カカシと共に酸霧を払いながら元いた場所に戻ると、くノ一たちの姿は消えていた。
リンを救出しないといけないのだが、オビトとしては助ける理由は薄い。というのも予定が狂いすぎているからである。第一に敵の隊長が違う。おそらくあの女が小隊長だろう。となれば使っている拠点も違う可能性が高い。第二に別にリンが好きというわけじゃない。と言うことである。
しかし、それらを退けるほどの大きな助ける理由がある。つまり、イレギュラーがあるとも知らず、誘拐されたリンを助ける理由として用意しておいた起爆札である。橋を落とすための起爆札をあらかじめ全てリンにもたせていたのである。要するにカカシは助けに行く気満々ということだ。まあ、それに知り合いだしね。助けに行くことに不満はない。友達だしね。別に大事じゃないけど、大切だしね。
実はちゃんと予備の起爆札を時空間に用意してあるけど、其の辺は黙っといて助けに行くとしよう。
「ここでカカシ君に問題」
「なんだ」
いきなりの問題にカカシは冷静に応じる。これ自体が一種の確認である。冷静なカカシをみてオビトは問題を提示した。
「今回の人質奪還の際に気をつけなければならないことは?」
カカシは少し考えると答えを出した。
「人質が変化の術かどうかの確認だろう」
「外れ。そんなもんは写輪眼を使えば一発でわかる。正解は人質にトラップが仕掛けられているかどうかです」
オビトは一本一本指を立てながら例を上げていく。
「まず、起爆札、一番お手軽で誰にでもできる。次に道連れタイプの術、特殊な血統を必要としないものも存在し、上忍クラスならできて不思議じゃない。最後に法陣トラップ、高等忍術だが、今回に限ってはこれだとありがたい。写輪眼があれば地面に隠れてても見つけられるし、見つけさえすれば解除は容易だ」
「だが、あのくノ一はどうやって倒すんだ」
通常ならば当然の疑問。しかし、オビトにとってはそれこそ愚問だ。そんなもんは
「神威で吹き飛ばしてしめぇだよ」
とか思ってた時期が俺にもありました。なんでこんなとこにいるんだよ
A&B
あーんどミナト先生よ。
状況は思った以上に混沌としていた。死んでいる岩隠れのくノ一とオビトが幻術にかけていた忍。ミナトのそばにいる目が虚ろなリン。なぜかいるエーとビーとその他雲隠れの忍1名。
なんでこんなところにいるんだ?雷の国からここまでは国を五、六個超えてこないといけないはずなのだが。
取り敢えずとカカシとオビトはミナトのそばに着地する。
「カカシ、オビト。無事で何よりだよ。オビト、カカシとリンを時空間に取り込んで、常に神威を維持しておくんだ。カカシは中でリンの幻術を解いておくように」
二人はこくりと頷くとオビトはカカシとリンに手で触れ時空間に取り込んだ。
それを感じ取ったミナトは周りへとクナイを飛ばした。
「オビト、真ん中の大男はきかん坊のエーだ。一瞬たりとも気を抜かないように」
オビトはミナトの前に立ち、印を組む。
火遁・豪炎呵責。親指の無い握りこぶしの様な形をしたこの術は火遁・豪龍火の術に匹敵する威力を持ちながら印が一つ少ないのが特徴で、オビトの悪ふざけによって生み出された術なのだが、実用性は高い。
豪炎はエーたちに向かうが三人共が見事に躱した。
エーたちは次の攻撃に備える。三人を追撃するように特徴的なクナイが飛んでくるが、雲隠れの忍が巻物を取り出し、大量の忍具を口寄せし、クナイを全て迎撃した。
が、雲隠れの忍は背をクナイで刺された。
「な! アマイ!」
アマイと呼ばれた忍を刺したのはミナトだ。
「飛雷神・・・」
「三ノ段だよ」
オビトが呟き、ミナトが引き継いだ。神威と飛雷神の合体技。ニノ段がマーキングを施したクナイなどへの移動ならば、三ノ段は神威でマーキングが施されたものを飛ばし、それに飛雷神で飛ぶ、時空間コンビならではの技である。そして、直接神威で倒したほうが早いだろうと言った某仙人が手も足も出せずにボコボコにされた技である。
エーは次の瞬間にはミナトに殴りかかっていたが、ミナトはすぐにオビトの近くへと飛んで避けた。
「ビー!」
エーがビーへと叫ぶがビーはそれを聞く前から煙玉を投げた。
「追いますか?」
オビトは追いはしないだろうと思っていたが念の為にミナトに確認した。
「いや、任務を優先しよう。彼らを相手にしていては時間を喰う」
オビトは一つ頷くとミナトともに、エーたちが逃げた方とは別の方角へと姿を消した。
オビトとミナトは後方を警戒しながら撤退していた。
「なーんでこんなところに雲隠れの忍がいんでしょうね」
「ん、大戦中だからね。もしかしたらどこかに同盟を申込もうとしてるのかもしれないね。このまま流れにそっていけば風の国があるしね。一応このことは火影様に報告しておくよ」
しばらく進み、後方の見晴らしが良くなったところでオビトはカカシとリンを外へと出した。
「うぅ、御免。捕まってぇ」
落ち込んでいるリンの肩を叩いたのはカカシだ。
「気にするな。あの忍は強かった」
そしてその強かった忍でさえ、きかん坊の前には一瞬で殺されたのだろう。あの場には酸が巻かれた様子は欠片もなかった。おそらく印を組む暇さえなく殺されたのだ。
「ん。じゃあ、橋を破壊しに行こう。距離もそんなにないしね」
ミナトが切りだしたが、オビトは疑問を出した。
「ミナト先生なんでこんなとこにいるんですか?戦線は?」
「戦線には大蛇丸さんが来てね。後は任せてきたよ」
おかま、大蛇丸に戦線は任せてきたようだ。まあ、あの人なら簡単には死なないだろうとオビトも納得した。
カカシとリンも荷物を背負い、動ける様に準備した。それを見てからミナトたちは橋へと向かう。橋は忍の脚ならば一時間程度の場所になり、すぐに到着した。
オビトとカカシが起爆札に血をつけ、印を結んで橋へとくっ付ける。そして、爆。
橋は爆音と共に崩れ、川へと落ちた。
「よし。任務完了だね。撤退するよ」
ミナトの指示を受けてオビトたちはミナトを小隊長として木の葉へと撤退し、
木の葉へと戻ったオビトたちは火影へと報告する為、火影の執務室へと行った。
火影が言った言葉にオビトは頬を引きつかせてなんとも言えない顔をしていた。要するに
「うちはオビトを波風ミナト他、上忍数名の推薦を受け、戦時特例として上忍に昇格する」
大戦中に上忍昇格など、これからこき使うからよろぴこーと言われているのと大差ない。つまり、これからはバンバンAランクや最悪Sランクに単身で生かされたりする可能性があるということだ。
「おめでとうオビト。ほんとはカカシと一緒に昇格してもらうつもりだったんだけど、最近忙しそうだったから」
「今度はオビトのお祝い用意しないとね!」
「おめっとさん」
火影・ヒルゼンはうむ、と頷くとカカシとリンに三日の休日を言い渡した。
「オビト早速で悪いんじゃが、明日から次の任務に出てもらう。何、そう難しい任務ではないわい。Bランク任務で雨隠れの頭目、山椒魚の半蔵に親書を届けてほしいんじゃ。頼んだぞ」
火影補佐が持ってきた封筒をオビトはぞんざいに掴み懐にしまった。
「じゃ、失礼します」
火影に一礼してオビトは執務室を出て行く。ミナトもそれに付いて出ようとしたが火影に呼び止められた。オビトは時期的に火影打診かな。と思いながら一人家へと帰った。
久方ぶりに家に帰ったオビトは玄関には向かわず、裏庭へと向かった。
「ただいま。母さん」
桃を収穫していた。母が驚いた様にこちらを向いた。
「あら、おかえりなさい。無事で良かったわ。すぐにお風呂沸かすわね」
既に四十になるのだが、その若さは昔から変わらない。元忍なだけあって今も定期的に運動しており、若々しくある。
「いや、明日からまた任務なんだ。悪いけど、猫ばぁのところに行くから桃のジュース作ってくれないかい?」
「そう、わかったわ。ちょっと待っててね」
母はそう言うと家の中へと戻り、桃を一度茹でてから冷水で冷やし、皮を取ったものの種を除いてからミキサーにかけた。
オビトはその間に自分の部屋へとお金を取りに戻った。
リビングに戻ると二リットルペットボトル二本にジュースが詰められていた。
「ありがとう。ちょっと行ってくるよ。夕方には戻るから」
オビトはそう言って家を出て、里の門で外出所要書を出し、空区へと向かった。
空区にある廃墟をしばらく徘徊していると角のところで猫と鉢合わせた。
「おー。久しぶり、みかん。元気してたか?腹減ってないか?干し肉あるぞ」
「相変わらずうるさい男だニ」
みかんはそれだけ言うと元きた道へと引き返していった。オビトはそれについていく。
しばらくいくと開けた場所に出る。そこには大量の猫と一人の老婆がいた。
「久しぶりだね。オビト」
「や、猫ばあ」
オビトは猫ばあに挨拶すると、部屋の隅に置いてあった猫用の水入れにどぼどぼと桃のジュースを注ぎ、地面においた。すると数匹の猫を残し、猫たちはジュースを飲みにいった。
「今日はまたどうしたんだい。ついこの間、来たばかりじゃないか」
あははとオビトは笑うと折れた錫杖の刀を渡した。猫ばあはそれを検分する。
「草なぎのひと振りとまでは行かないが、鉄の国の名工に作らせた一品だったんだがね。雷遁や風遁で断たれた感じじゃないね。側面を叩かれて割れたわけでもない。何か硬いものを無理やり切ろうとしてへし折れたみたいだね」
「ご明察のとおりで、ちょっと厄介な忍との戦いで折れちゃいまして。代わりのものをと」
「このレベルの代わりとなるとすぐには用意できないよ。しばらくは棚の上のを使っときたな」
オビトは棚の上に相手ある箱を手に取り、開ける。中には幅広な忍刀が入っていた。しかし、刀というよりも形としては剣に近い。
「あんがと。ありがたくもらっとくわ」
「あげた覚えはないよ。そんなことより、いい加減チャクラ刀にかえな。ぽきぽき人の商品壊しよってからに」
チャクラ刀ははっきりいって高い。手裏剣サイズならともかく刀を作るなら三百万両は行くだろう。オビトにはそんな金を捻出する宛は全くないのだ。
「うーん。まあ、しばらくしたら考えるわ。とりま、よろしくね」
オビトは支払いだけ済ませ、さっさと帰宅した。
オビトの推薦忍。
自来也「母を一人で養っとるんじゃ金はいくらあってもいいじゃろう。実力も十分みたいだしのう」
大蛇丸「あの子、上忍でいいんじゃない?」
ちなみにオビトの母は庭で桃を育てながらのんびり暮らしてます。