うちはオビト憑依忍伝   作:asd

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一寸先は霧 ぱーと2

「メイ?」

 

なぜだろう。どっかで聞いたことある。霧隠れの忍ってほとんど出てなかったし、こいつ、もしかして水影か?なんか、原作で水影水影呼ばれてたからちゃんと名前は覚えてないんだが。

 

そう思いながらオビトは手に持ったままの忍刀を弄ぶ。正直なところ、オビトは後に水影になれるだけの実力を持つであろう目の前の少女を斬ってしまいたかった。

 

しかし、既に命の代わりの名はもらっているし、部下の前で敵とはいえ約束を破るのは信用に関わる。それに舌の根も乾かぬ内に約束事を破るというのはオビトの信念に反する。里の繁栄のために万事を尽くすという忍道を優先するか、或いは自らの信念を優先するか、悩みどころではあったが、オビトは部下との信用関係も里の繁栄に役立つと考え、メイは紙一重のところで死を免れた。

 

「水影に伝えろ。道は千載不滅なり。いかなる大敵でも、道には勝てぬ、とな。我ら木の葉の忍は忍世界のパワーバランスを保つために道理から外れぬ行いはしてこなかった。ここで水の国がそのバランスを崩さんと動くのならばその先にあるのは滅びのみと知れ」

 

滅びとは水にとってだけではない。それは忍世界の滅びにつながる。避けられぬ定めとして第四次忍界大戦が巻き起こるだろう。そして、その時勝つのは木の葉だ。仮に、三国の大国が手を結んだとしても水を取り込んだ木の葉の方が分がいいのだから。それに、侍が忍に不干渉とはいえ、大戦の後に残る泥沼を考えれば、義に厚い木の葉に力添えするのは想像に難くない。

 

しかし、それは木の葉にとって尤も望んでいない結末だ。なぜなら、五大国でにらみ合っていたほうが、木の葉が大陸を統一するよりも犠牲が少ないからである。だからこそ、初代火影・千手柱間は尾獣を配り、バランスをとったのだ。もし。犠牲の天秤が逆に傾けば、おそらく、柱間は尾獣の力を使い大陸を取っただろう。

 

オビトはトドキに顎で指示を出す。

 

連れていけ、と

 

腕を掴まれ、メイは外へと連れられていく。メイの才能を考えれば、そのうちにでも霧で頭角を表すだろう。もしかしたら、会うこともあるかもしれない。オビトはそう考え、名を名乗った。

 

「俺の名はうちはオビトだ。強くなったお前と相対するのを楽しみにしている」

 

姿はもう見えていないだろうが、聞こえはしたのだろう。敵意は感じた。

 

 

 

 

 

「敵に塩を送ったな、オビト」

 

メイが出て行ってからオビトにそういったのはダンゾウだ。ずず、とお茶を啜ってからオビトはダンゾウへと返す。

 

「俺が送ったのは塩ではなく、味噌だよ」

 

「尚、たちが悪い」

 

ま、なんだ。とオビトは甘味をつまみながら続けた。

 

「バランスを考えれば、敵もある程度育てないといけないからね。今の水影が強いってもずっといるわけじゃないしね。四代目同様に、な」

 

ダンゾウが黙ったのを看取ると、オビトは再び甘味に手を伸ばす。しかし、その手が甘味に触れることはなかった。

 

「報告します。木の葉より、波の国攻略のための部隊が到着しました。また、火影様も今回は出るようです」

 

「ご苦労。俺は単騎で出る。トドキ、テラ、ダジム、トクマは四人一組を組んで、火影と合流しろ。ダンゾウ、防衛ラインの指揮は任せる」

 

オビトは長巻を持つとテントを出る。そして、神威を発動して霧へと突入した。

 

 

 

 

 

霧の濃度は異常なほどで、自分の手すら見えない有様だった。オビトは仕掛けてきた霧の忍を殺しながら、或いは躱しながら霧の形状から推測される水影の位置へと向かっていた。

 

その時、また一人の忍がオビトへと斬りかかってきた。オビトはそれを長巻で防いだ。そして、防いでから気がついた。

 

なんで、俺は防いだ?

 

本人は気がついていないが、それは経験から基づく行動。長巻とそして、相手の忍刀がせめぎ合っているその場所だけが、僅かに霧が薄くなっていた。

 

僅かなシルエットだけでオビトは相手の忍刀の正体に気がついた。

 

「鮫肌か!」

 

弾くように後退したオビトは再び構える。

 

「忍刀七人集、西瓜山河豚鬼だな」

 

問いかけたオビトにとっても予想外ではあるが、返答は返ってきた。

 

「いえいえ、彼はうちはとの戦いで死にましたよ。生憎、まだ無名の忍ではありますが、私は干柿鬼鮫といいます。以後、お見知りおきを」

 

オビトにとって西瓜山より聞き覚えのある名前であったが、それどころではない。

 

「以後があればの話ですが」

 

後ろから聞こえた声にオビトは長巻で答える。神威を纏った長巻は、雷遁でも防げないものなのだが、それはあっさりと鮫肌によって防がれる。

 

こいつ、神威でも食えるのか、と驚くと同時に気がつく。高確率で鮫肌の攻撃をすり抜けられないことに。鮫肌は触れなくともチャクラを削る事ができる。ならば、神威に込められたチャクラを食われれば、すり抜けは出来ない。どんな術にもリスクはあるという名言をオビトはこの時再確認した。

 

 




トクマについて説明していませんでした。

トクマは日向一族で原作でも出てきています。分家の人間なので回転等はできませんが。

実力は中忍の上のほう、シカクが日向と交渉して連れてきた人間の一人です。

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