遊戯王ARC-V LDS総合コースの竜姫   作:紅緋

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1月更新間に合った…。
3日連続飲み会あった時はダメかと思いました。

2/2 23:40追記
後日修正します。感想返信もお待ちを。先に感想を書いて下さった方々は本当に申し訳ありません。


10話:《ラプターズ・ガスト》(鉄意志鋼強)

 レオ・コーポレーションのモニタールーム。そのメインモニターには、足早にデュエルフィールドを去る龍姫の姿が映し出されていた。先ほどのデュエルを赤馬零児と共に観ていた中島はゴクリと息を飲む。龍姫のデュエルは普段から逆転するものが多いが、それはあくまでも相手の予想を上回った場合。

 それが今回はどうだろうか。確かに相手の予想を上回ってはいたが、先程のデュエルではそれ以上に’’非情’’さが濃く現れていた。単純な戦術や駆け引きではなく、個のパワーカードで捻じ伏せる。またその時の龍姫の表情も普段の無表情さと相まって、どこか冷酷さすら感じたほどだ。

 実践経験は乏しいがこれほどの実力があれば赤馬社長の望むデュエリストとして不足はないだろう。中島は砂漠の中から一粒のダイヤを見つけた如く、喜色に満ちた顔で赤馬の顔色を伺う。

 そんな中島の視線に気付き、零児はちらりと彼の顔を視線だけ動かして答える。ふぅ、と息を吐きゆっくりと口を開く。

 

「――まだ、足りんな…」

「……えっ…?」

 

 零児の言葉に思わず中島が疑問の声を溢す。足りないとはどういうことだろうか? あれほど情け容赦ないデュエルをしたのだから満点とは言えなくとも、充分な結果を見せたのではないか? と中島の表情が告げる。

 

「…社長、まだ足りないというのは……」

「言葉通りの意味だ――中島、今の橘田龍姫のデュエルを観て率直な意見を述べろ」

「率直な意見……私には情け容赦なく相手を叩き潰し、完全な勝利を得たようにしか思えなかったのですが…」

 

 ふむ、と零児は顎に手を当てる。中島の感想に間違いはない。むしろ常人にはそうとしか見えないこともないだろう。だが自分の秘書としてはもうワンランク上のところまで思考を張り巡らせてもらいたかったものだ、と零児は小さなため息を吐いた。

 

「あぁ、確かにデュエル中はそうだったろう――だが、デュエル後の彼女はどうだった? その時も同じように見えたか?」

「――っ!」

 

 瞬間、中島は自分が浅慮だったと自覚する。確かにデュエル中の龍姫は冷酷なそれだったが、デュエル後はどこか後悔を感じさせる表情で、しかも足早にデュエルフィールドを去っていった。

 単に気を張ったデュエルから来る疲労から早く休みたいがためにあの場を離れたのだと思っていたが、その実はあのデュエルに否定的だったのではないかと今では推察できる。

 

「彼女にはまだ甘さがある。デュエル中の容赦のなさはある程度評価はできるが、デュエル後ではそうもいかないらしい……まだまだだな」

「確かに――しかし社長、今回は相手が偶然橘田の知人だったため余計に情があったのかもしれません。これが赤の他人の場合ではまた状況が異なるのではないでしょうか?」

「その線がないことは否定しない。私としては知人相手でも甘さを捨てて欲しかったが……まぁいい。なにはともあれ、これで彼女は正式にジュニアユース選手権の出場規定を満たした。大会でのさらなる成長に期待しよう」

「ごもっともです」

 

 望むほどの結果は得られなかったか、と零児は僅かに肩を落とす。

 今回の龍姫の公式戦は零児なりに相手を選抜したつもりだった。どちらも実力は高く、龍姫の相手にとって不足はない。彼女らであれば龍姫のレベルアップに足りうる存在だと思っていた。

 しかし、結果的には彼女らでも力不足。いや、力不足と言っては失礼だろう。逆に龍姫が強過ぎるのだと零児は理解していた。

プレイング、タクティクス共にジュニアユースはトップクラス。融合・儀式・シンクロ・エクシーズを共存させるデッキ構築力。極めつけに圧倒的劣勢から逆転するドロー力も持っている。

 

 通常であれば零児は素直に喜んだだろう。しかし、今は状況が違うのだ。

 LDS襲撃犯の登場、それによるLDSトップチームのカード化――元凶こそは異なると推測できるが、その先のことを考慮すれば今は一刻も早く強いデュエリストが欲しい。

 筆頭はこの世界で発現した未知なる召喚方法、ペンデュラムを生み出した榊遊矢。彼、ひいてはペンデュラムの力があればそれは必ず我々の武器になる。

 そして異なる召喚法を繰る橘田龍姫。彼女はまさしく非凡の存在だ。誰もが苦労して会得した召喚法を即座に習得し、それを専門のデュエリストよりも華麗に使いこなす。正直なところ、LDSの広告塔としてなら彼女ほどの適役はいないとさえ零児は思っていた。

 

 だが今はそんな温い考えをしている暇はない。今我々に必要なものは、これから立ち向かうであろう脅威に対抗するための力だ。

 その一番槍には橘田龍姫こそ相応しい。他を寄せ付けない強さを持ち、友人を大切に思う彼女であれば力を貸してくれるだろう。

 しかしその強さには非情さが足りない。一時期は勝利の為ならば相手から忌避されるようなデッキを使っていた彼女だが、今はどこか大衆向けのデッキのように思える。

別に今の龍姫を否定したい訳ではない。だが相手と真の意味で争う場合、彼女の甘さがいずれ命取りになる可能性もあるのだ。

 それ故、多少荒療治のようなものではあるが強者と戦うことでより勝利に対して貪欲になって欲しい。そんな期待を込めた公式戦、新たな力も渡したが、結果は前述の通り。満足する出来ではない。100点満点で65点といったところか。こうなればジュニアユース選手権でさらに選りすぐりの相手を見つけなければと零児の眼鏡が光る。

 

 

 

――――――――

 

 

 

 夕刻の人気のない路地裏。龍姫は当て所もなく、顔を俯けて歩いていた。

 先のデュエルは何故か罪悪感が残る。いや、何故という疑問は不要だろう。ただ、ただただ罪悪感しかない。

 

(……はぁ…公式戦でああいうことするのって、何だかなぁ…)

 

 ドラゴンの大量展開が今のスタイルとはいえ、最後のプレイングは自分でも嫌気が差す。《ドラゴラド》、《竜魂の城》で墓地の闇属性の枚数を調整し、《ダーク・アームド・ドラゴン》を出したことについて異論はない。

 問題はその後だ。効果を使った《ダーク・アームド・ドラゴン》を《トライデント・ドラギオン》の破壊コストに割り当て、《聖蛇の息吹》で即回収&即特殊召喚から再度の蹂躙。ドラゴン使いとしては時に自分ドラゴンを破壊のコストにすることもあるが、あのプレイングには愛がないと龍姫は思っていた。

 特殊召喚し、破壊の限りを尽くし、破壊され、また特殊召喚し、もう1度蹂躙させる。まるで道具だ。あんなプレイングは(自称)ドラゴン使いの自分には相応しくない。自分の知っているドラゴン使いは自分のドラゴンに誇りと絆と希望と愛を持っており、あんな使い方はしないだろう。

 自分らしくないあの姿を、今の自分だと見て欲しくない。デュエル後、負けたにも関わらず笑顔で再戦を望む美夜がそれを肯定していたように錯覚してしまう。『違う、そういう訳じゃない。今のデュエルで私はしたかったのはこれじゃない』と吐露できればどれだけ楽になっただろうか。

 

 だが、そんな本音を漏らすことは許されない。

 龍姫自身、LDS襲撃の不審者の件が片付くまではこのスタイルを貫くしかないと思っている。負けたら何をされるか分からない。この世界では魂が抜かれるのか、はたまた命を落とすのか。こんな危険なことを知り合い以上友達未満の美夜に話せる訳がない。

ドラゴンと触れ合える環境、自由にデュエルができる喜び、切磋琢磨する仲間の存在。龍姫にとって今の世界は至福に満ちたものだ。それを突然どこからやってきたかわからない不審者に壊される訳にはいかない。

 俗物的な考え――だが、至って単純な理由。難しく考える必要はない、ただ平穏が潰されるというのであれば、逆に潰してやる。そんな歪な想いを胸に抱き、龍姫は胸の前でぎゅっと拳を握った。

 

「――1人か?」

「――っ!?」

 

 瞬間、龍姫の体が僅かに跳ねる。俯いていた顔を咄嗟に上げるとそこには昨日出会った不審者。

 再びその異様な雰囲気に飲まれそうになるが、先の思い抱いていた感情が想起され、明確な敵意と怒気を孕んだ眼差しで睨み付ける。

 

「……改めて聞く。1人か?」

 

 当の不審者はそんな龍姫の剣幕に圧されることなく、平然な顔で問いかけてきた。

 これが連続襲撃犯ならではの余裕なのかと龍姫の頬に冷や汗が流れる。しかしここで引く訳にはいかない。逆に相手を圧倒しなければと、普段作っていた無表情が憎悪のそれに変わる。

 

「……それが何?」

「いや――たった1人で俺に挑むつもりなのかと思っただけだ」

 

 何なのこの人、と言いかけた口を閉じる龍姫。1人で何が悪い、というか何故挑むことが前提なのか。こいつは通報される恐れを知らないのかと問いたくなる。あぁ、そもそも不審者だから通報され慣れているのだろうと1人納得して龍姫は警戒と呆れが混ざった顔で見据える――

 

「1人の方が良い」

 

 ――が、すぐにその言葉の意味を理解したと同時に憤りを言葉で吐き出す。

 この男の言は暗に『貴様1人で俺に勝てると思っているのか?』と言っているようなもの。

 いくらLDSのデュエリストを多く倒してきたのだとしても、龍姫もトップの一角。多少なりともプライドはある。それをこのような不審者にその他大勢に見られていることは不愉快極まりない。

 目には目を、歯には歯を。

 

「1人なら貴方が負けた時の言い訳はできないだろうから」

「――ほう…」

 

 挑発には挑発を。

 龍姫の言葉に不審者は僅かに眉をひそめるものの、俄然余裕のある雰囲気は保ったまま。単独で挑むことに余程自分の腕に自信があるのだと察する。

 そういえばこの女は自分の親友であるユートをデュエルで追い込み、物理的に倒していた。その上、昨日はユートとの挟撃とはいえ自分に手刀を食らわせるほどの胆力の持ち主。ならばこの自身は嘘ではないのだろうと納得した。

 

「その自信がどこまでのものか見極めてやる――さぁ、俺とデュエルだ!」

「構わない。けど少し待って」

 

 いざデュエルと彼が意気込んだ矢先、龍姫はデュエルディスクからデッキとエクストラデッキを取り出し、ポーチに常備しているカードとデッキのカードを入れ替え始める。突然の行動に青年は眉間に皺を寄せるが、カードの入れ替え自体は数十秒で済んだ。自分用に何か対策でもあるのかと疑問に思うところはあるものの、どの道この女はここで倒れる運命。そんな対策など無意味でしかないと、怒りの炎を盛らせデュエルディスクを構える。

 

「お待たせ」

 

 それに呼応するように龍姫もデュエルディスクを構えた。

 片や狂い盛る紅蓮のような闘志を纏い、片や氷のように凍てついた零度を纏う。

 纏う雰囲気こそ対照的だが、戦意はほぼ同じ。

 混沌した空気の中――

 

「「デュエル!!」」

 

 ――戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

――――――――

 

 

 

「私の先攻。魔法カード《儀式の下準備》を発動。デッキから儀式魔法を1枚選び、その儀式魔法に記された儀式モンスター1体をデッキ・墓地から選択。そのカード2枚を手札に加える。私はデッキから儀式魔法《祝祷の聖歌》を選び、さらにデッキから《竜姫神サフィラ》を選択。この2枚を手札に」

(儀式――古い戦略だ)

 

 龍姫が手札に加えたカードの情報を知るなり、青年――黒咲隼はそう切り捨てた。故郷にも儀式召喚はあったためその存在は知っているが、使う人間は極僅か。しかもそれらの儀式モンスターはお世辞にも強いとは言い難いカード群だったので、黒咲がこう評するのも無理はない。しかし、ここは自分とは違う場所、儀式の方が他の召喚法よりも発展している可能性もある。油断はできないと、警戒を強めた。

 

 当の龍姫は先ず手札増強と、手札は5枚から6枚に。これで後攻スタートと条件は同じ。あとはいつも通り――いや、いつも以上に自分のデッキをフル回転させるだけだ。そのためには目的のカード5枚を手札に引き込む必要がある。龍姫は緊張した面持ちで手札のカード4枚に指をかけた。

 

「儀式魔法《祝祷の聖歌》を発動。レベルの合計が6以上になるように手札・場からモンスターをリリースし、《竜姫神サフィラ》の儀式召喚を執り行う。私は手札のレベル5《聖刻龍-ネフテドラゴン》とレベル5《聖刻龍-アセトドラゴン》をリリース――祝福の祈りを捧げ、聖なる歌がもたらす光で闇を打ち払え! 儀式召喚! 光臨せよ、レベル6! 《竜姫神サフィラ》!」

 

 昨日のサイバー流道場での公式戦と同じように手札のカード4枚を捧げ、今ではすっかり自身の相棒――いや、分身とも呼ぶべきドラゴンの姫を場に光臨させる。

 その《サフィラ》を目の当たりにするものの、黒咲は至って平静。《サフィラ》の攻撃力は2500。低過ぎず高過ぎず、並の上級モンスター程度のものだ。あの程度であれば十分に対処できる――そう思っていた矢先、龍姫のデュエルディスクの墓地が輝き始めた。

 

「リリースされた《アセトドラゴン》と《ネフテドラゴン》のモンスター効果発動。『聖刻』モンスターは自身がリリースされた時、手札・デッキ・墓地からドラゴン族・通常モンスター1体を攻守0にして特殊召喚する。私はデッキからレベル8の《神龍の聖刻印》とレベル2の《ギャラクシーサーペント》の2体を攻守0にして守備表示で特殊召喚」

 

 《サフィラ》の両隣に金色の球体状の龍《神龍の聖刻印》と小柄な竜《ギャラクシーサーペント》が同時に姿を現す。レベルは8と2でエクシーズには適さないが、片方はチューナー。この状況であればシンクロ召喚が狙いかと、黒咲は龍姫の場のドラゴンを注視する。

 

「レベル8の《神龍の聖刻印》をリリースし、手札から魔法カード《アドバンスドロー》を発動。私の場のレベル8以上のモンスター1体をリリースすることでデッキからカードを2枚ドローする。続けて《ギャラクシーサーペント》を墓地に送り、魔法カード《馬の骨の対価》を発動。私の場の効果モンスター以外のモンスター1体を墓地に送ることでデッキからカードを2枚ドローする」

 

 しかし、目的はシンクロ召喚ではなく手札増強。フィールドのドラゴン2体はすぐに闇の中へと飲まれ、2枚しかなかった龍姫の手札が4枚まで増える。黒咲は先攻で出すような大型モンスターではなかったのかと考えるが、その間も龍姫のプレイングは止まらない。

 

「魔法カード《闇の量産工場》を発動。自分墓地の通常モンスター2体を手札に加える。私は《神龍の聖刻印》と《ギャラクシーサーペント》を手札に。手札のレベル8《神龍の聖刻印》を捨て、魔法カード《トレード・イン》を発動。手札のレベル8モンスター1体を捨てることでデッキからカードを2枚ドローする。続けて攻撃力1000のドラゴン族チューナーである《ギャラクシーサーペント》を手札から捨て、《調和の宝札》を発動。手札の攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーを捨てることでデッキからカードを2枚ドローする」

 

 墓地に送られ、手札に戻り、再度墓地へ。忙しなく動く奴だと黒咲が思う中、龍姫は最初の手札交換、次の手札交換で着実に目的のカードが手札へと加えられていくことに内心で拳を握る。《闇の量産工場》と《トレード・イン》、《調和の宝札》によって龍姫の手札は現在5枚。その内の目的のカードは3枚まで揃えた。

 だがこれでは足りない。相手を徹底的に叩き潰すことに中途半端な攻めをする訳にはいかないのだ。残る2枚のカードで必ず引き込んでみせる、と龍姫の眼が鋭く光る。

 

「もう1度魔法カード《闇の量産工場》を発動。《神龍の聖刻印》と《ギャラクシーサーペント》を手札に加え、《神龍の聖刻印》を捨てて魔法カード《トレード・イン》で2枚引く――っ! 手札の《ギャラクシーサーペント》を捨てて魔法カード《調和の宝札》でさらに2枚のドロー…!」

 

 同じ魔法カードの連打。先程から同じことしかしない龍姫のプレイングに黒咲は僅かに眉をひそめるが、同時に警戒を強める。同じことの繰り返しとは言え、それで龍姫の手札は6枚にまで増えたのだ。後攻での通常ドローを含めた初期手札と同じ枚数であり、その上龍姫の場には攻撃力2500の儀式モンスター《サフィラ》が居る。単純なカード・アドバンテージの稼ぎ方だけなら今まで自分がデュエルしてきた相手では上位に入るだろう。またそこまで手札を増やしたということは何かしらここから大量のカードを使ったコンボが来るハズ。どんな手が来ようが打ち砕く自信はあるものの、それでも警戒するに越したことはない。

 

(……揃った…!)

 

 当の龍姫は緑一色(リューイーソー)に染まった手札を見て内心で満足気な表情を浮かべる。目的は5枚のカードだけだったが、さらにリカバリーもできるカードも来るオマケ付に改めて自分のドロー力に心が震えた。逸る気持ちを抑え、爬虫類――いや、竜を彷彿とさせる眼光で黒咲を睨みつける。

 その射殺すような視線が黒咲へと突き刺さり、黒咲は自ずと身構えていた。

 『あの目は何か仕掛けてくる』――デュエリストの本能がそう告げ、黒咲は先程以上に強い警戒を体で表していた。

 

「……魔法カード《竜の霊廟》を発動。デッキからドラゴン1体を墓地に送る。私はデッキから通常モンスターの《ハウンド・ドラゴン》を墓地に送る――ここで《竜の霊廟》のさらなる効果発動。墓地に送ったドラゴンが通常モンスターの場合、さらに1体ドラゴンをデッキから墓地に送ることができる。私はデッキから《霊廟の守護者》を墓地へ」

 

 『先ずは1枚目』、そう龍姫は小さく呟き、続けて2枚目の魔法カードへと指をかけた。

 

「魔法カード《ソウル・チャージ》を発動。墓地のモンスターを任意の数だけ選択――私は墓地のレベル2《ギャラクシーサーペント》、レベル3《ハウンド・ドラゴン》、レベル4《霊廟の守護者》の3体を選択。選択したモンスターを特殊召喚し、私は特殊召喚したモンスター1体につき1000ポイントのライフを失う――っ」

 

 龍姫の場に黒紫色のサークルが3つ地面へ浮かび上がる。直後、そこから3体の下級ドラゴンが一斉に姿を現す。レベルもステータスも下級モンスターらしいドラゴン達が蘇り、その代償として龍姫は僅かに苦悶の表情を浮かべながらダメージを受ける。だが、これで条件は揃った。

 

「――私はレベル4の《霊廟の守護者》とレベル3の《ハウンド・ドラゴン》にレベル2の《ギャラクシーサーペント》をチューニング。氷獄より解き放たれし禁龍よ、今その暴威を振るい全てを凍てつかせよ!」

 

 3体のドラゴンがそれぞれ2つの緑の歯車、7つの白く輝く星となり一体になる。シンクロ召喚特有のエフェクトがソリッドビジョンで写し出され、互いのデュエルディスクにはその合計レベルである‘’9‘’が大きく表示された。

 フィールドが閃光に包まれた瞬間、その光から白銀の龍頭が1つ――また1つと順に首を出す。3つの首が光から這い出て、次いで白氷と群青で彩られた体躯が顕現。背には幾本もの氷柱から成る翼が生え、機械のように無機質な眼差しはその雰囲気と相まって冷たさを感じさせる。

 

「シンクロ召喚! 現れよ――レベル9、《氷結界の龍 トリシューラ》!」

 

 冷酷なる暴龍が姿を現し、黒咲は目を細める。かのドラゴンはレベル9のシンクロモンスター、攻撃力も2700と大型モンスターと言って差し支えない。

 だがそれ以上にどこか言い様のない恐怖が、《トリシューラ》出現と同時に荒れ吹雪く氷雪と共に背筋を凍らせる。このドラゴンは場に出るだけで何かを覆す、そんな空気を醸し出していた。

 

「《トリシューラ》のモンスター効果発動。このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手の手札・場・墓地のカードをそれぞれ1枚ずつ選んで除外できる――ハイパーボリア・フォビドゥン…!」

「――っ」

 

 龍姫の説明と同時に《トリシューラ》の中央の首が大きく反れ、光線のように吹雪を放つ。その吹雪は5枚ある黒咲の手札の1枚に直撃し、カードが氷で塗り潰されていく。黒咲は一瞬忌々しげな表情を浮かべ、凍てついたカードをデュエルディスクへ差し込む。基本的にデュエルディスクに墓地と除外ゾーンはなく、システムで判別しているため一度一纏めにされる。

 これで黒咲の手札は4枚。手札誘発効果を持ったカードがないため、後攻の彼は先攻1ターン目でできることはない。龍姫の手札も同じく4枚。あとはあの2体のドラゴンを残った手札でどう倒すかだが、と黒咲が思案している中、龍姫は息継ぐ間もなく次の一手を繰り出す。

 

「魔法カード《シンクロキャンセル》を発動。場のシンクロモンスター1体をエクストラデッキに戻し、そのシンクロモンスターのシンクロ召喚に使用したシンクロ素材モンスター1組が自分の墓地に揃っていれば、その1組を自分フィールドに特殊召喚する――戻れ、《トリシューラ》。そして蘇れ、《ギャラクシーサーペント》、《ハウンド・ドラゴン》、《霊廟の守護者》」

 

 氷龍が場から姿を消すと同時にその素材となったドラゴン達が再度龍姫の場へと現れた。通常ならば単にシンクロ召喚のやり直し程度でしかないカードだが、再びレベル合計が9となる3体のドラゴンを前に黒咲は僅かに眉間へ皺を寄せる。

 

「――1枚や2枚では終わらせない」

「……っ」

 

 その表情を知ってか知らずか、龍姫は怨嗟のように酷く暗い声色でそう呟く。そのままゆっくりと、自分の残り手札3枚の内の2枚の魔法カードを黒咲へと見せつける。

 瞬間、黒咲は苦虫をすり潰したような顔を浮かべた。

 龍姫がかざした2枚の魔法カード――《シンクロキャンセル》を目にし、これから起こるであろう悪夢を察したのだ。

 

「…私は再度レベル4の《霊廟の守護者》とレベル3の《ハウンド・ドラゴン》にレベル2の《ギャラクシーサーペント》をチューニング――シンクロ召喚! 再臨せよ、《トリシューラ》!」

 

 4枚の手札の1枚が除外され――

 

「2枚目の《シンクロキャンセル》で《トリシューラ》をエクストラデッキに戻し、シンクロ素材3体を蘇生。そしてこの3体をチューニング――現れろ、《トリシューラ》!」

 

 3枚の手札の1枚が除外され――

 

「3枚目の《シンクロキャンセル》を発動。三度《トリシューラ》をエクストラデッキに帰還し、シンクロ素材の3体を蘇生。そしてこの3体をチューニング――出でよ、《トリシューラ》!」

 

 2枚の手札の1枚が除外される――これで黒咲に残された手札は僅か1枚。

 これで龍姫の手札にある《シンクロキャンセル》は全て墓地へと送られた。再度使おうとしても、魔法カードの再利用は《魔法石の採掘》や《魔法再生》等の高コストのものが多い。今の龍姫の手札は黒咲と同じ1枚。あの手札からさらなる手札破壊はないだろうと一般デュエリストなら考えるだろう。

 

(――この残りの1枚も消えるか…)

 

 だが黒咲は自身の経験上、最後に残ったこの手札も破壊されると予感していた。目の前の少女からは絶対に相手の手札だけは全て破壊するという意思を感じる。後先は考えない――いや考える必要がないのだ。そもそもデュエルにおいてカードの数、つまりは手札の数だけ可能性がある。ならばその可能性の根本さえ断ち切ってしまえば後はじっくりと煮るなり焼くなりすればいい。だからこその手札破壊の一点集中。ある意味理に適っているとも言える。

 

「私は手札から速攻魔法《超再生能力》を発動。このターン私がリリース、または手札から捨てたドラゴン族の数だけターンの終わりにドローする」

 

 前言撤回。この女は次のターンのことまで目敏く考えていると黒咲は瞬時に察した。

 このターン、龍姫は《アセトドラゴン》と《ネフテドラゴン》を儀式魔法のリリース、《神龍の聖刻印》を魔法カード《アドバンスドロー》のリリースに使用。さらに《神龍の聖刻印》と《ギャラクシーサーペント》はそれぞれ《トレード・イン》と《調和の宝札》により2回ずつ手札コストで捨てられている。

 リリース・捨てた回数は合計して7回。ふざけたドロー枚数だと黒咲は半ば自嘲気味に鼻を鳴らす。それだけ手札を補充できれば次のターンも確実に攻め入るだろう。ならば何としても次の自分ターンでは盤面を整えておきたいと思う――

 

「ターンの終わりに《サフィラ》のモンスター効果発動。このカードが儀式召喚に成功したターン、もしくは手札・デッキから光属性モンスターが墓地に送られたターンの終わりに3つの効果から1つを選択して発動できる。私は3つの効果の‘’相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ捨てる‘’効果を選択――最後の手札も捨ててもらう」

 

 ――が、やはり先の嫌な方の予感が的中する。

《サフィラ》が手をかざすと掌から光球が放たれ、それが黒咲の最後の手札を覆う。

黒咲は無言でその手札のカードを墓地へと送り、龍姫を強く睨む。

 

「……さらに速攻魔法《超再生能力》の効果。私がこのターンにリリース・手札から捨てたドラゴンの合計は7回。よってデッキからカードを7枚ドローし、手札枚数制限により1枚捨てる」

 

 一気に7枚ものカードをドローし、それらに軽く目を通すと龍姫は1枚のカードを手札制限で墓地へ送る。視認したカード枠は緑色だったため、魔法カードであることはわかったが詳細までは不明。だが、それよりも先ずは自分の態勢を整えることが先決だと、黒咲は状況を確認する。

 龍姫の場には攻撃力2500の《サフィラ》、攻撃力2700の《トリシューラ》の2体のモンスターのみ。手札は6枚と潤沢ではあるが、その分LPは僅か1000しかない。

 対して自分は手札0枚、後攻のため場にはカードが1枚も存在せず、LPは無傷の4000。

 数の暴力を体現したようなフィールドに憤りを感じるが、これに似たような死線は何度もくぐり抜けてきた。いくら手札が少なかろうが、いくらLPを減らされようが、決して諦めることはしない。

 

「私はこれでターンエンド」

 

 自身の手札を0枚にしたことで打つ手はない。そこからの逆転は不可能だと龍姫の冷めた表情が告げているように黒咲は感じた。まるで勝ち誇っているかのような雰囲気に黒咲の眉間の皺がより深くなる。その余裕を浮かべている表情をすぐに一変させてやる――そう思いながらデッキトップに指をかけた。

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から《RR(レイド・ラプターズ)-インペイル・レイニアス》を召喚!」

 

 勢いよく引いたカードを一瞥し、そのカードを黒咲はそのままデュエルディスクに叩きつけるようにセットする。

 全身は刃物のように鋭利、機械仕掛けのような猛禽が場に姿を現す。刺々しい外見に龍姫は目を細めるが、黒咲は構わずに眼前のドラゴン達を睨む。

 

「《インペイル・レイニアス》のモンスター効果発動! このカードが召喚・特殊召喚に成功したメインフェイズ1に1度だけ、場の攻撃表示モンスターを守備表示にできる! 俺は貴様の《トリシューラ》を守備表示に変更!」

「――っ」

 

 《インペイル・レイニアス》が鳥類特有の甲高い鳴き声をあげると、それに従うように《トリシューラ》が身を守るように翼で自身を覆う。その光景を見た龍姫は僅かに顔を歪ませた。

 

「バトルだ! 《インペイル・レイニアス》で《トリシューラ》に攻撃!」

 

 そんな龍姫の表情には目もくれず、黒咲は攻撃命令を下す。攻撃力1700の《インペイル・レイニアス》では守備力2000の《トリシューラ》を戦闘破壊はできない。ならば守備表示モンスターを攻撃した時に攻撃力を上げるか、ダメージ計算を行わずに破壊する効果でもあるのかと、龍姫は身構える。

 だが、そんな龍姫の不安はどこへやら。《インペイル・レイニアス》の鋭利な嘴は《トリシューラ》の氷翼に阻まれ、逆にその嘴が凍てつき反射した300のダメージが黒咲に。

 《トリシューラ》が除去されなかったことに龍姫は内心で安堵の表情を浮かべるが、同時に新たな疑問が生まれる。わざわざ守備表示に変更して反射ダメージを受けるだけのプレイングは意味がわからない。戦闘を行ったことで何か発動する効果でもあるのかと警戒した眼差しを《インペイル・レイニアス》へ向ける。

 

 

「《インペイル・レイニアス》のさらなるモンスター効果発動! このカードが攻撃したメインフェイズ2に俺の墓地の『RR』モンスター1体を特殊召喚できる! 俺は墓地の《RR-ミミクリー・レイニアス》を特殊召喚!」

 

 《インペイル・レイニアス》が先程とは異なる鳴き声をあげると、それに呼応するように別の鳥獣モンスター《RR-ミミクリー・レイニアス》が隣に並ぶ。

 手札1枚からレベル4のモンスターを2体並べられた――こんなところでも自分の手札破壊の運の悪さ露呈するのかと、龍姫は眉をひそめた。

 

「俺はレベル4の《インペイル・レイニアス》と《ミミクリー・レイニアス》でオーバーレイ! 冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ! エクシーズ召喚! 飛来せよ! ランク4! 《RR-フォース・ストリクス》!」

 

 2体の『RR』が紫色の光となり、黒い渦へと飲み込まれる。一瞬閃光が走り、半身を機械化したようなフクロウ《RR-フォース・ストリクス》が黒咲の場に姿を現す。

 攻撃力は100と脆弱だが、守備力は2000とそれなりに高い。ダメージを嫌ったのか表示形式も守備表示のまま。

しかしその程度の守備力であれば自分の場のドラゴン達で容易に葬れる。問題はどんな効果を持っているかだけ、と龍姫は眼前の《フォース・ストリクス》を睨む。

 

「《フォース・ストリクス》のモンスター効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除くことでデッキから鳥獣族・闇属性・レベル4のモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《RR-ファジー・レイニアス》を手札に加える」

 

 ただのサーチ効果、と龍姫はその効果を見下したりはしない。デッキから選んで手札に加えるということは今の状況で必要なカードなのだ。このターンで黒咲が召喚権を使っており防御用の魔法・罠カードもないのだから、あのサーチしたモンスターカードは《バトルフェーダー》や《速攻のかかし》のような手札誘発型の防御カードと見て間違いないだろうと龍姫は判断した。

 

「さらにオーバーレイ・ユニットとして墓地に送られた《ミミクリー・レイニアス》のモンスター効果を発動。このカードが墓地に送られたターンの自分メインフェイズに墓地の自身を除外することで、デッキから《RR-ミミクリー・レイニアス》以外の『RR』カードを手札に加える。俺はデッキから通常罠《RR-レディネス》を手札に」

「……っ」

 

 だが、さらなるカードサーチに龍姫は困惑する。まさか手札0枚の状況から場にエクシーズモンスター、手札にはモンスターと罠を揃えられることは完全に予想外。しかも先程の状況から考慮したモンスターも、新たに罠カードをサーチしたとなれば手札誘発の可能性はグンと低くなる。となれば自分の《ドラゴラド》のような召喚時に墓地のモンスターを蘇生する効果か、もしくはまた同じようなサーチ効果か――何にしても情報が少なすぎる、と龍姫は小さく歯軋りした。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド」

「……私のターン、ドロー…」

 

 今の相手(黒咲)の場には守備力2000の《フォース・ストリクス》が1体と、先程サーチした(効果が不明な)罠カード《RR-レディネス》。手札も同じようにサーチした《RR-ファジー・レイニアス》の1枚。LPは3700と多少の余裕はある。

 対して自分の場には攻撃力2500の《サフィラ》、守備力2000の《トリシューラ》の2体のみ。その分手札は前のターンで異常に回転させたため、今の通常ドローを含めて7枚。LPは《ソウル・チャージ》を発動させたため、4分の1である1000しかない。

 

 相手の使う『RR』がどのようなカード群は未だ検討が付かないが、少なくとも長期戦だけは絶対に阻止して速攻で勝負を決めなければならないと龍姫は直感した。前のターンで相手がサーチを多用したということは、それだけサーチしなければまともに動けないデッキだと判断したのだ。ならば相手の態勢が整う前に、一気に叩き潰さなければならない。自分の残りLPも僅か、ここは多少無理をしてでも削り切る、と龍姫は強く決意する。

 

「手札から魔法カード《融合》を発動。手札の《神竜ラグナロク》と《融合呪印生物-闇》を融合する」

「――っ」

 

 龍姫が《融合》のカードを使った瞬間、黒咲の表情がハッキリと憎悪のそれに変わる。儀式・シンクロとカモフラージュしていたつもりだろうが、やはりこの女は融合使い。自分の憎むべき敵だと確信しようとした――が、目を閉じて先日のユートの言葉を思い出す。

 

‘’あの女(龍姫)は融合次元――アカデミアではない。あいつらのように狩りを楽しむような者ではなく、ただの純粋なデュエリストだ‘’

 

 そんな親友の言葉は無碍にはできない。LDSとアカデミアに何らかの繋がりがあると踏んではいるが、未だ決定的な証拠は見つけられていないのだ。まだ敵と判断するには早い。

 

「終焉を告げる竜よ、呪われし闇の印よ。その身を融け合わせ新たに目覚めよ! 融合召喚! 降臨せよ、レベル7! 《竜魔人 キングドラグーン》! ここで魔法カード《融合回収》を発動。墓地の《融合》と融合素材モンスターである《神竜ラグナロク》を手札に。そして再度《融合》を発動。手札の《神竜ラグナロク》と《メテオ・ドラゴン》を融合」

 

だがそれでもやはり自分の故郷に侵略した敵の召喚方法の認識は改められない。ここは親友の顔に免じて少しは我慢してやろう。

 

「終焉を告げる竜よ、飛来せし流星よ。その身を融け合わせ新たに目覚めよ! 融合召喚! 降臨せよ、レベル9! 《始祖竜ワイアーム》! さらに魔法カード《龍の鏡》を発動。自分の場・墓地からドラゴン族融合モンスターに必要な融合素材を除外することで、そのモンスターを融合召喚する。私は墓地の《融合呪印生物-闇》と《メテオ・ドラゴン》を除外」

 

黒咲はそう思い龍姫のプレイングを静観――

 

「呪われし闇の印よ、飛来せし流星よ。その身を融け合わせ新たに目覚めよ! 融合召喚! 降臨せよ、レベル8! 《メテオ・ブラック・ドラゴン》!」

 

 ――しようと閉じていた目を開けた途端、その目は大きく見開く。同時に眉間の皺が深く寄り、口元は歯軋りが聞こえてくるのではないかと思うほどに歪む。

 ほんの少し逡巡した間、融合モンスターが出て来るであろうと黒咲は思っていた。しかしいつの間にかそれが3体。攻撃力2400の《キングドラグーン》、攻撃力2700の《ワイアーム》、そして攻撃力3500の《メテオ・ブラック・ドラゴン》。

 自分が最も嫌悪する種類のモンスターを3体も目にし、さしもの黒咲も平静ではいられない。空いた手で拳を握り、静かに震わせて怒りを悟られまいとする。

 

 それに気づいているのかいないのか龍姫は珍しく無表情を崩し、年頃の少女とは思えない下卑な笑みを浮かべていた。尤もその笑みは《キングドラグーン》が持つ‘’ 相手はドラゴン族モンスターを魔法・罠・モンスターの効果の対象にする事はできない。‘’耐性効果が無事に通り、これから問題なく攻め入りことができるという邪なものなのだが。

 

「《キングドラグーン》が居る限り相手は私のドラゴンを魔法・罠・効果モンスターの効果の対象にはできない。《ワイアーム》は相手の効果モンスターの効果を受けず、通常モンスターとの戦闘でしか破壊されない。《メテオ・ブラック・ドラゴン》は……特に何もない。私は《トリシューラ》を攻撃表示に変更し――バトルフェイズ。先ずは《キングドラグーン》で《フォース・ストリクス》に攻げ――」

「リバースカードオープン! 罠カード《RR-レディネス》! このターン、俺の『RR』モンスターは戦闘では破壊されない!」

 

 瞬間、龍姫は黒咲に聞こえないように小さく舌打ちする。耐性があって慢心していたから発したものであり、自分のドラゴンを対象としたカードでないのなら遮りようがない。自分のLPが少ないからこそ速攻で勝負を決めようと思っていたが、ここは次ターンに備えるべきかと互いの場を観る。

 今の自分の手札は1枚で、場には《サフィラ》、《トリシューラ》、《キングドラグーン》、《ワイアーム》、《メテオ・ブラック》の5体のドラゴン。しかしLPは僅か1000。

 対して相手(黒咲)の手札は先程サーチした《ファジー・レイニアス》の1枚のみで、場にはオーバーレイ・ユニットを1つ残した《フォース・ストリクス》。LPは3700と余裕がある。

 わざわざモンスターカードをサーチしたということは、次のターンで再度展開してくるだろう。あのモンスターが自分の使う《ドラゴラド》のような所謂吊り上げ効果持ちのモンスターであれば厄介だ。希望の芽は少しでも潰さなければならない――龍姫は緊張した面持ちで手札に指をかける。

 

「メイン2。カードを1枚セットし、このままターンを終える――けど、このタイミングで《サフィラ》のモンスター効果を発動。私はこのターン、融合素材として光属性の《神竜ラグナロク》を手札から墓地に送った。よって再度《サフィラ》の効果を使える。もう1度‘’相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ捨てる‘’効果を選択、そのサーチしたモンスターを墓地に捨ててもらう」

 

 これで不安材料は消した。僅かばかりの安堵を覚え、龍姫は心の中で胸を撫で下ろそうとした――

 

「墓地に送られた《RR-ファジー・レイニアス》のモンスター効果発動。《ファジー・レイニアス》は1ターンに1度、墓地に送られた場合にデッキから同名カードを手札に加えることができる。俺はデッキから2枚目の《ファジー・レイニアス》を手札に」

 

 ――ところで胸の辺りがキリキリと嘆き始めた。何故自分はこうも手札破壊(ハンデス)戦術を取るとこうも裏目に出るのか。相手の手札は結果として変わらず、しかも《フォース・ストリクス》の効果があればさらに手札を増やせる。

 最悪だ、やはり自分に手札破壊(ハンデス)は似合わない。14年のデュエリスト人生で何百回目となる『もうハンデスはやめよう』宣言を龍姫は心の中でそっと呟く。

 

「俺のターン、ドロー。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、《フォース・ストリクス》のモンスター効果発動。デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4の《RR-シンギング・レイニアス》を手札に加える」

 

 そう龍姫が思っている最中、黒咲は守った《フォース・ストリクス》の効果で新たにデッキからモンスターを手札に加える。ドローカードも含めて黒咲の手札はこれで3枚。だが内2枚は判明している。ここからの流れなら新たにランク4のエクシーズモンスターを立てるか、また防御に徹するかのどちらかだろうと龍姫は推測。黒咲の手札が3枚あるとはいえ、自分の場には5体のドラゴン。早々突破されるような布陣ではない。

 

「俺は手札の《ファジー・レイニアス》のモンスター効果を発動。俺の場に《ファジー・レイニアス》以外の『RR』が居る時、1ターンに1度だけ手札から《ファジー・レイニアス》を特殊召喚できる。さらに手札から《RR-シンギング・レイニアス》を特殊召喚。このカードは俺の場にエクシーズモンスターが居る場合、1ターンに1度だけ手札から特殊召喚できる」

 

 何だその容易な特殊召喚は、と文句を言いかける龍姫の口が閉じる。どれだけレベル4モンスターの特殊召喚に特化しているのだ、インチキ効果もいい加減にしろと某闇属性・鳥獣族使いの言葉を借りたくなるほど。だが現状では黒咲の手を止める術はない。せめて攻撃力3400以上になるモンスターを出さないでくれと心の中で願いつつ、龍姫は黒咲のプレイングを見つめる。

 

「俺はレベル4の《ファジー・レイニアス》と《シンギング・レイニアス》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 再び飛来せよ、ランク4! 《RR-フォース・ストリクス》!」

「…………」

「オーバーレイ・ユニットを1つ使い、《フォース・ストリクス》のモンスター効果発動。デッキから鳥獣族・レベル4・闇属性モンスター――《RR-トリビュート・レイニアス》を手札に加える。またオーバーレイ・ユニットとして墓地へ送られた《ファジー・レイニアス》の効果を発動。デッキから3枚目の《ファジー・レイニアス》を手札に加える」

(……手札が減っていない…)

 

 エクシーズ召喚をするなら最低でも2体のモンスターが必要。だが龍姫が持つ《デブリ・ドラゴン》のような吊り上げ効果を持つモンスターが居るのなら消費は最低でも1枚で良い。

 しかし相手は手札を2枚消費して残り1枚になったにも関わらず、いつの間にか3枚に回復。絶対に後続を断ち切らせないという執念さえ感じる。

 先攻で手札を0枚にしたのに、何故ここまで足掻けるのか――龍姫は目の前のデュエリストに得体の知れない恐怖をより強く覚えた。

 

「手札から魔法カード《闇の誘惑》を発動。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札から闇属性モンスター1体を除外する。デッキから2枚ドローし、手札の《ファジー・レイニアス》を除外。そして手札から《RR-トリビュート・レイニアス》を召喚。このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンに1度、デッキから『RR』カード1枚を墓地に送ることができる。俺はデッキから2枚目の《RR-ミミクリー・レイニアス》を墓地へ送る。ここで《ミミクリー・レイニアス》のモンスター効果発動。自身を除外し、デッキから『RR』カード、《RR-ペイン・レイニアス》を手札に加える」

 

 黒咲はただ淡々とプレイングを続ける。悔しいが現状の手札では龍姫の場のドラゴン達にとてもではないが太刀打ちできないのだ。ここは少しでもデッキ内のモンスターカードを掘り下げ、投入している魔法・罠カードを引き当て対処するしかない。

 

「手札の《RR-ペイン・レイニアス》のモンスター効果発動。1ターンに1度、自分フィールドの『RR』モンスター1体を対象に、そのモンスターの攻撃力か守備力の内、低い方の数値分のダメージを受けることでこのカードは手札から特殊召喚できる。俺は場の《トリビュート・レイニアス》を選択。このカードは守備力が400、よって俺は400のダメージを受けて《ペイン・レイニアス》を特殊召喚する。またこの効果で特殊召喚した《ペイン・レイニアス》は対象にしたモンスターと同じレベルになる――俺はレベル4となった《ペイン・レイニアス》と《トリビュート・レイニアス》でオーバーレイ! エクシーズ召喚! 再び飛来せよ、ランク4! 《RR-フォース・ストリクス》!」

 

 3体目の《フォース・ストリクス》が黒咲のフィールドへと姿を現す。同名エクシーズモンスター3体が同時にフィールドに並ぶ光景はあまり見ないため、龍姫はやや感心した眼差しを向けた。またその効果もデッキから特定のモンスターをサーチするものであり、3枚投入していることに特に違和感はない。

 真に警戒すべきはこういったサポート向きのエクシーズモンスターではなく、フィニッシャー足りえる能力を有するモンスターだ。未だそのモンスターが出てきていないことを考えると、余程召喚条件が厳しいのか、はたまた未だそれを出せるほどの手札が整っていないのか。

 どちらにせよ、警戒するに越したことはない。それに相手がどれだけモンスターカードをデッキからサーチしようと、使えなければ意味がないのだ。もうこのターンでは通常召喚権を使用し、モンスターゾーンにも空きがない。残っている黒咲の3枚の手札の内魔法・罠カードは多くて2枚。その程度なら《キングドラグーン》の耐性で十分にすり抜けられるだろう――

 

「オーバーレイ・ユニットを1つ使い《フォース・ストリクス》の効果発動。デッキから鳥獣族・レベル4・闇属性モンスター――2体目の《シンギング・レイニアス》を手札に加える。そして魔法カード《闇の誘惑》を発動。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札の闇属性を除外する。デッキから2枚ドローし――《シンギング・レイニアス》を除外。さらに魔法カード《エクシーズ・ギフト》を発動。俺の場にエクシーズモンスターが2体以上存在する場合、オーバーレイ・ユニットを2つ取り除くことでデッキからカードを2枚ドローする」

 

 ――そう龍姫が思っていた矢先、黒咲は《闇の誘惑》で手札を入れ替え、《エクシーズ・ギフト》で手札を4枚に増やす。あの時(赤馬戦)と同様にまた情報アドバンテージを消した上で手札を増やされた、と龍姫は内心毒づく。

 初手で先攻全手札破壊したにも関わらず、僅か2ターンでここまで手札を回復されることは予想外だ。最早速攻を諦め、魔法・罠でドラゴンをサポートしつつ攻め入った戦術に切り替えた方が良いのではないかとさえ思い始める。

 だが相手の場のモンスターを全滅させ、直接攻撃が2回通れば勝てる状況なのだ。やはりここは無理をしてでも――思考の渦に翻弄され、龍姫は険しい表情を浮かべる。

 

「俺は手札のカード4全てをセット――また、《フォース・ストリクス》は自身以外の鳥獣族モンスター1体につき500ポイント攻撃力・守備力がアップする。よって3体の《フォース・ストリクス》の守備力は3000だ。俺はこれでターンエンド」

「――っ、エンドフェイズに永続罠《復活の聖刻印》を発動。相手ターンに1度、デッキから『聖刻』モンスター1体を墓地に送る。私はデッキから《龍王の聖刻印》を墓地に。そして手札・デッキから光属性モンスターが墓地へ送られたことで《サフィラ》の効果を発動。3つの効果の内、今回は‘’デッキからカードを2枚ドローし、1枚捨てる‘’効果を選択する」

 

 黒咲のエンド宣言に食い込ませるように龍姫はセットされていたカードを表にした。今は黒咲の手札がないので手札破壊はできないため、それならば自分の手を進めようと手札補充効果を選択。0枚だった手札を1枚に増やしつつ、再度黒咲のフィールドを注視する。

黒咲の場には守備力3000となっている《フォース・ストリクス》が3体と4枚のセットカード。手札は手札破壊効果の影響を受けないように0枚とし、LPは3300。

自分は場に5体のドラゴンと永続罠の《復活の聖刻印》。手札は1枚でLPは1000。

 

 単純なカード・アドバンテージで言えばほぼ互角。だがモンスターの質は龍姫の方が上であり、オーバーレイ・ユニットのない《フォース・ストリクス》は文字通りただの壁だ。

 問題は4枚のセットカードだが、何となくではあるが龍姫はあれらが《聖なるバリア ‐ミラーフォース‐》や《激流葬》といった全体破壊系のカードではないと直感した。あれだけモンスターを展開し、さらに手札補充に長けたカードばかり使っているおり、先の《RR-レディネス》のようにサーチもできる防御カードなら話は別だが、汎用的な除去カードは入れられずにその分をデッキ回転に割いている。そう考えればあの4枚のセットカードは除去というよりは、デッキ回転もしくはより確実性のある防御カード――《威嚇する咆哮》や《和睦の使者》といったカードではないのかと判断した。

 それならば恐れることはない、と龍姫は目を鋭くする。

 

「私のターン、ドロー……このままバトル。《メテオ・ブラック》で1体目の《フォース・ストリクス》に攻撃」

「……破壊される」

「――っ、次。《ワイアーム》で2体目の《フォース・ストリクス》に攻撃」

「……破壊される」

 

 2体の融合モンスターの攻撃時、黒咲は苛立った表情でただ自身のモンスターが破壊される姿を見届ける。本来であれば守備力3000にもなった《フォース・ストリクス》は戦闘破壊されることはなく、故郷での戦いにおいても相手の融合モンスターの攻撃力が低かったためにこのようなことは滅多に起こらない。

 しかし今回龍姫は召喚した融合モンスターの中には攻撃力3500を誇る《メテオ・ブラック・ドラゴン》が存在している。あれほどの攻撃力を持ったモンスターには出会わなかったため、これほどの融合モンスターを所持している龍姫に懐疑の眼差しを黒咲は向けた。単純に強者だから所持しているのか、それとも故郷での争いの中で自分のことを知り、それの対策として入れたのか――デュエル前に龍姫はデッキ・エクストラデッキのカードを入れ替えていたので、意味合いとしてはどちらとも取れる。

 だが今はそんなことを考えているほど余裕はない。

 

「次、《キングドラグーン》で最後の《フォース・ストリクス》に攻撃」

「リバースカードオープン! 罠カード《攻撃の無敵化》を発動! 場のモンスター1体を選択しこのターンあらゆる破壊から守る効果、もしくは俺への戦闘ダメージを0にする効果のどちらかを適用できる。俺はモンスターを守る効果を選択する!」

 

 黒咲が罠カードを発動した瞬間、《フォース・ストリクス》を包み込むように虹色の球体状の膜が覆う。《キングドラグーン》が放った攻撃はその膜に阻まれて通らず、龍姫は目を細めて同時に自分の先程の推察は正しかったと安堵とも悔しさとも取れる複雑な表情を浮かべる。

 モンスターの攻撃が通らなかったのであれば防備を固めるしかないかと、内心でため息を吐きつつ2枚の手札へ視線を移す。

 

「バトル終了。メイン2、私はカードを2枚セットしてターンエンド」

「…俺のターン、ドロー」

 

 何とか耐えているか、と黒咲は一先ずの安心を感じながらドローカードを見る。

 引いたカードは故郷の仲間が譲ってくれたカード。正直、使い勝手は非情に悪く自分では好んで使おうとは思わない。しかし、あの争いの渦中で戦場での混乱でカードを紛失したこともままあった。その中で仲間が『お前ならこれを使っても戦える』と言って、半ば強引に渡された。一緒に他のカードも渡してくれたお陰でこのカードのデメリットもさほど気にならなかったが、今の状況であればほぼ最大限に効果を発揮できることに、今は無き朋友に胸の内で感謝した。

 だが、これだけでは足りない。別の仲間も自分に託してくれたあのカードがなければ現状は打破できない。次のターンからが勝負――その為ならば多少の無茶を行う必要がある。

 

「リバースカード、トリプルオープン! 罠カード《無謀な欲張り》3枚! 発動後、俺のドローフェイズを2回スキップするが、俺はデッキからカードを2枚ドローできる! 俺はそれを3枚発動した、よって6枚ドロー!」

「……えっ?」

 

 何だそのふざけたドロー枚数は、と先攻時に7枚ドローした自分のことはすっかり忘れ、龍姫は思わず素っ頓狂な声をあげる。6枚のカードをドローし、黒咲の手札は合計7枚。7枚もあれば何でもできると龍姫は警戒し、頬に冷や汗が流れる。

 

(……まだ、か)

 

 一方、当の黒咲はドローしたカードを目にしまだ決着には早いとカードが告げていると感じた。ならば自分のカード――いや、自分達のカードの意志を尊重し、まだ耐える指針でいくしかないと腹を括る。

 

「俺はカードを5枚セットし、ターンエンド」

「――っ、エンドフェイズに永続罠《復活の聖刻印》の効果を発動! デッキから『聖刻』モンスター《聖刻龍-トフェニドラゴン》を墓地に送る! さらに手札・デッキから光属性モンスターが墓地へ送られたことで《サフィラ》の効果を発動! 3つの効果の内、再度‘’デッキからカードを2枚ドローし、1枚捨てる‘’効果を選択!」

 

 黒咲の6枚ドローに一瞬面食らい、そのことで未だ動揺が抜けないまま龍姫は最善手を模索。先ずは手札を増やし、次いで攻撃を仕掛けなければと焦燥していた。今度は相手のセットカードが5枚もあり、手札も2枚残している。あの状況であれば次のターンで何が起こるか分からない。もう速攻と言うには遅いほどターンが経過しているがそれでも早く仕留めなければと、龍姫の焦りが声色にも出始める。

 

「私のターン、ドロー…! バトル! 《キングドラグーン》で《フォース・ストリクス》に攻撃!」

 

「攻撃宣言時、俺は《フォース・ストリクス》をリリースして罠カード《闇霊術‐「欲」》を発動。このカードは俺の場の闇属性モンスター1体をリリースすることで、デッキからカードを2枚ドローできる。尤も、貴様が手札の魔法カードを公開することでこの効果を無効にできるが…」

「…っっっ!」

 

 使用された罠カード、そして今の自分の手札に視線を移し龍姫は苛立った顔を露にした。あんなデメリットしかないようなカードを使われたこと、そしてそれを無効にする手立てがあるハズなのにそれを出来ない自分の不甲斐なさ――先の焦りと重なり、普段の冷静さは微塵も感じられない。

 

「魔法カードは……ない…!」

「ならばドローさせてもらう」

「けど、これで貴方の場はガラ空き! 《キングドラグーン》の攻撃をこのまま直接攻撃に変更!」

「俺は墓地から罠カード《RR-レディネス》のさらなる効果を発動。墓地の自身を除外することで、俺はこのターンあらゆるダメージを0にする」

(くっ…!)

 

 ダメージどころかあらゆる攻撃が無意味に帰した瞬間、龍姫は内心で声を荒げる。また決めることができなかった。一体この男はどれだけ耐える術を持っているのだと、その防御力の高さに鬱陶しさと一部の尊敬を感じながら、龍姫は残っている2枚の手札へ視線を移す。

 残りの2枚の手札は両方罠カード。既に伏せている罠カードと合わせれば4枚もの防御陣だ。状況を選ぶカードではあるが、それでもこれらがあればとりあえずは耐え凌げるだろう、そのハズだと自分に言い聞かせる。また、以前のユート戦の時のような失態(チラ見)は絶対にしない。

 攻撃が失敗に終わり、段々と冷静さを取り戻しつつある龍姫はそんなことを考えながら残った2枚の手札へ指をかける。

 

「……メイン2。カードを2枚セットし、ターンエンド」

 

 現状、龍姫の場には5体のドラゴンと永続罠の《復活の聖刻印》、そして4枚のセットカード。手札は0枚で、LPは1000のまま。

 対して黒咲の場にモンスターは存在せず、セットカードが4枚に手札も4枚。LPは3400。

 相手のセットカードが恐ろしいが、それでも自分にはまだセットカードがある。また、《キングドラグーン》の対象耐性、《ワイアーム》の効果モンスター耐性もある中で逆転は難しい。そのハズだと、何度も何度も龍姫は自分自身へ言い聞かせる。むしろそうでもしないと平静を保てない――それほどまでに逼迫した状況だと龍姫は思っていた。

 

「俺のターンだが……《無謀な欲張り》の効果で通常ドローはできない。手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動。このカードはセットカードを対象に発動し、対象となったカードはこのカードに対して発動できない。俺が選択するカードは貴様から見て右から2番目のカードだ」

「――っ、」

 

 単純な魔法・罠カード単体除去カードにより龍姫が伏せていた《反射光子流》が破壊される。対戦闘において現状では《サフィラ》にしか適用されないが、それでも防御用のカードを破壊されたことに龍姫は僅かに表情を歪ませた。

 だがまだ自分のカードは生きている。1枚破壊された程度で問題はない、と考えを切り替え――

 

「2枚目の《ナイト・ショット》を発動。今度は貴様から見て左端のカードだ」

 

 ――ようとした瞬間、2枚目の防御用カードである《光子化》が破壊される。自分としては迎撃用として最高峰のカードを、今度は表情や仕草で出さないようにしていたハズなのに何故それをピンポイントで破壊されたのか。それが理解できない龍姫は半ば呆然となりつつ、黒咲を睨む。

 

(……この女、おそらくアカデミアではないな…)

 

 その黒咲はと言うと龍姫に対しての評価、そして失望を感じていた。単純に儀式・シンクロ・融合と異なる召喚法を繰る実力は本物だと認める。だが、デュエルにおいての危機感を微塵も感じられない。

 初手の先攻全手札破壊で慢心し、今の魔法・罠カードの除去も黒咲自身が龍姫の動作を注視していたからこそピンポイントで《反射光子流》と《光子化》を破壊できたに過ぎない。龍姫は《反射光子流》と《光子化》5ターン目と7ターン目に伏せ、その時は他の魔法・罠カードと合わせて2枚セットしたが、それぞれセットカードだけコンマ数秒早かった。デュエリストは魔法・罠カードを複数枚伏せる時、重要度が高いカードを最初に伏せたがる。黒咲はそれに倣って5ターン目と7ターン目で僅かに早く伏せられた《反射光子流》と《光子化》を破壊できたのだ。

 良く言えば素直、悪く言えば単調なプレイングだ。そんなぬるま湯のようなデュエルをアカデミアの人間がするとは思えない。よって龍姫は無関係、ただのLDSのデュエリストだと結論付けた。ならばこのままこの女をカード化し、赤馬零王(レオ)の息子である赤馬零児を誘き出す餌にするしかない。

 ため息を吐き、半ば愚痴が混じったように黒咲は呟く。

 

「……どうやらユートが言っていた通り、貴様はアカデミアとは関係ないらしいな」

「……? デュエルアカデミアがどうかした?」

 

 瞬間、黒咲の目が大きく見開く。今この女は何と言った?

 

「貴様……アカデミアを知っているのか!?」

「――っ、い、今のは聞かなかったことに…」

「ならん! 今ここで話せないというのなら――貴様を叩き潰した後に聞いてやる!」

 

 とんだ間抜けな女だ、そう黒咲は思った。自分は『アカデミア』としか発言していないが、この女は『デュエルアカデミア』と言い直した。つまり通称が『アカデミア』で正式名称が『デュエルアカデミア』なのだろう。それをわざわざ正式名称で言い直したということはそれだけアカデミアに対する忠誠心が高いということ。通称で呼ぶなど凡愚のそれ、黒咲はそう判断し血走った眼差しで龍姫を睨む。

 

「貴様がアカデミアの人間ならば容赦はしない! 罠カード《ヒロイック・ギフト》を発動! このカードは相手のLPが2000以下の時、そのLPを8000にすることで俺はデッキからカードを2枚ドローする! 手札から速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動! 除外されているモンスターを3体まで墓地に戻すことができる! 俺は貴様の《トリシューラ》に除外された《RR-バニシング・レイニアス》3体を墓地に!」

 

 迷いがない、鬼気迫る勢いで黒咲は手札の増強と態勢の立て直しを始めた。最初に手札に3枚も存在していた《バニシング・レイニアス》は《トリシューラ》の効果で除外されたが、除外に対応する手も自分のデッキにはある。

 

「手札から魔法カード《終わりの始まり》を発動! 俺の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する場合、その内5体を除外することでデッキから3枚ドローできる! これにチェーンして手札から速攻魔法《連続魔法》を発動! このカードは通常魔法の発動時に手札を全て捨てることで発動でき、その通常魔法と同じ効果を得る! 俺は手札1枚を捨て、《終わりの始まり》の効果で墓地の《ファジー・レイニアス》2体、《シンギング・レイニアス》、《トリビュート・レイニアス》、《ペイン・レイニアス》の5体を除外し、《連続魔法》でコピーした効果と合わせ6枚ドロー!」

 

 先の《無謀な欲張り》3枚同時発動に匹敵するドローで手札を増やす黒咲。一気に6枚もの手札を得たが、それでもまだ納得した表情ではない。

 

 

「リバースカード、トリプルオープン! 罠カード《活路への希望》3枚! このカードは俺のLPが相手よりも2000ポイント以上少ない時に1000ポイント支払うことで発動でき、俺と貴様のLP差2000ポイントにつき1枚デッキからカードをドローする! 貴様のLPは8000、発動時の俺のLPは3300、そして今3枚の《活路への希望》を発動したことで貴様とのLP差は7700! 合計9枚のカードをドローする! 魔法カード《貪欲な壺》を発動! 自分の墓地のモンスター5体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする! 俺は墓地の《バニシング・レイニアス》3体と《フォース・ストリクス》2体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

 《ヒロイック・ギフト》、《終わりの始まり》、《連続魔法》、《活路への希望》、《貪欲な壺》とかつての仲間達より受け継いだカードを駆使し、黒咲は暴走しているような勢いで手札を増やしていく。

 そのドロー枚数は合計19枚。最終的な手札枚数は17枚にもなる。それを見た龍姫はそのあまりの手札の多さに『エクゾディア』とデュエルしていただろうかと、半ば考えを放棄し始めた。

 

「手札から《RR-バニシング・レイニアス》を召喚! このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンに1度、手札から『RR』モンスター1体を特殊召喚できる! 手札から2体目の《バニシング・レイニアス》を特殊召喚! さらに永続魔法《RR-ネスト》を発動! 俺の場に『RR』モンスターが2体以上存在する場合、1ターンに1度だけデッキ・墓地から『RR』モンスター1体を手札に加える! 俺はデッキから3体目の《バニシング・レイニアス》を手札に! そして2体目の《バニシング・レイニアス》の効果で3体目の《バニシング・レイニアス》を手札から特殊召喚!」

「…レベル4のモンスターが3体……!」

 

 3体の《バニシング・レイニアス》が並び、龍姫はここで放棄しかけていた思考を目の前のデュエルに戻す。先程は複写機かと思うほどに一貫して《フォース・ストリクス》しか出さなかったが、あの時はエクシーズ素材が2体。

 対して今回は3体のレベル4モンスターが並んでいる。レベル4のモンスターが3体も並ぶとなれば、それなりの能力を持ったモンスターが出てくるハズ。胸の鼓動が早まり、今回のデュエルで最も緊張した面持ちで龍姫はフィールドに注目する。

 

「俺はレベル4・鳥獣族の《バニシング・レイニアス》3体でオーバーレイ! 雌伏のハヤブサよ、逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ! エクシーズ召喚!」

 

 《バニシング・レイニアス》3体が紫色の光玉となり、地面に現れた漆黒の渦へと飲み込まれていく。次いで閃光が走った瞬間、突如中空に暗雲が出現する。耳をつんざくような雷鳴が轟き、暗雲からゆっくりと巨大な隼が降下してきた。全身に推進器のようなものが付き、一見すると機械と見間違ってしまうようなモンスターが黒咲のフィールドへと姿を現す。

 

「現れろぉ! ランク4! 《RR-ライズ・ファルコン》!」

 

 その《ライズ・ファルコン》の姿を見て龍姫は戦慄し――表示されている攻撃力100にほっと胸を撫で下ろし――考え直して身構える。

 たったの攻撃力100と一瞬ぬか喜びしたものの、むしろそういった低攻撃力のモンスターの方がえげつない効果を持っているのだ。一瞬でもこんな考えをしてしまった自分を殴りたくなる。せめて相手の効果がモンスターを対象に取るなど、《キングドラグーン》の耐性で守ることができればと、相手の出方を伺う。

 

「《ライズ・ファルコン》は1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで相手の特殊召喚されたモンスター1体を対象に、そのモンスターの攻撃力分自身の攻撃力を上げる効果を持つ」

 

 危ない、けど助かったと龍姫は安堵する。対象を取る効果であれば《キングドラグーン》の効果で守れるので、相手は自身の効果で攻撃力を上げることはできない。

 しかし、まだ相手の手札は14枚もある。14枚もあれば何かしら行動は起こせるハズでは、と龍姫が黒咲の溢れんばかりの手札に目を向けると、黒咲はその中から3枚のカードを引き抜く。

 

「俺は《ライズ・ファルコン》を対象に手札から魔法カード《オーバーレイ・リジェネレート》を発動。このカードは対象にしたエクシーズモンスターのオーバーレイ・ユニットになる。そして装備魔法《進化する人類》を《ライズ・ファルコン》に装備。このカードを装備したモンスターは自分LPが相手LPより少ない場合、元々の攻撃力が2400となる。次いで装備魔法《巨大化》を装備。このカードを装備したモンスターは自分LPが相手LPより少ない場合、元々の攻撃力を倍にする。よって今の《ライズ・ファルコン》の攻撃力は4800だ」

 

 一瞬にして攻撃力が4000を超えられた――龍姫は恨むような目つきでフィールドを見る。

 黒咲の《ライズ・ファルコン》は今まで(・ ・ ・)の鬱憤を晴らすかのように、その攻撃力を上げていく。ただの脆弱なステータスのエクシーズモンスターを進化という名のカードで強化し、今まで積もりに積もった巨大な憎しみをその身に宿している。

 この程度であれば最低攻撃力の《キングドラグーン》に攻撃を仕掛けられたとしても、《ヒロイック・ギフト》の効果でLPを8000まで回復した龍姫のLPを削り切ることはできない。だが、最初に発動した《オーバーレイ・リジェネレート》が気にかかる。あのカードは単純にオーバーレイ・ユニットを1つ増やすだけのカード。それを何の強化に繋がらない現状で発動する意味があるのかと考え始め――

 

「装備魔法《エクシーズ・ユニット》、《ストイック・チャレンジ》を《ライズ・ファルコン》に装備。《エクシーズ・ユニット》はエクシーズモンスターのランク×200ポイント攻撃力を上げ、《ストイック・チャレンジ》は装備モンスターの効果の発動を封じる代わりに、オーバーレイ・ユニット1つにつき攻撃力を600ポイントアップさせる。また装備モンスターが相手モンスターとバトルする際、相手に与える戦闘ダメージを倍にする」

 

 ――追加で装備されたカードを目にし、その顔色が絶望に染まる。《ライズ・ファルコン》のオーバーレイ・ユニットは現在4つ。《エクシーズ・ユニット》がオーバーレイ・ユニットに数えられないとはいえ、その強化値は《ストイック・チャレンジ》との上昇分も含めて攻撃力は8000にもなる。

 8000の攻撃力にもなればOCGルールでも直接攻撃が通れば一撃。こちらの世界でも2人分のLPを0にできる。その上、装備された《ストイック・チャレンジ》でモンスター同士のバトルで戦闘ダメージが倍になるのだから尋常ではない戦闘ダメージを受けることになるだろう。

 今の状況で《キングドラグーン》が攻撃を受ければその戦闘ダメージは11200。龍姫は眉間に皺を寄せ、今は使えなくなってしまったリバースカード《魂の一撃》に目をやる。このカードで自分モンスターの攻撃力を3500は上昇でき、攻撃力6300までが相手なら十分に生き残ることはできた。

 しかしこのカードの発動条件として攻撃時に自分LP4000以下の時にLPを半分支払う必要がある。それが黒咲の発動した《ヒロイック・ギフト》の所為で発動条件を満たせず、強化することができない。残ったリバースカードも《キングドラグーン》が除去された後にと保険で伏せていた《スキル・プリズナー》。今の段階では使う機会は皆無と言っても良い。

 何か、何か他に手はないかと龍姫は既にセットされているリバースカードを何度も確認し、空の手札を眺め、墓地をしきりに確認し始める。

 

「――魔法カード《一騎加勢》を発動。このカードは俺の場のモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1500ポイントアップさせる。これを3枚連続で発動、《ライズ・ファルコン》の攻撃力は12500になる。次に魔法カード《破天荒な風》を発動。このカードは俺の場のモンスター1体の攻撃力を次の俺のスタンバイフェイズまで1000ポイントアップさせる。これも3枚連続で発動、《ライズ・ファルコン》の攻撃力は15500となる。最後に速攻魔法《蛮勇鱗粉(バーサーク・スケールス》を発動。このカードは俺の場のモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせ、ターン終了時に2000ポイント下げる。こいつを2枚使い、《ライズ・ファルコン》の攻撃力を17500にする」

 

 そんな龍姫の様子をやや苛立った様子で見ていた黒咲は容赦なしに手札の魔法カードを全て使い切る。相手がただのLDSの人間ならこんな過剰強化はしない。だが、目の前の女はアカデミアの存在を知っているのだ。つまり赤馬零王の関係者――その人間が自分の故郷を壊滅させた。

制裁、復讐、怨恨……それら全ての感情をカードに乗せても、自分の怒りは収まらない。連れ去られた妹、カードという名の牢獄に魂を封じられた盟友達。彼らが味わった苦しみはこんなものではない。

 

「《ライズ・ファルコン》は相手の特殊召喚されたモンスター全てに1度ずつ攻撃することができる――行け《ライズ・ファルコン》! 全ての敵を引き裂け! ブレイブクロー・エヴォリューション!」

「――っ!?」

 

 《ライズ・ファルコン》が全身を血のような朱色の炎で染め上げ、天高く飛翔する。一定の高度まで達するとそのまま円を描くように翻り、垂直に急降下。十分な加速を付け、地面へ直撃する寸前にそのまま地面と水平に飛ぶ。そしてその復讐の業火を身に纏ったまま、龍姫の5体のドラゴンへ猛進。

 成す術がない龍姫はその顔を一瞬だけ恐怖に染まり、次の瞬間には諦観した表情を浮かべた――

 

 

 

――――――――

 

 

 

 真澄は必死になって走っていた。北斗・刃と共に件のLDS襲撃犯を探すために市内を練り歩いていたが、ついさっき赤馬零児の秘書、中島から連絡をもらいその現場に急行しているのだ。やっとあの男と対峙できる。喜びと緊張が走るが、そんな真澄に付け加えるように中島は告げた。

 

『現在、橘田龍姫が襲撃犯と交戦している』

 

 その言葉を聞き居場所を聞き出した途端、真澄は駆け始めていた。

襲撃犯とデュエルした恩師のマルコ先生が行方不明。そんな現況で自分の親友である龍姫も同じ目に遭わせる訳にはいかない。まだデュエルが終わらないで、どうか無事で居て――長時間走ったことでの息切れと不安と心配から来る動悸で胸が張り裂けそうになる中、真澄は中島から指示された場所まで、あと通り1本というところまで着いた。

 

 丁度狭い路地からその通りを確認できる位置で、視界の先にはデュエルディスクを構えている龍姫の姿を見える。良かった、龍姫はまだ無事だ。ほっと胸を撫で下ろし、いち早く龍姫に駆け寄ろうと再び走り始める。50m……40m……30mと段々距離を縮めていく。

 そして龍姫に自分の声と姿が確認できるであろう10mの距離まで来たところで真澄は片腕を上げた――

 

「たつ――」

 

 ――その瞬間、龍姫の身体が視界の端と飛んでいく。

 まるで矢のように飛んでいく龍姫の姿を真澄は反射的に目で追うと、龍姫は何か強い衝撃を受けたのか一瞬は地面と並ぶように飛び、その後は重力に引かれて地面を数度撥ねる。そしてその勢いを止められないまま路地の片隅に設置してある集積所にその身を直撃させ、辺り一面にゴミが四散した。

 

 ありえない光景を目にし、真澄はただ呆然としていた。ふと無意識の内にフラフラと龍姫の方へと近寄り、震える手で龍姫に覆い被さっている邪魔なものを退ける。そこで見た龍姫の姿に真澄は絶句した。

 肌の露出している部分はまるで火傷した時のように真っ赤に腫れ上がり、一部は先程吹っ飛んだ時に負ったものか、打撲の箇所も無数に見られる。普段の冷淡でクールな表情ではなく、痛みに耐え苦しんでいるその顔は見ている自分も痛くなると錯覚するほど。先ずはLDSに救援――いや、この場合は救急車を呼んだ方が、と混乱している真澄の背後に影がかかる。

 

「――今更増援か」

 

 バッと後ろを振り向くと、そこには昨日出会った襲撃犯(黒咲)。真澄は連絡しようと震える手で持っていたデュエルディスクを持ちながら、上擦った声を喉奥から搾り出す。

 

「……これは…アンタがやったの…?」

「…そうだ」

 

 瞬間、真澄の中でプツンと何かが切れた。ゆっくりと立ち上がり、眉間に皺を寄せ、憤怒を露にした顔で黒咲を睨みつける。

この男は許さない。絶対に。

連絡しようと手に持っていたデュエルディスクをそのまま腕に装着し、それを展開。

 

「大丈夫か! ます――」

「おーい! たつ――」

 

 それと同時に真澄の後方から聞き慣れた友人たちの声が聞こえ、それが途中で途切れる。

 北斗と刃は真澄に遅れること数十秒、現場を目にし言葉を失った。

 

 だがその後すぐに沸々と怒りが込み上げ、真澄の隣に並ぶとデュエルディスクを起動。

 明らかな敵意を黒咲に向け、怒気が籠った声で真澄が2人に語りかける。

 

「――潰すわよ」

「もちろん」

「あぁ」

 

 全員思いは同じ。自分達の友人をこんな目に遭わせた奴を野晒しにする訳にはいかない。

 救援は後で必ず呼ぶ、少しだけ待っていてくれと心の中で謝りつつ、3人は黒咲を睨む。

 

 その黒咲も3人の意図を汲み取ったのか、無言でデュエルディスクを構える。この3人のことよりも、自分はそこの倒れている女に用があるのだ。邪魔をするなと言わんばかりに不機嫌そうな表情で3人を睨みつけた。

 

 

 





10万超えのダメージが本来の目的ではないので、まえがきの通り後日修正させて頂きます。身勝手な作者で本当に申し訳ありません。

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