とあるチート保持者によるこの上なく意味のない物語   作:celestial

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ふぅ……これ、結構短い話になりそうですね。


憎い人間との接触

 

『さてと…まずは君の身体をどうにかしないとな』

 

ハクアは少し考え込むと、手の先に半透明の幾重もの円が重なった形のものを作り出す。

それは、ドクメントと呼ばれるものだ。

 

自身を構成するドクメントを操る技術はソウルアルケミーというが、これはそれをさらに進化させたもの。

他人のドクメントを一から作り上げる、創造神レベルの御技だった。

 

それを士郎(ほぼ霊体)に渡す。

中身はほぼ無設定で、身体だけを作ったドクメントを取り込む事で、肉体を得るといった所だ。

 

「えっと…?」

 

それに士郎が触れると、半透明だった身体が肌色になりしっかりとした肉付きがある。

ただし、

 

「…………え?」

 

髪は背中近くまであり、胸には感じた事のないふっくらとした塊。

前より目線が低い。

 

つまり…女になっていた。

 

「はい、どうぞ」

 

カノンノ・グラスバレーが士郎に鏡を渡す。

それを覗き込むと、

やはり鏡には女の子が映っていた。

 

赤を帯びた髪はポニーテールにされ、残りは背中を流れている。

鉄色の瞳は棗型で、大きい。

かなりの顔立ちは整っており、士郎が今まで一緒にいたセイバーや凜、桜にも負けない程の美少女だ。

 

「な、な、な………」

 

士郎は硬直している!

 

『……あれ?ドクメント設計間違えたかな』

 

ハクアはしれっ、と言い親指と人差し指を弾き半透明のデータを呼び出した。

それを見、

 

『ごめん。僕が間違えたわ』

 

テヘペロ♪とでも言いたげな表情で悪びれもせずに言う。

 

「oh………」

 

『でも、あえてその方がよかったかも』

 

「え?どうして?」

 

カノンノ・イアハートが不思議そうに問う。

 

『ほら、しばらくしたら彼の世界に行くからさ。異端者に接触するなら本人だとは思わない方がいいでしょ?』

 

「成る程〜!」

 

 

『さてと。そろそろパスカの準備が整ったかな』

 

ハクアはそう言って、逆光を背に士郎に振り向いた。

逆光の中で影を帯びた身体の中で唯一瞳だけが爛々と輝いている。

 

『士郎、ここから僕たちは異端者潰しだ。君の世界に行くけど…士郎もついてくるよね?』

 

「ああ、もちろんだ」

 

『その時に衛宮、士郎は士郎じゃない。だから名前も一時的に変えなきゃならないけど…』

 

「………ああ、わかってる」

 

士郎にとって、名前は大事なものだ。

唯一失わなかった名前と、自分にとっての正義の味方の名字。

それが一時的とはいえ、自分の名前ではなくなる事は絶望的だが、それでも頷いた。

 

自分を奪った何者かに対する憎しみで。

 

『そうだなぁ……衛宮 士郎をアナグラムにして…銘謀 耶代(めいむ やしろ)って言うのはどうかな?』

 

銘謀 耶代…中々変わった名前だ。

 

「銘謀 耶代…うん、それでいこう」

 

これから一時的に自分の名前は銘謀 耶代だ、と士郎は自らに言い聞かせる。

 

それにハクアは満足そうに薄く笑う。

 

『とりあえず、設定は衛宮士郎の幼馴染みでいいかな。家は衛宮家の隣、母親と父親は遠いところ(海外)に行った…って感じでいいか』

 

ブツブツと呟くハクアを見ながら、士郎(耶代)はカノンノたちに聞く。

 

「ああいうの、いつもやってるのか?」

 

「うん、ハクアとやってるよ。でも、珍しいなぁ……ハクアが気に入るなんて」

 

カノンノはそう呟いた。

ハクアは好き嫌いが激しく、嫌いなものは徹底的に嫌いなタイプだ。

さらに、性格も込みで見る為ハクアが気に入る確率は限りなく低い。

 

そのハクアが、気に入る…嫉妬と多少の興味を交えながら、カノンノはもう一度彼に視線を向ける。

 

普通の男(いや、姿は女だけど)にしか見えない。

ハクアは何か感じ取ったのかもしれないが。

 

「準備オーケーだよー」

 

パスカに呼ばれ、意識をカノンノは切り換える。

これから先は、異端者潰し…仕事及び趣味の時間だ。

 

光のゲートに足を踏み出した。

 

□□□

 

光のゲートはすぐに途切れ、とある場所に降り立つ。

もちろん、人には見えていないが。

 

『よしっ、無事に成功!』

 

目の前には、結構な広さの屋敷。

屋敷の門の横には、

 

銘謀

 

という名字が書かれている。

 

『さすが創造神。仕事早いな』

 

「あれ、隣に誰かいるみたいだよ」

 

―――!

 

その声に、耶代…士郎は怒りを堪えきれなくなる。

 

自分の存在を奪った時と、何一つ変わらない能天気な声。

 

『あれ、士郎じゃん!ひっさしぶり!」

 

ハクアは慣れた様子で衛宮 士郎…三 輝の肩を叩いた。

 

「え?えっと?」

 

『やだな、僕だよ。銘謀 白亜。ちっこい時からずっと一緒だったじゃん!ここ数年は海外に行ってたから忘れちゃったの?』

 

ニコニコ、とハクアは笑いながら言う。

その実、全て演技だがそれに気付くものはカノンノたちや耶代除いていない。

 

「あ、ああーっ。白亜かぁ!久しぶり。」

 

…乗ってきた。

ハクアは見えないようにニヤリ、と笑うとカノンノたちにアイコンタクトする。

 

「士郎くん久しぶり!」

 

「元気だった?」

 

「ちょっと変わったかな?」

 

三つ子設定のカノンノたちが手を振る。

同じ顔が3つある事に驚いたようだ。

もしくは…元の世界でカノンノの事をしっていたか、だ。

 

「え、えっと……」

 

「あはは、さすがに私たちに会った時は小さかったからね。私は銘謀 グラス」

 

「まぁ…一桁台だからね。銘謀 イアだよ〜」

 

「私は銘謀 パスカ。よろしくね〜」

 

友好的(に見える)カノンノズに衛宮 士郎たちは頭を下げ、

 

『じゃあ士郎。後でそっちに行くから僕の大好物用意しといてね。お姉ちゃんたち、いくよ〜』

 

そう言って手を振り、ハクアは身を翻した。

家の中で、悪どい笑みを浮かべる。

 

『じゃあ次は耶代も行こうか。たぶん面白い出来事になるよ』

 

クスクス、と先ほどの天真爛漫な表情は何処へやら。

変わり身が恐ろしいぜ…

 

『さてと、どうでるかな。異端者は』

 

 





疲れました…
こう、伏線とかって張るのどうやるんでしょうね。

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