舞い降りた一羽の黒い鳥   作:オールドタイプ

1 / 34
思い付いたから始めてみた....いきなり始まります。


黒い鳥
1羽 渡り鳥


....ここは何処だ?何故俺はこんなところにいる?

 

 目の前に広がる景色に疑問しか出てこない。俺の知っている空の色でなければ、俺の知っているような荒れ果てた大地でもない。左右を見渡せども、俺の知っている風景ではなかった。

 何から何まで俺がいた場所とは大きくかけ離れていた。俺の身に何が起きたのか?思い返してみても、特に変わったことはなかった。

 

 前依頼主をである『フランシス』との契約が切れた俺は、普段通り新たな戦場を求め各地を巡り適当な場所での野宿。朝は早く起床し、一晩を過ごした場所から直ぐに離れ次なる依頼主を探す。そんな一日を繰り返していた筈だ。

 

 なのに目を覚ましたらこの場所に立っていた。俺が着ている対Gスーツの他には、携行物品等は無く商売道具でもあり俺の分身と言っても過言ではない相棒の『AC』も俺の傍らには無い。着ている物以外何も無い手ぶらの状態だ。

 

 このままでは何も出来なければ、ここが何処であるかも分からない。先ずは現在地の把握等の情報収集と、俺のACの捜索から始めたほうが良さそうだ。

 

 取り敢えず俺は、目についた大きな建築物を目指して歩き出すことにした。今のところ道中ではこの地に住む住人や、俺と同じ境遇の流れ者には出会わなかった。

 

 歩き始めて数分で、目的地に辿り着くことが出来た。建築物を外側から調べてみたが、ここまで完全な形で残されている建築物は見たことがなかった。あのシティでさえも、形は残ってはいたが至るところに破損や劣化が見られたが、この建築物にはそれが見当たらない。

 

 謎の建築物で真っ先に思い付いたのは、『タワー』と呼ばれていたモノだったが、あれは遠目から見ても目の前の建築物とは形状が違う上に、汚染が酷くタワーには近付くことさえ出来なかった。よって、この建築物はタワーとは別物だと判断しても良いだろう。

 

 そして一番目についたのは、『関係者以外立ち入り禁止』と見たこともなければ意味の分からない文字で書き記されていることだ。

 多くの地を巡ってきた俺でも、この文字を目にするのは初めてであり、俺の知っている文字とも類似点は見られない。

 

 謎の文字の解読は後回しにし、俺はこの未知の建築物内に足を踏み入れることにした。 幸いにも鍵は電子ロックではなく、錠前での施錠であったため簡単に中に侵入することが出来た。

 

 建築物の中は暗く、明かりは付いていなかった。トラップや仕掛けに注意しながら壁づたいに道を進んでいく。すると一際広い部屋へに出た。この広い部屋は薄暗いが、明かりが付いており室内全体を見回すことが出来た。

 

 室内の両端には、これまた見たことの無い機械が陳列されており、トラップや仕掛けが無いことを確認した俺は陳列されている機械の一つの前に立ち止まった。

 

 『Rafale Revival』

 

 目の前の機械はラファール・リヴァイブと記されており、この単語だけは読み取ることが出来た。何故なら、この言語は昔から馴染みのある言語であり日常的に使われていたからである。

 

 単語は読み取れても、目の前の機械については見覚えがなくACとも似ていない。が、機械が醸し出している雰囲気から察するに兵器であることは何となくだが分かる。....企業の新兵器か?

 

 企業....今まで何かある度に絡んできた謎の集団。その中で『主任』と呼ばれる相手がいた。主任とは文字通り何度も戦ってきた。結局のところ、連中の正体こそは掴めなかったが....

 

 それにしても、兵器をあの程度のセキュリティで管理しているとは....管理体制が杜撰過ぎるな。外部からの侵入者に盗まれても文句は言えまい。

 

 そんな俺に災難が降りかかってきた。

 

《侵入者!侵入者!IS保管庫に侵入者!》

 

 部屋中にアラームが鳴り響き、赤色のランプが点灯しだした。そして、又もや言葉の意味の分からないアナウンスも聞こえた。....どう考えても非常事態に対する警報だろうな。厄介だな。今の俺は素性の知れない只の侵入者。対応を間違えたら情報を得る所では無くなる。

 が、だからと言って今更おめおめと捕まるわけにもいかない。何とかしての状況を打開するしかないな。

 

《保管庫のドアを全てロック。睡眠ガス噴射》

 

 部屋中の吸気口からガスが噴出されだした。....警備は手薄と思っていたが、そうでもないようだ。脱出しようにも扉は全てロックされており、室内から脱出出来ない。

 

 ....やむ終えない。この目の前の機械を使うしかないようだ。というわけで、目の前の機械を頂くとするか....ACとは形状等が異なるが、人間が扱う兵器であることに代わりはない。....無人機なら話は別だがな。

 

 俺は目の前のラファール・リヴァイブとか言う機械に触れる。すると、突然発光しだし目映い光が室内に広がる。光が収まると、何故か勝手に機械が俺の体に纏われていた。

 

 やはりというか、ラファール・リヴァイブを纏った俺は試しに体を動かしてみた。体を動かしてみた結果分かったことは、ACと違いペダルやレバーでの操縦ではなく、全身を使った俺自身の動きで操作するようだ。

 

 面倒だな。ACの操縦に慣れてしまっているため、このような手足で操作する兵器は人生初だ。勝手が違う....安易な考えでの行動で乗ってみたはいいが、扱い方が分からん。武器も装備しておらず、思うように動かすことも出来ない。

 

 ....何か武器はないのか?ここから脱出できるような武器は....

 

 ああだこうだと、試行錯誤を繰り返していると俺の視界内にディスプレイのようなものが浮か上がってきた。ディスプレイに映し出されていたのは、マシンガンの形をしたモノだった。試しにディスプレイに触れてみる。ディスプレイに触れた瞬間に、映し出されていたのマシンガンが突然出現し、右腕に装備された。

 

 この現実に俺は驚愕する。このような武器の装備や格納はACではあり得ないことだったからだ。だが、驚いている暇は無い。今はここから脱出するのが先決だ。

 

 装備されたマシンガンを室内の扉に向けて構える。そして、確りと狙いを定め引き金を引く。マシンガンから撃ち出された弾丸は、扉に直撃し粉砕した。

 

 粉砕された扉から即座に室外へと飛び出し、同様な方法でロックされている扉を全て破壊していく。然程時間を掛けずに俺は、建築物からの脱出を果たすことが出来た。

 

 無事に脱出出来た俺は、改めて建築物に向き直す。建築物からは未だに警報音とアナウンスが聞こえる。この様子から周辺には、恐らく警備の人間が飛び出して来るだろう。正直に経緯を話しても信用してはくれないかもしれないな。

 

「そこの侵入者速やかに武器を放棄してISを解除しろ!さもなくば、実力行使で排除する!」

 

 ....いつの間にか俺の周囲に、俺と同様の機体を纏っている輩が俺を取り囲んでいた。数は3。さっきから表示されていたサイトのようなモノはコイツらを表していたのか....

 

 この機体を纏った時にセンサーのようなモノが働いていた。レーダーや探知機器が無いと思っていたが、このサイトがレーダーの代わりなのか。ACのリーコンやスキヤンモードより優れているな。

 

「聞こえてないのか!?大人しく言うことを聞け!」

 

 未だに振り返らず、連中に対して背を向け続ける。....どうしたものか。........強引に押しきるか?慣れない機体で果たして出来るものなのか....それよりどうやって飛んでいるんだ連中は?

 

 ブースターのようなモノは取り付けられているが、ペダルが無いため飛び方がわからない。しかも、連中は長時間浮遊している。一体どうなっているんだ?ACでさえ長時間の浮遊は不可能なのだが....

 

「無言は降伏の意思無いとみなす」

 

 時間切れか。少々考えすぎたか....仕方がない。こうなれば此方も実力行使でいくしかない。静かに振り返り、左手にもマシンガンを装備し連中に向かい駆け出す。この短時間では走り方ぐらいしかわからなかった。

 

黒い鳥は、その大きな羽を広げ大空へと羽ばたこうとしていた。

 

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 やってくれる....始業式前に面倒を起こしてくれるとは....

 

「山田君、侵入者の状況は?」

「現在警備部隊が交戦中です」

「そうか....」

 

 モニターには、侵入者とIS学園の教師陣から成り立つ警備部隊が交戦を開始したことが映しただされていた。世界一と言っても過言ではない、IS学園のセキュリティを掻い潜り単独でどのような方法で侵入したのかの疑問は尽きないが、それよりも注目すべきことがある。

 

「織斑先生....この侵入者....」

「あぁ、わかっている。益々得体が知れない存在だ」

 

 侵入者は男であり、何故かISを動かしていた。だが、何処か動きがぎこちない。まぁ、ぎこちなくて当然だ。本来ならISは男には動かすことが出来ないのだから。

 

「山田君....私も一応現場に向かう。山田君は引き続き様子を見ていてくれ」

「わかりました」

 

 さて、侵入者にたっぷりと話を聞かせてもらうとするか。侵入の経緯から奴自身の詳細まで全部な。

 

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

「嘘でしょ....」

「バカな....」

「信じられない....」

 

 ....くそっ、やはり思い通りに動かせないな。ACならこんな攻撃楽に回避しているところだ。そんなことよりも、連中は何をそんなに驚いているんだ?全くもってわからん。連中の言葉は分からないが、顔が驚愕の心情を表している。

 

 そんなことは置いておき、勢いよく向かったのは良いが機体を十二分に扱えていない。迫り来る攻撃を回避するのに精一杯だ。挙げ句の果てには、射撃が安定しない。射撃もACと違い、本人に衝撃が伝わり自分で安定させなければならないようだ。

 

 AC以外での射撃なんて、そんなに経験もなければ上手くもない。明らかに俺の方が不利である。射撃の技術面でも操縦面でも、俺が大きく遅れを取っている。俺としたことが情けない話である。

 

 飛べない代わりに、その辺の構造物等を利用しての壁蹴りを駆使して動き回るが、AC感覚が抜けないためタイミングが取りづらい。

 

「ちょこまかと」

 

 3機は上手くコミュニケーションをとりながら、俺を徐々に追い詰めていく。連携の練度が高いことから、良く訓練された兵士なのだろう。正直なところこれ以上は厳しい。

 

 ディスプレイ内には、武器の選択や敵の探知からの警告のほかに数字が記されており、攻撃を食らう度に減少しているところを見るに、ACでいう耐久力なのだろうな。

 しかしながら、この機体には驚かされてばかりだな。攻撃を受けても機体周辺にバリヤのようなモノが張り巡らされており、攻撃を受けても全て肩代わりしてくれている。どうやら、それがあの数字と連動しているみたいだがな。つまり、数字が0になれば俺を守るモノも無くなるということだ。

 

「手こずらせて....」

 

 だが、機体は遂に限界を迎えた。既に機体の耐久力は0となっており、それに伴い機体内にも読めないが、危険域を知らせる警告が表示されている。

 

 ....限界か。最期というのは、呆気ないものなのだな。この俺が情けない話である。

 

「次は命の保証はしないぞ」

 

 流石にこれ以上の抵抗は無意味と判断し、連中の言葉の意味は分からないが、抵抗の意志が無いことをアピールする。連中もそれを察してくれたようで、付いてこいと誘導してくる。それに従い後を付いていく。

 

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 連れてこられたのは独房のような狭い一室で、俺が纏っていた機体も言葉が通じる相手からの指示により、機体の解除法を聞き機体から降ろされた。

 

 機体から降りた俺は手錠を掛けられ、今の状態に至る。かれこれ20分は待たされているが、一向に誰かが来る気配がしない。下手すればこのままここに幽閉されるかもしれな。

 

 まぁ、傭兵である俺は死に方や死ぬ場所は選ぶことはできない。どんな現実であっても文句は言えず、受け入れることしかできない。

 

「待たせたな侵入者。今からお前に幾つか尋問を行う。全て正直に答えてもらう」

 

 やって来たのは一人の黒髪の女だった。女は何か言っているのだが、生憎と言葉が分からないため何を伝えているのか分からない。

 

「やはり、日本語は通じないか....What your name?(貴様の名前は?)」

 

 おっ、この言葉なら意味が分かる。昔から馴染みのある一般的に使われている言葉だからな。だが、名前を聞かれても残念ながら名乗るような名前はない。通り名のようなモノで名乗らせて貰うか。

 

「Is it black bird? Stop kidding me.(黒い鳥?ふざけているのか?)」

 

 ふざけてなどいない。ただ名前がないから通り名で名乗らせてもらっただけだ。もとより、傭兵である俺に名前など不要なモノだ。

 

「Oh, it is good. How did you invade the IS school?(まぁ、いい。どうやって学園に侵入した?)」

 

 学園?侵入した?一体何を言っているんだ?先ず第一に学園とは何だ?この地の名称か?

 

「 What! ? When I do not know the IS school?(何!?IS学園を知らないだと?)」

 

 IS学園だけというわけではない。学園というモノ事態が、何なのか分からない。女の驚きようからだとかなり有名で名の知れている場所のようだ。で、俺はこの場所に気が付いたらいただけで侵入などしていない。

 

「When I did not invade it? Were you here when you noticed?....Do not tell a lie(侵入したわけではない?気が付いたらここにいた?....嘘をつくな)」

 

 女の目が鋭く俺を睨み付ける....嘘など言っていない。本当のことだ。嘘をついて俺に何かメリットがあるわけでもない。自分の利にならない嘘はつかない主義でな。

 

「It is the next question. Why can you move IS?(次の質問だ。何故ISを動かせる?)」

 

 IS?また聞いたことのない単語だ。何だそれは?初めて聞いた名前だ。何故動かせるだと?何かの条件でも満たさないと動かせないのか?普通に乗っただけだ。

 

 そう答えると女は黙りだした。....今度は逆に此方から質問させてもらおう。

 

「Is it a company? We are teachers of the IS school.(企業?私達はIS学園の教師だ)」

 

 企業ではないだと?教師?同業者か?若しくは学園とか言う地域の警備隊か?言葉は通じるのに会話が噛み合ってない。互いの質問の解答に?が付くだけで、進展がない。

 

「Where did you come from? A friend? It is a national carpenter's square of wherever?(何処から来た?仲間は?何処の国家の差し金だ?)」

 

 遥か東から渡り歩いてきた。仲間など最初からいない。フランシスやロザリィも仲間ではなく、雇う者と雇われる者の間柄だ。既に関係は解消しているがな。国家というのは知らないな。

 

「When I do not know the nation either? Takashi was wherever so far, and did you live?(国家も知らないだと?貴様今まで何処で暮らしていた?)」

 

 暮らしていた場所か....戦場だな。物心ついたときから戦場の置き土産を漁っては、生活の足しにしていた。ACに乗り出したのも10代半ばからだったけな。あの時も偶々動かせただけだったし....

 

「....Wait a little(少し待っていろ)」

 

 何か思い詰めた表情で女は席から立ち上がり、部屋を出ていってしまった。また一人となった俺は、女の言っていた単語を一つ一つ思い返してみる。国家....IS....IS学園....ダメだ何一つ心当たりがない。

 

 よくよく考えてみれば、あの世界にここまで環境の整った場所が存在すること事態あり得ない筈だ。どこもかしこも汚染による汚れが蔓延していた。例外など在るものなのか?




喋らないから大変だ....

これとは別に見知らぬ誰か様との合作で『彼女(メカニック)空を舞う』もやらせて頂いています。もし、よかったらそちらもどうぞ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。