舞い降りた一羽の黒い鳥   作:オールドタイプ

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最近変なネタばかりが頭に浮かぶ。

ジェガン風にネクストになぶられるノーマルAC。

カーパルスでのテルミと少佐の戦闘風景を妄想して、「来たなテルミドール.....ノコノコと、ここが自分の墓場だとは知らずに」
「ふっ、一騎討ちで私を討つことに拘るか.....ウィン・D・ファンション.....!」
少佐砲掠める。
「カラードのNo.3なだけはある」
「お前の野望もここまでだ!」

とアンネマリーとザビーネ風に変換させたり.....機体の色が似ていたのもあるのか。

なにが言いたいかというと、こんな風なネタが恐らくこの先出てくるかと.....(V世界とか∀やXの世界観みたいだし.....バルチャーとミグラントが似てるし.....)


8羽 なつかれる黒い鳥

 散々な一日だった。得るものも大きかったが、面倒事がひとつ増えてしまった。

 引きこもるつもりは更々なく、もっともっと様々な、俺にとっては未知の物に触れて見て学んでいくつもりだ。その為とはいえ、オリムラとヤマダの愚痴にこれからも付き合うことになってしまったのは不本意でしかない。

 断ったところで無理矢理引っ張られるのが落ちだ。情けないことのに、生身の力は女であるはずのオリムラが勝っている。信じられないぐらいの身体能力と腕っぷしの強さ。見た目スマートだが、中身は図鑑で目にした霊長類と変わらないだろう。

 

「楽しめたんだったら良いことなんじゃないの? 二人の美女に連れられていたんだったら尚更でしょ?」

 

 バカを言うな。見た目に騙されて中身を除いてみたら、ヒステリックと愚痴の塊だぞ。実態を知れば、あまりのめんどくささに男は幻滅。それにヤマダは子どもっぽさがある。そういうのが好みな男なら兎も角だ。オリムラは真逆の唯我独尊の女だ。奥手な男なら惹かれるが、ノーマルな男にはハードルが高すぎる。

 

「ず、随分と二人のことを良く見て分析しているわね。それに、来たときからでは考えられないぐらい現代知識が増えていってるわね」

『あなた、ほんとうにすごい。あの頃は、ぜんぜんそんな風に見えなかったのに。懐かしいわね.....』

 

 ジャンルは問わずして、結構な数の本から知識を得ていっているからな。それでも覚えられないことや、意味のわからない物のほうが断然多い。

 

 それと幻聴は喧しいから黙っておけ。

 

「変な方向に知識が偏ったりしそうで心配だわ。間違った日本の知識を持つ外国の人もいるし.....」

 

 それはお互い様だろうに。自国以外の知識を完璧に記憶・理解できる人間がこの世にどれだけいることやら。間違いや偏りがあるのが普通だろう。中には全て網羅しているやつもいるかもしれないが少数派なことには違いない。

 

「.....それもそうね。そっちのほうが面白味もあっていいことなのかもね」

 

 俺はどっちとも言えないがな。偏った知識もなにも、元から何もない俺には見ること知ること全てが新しいことだらけ。遥か先の未来に生きる人間であるにも関わらず、一から全てを学んでいかなければならない。

 進みすぎた文明・科学が全てを滅ぼし、ゼロからやり直しをすることになるのは皮肉以外の何者でもない。

 

『旧世代の兵器が人類にもたらすのは、繁栄ではない』

 

 俺やこの世界の場合は、進みすぎた未来の技術だな。生憎ACが手元にないのが救いなのかどうかは知らないが、この世界の連中がアレに触れることはないだろう。

 そう.....触れる必要が無いのなら自ら進んで破滅に進む必要もない。たまたま俺達にはソレしかなかっただけのこと。他に何かあれば違ったかもしれないが、全ては過ぎ去ってしまった過去。

 

 幻聴が聞こえ始めて2日目だが、冷静に対処が可能になってきた。変に悩むよりかは、受け流し及び一つの考え方やアドバイスのような物として捉えるスタンスを取ることにした。

 言い得て妙のようなものが多く、当てはまっていたり図星であったり、核心をつくような言葉が案外あるものだ。

 誰が何のために俺に伝えているのかは未だに謎。一言一言の発言者も違う。女であったり男であったり、女であっても歳や喋り方や声質などもあり、十人十色。

 幻聴に向かって問いただしても答えは返ってこない。夢に対しても同様で、常に一方通行。

 

「今からお昼を取ってくるから、その間あなたに此処を任せても良いかしら?」

 

 あぁ、問題ない。特に作業らしいことも無いから、本でも読みながら気長に待っているさ。直ぐに食事を摂らねばならないほど空腹状態でもないし、緊急時にも十分行動は可能だ。

 

「それじゃあ、任せるわね。大体30分ぐらいで戻るわね」

 

 女が出ていった後も俺は体勢を変えずに、椅子にもたれ掛かりながら読み掛けの本のページを捲り、一文字一文字をじっくり読んでいく。

 最近女から勧められた『ロミオとジュリエット』とかいう本だ。女曰く、内容もそこまで難しくなく、そこまで濃い内容ではないとのことで抵抗もなくて、読みやすいとのことだ。

 恋愛とかいうのはイマイチよく理解できない。出会ってきた女がフランシスにロザリィにキャロルだけだからか? 最後の一人に関しては人間ではなかったか。

 傭兵やミグラントなんぞやっている時点でそんなものとは縁がないのは解っていたが、願望も欲も何も生まれない俺は異常なのか?

 内容を読んでいくと、運命に翻弄される二人の男女の話のようだ。本人達の意思とは関係なしのところで渦巻く思惑により引き離されていく二人。

 

 運命に翻弄.....渦巻く思惑.....俺はどうだったのだろうか?

 

 栞を挟みパタンと一度本を閉じ、天井を見上げ目を閉じてみる。

 初めは企業側としてフランシスの父.....レジスタンスのリーダーを追い詰め死に至らした。その後企業側と代表の体制が確固となることでお役目御免となった俺の元にフランシスがやってきた。

 間接的とは言え、自分の父親の命を奪った敵を前にしてもフランシスは激情に駆られることもなく、父親の意志を受け継ぎ、代表の体制に立ち向かう確かな本人の意思を提示してきた。

 そんなフランシスにナニかを感じた俺は快く依頼を承諾。多くの戦場を駆け、様々な人間や敵と触れあってきた。その時は巨大な企業の陰謀に踊らされることなどなかった。やがて企業にとっても俺は無視出来ない存在となった。この時からだろうか、企業だけでなく依頼主のフランシスからも畏怖されていたのは。フランシスだけだなくRDも.....

 

 ナニかを感じ取っていたのだろうな。俺から未知の恐怖を。RDは危険な感覚を感じ取れる特殊な能力の持ち主だった。ロザリィは臆病者と罵っていたが、俺はそうは思っていなかった。もう少しRDにも気を配り、意見にも耳を傾けてやれば俺達が殺し合うこともなかったろうに.....

 主任との決戦の前に、俺達の敵として立ちはだかったRD。主任の巧みな言葉により自分を見失ってしまったRD。

 

『聞いてくださいよ、姐さん。オレ、気付いたんすよ。ゲームに勝つ方法ってヤツです。バカなんで時間がかかったすっけど.....』

 

 RD.....お前に何があったかは問わない。どう生きようがお前の人生だ。俺は口出しをしなければ馬鹿にしたりもしない。たが.....

 

『勝つためには、オレ以外の誰かが負ければいい。オレ以外の誰かが』

 

 敵となり立ちはだかるのならば容赦はしない。だった.....今はどうなのだろうか。今同じ立場に立った時に以前のようにいれるのか。

 感化され過ぎて俺も焼が回ってしまったな。俺が揺れ動くなんて考えたこともなかった。

 誰の指図も受けず、誰にも支配もされない自由な生き方を目指していた。

 

 RD.....お前は何も言ってこないのだな。お前は幻聴となって俺を戒めたり咎めたりしないのか?

 

 案の定RDの返事など返ってはこない。心のどこかで返事が返ってくると淡い期待をしている自分がいる。心細いわけでもない。誰かに導いてもらいたいわけでもない。不安でもない。

 

 わからない.....自分がわからない。

 

 コンコン。外から扉を叩くノックが室内に伝わる。ノックに返事を返すと、オリムラ弟の方が顔を扉の隙間から覗かせる。

 いつかは訪ねてくるとは思っていた。オリムラが何処まで俺のことを話しているのかは気になるところだが、先ずは中へと誘導するか。

 手招きに応じたオリムラ弟は、若干緊張しながら俺の前へとやってくる。何をそんなに緊張しているのやら。女ばかりの学園でやっと会えた同性に緊張する理由などどこにもないのにな。まさか、そっちの人間ではないだろうな? 何かの本にそう言った人種がいると記載されていた。目にしたときは信じられなかったが、存在しても不思議ではないとも感じていた。だが、俺は違うぞ。

 

「は、ハロー?」

 

 何故疑問系になる。

 

「マイ、ネームイズ」

 

 一生懸命コミュニケーションを取ろうとする誠意は伝わった。それだけで十分だったから、オリムラ弟も喋りやすいように日本語で答えてやった。

 

「に、日本語話せたんですね」

 

 ある程度の聞き取りと、ある程度の会話程度だがな。片言で聞きづらいかもしれないが、会話には困らないだろう。

 

「千冬姉から話は聞いていて、ようやく会うことが出来た.....よかったぁ! 同性の人がいて.....女子校が辛くて辛くて.....」

 

 一人で勝手に喋り始めたが、同情ぐらいはしてやろう。俺も最近女にはうんざりするようなことがあったしな。

 

「あなたも苦労しているのですね」

 

 本当に苦労するのはこれから先だろう。あの程度のことでうんざりしていたら身が持たなくなりそうだけどな。

 それはそうと.....あの窓から覗いている女共は知り合いか?

 

 窓の外を指差すと、左右下側の窓縁から此方にジーと視線を送っている奇妙な女三人がいた。

 

「げげっ!」

 

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

「一夏さんがそわそわしていたから、つけてみたら.....」

「ぐぬぬ、まさか男と密会なんて! とんだ伏兵よ!」

「お前は男に走ってしまったのか!?」

 

 窓の外から中の様子を伺う変態三人組.....もとい、篠ノ之箒とセシリア・オルコットと凰鈴音であった。

 目的は三人とも中にいる織斑一夏。三人の手には弁当箱が乗せられており、織斑一夏と昼食を共にする予定だったようだ。

 

「ところで、何故お前たちがいるのだ?」

「それは此方のセリフです。一夏さんとお昼を共にするのはわたくしです」

「時差ボケでもしてんの? ここは日本よ。日本の時間に合わせてものを言いなさいよ」

「あら? わたくし庶民の言葉は理解できないものでして」

「寝惚けたこと抜かすなっていってんのよ!」

「それはお前たち二人だ!」

 

 当初の目的をそっちのけていがみ合う三人組。一人の男を巡る長い長い女同士の戦いが始まっていたのであった。

 

「あっ! 二人がいない!」

「「何だと(ですって)!!」」

 

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

「あ、あぶねぇ.....捕まるところだった.....」

 

 騒がしい連中だ。毎度毎度疲れないのかコイツらは?

 

 オリムラ弟を中心としたバカ騒ぎは、教論の間でも話題になっていることを、女や日本語講師の女やオリムラとヤマダから聞いている。

 そう言えば女の名前未だに聞いていなかったな。日本語講師の方はアンジェリカとか言ったか。

 

「すいません、あなたにも迷惑をお掛けして」

 

 なぜ俺まで巻き込まれなければならないのだ。あの女め.....『同性同士仲良く談義に花でも咲かせてきたら?』とか勝手なことを抜かして閉め出しやがって。何が談義に花でも咲かせてきたら? だ。

 

「俺も男の人と話が出来るのが嬉しくて.....ここには同性の友人が一人もいないから一緒にバカを出来る奴が欲しかったんですよ」

 

 おい。俺をお前達の愉快な仲間たちに引き込むな。つるむかどうかは俺が決める。それもタダではない。それ相応の見返りが望める相手だけだ。

 

「勘違いさせてしまったのなら謝ります。ただ、千冬姉からは『男』がいるとしか聞いていなかったので、俺と同じ境遇の同世代の男なんだと勝手に期待していただけです」

 

 なんだっていい。用件が済んだのなら帰れ。現段階でオリムラ弟に利用価値はない。コイツから何かを学べる訳でも得れるわけでもないからな。

 オリムラや山田や他の連中にしてもそうだ。利用価値があるから従ったり、同行しているだけのこと。此方での知識が一定以上養えれば、後は俺一人で事足りる。どうしても人手が必要なときを除いて連中の手は借りない。

 

「.....最後に一緒に飯を食べてはくれませんか?」

 

 飯ならばあの女共がいただろ。わざわざ俺と同席する必要はないと言いたいところだが、何もかもを門前払いでは利用価値が生まれたときの接点として使い物にならない。飯程度ならば構わないところか。その代わりに代金はオリムラ弟持ちだ。

 

「本当ですか! ありがとうございます! 中学時代は中の良い男友達とばかりと食べていて、進学してもそれでいたかったんですよ」

 

 これは恩を売れたのか? オリムラ弟が感謝しているのなら売れているのだろうが、なんでもかんでも他人の言葉を鵜呑みにして、策略や思惑を裏読みしたりしないのか?

 住んできた環境の違いか。身の危険や自分の判断が命を左右することとは縁のない暮らしをしてきたのだろうな。それが此方の世界では幸せなのかもしれないが、俺達のような輩からすればそれは不幸と死を招く要因となろう。

 こう言った些細な違いがやはり俺とこの世界の住人の違いを決定的に見せ付けている。心のゆとり・倫理観や道徳心とは皆無な俺とは根本的に馴れ合えないな。

 

「あっ、いましたわ!」

「待ちなさい一夏ぁぁ!」

「なぜ逃げたのだ!」

「心休まる一時を過ごせると思ったらこれだ.....」

 

 人が集まり人に愛される.....俺には到底実現しないこと.....下らないと卑下はしないが、必要であるとも思っていない。そんなものが無くとも人はいきてはいける。そんなものがあったところで生き残れるわけではない。余分な感情に惑わされて自らの寿命を縮めるのが愚の骨頂。

 あくまでもこれは俺自身だけの考え。これを他人に共感してもらいたくて話したりも、他人に言い聞かせたりもしない。自分の内の中に秘めさせておくこと。

 

「.....すいません。三人追加してもいいですか?」

「どうして邪見そうに扱うのですか!?」

「このホモ一夏!」

「他の二人ならともかくとして、私までも厄介がられる理由がわからないぞ!」

 

 お前ら一度自分の胸に手を当てて考えてみろ。そこに答えはある。

 右から金髪のキィキィ喚くのが、オリムラ弟と模擬戦をしたセシリア・オルコット。真ん中のチビが最近転入してきた中国の代表候補性の凰鈴音という奴。その隣がISの産みの親である篠ノ之束の妹の篠ノ之箒といったな。

 一通りだが、情報の一貫として主要人物達のことに関しては目をとおしてあるが、それだけのこと。

 

「てか、アンタ誰なの? この学園以外で一夏以外に男がいるなんて聞いていなかったんだけど?」

「たしか、最近図書館の司書として赴任してきた方だとか.....」

「クラスの何人かが話をしていたな。時折購買にパンを買いに来る謎の美形男と。名前は.....」

 

 やはり学園に男がいるのは目立つか。俺の情報がどこまで浸透しようが勝手だが、邪魔だけはされたくはない。

 

「レイヴンさんでしたよね?」

 

 特に返事を返すわけでも、頷いたり等の反応をするわけでもなく無言で四人を一瞥する。

 

「.....なんか感じ悪いわね」

「頑なに壁が作られているな」

「近寄りがたいですわね」

「お、お前ら失礼だろ.....」

 

 失礼もなにもない。そう思われても仕方のない態度を取っていれば当然の感想だ。取り繕いもせずに声に出してはっきり言ってくる辺り、見た目と同様に精神年齢も若い証拠。

 このあと俺はこの四人組と昼食を共にした。終始三人によるオリムラ弟の取り合いが行われ、それを眺めながら俺は飯の手を進めていた。俺は飾り物程度の認識しかされていなかったのであろう。話題にもついていけず、一人蚊帳の外だったがこれで主要人物達との顔合わせは済ませれた。どこで役に立ってくるのかはそのときの状況次第。

 

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

「あら? 戻ったのね。どうだった織斑一夏君は? 同じ男同士で会話も弾んで仲良くなれたんじゃない?」

 

 それが目的ではない。俺の目的は別のところにあるが、第一段階としては達成することができた。その結果だけで十分。

 

「つれないわねぇ。そんな淋しい生き方じゃ悲しくなるわよ」

 

 現段階では悲しくないとだけ言っておこう。此方に来て大分感化されて丸くなってはいるが、根本は未だに変わっていないのだからな。

 

「徐々に慣らしていけばいいわ。それよりもちょっとこのゴミを外に持っていって貰いたいのだけれど、いいかしら?」

 

 コキ使われるのは慣れっこだ。

 

「じゃあ、お願いするわ。帰ってきたら紅茶とケーキでも用意しておくから」

 

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

 これで最後か.....

 

 頼まれたゴミを指定の集積所に運び終え、帰路につきながら昼休みでのオリムラ弟達とのことを、ふと考えていた。

 

 俺もあぁなるべきなのか? いや、なれるのか? なれたところでどうなる? 人間らしさが芽生えるのか?

 

『これだから面白いんだ.....人間ってやつは』

 

 今になって主任の言っていたことがわかる気がする。あの時あの場では主任の言葉に意味など見出だそうとしていなかった。それがどうだ? ここにきてから変化の連続。まるで自分が自分ではないと錯覚するぐらいの変化が起きている。

 千差万別。善悪その両方の性質を持ち合わせ、バラバラのパズルを一つ一つ嵌め合わせ、個人を形成するが如く邂逅していく人間達。

 その過程・その結果・その影響。全てが繋がり、また新たな自分を形成していく。俺も今その途中なのだろうか。こんな俺にもまだ先があるのか。

 

 ..........また余分なことを考えてしまった。

 

 俺は傭兵だ。それ以下でもそれ以上でもない。

 

 情緒不安定になりつつあるな。このまま迷いがある状態では危険だ。何も考えないようにしよう。そう心に決めた。

 

「カァー、カァー」

 

 俺の決意に水を指すようにして聞こえる音に一旦立ち止まる。小鳥の囀ずりみたいな穏やかなものではなく、木々が揺らめく時の爽やかな音でもない生物の鳴き声。当然人間ではない。

 鳴き声を無視して再び歩き出す。地面を蹴る度に足に伝わる土の感触と砂利の音を感じながら、鳴き声が聞こえてきた後方にも耳を傾けてみると、後ろから「カァー、カァー」としきりなしに鳴き声が投げ掛けられる。

 歩いても歩いてもその距離は遠ざかりも縮まりもしない。ある一定の距離を保ちながら鳴き声の持ち主は俺の後を着いてくるようだ。

 不規則に歩行と停止を繰り返しても、俺に合わせてくる後方の生物。諦めた俺は後ろを振り返り、鳴き声の持ち主と対面する。

 黒色の体に鋭い嘴。全体的なふっくらとしている体から、幼体ではないことがなんとなくだがわかる。ふっくらとした体と相手に不吉を与える黒に似合わず、目はくりくりとまんまるとしたつぶらな瞳だ。

 後をつけてきていたのは、図鑑で見たことのある『カラス』という生物だった。回りに仲間はおらず、この1羽のみのようだ。

 

 群れからはぐれたのか? それとも最初っから1羽だったのか?

 

 カラスの前まで近づきしゃがみこむが、カラスはピクリとも動かずにそのつぶらな瞳で俺を見据える。

 .....似た者同士か。誰とも馴染もうともしない。群れようともしない。立場や異種関係になるがお前も俺と同じなのだな。

 カラスが人間の言葉など話せるわけがなく、カラス本人がそう語っているわけでもないのだが、直感的に俺とコイツは同じだと感じ取れた。

 これにも理由がわからない。気がついたらカラスの前まで歩み寄っていた。そして提言していた。

 

 "俺と一緒に来るか?" と。




なんかぐだぐだ日常風景で、黒い鳥の行動理念や考えがぐちゃぐちゃですけど許してください。

このカラスはネタといえばネタ。レイヴンお馴染みのカラス。ラストカナブンやもふもふした殺人毛玉なんて都合よくいないからカラスぐらいしか.....えっ?謎の犬のような毛玉生物がいる?

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