とあるチート保持者によるこの上なく意味のない物語 作:celestial
そろそろ最終回になりそうです。
やっぱり中編になりそうだと思ったのは正解でした。
――さてと、とハクアは思う。
そろそろ、決めるか。
向こう側にかける慈悲はハクアにはない。
異端者は――し、それ以外はどうなるか知らない。
それ以外の判断はハクアが決めるべきではないから。
銘謀 耶代――
彼女…彼がどうするのを望むかだ。
いや、この前の料理の際の出来事で彼女たちにかける気持ちは減ったみたいだが。
「ハクア、決めるって事はやっちゃっていいの!?」
『ああ。いつも通り、しっかりと押さえといて』
「やった、ストレス発散になるといいな〜」
「誰がどれを相手する〜?」
カノンノズが楽しそうに言い合っているのを尻目に、ハクアは耶代に目を向けた。
『じゃあ、そろそろ決めるけど…心の準備はOK?』
その問いに、耶代は黙って頷く。
ハクアはそれに小さく吐息を漏らし、ニコリと微笑んだ。
□□□
次の日、
ハクアやカノンノズ、耶代はいつも通り衛宮家に呼ばれている。
恐らく、今の‘衛宮 士郎’にとって来られるのは困るが、仮にも幼馴染みという関係性になっているのだ。
邪険に扱って、何かしらの出来事が起きるのは困るため、一応呼んでいる、という所か。
『うーん……士郎、昔と味変わった?何か違う気がするんだけど…』
居間に着き、出された食事を食べながらハクアはそう切り出した。
「そ、そうか?やっぱり調味料をちょっと良いものに変えたからかな?」
『うーん……』
ハクアはその後も何かとケチを付けていたが、その真意には銘謀家以外気付かない。
『あ、そういえば士郎、あれ覚えてる?』
「あれ?」
『ほら、昔士郎と一緒に埋めたあれ。そろそろ掘り返していい時間だから、掘り返してみない?』
邪気なく笑うハクアに、明らかに彼の表情が強張った。
「(何それ…そんなもの知らない!)」
『でも、今からじゃ大変だね。明日やってみない?』
猶予時間。
どう動いてくれるかな、と腹の底では悪鬼の如く笑いながら表面上は天使のように微笑んだ。
「何それ?ちょっと気になるわね」
「はい」
「私たちも!」
良い所での追撃。
四面楚歌状態だけど、どうする――?
「わ、わかった。明日掘り返してみよう」
かかった!
ハクアがそう叫びそうになるのを堪え、
『やったぁ!士郎、ありがと!』
無邪気を装って抱きついた。
「「「!?」」」
明らかに周りの表情は強張り、耶代は複雑そうな顔をしていた。
「なぁっ…!?」
いかにも他意はなさそうな表情で笑うハクア。
ここにいる女たちは、何れも衛宮 士郎に好意を持っているらしい。
つまりは、それを煽ろうという訳だ。
「……シロウ」
「……………」
「………先輩」
それぞれ良い感じにやってくれたな、と思いながらハクアは抱きつきを止め、手を振りながら衛宮家から出ていく。
銘謀家にたどり着いた所で、
『うまく設置できた?』
「うん!」
そうカノンノズに問う。
ハクアが士郎に抱きついたのは、煽るというのもあるが、一番は感情を波立たせて混乱や怒りに近い状態になってほしかったからだ。
カノンノズは、気づかれないように庭が見えるようにカメラをしかけ、とある証拠を撮ろう、という訳だった。
『さてと、うまくやってくれよ?』
決着は――明日。
□□□
三 輝side
今、私は庭を掘っている。
正確には、埋める為に。
白亜が言っていた埋めたものが何かわからないけど、とりあえず何かしら埋めておこう。
それに、向こうもどんなものかは覚えていないはずだ。
(都合よく考えすぎだよ…byハクア)
丸い形のタイムカプセルのようなものを掘った穴に埋め、
とりあえずは一安心する。
「ふぅ…これで大丈夫だな」
私はそう呟き、寝ようと思って部屋に戻った。
それら全ての行動がカメラに映されていて、
明日、何が起きるかも起きる事も知らないで。
ただ、私は気づけば良かった。
銘謀家の人の視線の意味や、
銘謀 耶代という少女の正体に。
そうすれば、もしかしたらあの運命は変えられたのかもしれない。
だが、もうチャンスはない。
後は…裁きを待つだけだ。
・
カノンノズ…出番、ごめんよ…