

 人間とてそんな自明の理が分からぬほど愚かではありません。彼らは脅威をなくせないならば、脅威を減らせないかと考えたのです。

 そのためにとった手段こそが、『勘違い』です。

 先も申しましたとおり、幻想は人々が恐怖することを糧とします。しかし、もし、その恐怖が違う対象へと向かえば? いくら幻想とはいえ、いえむしろ幻想だからこそ、人々の恐怖が向けられなくなってしまえば、存在を維持することができなくなっていきます。

 それを人間は人為的に起こしたのです。

 簡単なことです。非常に簡単なことですが、同時に人道を投げ捨てたものです。

 あなたたちは、幻想を滅ぼすために、とある策を打ったのです。

 この日本においては陰陽師たちが、自らが使役していた式神を、妖怪として世に放ったのです。そしてその式神を操り、人を襲わせ、妖怪の立ち位置をかすめ取らせたのです。

 ええ、そうです。あなたたちが妖怪という存在は、かつての陰陽師が打った式の末裔。彼らはそれを覚えているからこそ、今もなお、自らを妖怪とうそぶくのです。

 人々を守るために、汚名を被って。

 それはうまくいっていたのです。

 幻想は姿を消していき、さらには科学の発達により、その勢いはどんどんと増していきました。後一世紀もすれば、この世界から幻想が消え去ったでしょう。そしたら、彼らの末裔が式を戻す。そうすれば、此の世に幻想はなくなるはずでした。

 八雲黒。妖怪の賢者が現れるまでは。

 彼は、消えゆく彼らをまとめました。自らが消え去らないためにも。幻想が、虚無へと消え去らないためにも。

 人々が虚像を見るというのであれば、真実を映す世界を作ろうと。

 その結果があの学園祭なのです。

 彼らは、ただ、消え去りたくなかったのです。人と共に生きてきたが故に、生きていきたいがために。

 


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