一人の少年が全力で森の中をかけていた。うちはの装束に右側頭部を隠す様につけられたぐるぐる巻きの木彫りの仮面。背中の錫杖。うちはオビト13歳である。無論、憑依転生者だが。
彼にとってこの任務を外されるわけには行かなかった。この任務で野原リンを誘拐され、それを追跡しなければうちはマダラの潜む基地への入口がわからないからである。
ここでマダラを叩いて、黒ゼツ誕生阻止と柱間細胞入手と、ついでにカカシにやる用の写輪眼をマダラから回収しなければならないので、なんとしても任務に参加しなければならない。それこそ最悪神威の使用も辞さない覚悟である。ただ最近視力の低下を感じるのでシスイが万華鏡に目覚めるまではできれば使いたくない。
森を抜け、三人の忍びがいるところに突っ込んだ。
「間に合ったか」
「アウト」
オビトに突っ込んだのは白髪に布で口と鼻を覆った忍びだった。
「ん!まあいいじゃないか、カカシ。オビトが遅刻するなんて初めてだしね。神威を使わないようにしてるから時間の調整が難しいんだろう」
岩に座っていた黄色い髪がカカシを諌めた。今にも背中に四代目とか背負いそうな雰囲気である。
「ミナト先生、妙にオビトに甘くないですか」
カカシはジト目でミナトを見る。ミナトは微笑み、返した。
「オビトはここしばらくは最前線で神威を使って敵の数を調べてたり、物資を時空間に飛ばして奪ったりして大変だったんだよ。すこし位甘やかしたって上げないとね」
オビトもミナトに追随した。
「そ~で~す。ぉまえマジ大変だったんだからな。綱手様がドクスタかけてくれなかったら、俺失明するまで三代目に働かされてたぞ」
オビトの反論に反応したのは、今まで苦笑いをしていた女の子だった。
「オビト。目の調子は大丈夫なの?」
「リンちゃ~ん。俺に優しいのは君だけだよ」
「俺は?」
甘やかし宣言をしたのにさらりと無視されたミナトは思わず突っ込んだ。
「リン。今日は俺にとって特別な日なんだから、あまりオビトを甘やかさせるな」
「あ、上忍になったんだっけ。まあ、俺からすれば木の葉が未曾有の戦力不足じゃなけりゃなれたとは思えないけど」
オビトに皮肉にカカシは思わず握り拳が震える。
「カッチーン。人が気にしてることを」
「自覚はあったのか」
そうつぶやいたのはミナトだった。
「ミナトせんせぇ!?」
尊敬する師の一言に愕然としたカカシはツッコミの声が思わず裏返った。
「ん!じゃあ、もうそろそろ任務の説明を始めようか」
ミナトは地図を取り出し、それを四人で囲う。
「このラインが岩隠れが草隠れを侵略しているラインね。で、情報では千人規模の忍者がここにいるらしい」
カカシが記憶にある前回見た地図と比べ、呟く。
「あまり前進していませんね」
「そう。オビトが片っ端から支援物資を奪ってくれたおかげで後方支援が行かず、かなり足止めできている。で、オビトがドクターストップをくらったから、今のうちに後方支援を遅らせるために神無畏橋の破壊をする」
「潜入ミッションになりますね」
そう。とミナトは頷くとオビトは先生は?と尋ねた。
「俺は直接前線を叩く。君たちの陽動にもなるしね。国境までは一緒に行くけどそこからは任務開始だ」
カカシを先頭に進んでいるとカカシが手を隊を止めた。
(一人・・・)
「影分身だろうけど、20人いるね」
オビトもそれを踏まえて推測を上乗せする。
「Aランク禁術が使えるなら相手は上忍な可能性は十分ありますね。カカシ、どうする?」
カカシは一つ頷くとミナトの方を向いた。
「先生、俺が突っ込みます。援護をしてください」
「焦っちゃダメだよ、カカシ。ここは俺が行く」
しかし、カカシはそれに頷かない。
「先生、今日の隊長は俺でしょう。ちょうど開発中の術を使ってみたいんです」
そういったカカシに反論したのはオビトだった。
「カカシ。それは今しないといけないことか?」
「ミナト先生がいる今だからこそ、なんだ」
どちらも正論と言えなくもない。ミナトは頑ななカカシに一つため息を付くと、クナイを構えた。
「千鳥!!」
カカシは右手に雷遁のチャクラを集中させ猛スピードで突っ込んだ。それに対し相手の忍びは手裏剣やクナイを持って遠距離から迎撃する。バックアップに回ったミナトは影分身10名以上から放たれる手裏剣をたったひとりで全て撃ち落とした。
オビトはすぐそばの地面からずるりと現れた影分身に背中の錫杖を引き抜いて叩きつけるが、岩隠れの額あてをして忍は腕を交差させて防いた。しかし、次の瞬間にはオビトは錫杖を引き抜き、否。鞘を残して錫杖を引き、その首を刎ね飛ばした。
切れ味を落とさぬために火遁をもって油脂を焼き消した。
オビトが視線をカカシに戻すとちょうどミナトが助けに入ったところだったようだ。文字通り一瞬にして現れ、オビトたちの元へと戻ってきた。
そして、リンが傷口を見ようとカカシに近づいた瞬間にはカバンのみが残り、再びその姿を消した。
「マーキングすんのはぇなあ」
オビトは思わずといった風につぶやいた。
原作において先手を打つのが上手いと褒められていたが、どちらかといえば手癖が悪いというべきだろう。もしかしたら歴代火影でこの人が一番狸かもしれない。そう素直に思った。
リンがカカシの治療をしている時にミナトはぴょんぴょんと戻ってきた。
「カカシの怪我も軽くないし、一度後退して立て直すよ」
「大丈夫です!」
ミナトの示した方針にカカシは大きな声で反対した。
「大丈夫じゃないだろう。てかあの術なんだ!雷影も真似か!?欠点あからさまじゃねえか、ああぁん!!?」
一度止めたのに怪我をしたカカシにオビトは半ギレだ。
「ちょ・・・やめなよぉ」
切れているオビトをリンが止める。
神妙な顔をしていたミナトがカカシに切り出した。
「カカシ。さっきの術だけど、もう使わない方がいい。突破力とスピードはあるけど、スピードに振り回されてカウンターに対応できない不完全な術だからね」
「・・・・・・」
オビトにミナト、二人にダメだしされてカカシはぐうの音もでない。
「じゃ、分かれる前に言っとくけど。忍にとって何より大切なのはチームワークだからね」
その後、カカシを隊長とする4人はカカシの怪我を治しつつ進んだ。しばらく進み、植生変化し始めた頃合を見て、ミナトは二手に分かれることを決めた。
「ここから二手に分かれるけど。みんな気をつけてね。昨日の敵は偶々、単独での偵察だったようだけど、これからはチーム戦になると思う。三人組から四人組で動くのが基本だから二人から、ヘタをすれば二小隊と考えて7人程度。間違えても独断専行しないようにね」
そう言ったミナトにオビトは手を上げて発言した。
「せんせー。昨日の敵生きたまま捕まえてくれれば俺の写輪眼で情報引き出せたと思うんですけど」
「・・・・・・ごめん、忘れてた」
ミナトはしまった、と言わんばかりの顔でオビトに謝った。
「ん、じゃ。散!」
ミナトとカカシ班は瞬身の術で二手に別れた。しかしカカシたちはすぐに一度立ち止まる。
「で、隊列はどうする?」
「そうだな。敵戦力も不明だし、鼻のある俺か、写輪眼のあるオビトが前なんだが」
チャクラ量に自信がないわけではないが、オビトとしては不必要にチャクラを使いたくない。他の探知能力もあるにはあるがそちらもチャクラを使うので却下。
「写輪眼を維持し続けるのは無理とは言わんがチャクラの無駄だぞ」
「だな。潜入任務だから後ろにも気をつけなければいけないから、オビトは後ろを頼む。医療忍者のリンは双方にすぐに援護に回れるように真ん中ね」
隊列を維持しながら休憩をしたり、怪我の治癒をしたりして、敵地を進んでいく。
しばらく進んでいると川の途中でカカシが敵の存在を感知し、手を掲げることで仲間へと伝えた。
次の瞬間、オビトたちに大岩が投げ込まれる。
オビト、カカシ、リンはそれぞれの方向へと飛び大岩を避けた。しかし
(((分断されたッ!!)))
そう思った次の瞬間には、それぞれに刺客が襲いかかる。
カカシは両手の甲に刃を付けた男の一撃を躱し、背中のチャクラ刀に雷遁を流し、斬りかかる。男は両手の剣で防ごうとするが、チャクラ刀に剣は両断される。しかし、身体を逸らし、チャクラ刀が胴に触れるのは避けてみせた。
オビトは飛んできた鎖付きの分銅を水遁・水陣壁で防ぎ、そのまま水遁・水鮫弾の術へと繋げようとするが、分銅は水陣壁を突破しオビトの顔へと迫る。オビトは顔を逸らし躱すが、面にかする。しかし、面はかすっただけにも関わらず、大きくえぐれる。
オビトはすぐさま写輪眼を発動し、鎖を確認する。が、それ以上にやばい状況が写輪眼に映し出される。
「リン!! 下だ!」
オビトはリンの下に潜み、水牢の術を発動させたくノ一を見つけ、警告した。しかし、リンは水牢の術に囚われた。
「チッ! 」
オビトは思わず舌打ちし、自らの敵を見据える。水牢の術を使っているのならば動けはしない。リンが気を失うまでに一人は仕留める。
錫杖の刀を抜き、火遁のチャクラを流した状態で分銅を放った敵の首を斬りつける。しかし
ガッ、ガリガリガリガリ、ペキンと音を立て錫杖の刀が折れる。
(土遁・土矛の術か、ならさっきのは土遁・加重岩の術か)
土遁と水遁は優劣関係にある。分銅が水陣壁の術を破ったのは当然の道理だったということだ。
交差した二人は振り返り、再び対面する。
しかし、岩隠れの忍はうかつだとしか言い様がない。写輪眼を相手に目を合わせるなど愚かとしか言い様がない。
オビトは次の瞬間には相手を幻術にかけ、リンの元へと向かった。
しかし、戦いの最中吹き飛ばされてきたカカシにぶつかり、もんどりうちながら二人転げまわる目にあった。
「カカシ、しっかせいや!」
叱咤されたカカシは頭を抑えながら呻くように行った。
「あの男、かなりの早業だぞ」
「相手かえんぞ、俺がやる。寝転んでんのは土遁使い雷遁でいけ」
オビトはそれだけ言うと両手に剣の男へと向かった。カカシはカカシでリンの救出へと向かう。
「へ、返り討ちにしてやんぜ」
両手に剣の男は余裕そうに構えるが、オビトの写輪眼を見てすぐに警戒をした。
男はかなりの早業でオビトも写輪眼をフル回転させ斬り結ぶ。しかし、何よりも評価されるべきなのは写輪眼に目を合わさせずに斬り結ぶその技術である。
しかし、それとて憑依転生者オビトに勝つには生ぬるいと言わざる終えない。
男はオビトの強烈な体当たりのような斬りつけに弾き飛ばされる。男は空中でくるりと一回転し、木の枝へと着地しようとするが、するりとすり抜けてしまう。
「なに !?」
驚愕している男にオビトは火遁で止めを刺す。
「さよーなら」
火遁・火蜂筵の術。大量の針状に変化した火によて男は蜂の巣にされた。
カカシは水上でくノ一とお見合い状態になっていた。しかし、くノ一のそばにはリンと幻術にかけられた男がいた。
「カカシ。何やってんだ」
「オビトか。この女、血型限界だ」
くノ一は興味ありげにオビトをみた。
「あの子をやるとは中々ね。さっきの幻術も見事だったわ。貴方がこの小隊の隊長さんかしら」
小隊長と間違えられたオビトは気まずそうにカカシをみやり、無言で構えた。それだけで伝わったのかくノ一は、そう、とだけ呟き。印を構えた。
溶遁・溶霧の術。口から吐き出された霧は広がりながら二人に迫った。
二人は大きく後退していった。その間にくノ一は男にかけられた幻術をとき、リンをつれてその場から消えた。
誰かあらすじ考えてくれ。