葬儀などのために空けられた三日という時間は未菜の頭を冷やすには十分な時間だった。
だからこそ、彼女はダンゾウに平手打ちをすることができた。
―――一発、叩かせてください。
幻術使いと名をはせたクノイチとしてはあまりにも小さな願い。だからこそ、ダンゾウはその願いを受け入れた。それで気が済むというのならば安いものだろう。上忍である彼女との間に不要なしこりを残しておく必要はないと。
だから、一発を受け入れた。ただし、それは始まりに過ぎない。
たった一発の平手打ちで彼女はダンゾウを術中にはめた。
ぺしん、となったときにはダンゾウは動けなくなっていた。
初撃・平手打ち
二撃目・顔面への右ストレート
三撃目・倒れこんだダンゾウに対しての胸部へスタンピング
四撃目・足を退かし、左手でつかみ上げ、壁に叩きつける。
五撃目・左頬への右フック
六撃目・同上
七撃目・鳩尾への右エルボー
その後未菜は気が済むまでダンゾウを殴りつけ、仰向けになるように地面に叩きつける。
そして、彼女は言った。慈悲もなく言った。
「もういいお歳ですから、それ、使いませんよね」
右足をゆらしとあげて、思いっきり金玉を踏み潰した。
そしてダンゾウは白目を剥き、気を失った。
未菜をダンゾウを一瞥した後、何事もなかったのごとくその場を去った。
未菜が家に帰ると付いているはずの明かりがついていない。オビトの気配も感じられず、家の中をぐるぐると回っていると一枚の紙を発見した。
[ちょっと出かけてきます。オビト]
「なん…ですって」
まさか、もう復活してもうオビトを誘拐するとは、忍の闇を甘く見すぎていたか。
未菜はそう考え、オビトを救出すべく、再び根の本部へと向かった。
そして、その頃オビトは特に誘拐されるでもなく、普通に巨大な亀の上にいた。その存在自体が他国には知られていない亀だが、なんてことはない、神威で高く飛んで写輪眼で見下ろせば巨大なチャクラが自然と見えてくるものである。
ここにある真実の滝であれば、何かわかるかも知れない、と思ったから、ここに来ただけの話である。
結果すでに30分は無言のまま、自らの闇と向かい合っている。戦うでもなく何をするでもなく、ただひたすらに互いを見つめることなく、両者が両者の視界に入っている。
無言の空間に耐え切れなかったのかオビト(闇)がしゃべり始める。
「お前さ。ちょっとかえってくんない?自分よりも暗黒面に堕ちたやつの相手するの、ごめんだわ」
その言葉にオビト(より深き闇)がようやく視点をオビト(闇)に向けた。
「お前は俺だろう。なんか、励ましの言葉とかないわけ?」
「そんな言葉はこの世に存在しねえって他でもないお前が一番よくわかってんだろ」
「つかえねぇなあ」
「鏡見て来い」
オビト(闇)からすれば相手をする気にもなれない存在だが、それでも自分だ。見捨てるわけにもいかない。自殺されても困るのでとりあえずの方向性だけは、示しておかなければならない。
「とりあえずはアレだ!大蛇丸が穢土転生完成させるまではまって、完成させたら、ナルトみたいに一発殴れば少しは気がはれるんじゃないか?」
「気の長い話だな。まあ、そうしてみるか…」
オビトはそういうと目を開けて精神世界から出た。ここでの用はもう済んだ。
神威を使い、木の葉の家へと戻るのだった。
「オビト!もう、どこいってたのよ!?」
ああ、そういえば書置きをしていたな。とオビトは他人事の様に考える。
「お母さん、オビトがいないから、もう心配で心配で!暗部を30人ばかり病院送りにして火影様に怒られたんだからね!」
「ちょ、ちょっと待って!この忙しい大戦時に何やってんの!?そりゃおこられるだろ」
未菜が言った恐ろしいを超えるおぞましいことに思わずオビトはツッコんだ。
「し、仕方ないのよ。ダンゾウをぼこぼこにした直後だったからてっきり根の人間かと思って」
なんという、勘違い。この人本当に上忍か?と思ってしまうが、何せ夫を失った直後なのだ錯乱しても仕方がないだろう。
しかし、我が母ながら一体何者なのだろうか?ダンゾウをぼこるとか相当な実力がいるぞ。
まあ、どちらにせよ、父を殴るためには生き残るのを含めて実力をつけておく必要があるだろう。幸い、相当な実力を持ち、なおかつ修行を着けてもらえる人間は目の前にいる。
さあ、修行開始だ。
まだ死んでいない。忙しすぎてなかなか書けないがエタッてはいないぞ!!!