久しぶり過ぎて、自分こんなテンションの主人公書いていたのかと懐かしさが。
それと読みやすさ重視で今回は1万字いってないです。
あと今回では完結しません。
前話の簡単なあらすじ
龍姫「先攻1ターン儀式・融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムぅ!! あとEXデッキからの特殊召喚できないよ! それとペンデュラムに破壊耐性もあるよ! オマケに戦闘時に攻撃力半減か、バトル終了だよ!」
目を閉じ、深く息を吸う。大きく肺に溜め込んだ空気は、細く長く吐き出す。
普段は滅多にすることのない深呼吸だが、遊矢は気持ちを落ち着かせるため、そして眼前の状況を正しく把握するために行った。
(──落ち着け。先ずは龍姫の場をよく見ろ。いつものように儀式・融合・シンクロ・エクシーズを並べただけのように思えるけど、今回はペンデュラムも居る。しかもさっきの龍姫の説明だと、EXデッキ封じ、ペンデュラムへの戦闘・効果破壊耐性、バトルフェイズの攻撃力半減か、バトルの強制終了がある…)
あくまでも冷静に状況を確認する遊矢。
龍姫の場には、彼女のエースにしてデッキのメインエンジンであるドラゴン族儀式モンスターの≪竜姫神サフィラ≫。
自分場のペンデュラムに戦闘・破壊耐性を付与し、墓地から【竜剣士】を蘇生するドラゴン族融合モンスターの≪剛竜剣士ダイナスターP≫。
場のペンデュラムをコストに除去効果を有し、デッキから【竜剣士】を呼び出すドラゴン族シンクロモンスターの≪爆竜剣士イグニスターP≫。
デッキからペンデュラムモンスターをサーチし、EXデッキから表側表示の【竜剣士】を展開するドラゴン族エクシーズモンスターの≪昇竜剣士マジェスターP≫。
場に居る限り互いのEXデッキからの召喚の一切を封殺するドラゴン族ペンデュラムモンスターの≪アモルファージ・イリテュム≫。
ペンデュラムゾーンには戦闘時に手札1枚をコストにモンスターの攻撃力を半減させる≪魔装戦士ドラゴディウス≫と、バトルフェイズを強制終了させる≪魔装戦士ドラゴノックス≫。
さらに手札は6枚もあり、次ターンの備え──いや、攻めも万全であることは容易に察せられる。
昔の遊矢であればこの盤面を見ただけでゴーグルを装着していたかもしれない。
だが、今の自分は次元戦争を発端とした、シンクロ・エクシーズ・融合の各次元で戦い抜いた経験がある。あの時は今の龍姫以上に強固な盤面を築くデュエリストも居たし、何なら毎ターン2枚以上破壊して効果ダメージを与えてくるデュエリストも居た。
あれに比べればこの盤面が何だと言うのだ。
特殊召喚は封じられていない。
順番さえ誤らなければ戦闘破壊もできる。
ペンデュラム効果もどうにかすれば回避できる。
やり方はいくらでもあるのだ──そして、その経験を元に龍姫のこの綺麗な盤面を全て壊し、力を示す。
「──オレのターン、ドローッ!!」
そんな思いを込め、遊矢はデュエルディスクから勢いよくカードをドローした。
― ― ― ― ― ― ― ―
(さて……遊矢はどう出るかな?)
先攻1ターン目で融合・儀式・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムモンスターを並べ、最も’’守り’’に特化した盤面を完成させたことに私は
何せ≪イリテュム≫が居る限りEXデッキからの一切の召喚を禁じ、≪ダイナスターP≫が居る限り≪イリテュム≫は戦闘・効果で破壊されず、≪ディウス≫と≪ノックス≫が居る限り戦闘面で≪ダイナスターP≫はもちろん、他のドラゴン達も容易に守ることができる。
既存の【聖刻】デッキにペンデュラムテーマの【竜剣士】と【魔装戦士】、そして新たな力を得た【巨神竜】を複合した私の【巨聖魔竜剣姫神】デッキは、私のドラゴン族デッキの集大成にして、最高傑作。
堅牢な守備、苛烈な攻撃、凶悪なロックを兼ねたデッキは最強だと自負している。
今は守りに特化させているけど、この盤面さえ突破できる人は片手で数える程度しか居なかったし、これを攻略されても次は’’攻め’’に特化した盤面で焼き尽くすだけ。
例えこの状況を崩すことができても、それだけ相手は大量のカードを消費する。
つまりその分守りがおろそかになり、私の次ターンでの猛攻を凌ぐことはできない。
それ故、私のこのデッキを相手に4ターン目以降を迎えた人は誰も居ないのだ。
過言や過信と思われるかもしれないけど、それだけ私は自分のデッキに絶対的な信頼があるからこそハッキリと言える。
──私のデッキは最強なんだ。
──って、自信満々に思ったけど大丈夫だよね?
まさか遊矢も赤馬社長みたく、1ターンで私の盤面を荒らしたりしないよね!?
いやでも荒らされても次の私のターンでぶっ壊し返せばそれで良いハズ…!
「オレは手札からスケール1の≪EMモンキーボード≫と、スケール7の≪EMキングベアー≫でペンデュラムスケールをセッティング! そして≪モンキーボード≫のペンデュラム効果発動! デッキからレベル4以下の【EM】モンスター1体を手札に加える! オレはデッキから≪EMドクロバット・ジョーカー≫を手札に加える!」
えっ、ちょ──何あの猿ッ!?
ペンデュラムカードとして発動しただけでサーチ効果!?
ちょ、おまっ──謝れッ! 各テーマの≪E・HERO エアーマン≫効果持ちのカードに謝れ!!
召喚権を使わずにサーチなんて、全盛期の【BF】でもしなかったムーブをするなんて、インチキ効果もいい加減にしろォッ!!
「手札に加えた≪ドクロバット・ジョーカー≫を召喚! このカードが召喚に成功した時、デッキから自身以外の【魔術師】Pモンスターか、【EM】モンスター、または【オッドアイズ】モンスターの内、どれか1体を手札に加える! オレはデッキから≪EMペンデュラム・マジシャン≫を手札に加える!」
≪エアーマン≫効果持ちに謝れと思った途端に≪エアーマン≫効果持ちを使うの!?
えっ、あの、【EM】さん何かカードパワーおかしくなってない?
サーチするカードをサーチするカードって、【ガジェット】並に回ってない!?
しかもペンデュラムだから毎ターン出るし──これが各次元を渡った経験かぁ……ヤバい。
「行くぞ龍姫──お楽しみはこれからだ! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に輝け、光のアーク! ペンデュラム召喚! 現れろ、オレのモンスター達! 手札からレベル4の≪EMペンデュラム・マジシャン≫! レベル6の≪EMカレイド・スコーピオン≫ッ!!」
内心戦々恐々としていたら、遊矢の手札から呼ばれて飛び出る【EM】。
1体はいかにもなマジシャン。
もう1体は──って、またお前かっ! お手軽全体攻撃付与サソリぃッ!!
昔、お前に私のドラゴンが蹂躙されたことは今でも覚えてるんだからねっ!
ここで会ったが、100年目。あのサソリは絶対に潰して──
「特殊召喚された≪ペンデュラム・マジシャン≫のモンスター効果発動! 自分の場のカードを2枚まで破壊し、デッキから自身以外の【EM】モンスターを手札に加える! オレはペンデュラムゾーンの≪モンキーボード≫と≪キングベアー≫を破壊し、デッキから≪EMシール・イール≫と≪EMモモンカーペット≫を手札に加える!」
──って、今度はサーチするカードをサーチするカードをサーチするカードォッ!?
何回サーチしてデッキ圧縮するの!?
しかも場にレベル4のモンスターが2体──≪イリテュム≫が居るから来ないぞ、私!
「オレは手札からスケール3の≪シール・イール≫、スケール7の≪モモンカーペット≫をペンデュラムスケールにセッティング! そしてフィールド魔法≪天空の虹彩≫を発動! このカードがある限り、オレのペンデュラムゾーンの【魔術師】、【EM】、【オッドアイズ】カードは相手の効果の対象にならない!」
来なかったけど、対象耐性付与が来たぞ私!
──って、対象耐性付与は地味に厄介……≪巨竜の羽ばたき≫か≪ダークストーム・ドラゴン≫でまとめて一掃するしかないかな?
でも両方とも手札にも墓地にも居ないから早めに引き込みたい──前のターン、≪エクリプス・ワイバーン≫で≪巨神竜フェルグラント≫を除外したのは早計だったかも。
「フィールド魔法≪天空の虹彩≫のもう1つの効果発動! 自分の場のカード1枚を破壊し、デッキから【オッドアイズ】カード1枚を手札に加える! オレは≪ペンデュラム・マジシャン≫を破壊し、デッキから≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫を手札に加える!」
何回サーチするの遊矢!?
猿と≪ドクロバット・ジョーカー≫と≪ペンデュラム・マジシャン≫とフィールド魔法と──このターンで4回もサーチしてる……【EM】はサーチテーマだった?
「手札に加えられた≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫の効果! 自分のPモンスターが破壊された場合、自分モンスター1体をリリースすることで自身を手札から特殊召喚できる! オレは≪ドクロバット・ジョーカー≫をリリースし──出でよ! 窮地の壁を打ち砕く、頼もしき渾身の一撃! 現れろ! ≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫!!」
おっとぉ! ここで見慣れない刺々しさでカッコいいドラゴンが──って、破壊された『場合』の効果だからって、サーチしたカードをそのまま特殊召喚するって裁定は私どうかと思うなーっ! おかしいと思うなーっ! えっ、有効? あ、はい。ソウデスヨネ。
「──よくEXデッキからの特殊召喚を封じられた状況で、攻撃力3000のモンスターを出せた……しかも
「昔のオレは龍姫がこんな盤面出してきたら泣いていたかもしれないけど、オレだって各次元を渡って成長したんだ。これぐらいはやるさ」
「けど、最上級モンスターを出せたところでまだ≪ダイナスター≫と≪ディウス≫、≪ノックス≫の守りが残っている。これをどうするの?」
「それはこいつを使ってからのお楽しみさ。魔法カード≪ペンデュラム・ホルト≫を発動。自分のEXデッキに表側表示のPモンスターが3種類以上存在する場合、デッキから2枚ドロー。この後、オレはデッキからカードを手札に加えることはできない」
何あのカード欲しい。EXデッキに表側表示のPモンスター3種類以上って、条件緩過ぎない?私のEXデッキにだってPモンスターは3種──あっ、≪竜剣士ラスターP≫と≪竜魔王ベクターP≫しか居なかった。おのれベクタァアアアアアァッ!!
──と、普段の無表情ポーカーフェイスで内心メラグごっこをしていたら、≪ペンデュラム・ホルト≫の効果で引いたカードを見た遊矢の顔が喜色に。
あっ、これもしかしなくてもヤバい?
「先ずは≪シール・イール≫のペンデュラム効果発動! 1ターンに1度、相手の表側モンスター1体を選択し、そのモンスター効果をこのターン無効にする! これでペンデュラムカードの破壊耐性は消えた!!」
「でもまだ≪ディウス≫と≪ノックス≫で守れる。この2枚がある限り、バトルは無意味──」
「それはどうかな! オレは速攻魔法、≪魔法効果の矢≫を発動! 相手の表側表示の魔法カードを全て破壊し、破壊した数×500ポイントのダメージを与える! これで龍姫のペンデュラムゾーンの≪ディウス≫と≪ノックス≫を破壊し、1000ポイントのダメージを与える!」
あ゙ぁ゙あああああぁぁっ!!? ちょっ、そんなことしちゃあいけない!! いくら私の手札に他のペンデュラムモンスターが居るからって、リバースカードもない状態でそんなことされたらっ…!!
──って、イッタぁっ!? ≪ディウス≫と≪ノックス≫破壊されて2本の光の矢が私に刺さって痛いっ! しかも1000ポイントのダメージ付だから地味に4分の1も削られたぁ!!
「ここで≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫を対象に≪カレイド・スコーピオン≫のモンスター効果発動!! このターン、≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫は特殊召喚された相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる!」
「──っ、ちぃ…!」
「行けっ! ≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫!! 龍姫のドラゴン全てに攻撃だっ!」
そして予想通り、と言わんばかりに≪カレイド・スコーピオン≫の効果で全体攻撃可能になった≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫がその牙──槍を抜く。
背中の翼からバーナーのように噴射炎が輝き、1度空高く飛ぶ。
次いでその顔を私のドラゴン達に向け、一気に急降下。
1列に並んでいた私のドラゴン達をまとめて一突きするように、その勢いのまま私のドラゴンが次々と破壊、全てのドラゴンが粒子となって霧散──させるかぁっ!!
「──っ、≪サフィラ≫が破壊される場合、代わりに墓地の儀式魔法≪祝祷の聖歌≫を除外することで、身代わりにできる…!」
「だけどダメージは受けてもらう!」
守備表示だった≪マジェスター≫と≪ダイナスター≫は戦闘ダメージを受けない。
けど攻撃表示だった≪イグニスター≫、≪イリテュム≫、≪サフィラ≫はその数値差分、戦闘ダメージが発生し、私のライフポイントが150、250、500と削られ、先の≪魔法効果の矢≫の1000と合わせ、このターンで1900ダメージ。
一気に半分近いダメージを受け、私の残りLPは2100。
さらには私の【竜剣士】達と≪イリテュム≫が破壊され、場には≪サフィラ≫1体だけ。
正しく形成逆転と言った状況──やっぱりあのサソリ許せない。
「よしっ! これで龍姫の場には≪サフィラ≫だけだ! オレはカードを2枚セットして、ターンエンドっ!」
私の築き上げた盤面を崩壊させ、優位に立った遊矢は笑みを浮かべながらエンド宣言。
遊矢の場には≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫と≪EMカレイド・スコーピオン≫の2体、ペンデュラムゾーンには≪EMシール・イール≫と≪EMモモンカーペット≫、フィールド魔法に≪天空の虹彩≫、魔法・罠ゾーンにはセットカードが2枚。
LPは無傷の4000、手札は使い切って0枚だ。
一方の私の場は≪サフィラ≫1体だけ。LPは半分近い2100──だけど手札は6枚ある。
私の場を壊滅させるだけでなく、次の私の攻撃への備え……もしくは、次ターンの攻めのためにリバースカードもある。
次元戦争を戦い抜いた経験は伊達じゃないということを思い知らされる──けど。
──リバースカード2枚だけで、耐えられると思っているの?
― ― ― ― ― ― ― ―
「私のターン、ドロー。手札からスケール3の≪竜角の狩猟者≫とスケール7の≪閃光の騎士≫でペンデュラムスケールをセッティング。これでレベル4から6のモンスターを同時に召喚可能」
遊矢の猛攻を受けた次ターン、龍姫は感情の起伏に乏しい表情のまま、淡々とカードをプレイ。
≪サフィラ≫以外に存在しなかった龍姫の場──ペンデュラムゾーンに、新たにカードが2枚置かれる。
どちらもドラゴン族ではないが、龍姫のデッキの主力となる【聖刻】モンスターをペンデュラム召喚できるレベル帯のスケールを持つ。
(レベル4から6──来るか…?)
相対する遊矢もペンデュラムゾーンにカードが置かれたことで警戒するように身構える。
龍姫のモンスターは≪サフィラ≫だけだが、EXデッキには≪ラスターP≫と≪ベクターP≫が存在していた。
最低でも2体のモンスターがペンデュラム召喚されることは確定であり、龍姫の残りの手札5枚からも何体か召喚される可能性はある。
単純に考えて再びモンスターゾーンを全て埋め、さらなる猛攻が来るであろうことは必然。
一体何を出すのか、と遊矢は鋭い眼差しを龍姫へ向ける。
「揺れろ竜魂のペンデュラム! この身より夢現から解き放たれよ! ペンデュラム召喚! 現出せよ! EXデッキからレベル4の≪ラスターP≫! ≪ベクターP≫! 手札よりレベル4の≪聖刻龍-ドラゴンヌート≫! レベル6の≪ラブラドライドラゴン≫!」
「──っ、一気に4体をペンデュラム召喚か…!」
EXデッキからは先のターンに各種召喚で活躍した≪ラスターP≫と≪ベクターP≫。
手札から喚ばれ出るは龍姫の馴染みの【聖刻】ドラゴンと通常モンスタードラゴン。
レベル4が3体──内1体がチューナーで、レベル6のチューナーモンスター。
龍姫ならば再度シンクロ、エクシーズを絡めた戦術を披露するに違いないと、遊矢は龍姫の一挙一動に注目する。
「ドラゴン族・レベル4の≪ベクターP≫に、ドラゴン族・レベル6の≪ラブドラドライドラゴン≫をチューニング──この世の全てを焼き尽くす煉獄の炎よ、紅蓮の竜となり劫火を吹き荒べ! シンクロ召喚! 煌臨せよ、レベル10! ≪トライデント・ドラギオン≫ッ!!」
≪ラブラドライドラゴン≫が6つの緑色のリングとなり、その中に≪ベクターP≫が白い4つの星となって包まれた。4つの星が一筋の光となるように一直線に並び、その直後に赤光が走る。
深紅の光は龍姫のフィールド上に1本の柱となって降り、それは隕石と見間違うほどの巨大な炎の塊が現出する。その紅蓮の中から1つ、2つ、3つと火柱が立ち、中心部は燃え盛り続け、背部の猛火は扇の如く吹き上がる。そして確固とした形を持っていなかった劫火は徐々にその姿を形成していき、3本の火柱は竜の頭を、燃え盛る中心部はその巨大な体躯を、背部の猛火は翼へと形を成し、≪トラインデント・ドラギオン≫がその姿を顕現させた。
その暴力的な熱量に遊矢は無意識の内にたじろぐ。
煉獄の炎と錯覚するような炎を纏い、3つの首から放たれる、射殺すような視線には恐怖しか感じない。
こんなドラゴンも居たのか、と遊矢の頬から汗が流れる。
「≪トライデンド・ドラギオン≫がシンクロ召喚に成功した時、自分場のカード2枚まで対象にして効果発動。対象としたカードを破壊し、その分追加攻撃できる」
「なっ──最大3回の攻撃だって!?」
「その通り。私は≪トライデント・ドラギオン≫の効果で≪ラスターP≫と≪ドラゴンヌート≫を対象とし──効果の対象になった≪ドラゴンヌート≫のモンスター効果発動。手札・デッキ・墓地からドラゴン族・通常モンスター1体を攻守0にして特殊召喚。墓地より≪マスターP≫を蘇生。その後、≪ラスターP≫と≪ドラゴンヌート≫は破壊」
≪トライデント・ドラギオン≫の左右の竜が咆哮をあげ、そのまま首だけをぐるりと回して左右隣に居た≪ラスターP≫と≪ドラゴンヌート≫に剛炎を放つ。2体のドラゴンは深紅の炎に包まれ、焼き尽くされるが、その刹那に≪ドラゴンヌート≫の効果で攻守0になった≪マスターP≫が炎の中より喚ばれ出る。
「私の場のドラゴン族がカード効果で墓地送り、もしくは破壊された場合、墓地から≪霊廟の守護者≫を特殊召喚」
「いつの間に──って、最初の大量ドローによる手札枚数制限か」
「ご明察」
2体のドラゴンが破壊されたにも関わらず、また2体のドラゴンが出現。
内1体は先のターンでオーバーレイ・ユニットとして墓地に送られた≪マスターP≫だったので別段気にもしなかった遊矢だが、≪霊廟の守護者≫は初見だ。
尤も、遊矢が推察したように龍姫の初ターンの≪超再生能力≫による10枚ドロー、それに伴う手札枚数制限で墓地に居たらしい。
一応、前のターンで≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫の連続攻撃(グォレンダァ!)でも蘇生させる機会はあったが、結果的に≪カレイド・スコーピオン≫の効果を受けた≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫の追加攻撃(ダイロクダァ!)を受ける羽目になるので、無意味な自己再生効果を使わなかっただけの話だ。
「私はレベル4の≪マスターP≫と≪霊廟の守護者≫でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築──竜弦を響かせ、その音色で闇より竜を誘え! エクシーズ召喚! 顕現せよ、ランク4! ≪竜魔人クィーンドラグーン≫ッ!」
そして龍姫の場に≪サフィラ≫と匹敵する召喚頻度を誇る≪クィーンドラグーン≫が姿を現す。
自身以外のドラゴンに戦闘破壊耐性付与、オーバーレイ・ユニットを使うことで墓地からレベル5以上のドラゴンを蘇生する効果を持つ、実に龍姫好みの効果を持ったドラゴン。見た目も良い。
「オーバーレイ・ユニットを1つ使い、≪クィーンドラグーン≫の効果発動。墓地からレベル5以上のドラゴン族1体を効果無効、このターン攻撃不可の状態で復活。蘇れ、≪ラブドラドライドラゴン≫──そして、≪ラブドラドライドラゴン≫を墓地に送り、装備魔法≪戦線復活の代償≫を発動。自分場の通常モンスター1体を墓地に送り、お互いの墓地に居るモンスター1体にこのカードを装備、蘇生させる。私は墓地から──ペンデュラムモンスター、≪魔装邪龍イーサルウェポン≫を特殊召喚」
「墓地からペンデュラムモンスター!? そんなのいつ──って、そいつも≪超再生能力≫の時に捨てたモンスターか」
「ご明察。そして召喚・特殊召喚に成功した≪イーサルウェポン≫の効果発動。相手の表側表示モンスター1体を選択し──除外する。消えろ、≪カレイド・スコーピオン≫」
「ぐっ…!」
≪クィーンドラグーン≫による蘇生。
条件を満たした装備魔法による完全蘇生。
完全蘇生からの再利用阻止のための除外。
流れるようなプレイングでモンスターを展開しつつ、相手モンスターの除去。
本来であればアタッカーである≪オッドアイズ・ランサー・ドラゴン≫を除外した方が良かったかもしれないが、龍姫は万が一このターンで仕留めきれなかった時のことを考慮し、≪カレイド・スコーピオン≫を除外した。
普通に破壊してもEXデッキに表側表示で送られ、次ターンで再度ペンデュラム召喚を許してしまう。
ならば通常の破壊ではなく除外し、再度の全体攻撃を不可能にさせた方がプレイングとしては正しいのだ。
(──あのサソリだけは絶対に許さないッ…! 次元の果てに消えろ…ッ!!)
決して以前のデュエルの時や、前のターンで全体攻撃を恨んだ龍姫の私怨ではないのだ。
決して私怨ではない。
「手札から魔法カード≪龍の鏡≫を発動。自分場・墓地からドラゴン族融合モンスターによって決められた融合素材を除外して融合召喚する。私は墓地の≪エクリプス・ワイバーン≫と≪暗黒騎士ガイアロード≫を除外し融合。星を蝕む飛竜よ、大地の暗黒騎士と交わり、飛翔せよ! 融合召喚! 現れよ! レベル7! ≪天翔の竜騎士ガイア≫ッ!」
「今度は≪超再生能力≫の余り手札で墓地に送ったモンスターで墓地融合か…!」
新たに姿を現すは、伝説のデュエルキングが使用した【暗黒騎士】──の派生モンスター。
騎乗槍を携え、朱色の竜に跨る姿は竜騎士そのもの。
また、再びモンスターゾーンを全て埋めた龍姫は(傍から見るとまるでわからないが)、むっふーと、やり遂げた表情で笑みを浮かべる。
「……融合召喚に成功した≪天翔の竜騎士ガイア≫と除外された≪エクリプス・ワイバーン≫のモンスター効果をそれぞれ発動。≪天翔の竜騎士ガイア≫が特殊召喚に成功した時、デッキから≪螺旋槍殺≫を手札に加え、≪エクリプス・ワイバーン≫が除外された時、自身の効果で除外した≪巨神竜フェルグラント≫を手札に加える。そして手札に加えた永続魔法≪螺旋槍殺≫を発動」
残りの処理を一気に、とばかりに龍姫は手札を2枚増やし、内1枚を魔法・罠ゾーンへ。
そしてこれで盤面は完成した、と冷酷(に見える)微笑を浮かべ、フィールドに視線を送る。
儀式モンスター、攻撃力2500の≪竜姫神サフィラ≫。
融合モンスター、攻撃力2600の≪天翔の竜騎士ガイア≫。
シンクロモンスター、攻撃力3000の≪トライデント・ドラギオン≫。
エクシーズモンスター、攻撃力2200の≪竜魔人クィーンドラグーン≫。
ペンデュラムモンスター、攻撃力2300の≪魔装邪龍イーサルウェポン≫。
再び5種類、このターンで計4回の異なる召喚を行い、龍姫自身は満足。
攻撃面に関しても、表示形式変更効果、≪螺旋槍殺≫による貫通ダメージを狙える≪天翔の竜騎士ガイア≫。
仮にコンバットトリックを使用されても自身以外であれば戦闘破壊耐性を付与する≪竜魔人クィーンドラグーン≫。
極めつけに、3000という高攻撃力の3回攻撃という、絶対に相手をこのターンで仕留めてやるという強い殺意を持った≪トライデント・ドラギオン≫。
これらのモンスターの攻撃──それも連続攻撃も含めれば、『7回』の攻撃を耐えられなければデュエルは終了する。
龍姫のエース、フェイバリット、フィニッシャーが並ぶ壮観の光景を目にし、遊矢の顔は恐怖に染まって──
(……流石龍姫だな。また融合・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラムを並べるなんて──)
遊矢とて、各次元を渡った経験がある。
何人もの強者とデュエルした。
いくつもの強固なロックを体験した。
何回も強力なモンスターと相対した。
何回も絶望的な状況に陥った。
それらに比べれば、これが何だというのだ。
世界の命運?
そんなものは関係ない。
命のやりとり?
デュエルとは戦争の道具ではない。
そんなことはどうでも良い。
今はただ──
(──こんな楽しいデュエル、ここで終わらせられないなッ!!)
──デュエルを楽しむだけだ。
社長の霊圧が…消えた…だと…?
あと猿ヤバい。
こいつはもう無期懲役で良いと思いました、まる(小並感)
(次回で完結します)→ごめんなさい完結しませんでした(2023年1月)