舞い降りた一羽の黒い鳥   作:オールドタイプ

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それっぽく書いてみたかったけど実力不足が目立つ。


11羽 狩人

 人は死ぬ直前に何を考える? 何を思う? 何を後悔する?

 何故人は死を恐れる? 死を避ける? 死を受け入れない?

 死者には何も残らない? では生者は何を残す? 生者と死者の差は? 死んでいるか生きているかの違いだけか? ならば『生きながらにして死んでいる者達』はどうなるのか?

 死は何人にも平等に訪れる。何人たりとも抗うことは不可能な結末であり結果である。死を恐怖し、先伸ばしにする者。逃れられぬと知りながら歪めようと抗う者。そして、死の概念から逃れるために"人であることを棄てた者"

 人間皆が死を受け入れていないのか? 否、常に死と隣り合わせ。死こそ快楽。死神に好かれ、死と共に歩む者。自ら死地へ赴く者。その何れにも当てはまらない異色な存在なのが"彼等"である。

 

 "彼等"は忘れた。自らの存在理由を。

 

 "彼等"は求めていた。忘れたモノを。

 

 "彼等"は望んでいた。勝利を。

  

 誰が、 いつ、 何のために、 何を目指して彼等を造り出したのかは既に失われてしまった。残されたのは、過程も理由も自分自身でさえも忘れてしまった者達。

 友も戦友も家族も愛する人も、そして自分達の良き理解者でもあり、絶対的な存在であった"彼女"も変わり果てた姿となってしまった。

 有るのは単純且つ未来(さき)の見えない果てしない使命(たたかい)のみ。

 今日も"彼等"は往く。往年から今日という日まで歩んできた.....望んできた場所に。"時代"や"土地"が変わろうが変わらない.....変えられない、どうしようもない"モノ"がある。

 

 唯一"彼等"を下した人間が一人だけいた。

 

 散りゆくメンバー達。勝つためだけに.....勝利者(成功作)であることを証明するためだけに敵を葬ってきた"彼等"にとって敗北は自らの存在義を否定され、失敗作であることを意味する。

 勝つために文字通り全てを棄てた"彼等"は敗北した時点で何も残らない。はずだった.....

 

 "新天地"に流れ着いた"彼等に"命令が下される。

 

 

 敵を確認。これを排除せよ。

 

 敗北した私達に選択権はない。

 

 敵に恐怖を。私達には勝利を。

 

 

 "彼等"の機体には各々"黄道十二宮"の星座を象ったマークとエンブレムが刻み込まれ、それに準ずるNo.が与えられている。

 疑問に感じ異論を唱えようとするものもいる。目の前にぶら下げられた"異例"のセカンドチャンスと指揮官である"彼女"から不信感を募らされている手前、"彼"は口ごもってしまう。

 闇夜に煌めく星と月灯りが"彼等"の機体を照らす。姿を晒され妖しく照される無機質なボディは一つの洗練された造形美にも見える。

 ただ一つその機体に言えるのは、この世界では明らかに異端であるということである。洗練された造形美もこの世界では異形のモノとしか見られない。

 機体を運ぶヘリにも同じことが言える。オスプレイを連想させる輸送ヘリだが、やはりこの世界のどの輸送ヘリとも合致しない。

 輸送ヘリが運んでいる機体は人型の造りとなっており、ずっしりとした重量感のある屈強そうな体格でサイズも7M前後という巨体である。

 目的地に近づくに連れて、"巨大な兵器"の装甲に覆われた頭部の隙間から光る二つの目。動力部から供給されるエネルギーが全身のパーツにくまなく伝う。機体の至るところから蒸気が吹き上がり、兵器内に蓄積される熱を空気中に排出。擬音と共に首を左右に振るなどの動作の確認も行われる。

 

「起動確認並びに動作チェック終了.....各計器共に異常なし」

 

 輸送ヘリのロータが空を切り、耳をつんざくような轟音がこれから起きる惨事に対する嘲笑であるがの如く夜空にこだまする。

 これから起きる無情とも言える惨事を防ぐ術はない。気紛れな神の思し召しを人間は甘んじて受け入れることしかできない。

 

 祈りなど通じぬ。

 

 祈る対象など存在しない。

 

 ただ結果だけが過ぎ去っていく。

 

『No.8作戦開始です』

 

 目的地に投下された"巨大な兵器"は異常とも思えるサイズの右腕のライフルを構え、一際目立つ天に向かってそびえ立つ管制塔に対して発砲。辺り一面に銃弾の火薬の臭いが蔓延。銃口から回転して飛び出した大口径且つ高質量の弾が管制塔に命中し、爆音と共に管制塔の中心部の一部が崩落し火の手が上がる。崩落した管制塔の瓦礫が地上の建物に落下し人的被害が発生。

 一発で終わることはなく、尚も攻撃を続行。二発三発と発射される度に機体周辺に空薬莢がちりばめられる。

 襲撃されたのはとある国の空軍基地である。空軍基地側も接近する未確認目標をレーダーでも双眼鏡でも捉えていたのだが、双眼鏡で確認した見張りは目にした巨大な兵器に呆気をとられており接近する反応の詳細報告が遅れていた。

 管制塔に被害を受けてやっと正気に戻った見張りが緊急事態を告げるサイレンのスイッチを押し、基地全体に緊張が走る。

 未確認の"巨大な兵器"による襲撃など想定されているわけでもなく、敵の姿を目にした兵士達は臆するも可能な限りの対抗手段として重火器で応戦するも全く歯が立たない。

 その間、離陸可能な航空機は滑走路から次々とスクランブル発進をし直ぐ様急旋回。"巨大な兵器"に対して対地ミサイル攻撃を開始。

 だが、巨大な兵器は一歩も動くことなく敢えて正面で直撃させる。ミサイルによる爆発が"巨大な兵器"に大きな衝撃を与えぐらつかせる。反撃の隙を与えないように絶え間なく続くミサイル攻撃に次第に爆煙に飲み込まれる巨大な兵器。止めと言わんばかりに一斉に対地爆弾が投下される。

 退避済みの兵士達が爆煙に飲み込まれた姿を見て歓喜の声を上げる。戦闘機のパイロット達も操縦席でガッツポーズを取っている。

 これだけの攻撃を受けて無事な兵器は彼等の知るなかでは存在しない。誰もが未知の襲撃犯を撃破したと思っていた。だが.....

 

 煙が晴れていき爆心地となった基地の一部が露となってくる。晴れていく煙に機影が映る。兵士も戦闘機のパイロットも自分達の目を疑った。そこには"ほぼ無傷"の姿で健在している襲撃犯がいた。

 あれだけの質量攻撃を受けたにも関わらず、"巨大な兵器"はその機能を失うこともなくゆっくりと巨大な足で進撃を始めた。ゆっくり.....ゆっくりと一歩づつ足を進める巨大な兵器。進撃の振動による地響きが兵士達に更なる恐怖を与えていた。

 一人の兵士が恐怖から持ち場を離れるのを合図に、地上にいた兵士達が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。戦闘機のパイロットは再度攻撃を再開すべく高高度から徐々に機首を下げターゲットをロックオン。再度発射されたミサイルに棒立ちだった"巨大な兵器"はその体格に見会わない速度による移動を開始。

 背部ブースターが点火し吐き出される高熱の炎が付近にあった建物を瞬く間に溶解。戦闘機に負けない膨大な推進力を得た巨大な兵器は縦横無尽に基地内を滑空し、迫り来るミサイルをブースターの熱を当てて爆破していき、左腕のショットガンから発射される散弾が的確に戦闘機に当たり、有無を言わさず鋼鉄の体を引き裂いていく。

 一機.....また一機と落とされていく戦闘機。断末魔の叫び声を挙げる間も、脱出の間も与えることなく撃ち落としていく。全ての戦闘機を撃ち落とした"巨大な兵器"は残った基地設備を次々と破壊。最後には炎に包まれる残骸以外何も残らなかった。

 

『敵の殲滅を確認。作戦完了ですNo.8』

 

 全てを終え基地の中心に佇む巨大な兵器の付近に降りてくる輸送ヘリ。

 

「これが、本当に我々の敵なのか?」

『発言の意味が不明です』

「この程度の存在を敵と認定するのか?」

『何も考える必要はありません。目の前の敵を倒すことだけ考えてください』

 

 巨大な兵器をアンカーで固定した輸送ヘリはそのまま夜空へと飛び去っていく。

 この日襲撃されのはこの基地一つだけではなかった。ここを入れて合計12もの基地が同時に襲撃された。形状こそは多少の違いがあるものの、この空軍基地を襲撃した"巨大な兵器"と同系統の兵器である。

 

 同時襲撃された基地に共通点はない。ただ破壊されただけで目的は不明。後日軍関係者による襲撃犯の特定と捜索に明け暮れているが一向に詳細が掴めず忽然と姿を眩ましている。

 手掛かりは衛星写真に納められた基地を蹂躙するその姿と襲撃に使われたとされる武器の空薬莢のみ。

 技術班が空薬莢を解析するも、使われた武器はこの世界には存在しないモノであることが判明。

 この時、軍関係者達は圧倒的な実力だけを見せつけ消え去った襲撃犯達という未知との遭遇の恐怖に怯えることしか出来なかった。 

 

 

 

 

 すべては、すべてから来る。すべては、すべてから創られ、すべては、すべてに戻っていく。すべては、すべてに包み込まれる。

 

ーーーダヴィンチ。


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