とあるチート保持者によるこの上なく意味のない物語   作:celestial

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ちょっとグロいかも……?
それでも良い方はgo!


自分は悪くない

 

三 輝は愕然とした。

 

何故、隣の少女が自分が衛宮 士郎だと言っている?

 

 

だって、自分は衛宮 士郎になったのだ。

だからこそ、自分が。

 

「な、何言ってるんだよ耶代。ジョークにしては笑えないぞ?」

 

輝がひきつった笑いを浮かべて言うと、

 

「ジョークじゃない。俺は本気だ」

 

耶代は敵意と憎悪に満ちた目で輝を睨み返した。

その視線は、蛇のように鋭く憎しみしか感じない。

 

『さてさて、ここに同じ人間を名乗る者が二人。本物はどっちで、偽物はどっち?』

 

手慣れた様子で進行していくハクア。

その態度は、小馬鹿にしている事間違いなしだ。

 

「何を馬鹿な事を。シロウはこっちに決まっているでしょう」

 

「セイバーの言う通りね」

 

「わ、私もそう思います」

 

ヒロインズが指差したのは、

士郎B…二 輝。

 

確かに、姿だけは間違いなく衛宮 士郎だ。

そう、姿だけは。

 

「じゃあ、私たちは反対にするね」

 

カノンノズは、士郎A…銘謀 耶代。

正体をわかっているから、というのもあるが。

 

『ではでは、運命の結果発表タイム!あ、ちなみに判断する為に魂をチェックした上で本来の姿に戻すから』

 

ハクアがパチン、と指を鳴らすと輝と耶代、二人を包むように幾重にも重なった半透明の輪が浮かび上がる。

 

それには、細かな文字のようなものが浮かび――輝は、ファンタジー世界の設計図のようだ、と思う。

 

その環が出現してから数秒後、変化は起きた。

というか、悲鳴が上がった。

 

「な、何これ!?」

 

環が浮かんでいた二人の身体に、如実な変化が現れたのだ。

 

士郎B…三 輝の身体が、女になっていた。

髪は黒のショートカットで、瞳は漆黒。顔はほぼ士郎とは似ておらず、唯一似ている所と言えば背丈くらいだ。

 

「な、何で元に戻って……」

 

それと同時に、横を見た時、輝の理性はほぼ吹っ飛んだ。

 

横にいたのは、あれだけ輝が憧れた――

 

ヴァーミリオンの髪をし、鍛えていたのがよくわかる身体をした…

 

「本……物………!」

 

まさに、愕然とした表情を浮かべる。

それは、輝を本物だと言っていた彼女達もだ。

 

『という訳で、正解は士郎Aの耶代でした〜☆』

 

ハクアは慇懃無礼に片手を前にしてお辞儀をした後、くるりとターンし、

 

『ではでは偽物にはサヨナラグッバイしてもらおうかな』

 

極自然な動作でいつのまにか手に握られていた剣を輝に突き付けた。

 

あまりにも自然過ぎて、反応出来たのはカノンノズ以外いない程だ。

 

「な………!」

 

輝はひきつった声を上げ、目の前で剣を突き付けているハクアを見上げる。

まるで、トランプのジョーカーのように三日月を描く口がこの上なく不気味だった。

 

「士郎!」

 

武装し飛び出そうとしたセイバーに、

 

「えいっ♪」

 

カノンノ・グラスバレーが愛剣であるオータムリリィでエクスカリバーを防ぐ。

 

ガンドを放とうとした凜に、カノンノ・イアハートが瞬時に巨大化させたセブンスサマーの柄で軽く当て身を食らわせ。

 

黒いオーラを実体化させ始めた桜にはパスカ・カノンノが触手を切り裂き、昏倒させる。

 

『あは、覚悟を決める準備はOK?無様に泣きすがる準備は?地面に這いつくばる準備は?』

 

ハクアが持つ剣はキラキラと輝き、人に突き付けていると思わなければエクスカリバーにも負けず劣らず美しい剣だ。

 

「や、やめて!」

 

士郎と同じ口調はすでに崩壊し、あまりの恐怖の為か本来の女口調に戻り、目からは涙が溢れている。

 

『だーめ。だって、僕の仕事は被害者の耶代…士郎を助けて、加害者の三 輝をこの世界から追い出す事だからな。まぁ……殺す事と同義ととってくれてかまわないよ?』

 

クスリ、と妖しく微笑んだハクア。

焦らすように剣を微かに動かしていく。

輝はもはや、ガクブルを越えて泡を吐きかねないレベルの顔の青さだ。

 

ハクアの後ろでは、カノンノ達が輝を助けようとしているセイバー達を軽々とあしらいながら楽しそうに二人のやり取りを見ている。

 

「わ、私は何も悪くないじゃない!神様に言われたから来ただけ!!」

 

そうだ、あの神様っぽい人に言われたから。

輝はそう結論付けた。

自分は何も悪くない。

 

 

『んー?じゃあ君は人に言われたから自分は悪くないって言うの?』

 

ハクアが握った剣の力が微かに緩んだ。

それをどう思ったのか、輝は、

 

「そうなの!自分は悪くない、だって言われたんだから!だから、私は悪くないに決まってる!」

 

喚くようにそう捲し立てる。

蜘蛛の糸から他人を蹴り落とす、カンダタのように。

 

『そうか………』

 

ハクアはその剣を完全に下ろす。

全身にみなぎらせていた殺気を消すと、輝は明らかに安心したようだった。

 

そして――

 

フッ、と輝の視界が消えた。

 

正確には、首から上が消えていた。

 

 





格付けって面白いですね。
番組が面白くて…

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