『うちはシスイ憑依伝』外伝集   作:EKAWARI

1 / 20

 本編のあらすじ。

 
 あるところに、平凡な1人の男が居ました。
 日本の中流家庭に生まれた彼は、平凡ながら幸せにスクスク育ちました。
 しかし、彼が20歳を迎えたその年、彼が贈った旅行が原因で両親が亡くなってしまいました。
 大学を中退し、付き合っていた彼女とも別れ、当時中学生だった妹を養うために彼は働きに出ました。しかし、28の誕生日を1週間後に控えた其の日、彼は階段から足を踏み外し命を落としたのでした。

 次に目覚めた時には彼は3歳のうちはシスイに憑依していました。
 自分が漫画世界の他人に成り代わっている。そのことに気付いた彼は落ち込みました。
 それでも自分が既にうちはシスイになってしまったという現実は変わらない以上、力がなくては何も出来ないということもわかっていましたので、彼は自分の力をつけることにし、適正が高いだろう瞬身の術と幻術ばかりを特化して鍛えるようになりました。

 そうして更に何年もの月日が流れ、8歳になったある日、彼は「うちはイタチ」に引き合わされました。
 原作で読んだ時の彼のイタチに対するイメージは「強くて格好いい頼りがいのある良い兄貴」といった人物像でしたが、彼が出会ったイタチはまだ弱冠2歳弱の幼子でした。
 多少おませながらも小さくて礼儀正しく可愛らしい子供を前に、彼はイタチの事が大好きになりました。

 しかし、彼は自分の勘違いに暫く気付いていませんでした。
「か、か、かかかか母さん、大変だ! イタチついてない!? ちんこついてないよ!?」
 なんと、原作世界では男だったはずのイタチはこの世界では女の子だったのです。
 そのことに驚きましたが、性別を間違われたことに落ち込むイタチを見て、例え性別がどうであろうとイタチはイタチだと思い直した彼は、まるで前世の妹に対して自身がかつてそうであったように、イタチに対して情を深めていくのでした。

 しかし時は第三次忍界大戦の最中です。
 やがて、『シスイ』の両親も戦争に駆り出され、殉死し、そうしてイタチとの出会いから1年が経ち、アカデミーを飛び級で卒業した彼もまた戦場に出る事になり、当然人を殺すようになりました。
 そして半年後、彼の配属されたチームメイトは担当上忍を含め、彼以外全滅し、また親友と呼べる少年の介錯をすることとなった彼は万華鏡写輪眼を開眼し、1人で残った敵を全滅させて里へと戻りました。
 しかし、万華鏡写輪眼を開眼したという事実については隠蔽し、自分が万華鏡に目覚めたことを彼は隠し通しました。それでも、木の葉の忍びとして命じられるままに戦争の終わりまで戦い続けました。
 そうして更に半年後、漸く第三次忍界大戦は終わりを迎えたのです。

 原作のシスイ同様に「瞬身」の2つ名を与えられた彼は、うちはフガクによる計らいから、うちはイタチの婚約者という立場を与えられました。
 しかし、彼にとってはイタチの婚約者という立場は、イタチと堂々と関わるための口実でしかありませんでした。
 彼は思ったのです。
 力があるというだけで子供が戦場に出されるなんてそんなのはあんまりだと。
 そんなこの里の今を変えれる人間がいるとすれば、彼女しかいないのではないかと。
 子供達が笑って暮らす未来を見たいのだと。
「オレの夢は、お前を火影にすることだよ」
 そして、其の夢のためなら、何も惜しくないのだと彼は微笑いました。

 やがて月日が流れ、彼は上忍に昇格し、時にはアカデミーの臨時教師の仕事を受けたり、担当下忍である3人組の面倒を見たりする傍ら、イタチやサスケ達一家との交流も深めつつ日々を過ごしました。
 其の一方で、やがて里への不満から火を噴き出し始めた「クーデター」を企むうちは強硬派の人達への説得や、穏健派のうちは一族の人間に対する根回しや話し合い活動なども彼は続けました。
 うちはクーデター事件など起きたらイタチが火影になるという自分の夢の妨げになる。なにより、自分の知るイタチが原作NARUTO世界のうちはイタチのように泣きながら両親を殺め、汚名を被って犯罪者になる未来なんて嫌だったのです。
 そう思う彼は、いつかわかってくれる筈だと説得を続け、やがて彼が18歳に成る頃には一族でクーデター論を推す声は随分と小さくなりはじめていました。
 ところが、ダンゾウによるシスイ襲撃未遂事件が起こり、うちは一族はクーデターを決行することを決めました。
  このまま進めば、イタチはおそらく原作のイタチがそうであったようにうちは一族殺しの任を命じられるでしょう。

 だから彼は三代目火影に頼み込みました。
 どうか、うちはイタチに下す任務を自分に命じてくれ、と。
 そして願いは受理されました。

 それはまるで、原作のイタチの立場と入れ替わるように。

 それでも彼はうちはイタチではありません。

 そう、これは自分が人殺しに耐えられない人間であることにすら気付く事が出来ず、最期まで直走ったとても愚かな1人の男のお話です。



シスイ伝シリーズ総纏め&本編挿絵

 うちはシスイ憑依伝シリーズ総纏め。

 

 

 うちはシスイ憑依・主人公。前世の名前、内田??? 下の名前は結局最後まで思い出さなかったようだ。

 作者的愛称はしーたん。由来は「シスイ憑依オリ主」の略でもあり、本編シスイさんとの呼び分けでもある。

 二次創作オリ主に個人名なぞいらんだろうという理由で前世名は考えていない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 アカデミー卒業年齢:9歳 中忍昇格:11歳。上忍昇格:16歳前後。

 身長178㎝ 体重62㎏(死亡時)。

 好きな食べ物:和菓子、タクアン。

 嫌いな食べ物:納豆、なめこ。

 好きな言葉:可愛いは正義。

 趣味:子供の面倒見ること(←本人は否定)

 

 前世も現世も享年27歳な本作の主人公。

 一応原作シスイさんと同じ顔と体をしている筈なのだが、表情とか雰囲気、しゃべり方他違いすぎる為全く似てくれないあたり流石別人。多分普段こんなんだけど、シスイさん魂がINしたらちゃんとシスイさん顔になるんじゃないかな。笑顔率と赤面率がやたら高く、実は笑顔パターンが今回載せた分以外でも5種類はある。頬染めはデフォルト。照れると頬掻く癖がある。

 あと、心因性勃起不全持ちで、心の病みっぷりが如実に体にも影響出している男。明るく間の抜けた台詞や態度に騙されてはいけない、こいつは重度のヤンデレだ。そんなに病んでいるくせに、本人に自分が病んでいる自覚はなく、自分は普通の凡人だと思い込んでいるところが恐ろしい。

 シスコン兄ちゃんで我が道を行く尽くし系病みデレ男であり、ヤンデレレベルが高すぎても低すぎても死ぬ困った御仁。裏設定ではどのルート辿ってもどんなに長生きしても40歳の壁を越える前に死ぬ。

 でも本人は自分の事幸せだと思っているよ!

 感想でよく可哀想と言われる男ですが、なんだかんだいって好き勝手生きた果ての結末があれだったので、別に可哀想なんかじゃないと思います。結構こいつ、自分勝手の人でなしです。

 というか病んだ心と生への執着の無さが死を呼び寄せているだけなのが実際のところなので、正直同情の余地はないと思う。

 因みにこいつが人に好かれているシーンが多いのは、浅い付き合いだと「好青年」しているのが原因であり、別に本性までは知られてはいないから好かれているだけなので、多分本性が知れ渡っていた場合はもっと嫌われていたと思われ。

 基本的に付き合いが浅いと良い所ばかり目に付き、逆に深い付き合いだと「こいつ、本当に大丈夫なのか?」と不安に思われやすい男。

 金髪少年以来他人とは一定の距離を取って付き合っている為、ぶっちゃけこいつの本性に気付いているのはイタチさんと、薄々感づいているのが三代目なぐらいで、他の人は本性に気付いていないからこいつに優しいだけである。多分重度の病みデレであることを知られていたら、もっと嫌われたりもしてたんじゃないかなー。

 第三者から見たしーたんは「コミュ力が高く、サポート上手で、仕事が出来て人懐っこく、どこか抜けているけど清潔で子供好きの面倒見の良い甲斐甲斐しい男」なので浅い付き合いなら寧ろ嫌う要素はない。その辺は流石元リア充と呼ぶべきなのか。

 だが、こいつの本質については、代々うちはシスイ憑依伝・続で語っているイタチのシスイ像がほぼ正解なので、本性込みなら嫌う奴はとことん嫌うタイプだと思う。

 因みに同年代の女子にはモテない。

 理由は「なんか頼りがいなさそう」「強いのか弱いのかわからない」「良い人なんだけどつまらなさそう」「へたれっぽい(※実際はへたれと真逆の爆走男)」「ああいう人畜無害そうなのに限ってベットでは変態そうだよねー」とかそんな感じ。

 その代わり愛嬌と近所付き合いスキルが高い為、おばちゃん受けは抜群である。ハイスペックアホの子。

 本人には自覚がない……というか、そう思うのは死んだ両親に申し訳ないことだという意識から無意識に考えないようにしているというか、客観的に見たら自分のせいではないことも自覚しているから無意識の海に沈めているだけで、実の所、前世の両親の死を「自分が殺した」と思っている節がある。

 自分が贈った旅行で親が死んだから、だから当時中学生だった妹から両親を奪ったのは自分であり、己は人殺しであり親殺しであると、しかしそう思う事を両親が良しとすることはないだろうと思いつつも、どうしてもそんな想いが捨てきれなくて、なのでシスイ両親であるこの世界の親に対してあれほどあっさりしていたのも、「親」というのがしーたんの中である種タブーであったこともあるんだろうなーって感じ。

 因みにしーたんは例え両想いになってもイタチさんとくっつく気がそもそもないのだが、それも前世で両親の死後(将来結婚も内心漠然と考えていた)彼女に自分の都合で別れを切り出し、彼女を「捨てた」ことに対する罪悪感とか諸々が積み重なっている所があり、トコトン難儀なめんどくさい男である。

 つか、めんどくさすぎる。なんだこのマダオ。

 どうしようもない駄目人間、とびっきりの独善家、救いようのないアホ、自ら破滅に向かって直走る男、それがしーたんという男であり、この『うちはシスイ憑依伝』という物語は、そんな男の生き様と死に様の話なのである。

 

 

 

 うちはイタチ。

 

【挿絵表示】

 

 

 アカデミー卒業年齢:7歳 中忍昇格:10歳。上忍昇格:14歳。

 身長170㎝ 体重51㎏。

 スリーサイズ:B83、W56、H82でCカップ。

 好きな食べ物:おむすび(こんぶ)、キャベツ。

 嫌いな食べ物:ステーキ。

 好きな言葉:平和

 趣味:甘味処めぐり。

 

 何故かこの世界では女として生を受けたイタチさん。本作のヒロイン。先天的なTS設定なので、本人の性自認も普通に女である。

 性格や口調については、一人称を生まれつき女設定ということで、原作の「オレ」→「私」に変更しただけで基本的に弄っていないつもりなんですが、気付いたら作者さえ気付かないうちになんでかしーたんのこと好きになってて構想の中で完全ヒロイン化の道を辿っていた御仁。あるぇ? おかしいな、こんなこと予定にないぞ。しかし、萌えたのでそのまま進めてみた。反省はちょっとしかしてない。

 けれど、TSしようが、ヒロイン化しようがイタチさんはイタチさんなので、バトルシーンは誰より強く格好良くは譲れません。……かっこよく書けてたらいいなあ。

 本作のヒロインですが、イタチさんなので媚び媚びには書きたくなかった。そういう意味では1番気を遣って書いていた方なのかもしれない。

 ヒロインらしさとイタチらしさ両方を追求してみたキャラになったような気がします。

 イタチといえば、個人的に原作を読んでて1番印象的だった台詞が「オレを完璧だったなんて言ってくれるな」とサスケに向かって、自分のかつての非を認めながら言ってた言葉だったので、一見完璧っぽいけど、実は完璧ではないひとのつもりで書いていました。

 でも周囲には完璧扱いされるのがやっぱり基本で、そんなイタチさんがこの話で自分が完璧でないことを原作より早く認められたのは、多分情緒不安定で「あ、こいつ私がついてないと駄目だな」と思わせてくれる超駄目人間の大阿呆しーたんがいたからなんじゃないのかなあという気がしている。

 誰よりも矛盾していて、けれどそのことに本人は全く気付かなくて、笑顔の仮面被ってへらへら傷隠していたしーたんを見てて、多分自分の短所もイタチさんは見つめ直す余裕があったのではないか。

 ……あ、もしかして本作でイタチさんがしーたんのこと好きになったのってそれが理由なのかもしれない。うーん、作者のくせに其のあたり感覚で書いているものでアバウトで済まない。

 元々この「うちはシスイ憑依伝」という話を書いた切っ掛けはイタチが火影になる話が見たいだったので、この話の原点的存在だと思う。そういう意味ではシスイ伝シリーズはイタチさんと主人公のW主人公制だったのかもしれない、なんてことを思う。

 

 

 主人公が最初に配属された班のみんな。

 

【挿絵表示】

 

 

 本作の主人公であるしーたんがアカデミーを卒業して最初に配属された班のみんな。

 二次創作で登場するオリキャラにあまり名前をつけるのは良くないと思ったので名前はつけていないので、とりあえず仮称、おさげの医療忍者っ子と、金髪くんと、父親みたいな上忍の先生の3人とショタしーたん。

 

 おさげの医療忍者っこ:3人の中で1番年上だった。

 将来の夢は綱手姫の弟子になって木の葉1の医療忍者になり、自分の医療所を建設すること。明るくマイペースふわふわした性格でしーたんにはハムスターみたいとか思われていたらしい。結構ノリが良くておおらか。はがねコテツに惚れていた……という裏設定があった。享年13歳。

 

 金髪くん:主人公が初めてこの世界で最初で最後に親友と呼んだ相手。

 夏の太陽のようなカラッとした笑顔が印象的な少年で、将来の夢はアカデミー教師。

 その明るさに主人公は救われていた。忍者としてはそれほど適正が高いわけではなかったのか、あまり強いわけではなかったが、メンバーの中心的存在であった。

 最初の殺人後しーたんが正気を保てたのも彼らがいたおかげであり、親しい人は大勢作ってて誰にでも懐いていたような主人公であるが、親友と呼べるほど仲良くなったのは彼だけである。

 しかしだからこそ彼の死は万華鏡を開眼させる以外にも様々なことを主人公に影響を及ぼした。主人公の自分を無自覚に蔑ろにするヤンデレが加速したのは彼が死んだ後であり、彼の命を自分で奪ったからでもある。木の葉を想い、死の間際まで主人公のことを気に掛けていた。享年12歳。

 

 父親みたいな上忍の先生:3人の担当についた上忍の先生。父親みたいに時には厳しく時には暖かく3人のことを指導していた。既婚者だったが、彼女のほうが先に戦死してしまったため、男やもめの暮らしをしていたとかいうどうでもいい裏設定がある。享年36歳。

 

 

 シスイ班三人組。

 

【挿絵表示】

 

 

 主人公が上忍になって初めて担当することになったアカデミー出たての下忍3人組。

 オリキャラというわけで名前はやっぱりついていないので、武闘派くノ一っ子、のっぽくん、ぽっちゃり少年と呼ぶことにする。

 

 武闘派くノ一っ子:シスイ班のリーダー的な存在で、続編のほうでは後に暗部の姉ちゃんとして再登場する。

 主人公のことを慕っており、初恋とも憧れの人とも取れる感情でしーたんのことを想っていた。

 武闘派とつくだけあって、文字通り体術が得意で、実家のほうで布術を修めていた。なので、腰に巻いている赤いひらひらとしたでかい布は彼女にとっては文字通り武器であり、布の下には普通の紐帯も巻いているため、外しても問題はない。瞬身の術にも適正があったためシスイ班に配属されたとかいう裏設定もある。

 

 のっぽくん:見た目よりも軽くてノリが良くて明るい。

 続編中編で中忍テスト受けたいーとか言ってたのはこいつ。意外と幻術系と次いで忍術系に適正を示しており、火遁術はわりかし得意。チャクラ量もそこそこ多いほう。

 尚もっぱら主人公には幻術についてレクチャーを受けてたらしい。幻術適正が高めだったからシスイ班に配属されたようなもんである。一方、集団戦においては、でかい図体しているわりにあんまり力や体力があるほうじゃなかったため、なんだかんだでサポート係に徹していた。

 

 ぽっちゃり少年:医療忍者見習い。実家の関係と本人の趣味により薬草や毒草などに詳しく、武器は毒物と千本をメインに使っていた。武闘派くノ一っ子が正面から特攻し、それをのっぽくんがサポートし、彼が仕留めることを思えば案外バランスの取れたパーティー。

 こう見えても3人の中では1番頭が回るほうだったらしいが、武闘派くノ一っこをいつも立てていたというか、実は彼女のことが好きだったりしたため表に立つことはなかった。

 また、彼女が主人公のことを想っていることを知っていることや、自分自身シスイ先生のことは好きだったのもあって、まだシスイ先生への未練があるらしき彼女には後ろめたくて告白出来ないらしい。その辺は外伝のバッドエンドルートや失明・晩年ルートでも少し出てくる。

 

 

 主人公の妹ちゃん。

 

【挿絵表示】

 

 

 文字通り、主人公の前世での妹であり、主人公がヤンデレの道を歩み出した元凶の1人でもある。ただし、主人公はシスコンでもあるので、絶対にそのことを認めようとはしないだろうし、だからこそ自分が病んでいることに気付かないのだが。

 主人公に取っては救いであると同時に枷でもあった少女。

 主人公の6歳年下で、両親を亡くした時は中学生だったが、主人公の頑張りによって何1つ不自由することなく高校大学への進学を果たした……が、兄が笑顔で無理をしておりそのことが次第に心にまで影響を出し始めていたことには薄々気づいていたため、感謝と尊敬の他に後ろめたさや罪悪感もいつも兄に抱いていたらしい。

 そして、就職も決まり、漸く兄に恩返しが出来ると思った直後に兄を亡くす。

 因みに彼女の夢とは翻訳作家であり、専攻はスペイン語だが、他にもフランス語、ポルトガル語なども学んでいた。

 尚、料理は食べられないことはないが普通に下手らしく、いつまでたってもあまり上達しなかったため、実は兄貴のほうが料理上手である。下手なりに頑張るあたりが健気っちゃ健気。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 本編挿絵集。

 

 

 其の壱、猫葉さんリクエスト、本編第四話より、アカデミー卒業式の主人公と子イタチさん。

 

 

 * * *

 

 

 イタチは初めぽかんとしたかと思うと、次にくすくすと、忍び笑いを漏らして、「それ1つじゃないと思う」と笑った。

「う……言葉の綾だ、言葉の綾。あんまり笑うなよ、恥ずかしくなってくるだろ」

 ぼりぼりと頬をかく。多分既にオレの顔は頬は赤い。

「自分で笑えっていったのにか?」

 イタチはどことなく楽しそうに、なんだか悪戯じみた色を知性に満ちた黒曜石の瞳に乗せて、オレを上目遣いで見上げてきた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 * * *

 

 

 其の弐、続編中編より、ペイン長門による木の葉襲撃事件時の須佐能乎を従えた暗部服イタチさん。

 尚、今回付属のSSは書き下ろし。 

 

 

 * * *

 

 

 その襲来はまるで暴風のように訪れた。

 六道仙人が持っていたとされる、至高の瞳術、輪廻眼。その畏怖と憧憬の対象たる伝説が今木の葉へと牙を剝いている。

 其れはまさしく神の再現。

 ペインという名の新しき神を前にしては、人の御業など児戯に等しい。

 また、1人忍びが倒れた。歴戦の勇者が為す術もなく倒れていく。

 ゾッと背筋に冷たい汗が伝う。

(あんなの、誰も勝てやしない)

 息を飲む事さえ恐ろしい圧倒感、圧迫感。きっと虎に立ち向かう鼠とはこういう気持ちなのだ。

 木の葉隠れの火影直轄部隊である暗部として、配属されて3年ほどを数える青年の心に次第に恐怖が満ちていく。そして、その心が絶望に染まりきる手前のその刹那、それはまるで鮮やかな一陣の風のように現れた。

 まるでそれ自体が一個の生き物のように、無数のクナイが飛ぶ。

 そして颯爽と現れたのは、自身と同じ暗部装束に狐の面を被った女性。其の凛とした立ち姿はまるで普段と変わってなくて、ヘナヘナと暗部隊員は腰を落としながら女性を見る。

「……隊長」

「怯むな」

 凛とした声で、そう一言彼女は叱責をした。

「我らの肩には木の葉の未来が掛かっている。お前も木の葉の忍びなら敵に背を向けるな」

「でも……あんなの、勝てませんよ」

 思わず、青年の口から泣き言が零れる。それに、ふとほんの少しだけ隊長と呼ばれた女性は雰囲気を和らげて、それからこう言った。

「この世に完璧なものなど存在しない……どんな術にも必ず弱点となる穴がある。諦めるな、諦めたらそれが本当の終わりになる」

 そして彼女は、己の顔につけられた面を外した。

 狐の面が外れ、其の下から玲瓏たる美貌が露わになる。凛とした表情は力強く美しい。そして、長い睫に縁取られているのが印象的なその切れ長の目をまっすぐに部下に向け、女は言った。其の瞳はいつもの漆黒ではなく、巴模様と共に紅く染まっている。

「お前は他の住人の救出に向かえ」

「隊長は?」

「此処は私が抑える」

 だから心配するなと暗に含ませて、女は其の凛とした背中を部下へと向けた。1つに束ねた長い黒髪がバタバタと風に揺れてはためく。其の様がとても雄々しく力強くて、部下は呆けたように彼女の背を見つめた。

 凛とした立ち姿、背後を振り向くことはない。それは信頼だったのか、それとも確固たる自信の表れか。正面だけを見つめる三つ巴を描いていた女の瞳が万華鏡模様へと変わる。それと共に黄金の光が降りて、それはやがて巨大な骨の形を描き出した。

 そしてその日、その若き暗部隊員はもう1つの神話の再現を見た。

 現れたのは光を纏った黄金の巨人。其れが術者たる女を守護するように、或いは木の葉を守ろうとするかのように立ち上がる。

 そして……。

「……往け」

 ―――――須佐能乎は今此処に木の葉の敵を殲滅せんと、舞い降りた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 * * *

 

 

 其の参、織田弥生さんリクエスト、続編最終回より、涙するイタチ。

 

 

 * * *

 

 

 ポタリと、男の頬の上に暖かい滴がこぼれ落ちる。泣いている。あの、イタチが自分のために泣いているのかと、シスイはおぼろげな思考で思う。

(どうしてだろうな、オレはお前の泣き顔なんて絶対見たくないとそう思っていたのに)

 なのに、今はその涙がなによりも嬉しい。

 イタチに言われるまでもない。本当に酷い男だ。でもきっと世界一の幸せ者なんだろうと、そう男は霞む思考で思った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 * * *

 

 

 其の四、続編最終回より、イタチの笑顔。

 

 

 * * *

 

 

 そこには1人の女がいた。

 木漏れ日の中、自身と顔立ちがよく似た少年の相手をしている。

 いつもは凛とした表情をしていることが多いというのに、その顔は優しく和らげで、象牙の肌に1つに結わえた艶やかな黒髪が美しく映えている。楚々とした立ち姿はまるで一枚の絵のように優雅でとても綺麗で……ふと、彼女がその切れ長の黒曜石の瞳をオレへと向ける。そして、まるで桜の花のように微笑った。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 




 ばんははろ、EKAWARIです。
 本日は当小説をご覧頂き有難う御座います。
 本当は外伝と本編を分ける気は当初なかったのですが、ピクシブのほうでどんどん外伝が増えていった結果、今回思い切って「うちはシスイ憑依伝」本編と外伝を分ける事にした次第です。
 そのため、以前本編で上げていた話もあれば、ピクシブにしか上げていなかった話もありますが、楽しんで頂けたら幸いに存じます。 
 尚、以前上げた話でまだ上がっていない話もあるとは思われますが、そちらも読み直しと細かい部分の加筆修正終了次第随時アップしていきたいと思っておりますので、「この話がないよー?」って方は待っていただけたらありがたく思います。
 かしこ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。