舞い降りた一羽の黒い鳥   作:オールドタイプ

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次作のACはオペレーター雇用制度や、メカニックマン雇用制度とか出ないかな。

金で任務ごとに雇っていき、オペレーターがいないと情報とか何も流れてこないスタイル。メカニック雇わないと任務終了時の修理不可能で劣化していき、最終的に破損。破損したら買わないと使えない。

とか?




18羽 得ていく黒い鳥

『ー月ーー日』

 

 最近矢鱈とオリムラ達と過ごす機会が増えてきた。過ごすと言っても昼食を共にするだけだが、初期の自分からすれば考えられないことである。何故だか連中といるときは不思議な気持ちになる。新しくやってきた同じ男だという奴がやってきたが、何かとはしゃいでいたりテンパり気味だったりと忙しい奴だった。

 

「何それ? 日記?」

 

 羅列されている文字から目を離し、横からノートを覗きこんでいる女性を見る。ノートにはレイヴンの一日の振り返りが書き込まれていることから日記帳と思われる。日付や日記帳が真新しいことからつい先日から書き始めたようである。

 

「良い心がけね」

 

 女性はレイヴンに微笑むとまた自分の作業へと戻っていった。

 レイヴンが日記を書き始めることとなった切っ掛けは特にはない。ただの気まぐれ。継続する予定も何も考えていない。それまで自分がしてきたことのないことへのチャレンジ。

 

 ふと時計の針を確認したレイヴンは椅子から立ち上がり、長机の上に置かれている日記帳と筆記用具をスタッフルーム内の自身のロッカーへとしまい込んだ。

 以前から、レイヴンは織斑一夏一向と共に食事をする機会があったが、ここ最近ではレイヴンの日課の一つとして成り立っていた。そして昼休みを告げる鐘が鳴り、レイヴンは集合場所である校舎の屋上へと向かってい

った。

 

   ◆ ◆ ◆

 

「「「............」」」

 

 屋上の扉を開口一番に目に入ってきたのは織斑一夏とその隣に座る金髪の少女に対する三人の少女の冷たい視線が向けられ、異様な威圧感が三人の少女の背後から放たれている。

 数秒の間を置いてレイヴンは空いているスペースになに食わぬ顔で座り込んだ。

 

「............パクパクパク」

 

 声を発しない口だけの動作で織斑一夏はレイヴンに助けを求めてきていたが、レイヴンに読唇術の心得などなくきょとんとしているだけであった。

 

「......まずは説明をしてもらいましょうか?」

「......ことと次第によっちゃあ......ねぇ?」

 

 敵愾心と殺気丸出しのツインテールとドリルヘアの少女。特殊な能力を持たないレイヴンでも流石に感じ取ることの出来る程のものを発している。

 

「......ナニモナイデスヨ?」

 

 あからさまな片言喋りに『何か』を感じ取った少女達のボルテージは更に増加。眉間に皺を寄せいつ噴火してもおかしくはなさそうに見える。

 

「『シャル』! シャルの方からも説明してくれ!」

 

 シャルと呼ばれた織斑一夏の隣に座る金髪の少女は、困った素振りを見せながら何かを思い出したようで顔を紅潮させ目線を反らす。

 

「シャル......ですって......?」

「......随分と親しくなったみたいね?」

 

 驚愕に顔を誇張させるドリルヘアの少女セシリア・オルコットと目に光を失った鳳鈴音の両名はシャルと呼ばれた少女ではなく織斑一夏に対して圧力を強める。

 このシャルと呼ばれた少女こそシャルロット・デュノアであり、レイヴンの知らないところで女であることがバレてしまい、紆余曲折を経てIS学園へ『女』として再入学を果たすこととなった。その際に父親の会社とは縁を切っている。

 当然その事をレイヴンは知らない。何か見覚えのある顔が女の格好をしている。その程度の認識は持っていたが人違いだと彼は思っていた。シャルロット・デュノアの経緯を知らないレイヴンであったが、少女達の反応と見覚えのある顔が少女と一致したことでようやく気が付いた。

 気が付いたところでレイヴンは特に気にはしなかった。女であった。ただそれだけの話しにレイヴンが気に止めさえしない。三人の少女達が何をそんなに気にしているなかさえも理解していない。

 

「疑念が確信に変わりましたわ」

「よし! 殺そう!」

 

 話が長くなりそうになったレイヴンは購買に立ち寄った際に購入したパンの袋を開け、中のパンにかじりついた。

 

「......あんたを見てたら、なんか自分がバカらしくなってきた」

 

 無言でパンを咀嚼するレイヴンの姿に熱くなっていた少女達の熱は冷め出し、飛び掛かろうと立ち上がった状態から元の座り込んだ姿勢に戻った。

 

「みっともない姿を見せてしまいましたわ」

 

 反省の色を出す二人を尻目に二つ目のパンを食べ出すレイヴン。どうやら彼は食事にしか目がないようだ。

 

「てか、一人で勝手に食べ始めるなぁ!」

 

 屋上のシートの上には少女達が持参した弁当の詰まったケースが置かれており、全員が揃うのを待っていたようだ。その途中で少女達は朝の一件で織斑一夏とシャルロット・デュノアの関係について掘り返したのである。

 

「折角作ってきた物を残されるのも困りますからパンを食べるのを止めてください」

 

 二個目のパンを食べ終えたところで手を止めるレイヴン。しかし、手を止めたのはレイヴンだけではなかった。

 

「あ、あんた......まさかナニか作ってきたの?」

「はい、折角ですから得意のサンドイッチを」

 

 恐る恐る顔を青ざめながら問いかけた質問に笑顔一杯で答えたセシリア・オルコット。そんな彼女を見てレイヴンとシャルロット・デュノアを除いた全員の顔が絶望に染まっていった。

 顔を絶望に染めた者達はセシリア・オルコットの料理の犠牲者達。その威力と危険性は身をもって体験済みであり、以後は口にしないだけではなくなるべく調理に関わらせないように努めていたが、ここにきて重大なミスを犯してしまっていた。

 そんな織斑一夏達の事情を知らない両者は不思議そうに首を傾げる。たかだかサンドイッチ。見た目も悪くなく、どこからどう見ても食欲をそそる仕上がりのサンドイッチの内の一つを取り上げ口に運ぶシャルロット・デュノア。

 数回噛んだところで異変に気づいた。口一杯に広がる酸味かと思いきや、甘味と苦味のトリプルパンチ。体験したことのない味に対して顔を歪めるが、作った本人に悪いと必死に喉の奥へと押し込む。が、飲み込んだ直後に体が火照りだし、かつてない苦しみに蝕まれたシャルロット・デュノアは無言で倒れてしまった。

 

 この間約2秒である。

 

「また一人犠牲者が......」

「香水が強すぎたのでしょうか?」

 

 最早誰もセシリア・オルコットに突っ込まない。その気力すら失せていた。

 

 モグモグ。

 

 倒れたシャルロット・デュノアを前にしてもレイヴンは気にせず、バスケット内のサンドイッチの一つを掴み取り頬張った。

 

「あんたバカァ!? 目の前の惨劇を見てなかったの!?」

 

 誰もがレイヴンの自殺行為とも言える行動に対して目を疑いながら、第二の犠牲者となるレイヴンを惜しんだ。

 

 モグモグ。

 

「......あれ?」

 

 数十秒経ってもレイヴンは平気そうに無言でサンドイッチを咀嚼していた。一つ目を飲み込んだレイヴンは続けて2つ3つとサンドイッチを次々と取りだしその全てを飲み込んでいった。

 

「セシリアの料理を食べて平気だと言うのか」

 

 レイヴンと距離を置いていた篠ノ之箒もこれには口を出さずにはいられなかった。

 

「まぁ! そんなに美味しそうに食べて下さった方は初めてですわ!」

 

 作りてのセシリア・オルコットも自分の料理が初めて完食されたことに感激していた。織斑一夏も篠ノ之箒も鳳鈴音でさえも一口噛んだだけで卒倒していた。

 

「セシリアの料理の前にはレイヴンさんといえど駄目だとばかり......」

 

 サンドイッチを食べながらレイヴンは自分のことを奇っ怪そうに見つめる三人に?マークを浮かべていた。

 

「目を点にしたいのはこっちよ。何で全部食べれるのよ......何で平気なのよ......どんな胃袋してんのよ......」

 

 完食したことに呆れ果ててしまっている面子。お世辞にも美味いとは言える物ではないが、食べれない物でもないとレイヴンは内心思っている。

 

「出身が出身なだけもあるかもしれないけど、アンタはもっと良いもの食べなさいよ!」

 

 レイヴンが昼食として摂っているのは決まってパンや握り飯といった軽食が殆どであり、定食等のバランスの取れた食事を摂っていない。

 

「ど、独特な味だねセシリア......独創的でいいと思うよ......」

 

 目を覚ましたシャルロット・デュノアは、セシリア・オルコットに気を使い食べ掛けのサンドイッチを拾い上げ口に運ぼうとする。

 

「シャル!? どうやって起きたんだ!?」

 

 身をもって体験した織斑一夏もこんな短時間で目を覚ませることが信じられなかったのだ。

 

「こ、この......カラスが......突っついて......起こし......てくれたん......だよ 」

 

 息も絶え絶えで体が痙攣しながらも必死に笑顔で取り繕う。その後方には何処からともなく現れたレイヴンのペット? のカラスが羽根を広げながら鳴いている。

 

「レイヴン2号ね。あんたも主人に何か言ってやりなさいよ」

「何か言ったとしても理解はできないだけだけどな」

 

 モグモグ。

 

 シャルロット・デュノアが拾い上げたサンドイッチを横から取り上げ自分の口に放り込むレイヴン。放り込む前に少し千切っていたものをカラスにも与え、カラスも嬉しそうに啄んでいく。

 

「主人が主人ならペットもまたペットね......」

「失神した私たちはカラス以下か......」

 

 カラスでさえ正気を保っていられることに若干のショックを受け二人は項垂れる。

 

「なんか食欲なくなったから変わりに食べる? 残すのも勿体無いし」

 

 差し出された弁当箱には酢豚が詰められており、無言で受け取り箸を進める。

 

「俺も食っていいか?」

「元々あんたにも食べさせるつもりだったから良いわよ」

 

 横で酢豚を食べるレイヴンの姿を見て織斑一夏も酢豚を食べたくなっていたのだ。

 

「早く食べないと全部食べられちゃうわよ」

 

 止めることなく箸を進めているため、酢豚はみるみると量が減っていき半分以上あった酢豚は3分の1程度しか残っていない。

 

「はぇぇ!」

 

 織斑一夏の分まで残す配慮をレイヴンがするはずもなく、ミグラントで培った早い者勝ちの精神を地で行くようだ。

 

「何度食べても美味いな」

 

 目にも止まらない速さで箸を進めるレイヴンの間になんとか割って入りながら酢豚にありつく織斑一夏。鳳鈴音の得意料理なだけもあり、味は自他共に胸を張って保証できるものである。

 

「......私も食欲が無いから私のも食べるといいぞ」

 

 味を褒められて目を輝かせている鳳鈴音に対抗意識を燃やした篠ノ之箒も、自身の弁当のおかずを織斑一夏に差し出した。

 

「まじか! 遠慮なく頂くぜ」

 

 育ち盛りの男子高校生の胃袋は女性の想像よりも大きく、多少の量ならばすんなりと食べきることが可能である。

 

 ............ジー 。

 

 篠ノ之箒の弁当は卵焼きや焼き魚などのスタンダードな弁当であるが、盛り付けかたや焼き具合などでより一層栄えて見える。その弁当を無言で見つめるレイヴン。どうやら酢豚だけではなく、篠ノ之箒の弁当も食べたいようだ。

 

「......食べたいのならば食べればいい」

 

 そんなレイヴンの視線に気づいた篠ノ之箒は、溜め息を交えながらもレイヴンにも食べる許可を与えた。

 

「食べたいときは素直に自分から進言すればよいのに何故それをしない?」

 

 レイヴンに対して恐怖心を抱いている篠ノ之箒であったが、接する内にその恐怖心が和らぎつつあった。和らいでいるといっても完全に失せたわけではない。今日のようなレイヴンの姿を見て『それだけではない』ということを察していたのである。たが、『こういった面』もあれば『以前のような姿』の2つを持ち合わせるレイヴンに対する心境は更に複雑になってしまっている。

 

「待て、さっきから見ていたがなんだその箸の持ち方は? しっかりとこうやって箸は握るものだ」

 

 酢豚を食べているときもそうだが、レイヴンの箸の握りかたは幼稚園児のような握り箸であり、正しい持ち方ではない。

 

「あっ、箸が落ちた」

 

 篠ノ之箒の手により箸の持ち方の指導を受け、実践してみたレイヴンであったが、上手く握れず箸ごと掴んでいた卵焼きを落としてしまった。

 

「こら、落ちたものは拾って食べるな。食べるのならばしっかりと洗え」

 

 地面に転がった卵焼きを拾い上げ、直ぐに口に運ぼうとしたところを篠ノ之箒に再度指摘された。

 

「こればかりは練習するしかないな」

 

 プルプルと手を震えさせながら必死に箸の持ち方を覚えようとするが、いきなり出来るはずもなく何度も落としては拾っての繰り返しだった。このもどかしさに少し眉を寄せ、不機嫌そうに顔をしかめる。

 

「食事の仕方もそうですけど、レイヴンさんは先ずは人とのコミュニケーションをとる練習をしたほうが良いのではないのでしょうか?」

「そういえばアンタ表情は若干変化させるけど、笑ったりはしないわね。何よりも喋らないし」

 

 この場にいるメンバーだけではなく、レイヴンの『喋らない』『ほとんど無表情』には学園に在籍する全員が改善すべきだと感じている。当の本人は改善する素振りや意識は無いが。

 

「いきなり喋れとは言わないわ。先ずは笑いなさい」

「こうして僕達と接しているのだから対人恐怖症ではないはずだしね」

 

 『笑いなさい』という要求にレイヴンは顎に手を当て笑いかたを模索している。

 

 ..................ニヤリ?

 

「擬音で誤魔化すなぁ!」

「普通の笑いかたが出来ないのに何で擬音で表現は出来るの?」

「色々と順序が逆だな」

「あははは......」

「ある意味凄いですわ」

 

 実際擬音など出ていないのだが、レイヴンの雰囲気からまるで擬音を発して笑顔を表現しているように彼女らは感じたのだ。

 

「先が思いやられるわね」

「この先苦労するぞ」

「自分の意見や思ったことは口に出さないと」

「レイヴンさんの考えとか聞いてみたいな」

「コミュニケーションは大切ですから」

 

 口々にレイヴンへの改善点や苦言を挙げていくが、レイヴン自信はそれらのことを何故指摘されているのか理解できなかった。過去でも限定的で少数であるが、人とそれなりに関わり歩んできた人生であったが、その誰もがレイヴンにそんなことを求めてこなかった。求めていたのかもしれないが、ここまで愚直なまでに面と向かって正直に告げられたことはなかった。

 

 レイヴンの中でのわだかまり等は緩くはなってきているが、やはりまだまだこの世界の住人達のようにはなれず、彼女らのような『暖かさ』を理解するには時間も経験も足らない。

 

 今のレイヴンにはそのことすらも理解できていないが、いつか......やがていつかは理解することが出来る日が訪れるのではないだろうか。

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

「こちらです」

 

 織斑一夏一向との昼食から早4時間が経過。織斑千冬、山田真耶の二人から以前レイヴンが破壊したレイヤードの無人機の武器とACへの整合が取れたと連絡が入った。早速武器が保管されている地下室まで向かってきたのであった。

 

「保存状態も良好で使用に差し支えはありません」

 

 レイヴンが今まで使ってきたACの武器とは大きさが異なり、従来の手持ち火器というよりかは『スナイパーキャノン』や『レールガン』『ヒートキャノン』類の構えを要する武器に近い。

 

「ただ、この武器を使っていた無人機とレイヴンさんのACとの技術的な違いから、使用は可能なのですが弾数に制約があります。この武器はエネルギー内蔵型ではなく、あの無人機からの供給型なため無人機とは造りが違うレイヴンさんのACからこの武器にエネルギーを供給することは出来ません。従ってこの武器が使用できるのは武器に残されたエネルギー分だけです。具体的に言えば、50発撃てばエネルギー切れで使用不可能となります。私達の技術力ではこの武器にエネルギーは供給が出来ないので、使い果たしたら二度と使えません」

「グレネードの方も同じだ。同規模の弾頭を作り出す技術はない。10発撃てばそれで終わりだ」

 

 武器は手に入ったのだが、技術的な問題からおいそれと使うことが出来ず、この武器を失えば再びグラインドブレードだけになってしまう。OW自体、一度の戦闘での使用が限られている。来るべきゾディアックとの戦闘を踏まえると心許ない。

 

「ISには整合が不可能でしたのでACにしか使えません。つまりあなたに頼るしかないのです」

「火力があっても一回きりしか使えない武装では、幾らお前と言えど厳しいだろう。そこで一から新しい武器を急ピッチで造り上げてある」

 

 AC技術の再現は不可能。その事実は二人も承知している。それでも何とかして武器を造り上げようと奮闘しているのである。

 

「AC技術の再現は不可能でも、我々の世界の技術を総結集させれば武器の生産だけは不可能ではないかもしれないからな」

「武器だけではありません。修理や交換が不可能なACの負担を軽減させるため追加の装甲やAC保護のためのオプショナルパーツも同時進行で制作中です」

 

 修理要らずと言っても最低限のメンテナンスはどうしても必要となる。しかし、替えの部品がないことから破損させれば二度と修復は出来ない。そのためACの消耗と破損を抑えつつACに合う装備品を制作することになった。

 

 一度出撃して破損させれば次の出撃はその状態のまま。またその次の出撃もそのままと、戦えば戦うほど劣化していくのが現状なのだ。

 

「近々に対ゾディアック戦を想定した学園のISとACの共同戦闘訓練を実施したいと思っている。我々も協力する。だからお前も我々に協力してくれ」

 

 雇われる者と雇う側の関係のレイヴンの答えなど決まっているようなもの。静かに頷き承諾する。

 

「そうか......助かる。実施するとすればタッグマッチの後となる。それまでの何か必要ならば此方で揃えれるものは揃える」

 

 特に必要な物がないレイヴンはこの場では何も提示はしない。

 

「また何時でも言ってきてくれ。まぁ、私達からお前に必要な物を今から与えるがな」

「よいしょっと! はい、取り敢えず今はこれだけです」

 

 山田真耶の両手一杯に抱え込まれた冊子の束が、地下室のレイヴンの前の机の上に置かれた。種類、系統の違う冊子の山にレイヴンは目をぱちくりさせながら疑問符を浮かべている。

 

「良い機会だからお前には一般知識と教養を学んで貰う。何時までも戦うことしか出来ないのでは不便になってくる。特にこの世界ではな。多くの物事を知っていて損はない」

 

 あからさまに嫌な顔をして否定的な態度をとっているレイヴン。自分から求めることはするが他人から与えられることは好きではない模様。

 

「各担当教員は既に承知済みだ。まさか日本語だけ学んで終わりだと思っていたのか?」

「数学に理科に社会に国語と5教科を中心に教えていきます。こちらではそちらの世界と違って教養がないと織斑先生も言っていたように苦労しますから」

 

 一回だけ算数の教科書に目を通したことのあるレイヴンだが、足し算引き算掛け算割り算までは理解できたが、その先は一つも理解できないでいた。

 

「みっちり教えていくので頑張りましょう!」

 

 レイヴンへの再教育が今始まろうとしていた。

 

   ◆ ◆ ◆

 

『こちらクラリッサ・ハルフォーフ大尉です』

「クラリッサか? 私だ」

『ラウラ隊長、どうなさったのですか?』

 

 消灯時間後にルームメイトと見回りに気付かれないように寮を出て、衛星電話を使用して我が黒兎部隊副隊長のクラリッサに連絡をしている。

 

「例のACと所有者に接触した」

『それで何か成果は?』

「実に残念だが、ACの確保は事実上不可能だ。あれの生産も運用も同様に不可能。我々の人知を軽く越えている」

 

 ACのことはそれなりに情報を得ることができた。そして『乗ること』もできた。生産不可能な上に複雑な操縦。メンテナンスが殆ど必要ないのだが、パーツ生産が不可能なことから修理も不可能。手に入れたところで我々には運用できない。かといって奴がこちら側につくとはおもえない。ならば、早急に始末すべき対象となる。

 

『敵に回すと厄介ということでしょうか?』

「あぁ、ゾディアックとかいう連中の映像でもそうだが、連中を敵に回すのは厄介どころではない。奴はいまのところ味方なのかもしれないが何時敵になるかわかったもんじゃない」

 

 奴の身のこなしは素人そのもの。訓練された人間ではない。だからこそ危険なのだ。訓練されたわけでもない奴は何をしでかすかわからない。

 

「ゾディアックもそうだが、ACは捕獲ではなく破壊すべきだ。破壊するつもりで挑まなければ大きな損害を我々は受ける。つまり見合わないのだ。捕獲のリスクとメリットが」

『しかし、既に各国はACの捕獲に乗り出しています。我が国も例外ではありません』

「私の報告書を送る。それで再度上の指示を仰いでくれ」

『わかりました。......それと隊長。捕獲なんですけど少々気になることがあります』

「なんだ?」

『未確認なのですが、出没したゾディアックの中にISが混じっているようです」

 

 ゾディアックは変わらず神出鬼没で、現れては攻撃を繰り返している。その内世界中にACは衆知に晒されるだろう。しかし、それは先の話。現在は限定的にしか知られていないAC。まだ何処の国家も捕獲には至っていない。にもかかわらず、ACとISが行動を共にしているだと? きな臭いな。

 

『まだ裏取りが出来てはいないため確証がありません』

「情報の出所は?」

『委員会です』

 

 委員会......我が国に情報を与えたのも委員会だったな。老人共め......何を考えている?

 

『例の組織でしょうか?』

「わからん。情報がまだ少なすぎる。このことは内密にしておけ」

『わかりました』

「それと、余り委員会の言うことを鵜呑みにするな。奴等は信用ならん」

『了解しました。それでは失礼します』

 

 私達に情報を与えたのも委員会。ISと行動を共にする情報も委員会から。未確認のIS......国家や企業を除いてISを有するのは『奴等』ぐらい。だが、奴等とゾディアックの接点は見えてこない。一体どこで......まさかな......

 




原作キャラ達に色々と教わっていくスタイルです。教えるのではなく教わる。世紀末の世界の住人が教えることなどないですからね。特に黒い鳥は......


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