ゼロの使い魔・再び   作:駄文帝

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決戦前夜

その後。ウェールズから手紙を受け取った才人たちは城のホールに通された。そこには簡易な王座が置かれ、そこに座ったアルビオンの王である、ジェームズ一世が、集まった貴族や家臣を見守っていた。

明日には滅びるというのに、随分と華やかなパーティだった。王党派の貴族たちは着飾り、テーブルの上ではルイズ達ですら見たことがないほど豪華な料理が山のように並んでいた。そしてジェームズの掛け声のもとパーティーが始まると、これから負け戦が始まるというの信じられないくらい皆、笑顔を浮かべていた。

 

その光景にいたたまれなくなった才人は早々とホールを抜け出しバルコニーへと出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、サイト?どうしたのこんなことろにきて?」

 

「それはこっちのセリフだって」

 

才人がバルコニーに出るとそこ先客がいた。

自らの最初のご主人様であるリアが、夜風に浸りながらグラスを片手にワインを飲んでいたのだ。

 

「あの場所が耐えきらなかったのか?」

 

「それもあるんだけどね………」

 

そういって彼女は顔を暗くして顔を俯かせる。

 

「親友をさ、あの国王様に殺されたんだ……」

 

「殺されたって……一体何があったんだよ」

 

親友を殺された……そんなことがあれば彼女の事だ、怒り狂いその国王のことを殺そうとするだろう。しかし、今の彼女には怒りといった感情はない。その顔にあるのはやるせなさだ。

 

「その、国王が悪いわけじゃないんだ……悪いのは今までの長い歴史が作ってきた偏見のようなもの。国王があの時はああするしかなかったのはわかっているの。でもあの顔を見ると、あの日なんもしてやれなかった自分を思い出すの……」

 

そう言って、自責の念に捕らわれる彼女に、才人は近づくとその頭を軽く撫でた。

 

「サイト……」

 

「事情はあまり知らないけどさ、リアは必至にその親友を助けようとしたんだろ。だったら少なくともお前のことは恨んでないと思うぜ」

 

「なんでそんなこと言えるの……」

 

「最後の最後まで自分を助けようとしてくれた奴のことを恨むような人と親友なんかにならないだろ」

 

暫くの静寂、彼女は才人の言葉にゆっくりと頷いた後、少しだけ名残惜しそうに才人から離れると別の話題を提示してきた。

 

「そういえばさ……才人はどうしてここにいるの?」

 

それは才人が一番聞かれたくなかった質問だった。

 

「そのルイズに呼び出されてな、それでここに……」

 

「両親にはあえたの?」

 

会えた、そんな嘘をつくことは出来なかった。それは彼女に嘘をつきたくないと言ったことではなく、お互いに嘘を言ってるかどうかわかってしまうため、言っても意味がないのだ。

 

その沈黙で答えを得たのか、彼女は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ悲しそうな顔をした後、すぐに笑顔になった。

 

「大丈夫だよ。この四百年で魔法が見違えるほど上手くなってね。すぐにサイトが元の世界に戻る方法「いいよ」……え……」

 

自分の言葉を途中でさえぎる才人を信じられないといった目で見つめるリア。

自分の使い魔が言った言葉を信じられなかったのだ。一瞬耳を疑ったが彼は首を横に振っている。

一体どうして……彼女が質問するよりも早く彼は答えた。

 

「お前とまた会ってから、もう一回だけ考えてみたんだ。お前をまた置い家族の元に帰るか、それともここにとどまるか。そして……ここにいる残ることにした」

 

「なに言ってるの!私が夜な夜な家族のことを思って泣いてるの知らない思ってる!サイトは此処にいるべきじゃないの!だから……」

 

珍しく声を荒げ怒鳴りつける彼女に、才人は両腕で彼女を優しく抱きしめる。

この選択は彼女を傷つけるかもしれない。でもそれは才人が地球に帰っても……いや帰ったほうが傷つくのだ。

なら前により傷つく選択をしたなのはなぜだろう?……すでに才人はその答えにたどり着いていた。

怖かったのだ。彼女が目の前で傷つく姿を見るのは、だから家族のことを言い訳に使って自分の目では見えない方を選択した。

 

でも、才人はそれを心の奥底で後悔していたのだろう……彼が最近見る夢には必ず彼女のことが出てきた。自分が違う選択をした世界、そんなのはないと理解していてもそんな世界を望んでいたのだ。

 

だからこそ彼女と会って決めたのだ……もう逃げないと……彼女が傷つく結果になってもそれを受け止めると。

 

「確かに家族に会えなくなるかもしれない……でもさ、お前と離れてようやく分かったたんだ。俺にとって家族より……この世界の方が、お前の方が大事だって……」

 

「でも……それじゃ……」

 

「リア、もういいんだ……お前のことを責める奴っていない……だかさ……自分のことを許してやれよ……」

 

「許すって……なにを……」

 

「俺を呼び出したこと……今も気にしてんだろ……もう正直になっていいじゃないか」

 

才人にそう言われた次の瞬間、彼女の瞳からは涙があふれ出す。

彼女は才人をこの世界に呼び出してしまった責任を一人背負い続けていたのだ。だから一番したくなかったことをした。ほかの人がやろうとしたら命がけで止めてしまうかもしれないことをやった。自らの感情を押し隠して。

でも、もう限界だった……今で表に出さないように溜め込んでいた感情が濁流のように一気に押し寄せてきたのだ。

 

「私は……私は!……才人ずっと、ずっと一緒に居たかった!……でも、才人には……家族が!……だから……だから!!……」

 

これが彼女の本音……ずっと自分に隠してきた感情なのだろう。

才人は彼女を力強く抱きしめて誓った、……もう彼女から逃げないと……そして彼女を二度と離さないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みっともない姿見せてごめんね」

 

あの後、数分ほど泣いたリアは、才人から離れるといつも通りの笑顔を作る。

 

「それと、帰るか帰らないか別にして、帰る方法は探ってみるね。もしかしたら行き返りができるかもしれないし」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

リアはパーティ会場にはやはり入りたくないのか、バルコニーから飛び降りてその場を去ろうとした時だった。

 

「やぁ、使い魔君。ここに居たのか、会場で見つからなかった探したよ」

 

そこにはウェールズが微笑みながら立っていた。

 

「俺を?」

 

「ああ、人が使い魔と言うのは珍しいからね。最後に話をしたかったんだ」

 

そう言いながらウェールズはバルコニーの柵に腰をつけると二人の顔を覗き込むように見つめる。

 

「あまり顔色が優れないようだが……なにかあったのかな?」

 

「失礼ですけど……ここから逃げようとは思わないんもですか?」

 

それは聞いたウェールズは才人を真っ直ぐと見つめて言い返す。

 

「まさか、そのな事、夢にも思ったことはないさ。私……いや、我等は奴等に王族の勇気と名誉を見せ付ける義務がある……それをしなくては一生に残る恥と言うものさ」

 

才人とリアは理解できないと首を振る。

どうして貴族と言う者は死にたがるのだろう。彼らからすれば生き残る事がなによりも重要であって、誇りや名誉など気にもかけたことなどなかった。そんなものは生きていば、どうになるとも考えている。

 

「姫様の手紙……亡命を進められたんでしょ……」

 

するとウェールズは遠く彼方……おそらくトリスタニアにいるアンリエッタに思いを馳せるように語りだした。

 

「使い魔君……人は時に愛しているからこそ、それを隠し知らぬふりをしなくてはならないんだ……」

 

たしかにそうなのかもしれない……

でも、今の才人になら言える……彼女から逃げ出して後悔したからこそ言える。

 

「それは違う……あんた逃げてるだけだ……姫様との恋が叶わないのが恐いから…姫様に拒絶されるのが恐いから……だからあんたはそう言ってごまかそうとしてるだ……」

 

「だったら!!だったら私はどうすればいいというだね!私が行けばトリステインに奴等は攻め込むだろう!そうなればアンリエッタを戦火に巻き込む事になるのだぞ!」

 

「それでも生きて帰るって思えよ!また彼女に会いに行くって思えよ!彼女のことが好きなんだろ!気持ちまであきらめてどうすんだよ!」

 

「あの~~~」

 

二人が声を荒らげ議論がヒートアップする中第三者の声が聞こえて来た。二人が声のした方に振り向くと、そこにはリアが申し訳なさげに手を上げていた。

 

「二人の話を遮って悪いんだけど……どうにかする方法なくもないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、才人同じくパーティーで気が滅入ったルイズは早々に抜けると、自分にあてがわれた部屋へと向かっていた。

ちょうど部屋の前まで来たときだっただろうか、扉の前に人影があった。

 

「やあ、ルイズ。まってたんだよ」

 

ルイズの部屋の前で待っていた人物とはワルドだった。

 

「ワルド!?どうしてこんな所に?」

 

するとワルドは笑みを浮かべながらルイズに近づいてくる。

 

「少し君と話はなしたい事があってね。今からいいかな?」

 

「ええ、かまわないけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそ!?リアがレコン・キスタ!?」

 

「ああ、あくまで可能性の話だがね」

 

ルイズはワルドを連れて部屋に入り、ワルドから重要な情報の話を受けていたのだが、あまりに信じられない事に彼女は驚きの声を上げてしまった。

なにせ、才人の前のご主人様……リアにレコン・キスタの可能性があるというのだから無理はないだろう。

 

ワルドが話すには、王国の資料で彼女らしき似顔絵がレコン・キスタの重要人物として乗っていたそうだ。

 

「うそよ。信じられないわ。第一そうなら最初に会ったときに殺せばよかったじゃない」

 

そう、最初に会った際に、竜に攻撃させていれば、潜入といった回りくどい方法を取らなくてもいいのだ。

 

「それじゃだめなんだよルイズ。彼らは皇太子の身柄を捉え公の場で処刑する事を望んでいるんだ。最初に攻撃せずに質問したのは皇太子を誘拐するためさ。自分の話に応じる責任者、それが皇太子である可能性が高いからね」

 

たしかにそう考えればすんなりいく。でもそれはあの才人のグルかも知れないという事だった。

ルイズは才人を信じたい一身で首を振るう。

 

「落ち着いてくれルイズ。君の使い魔だって騙されている可能性もあるんだ」

 

「で、でも」

 

未だに納得していたルイズにワルドは優しく囁く。

使い魔が騙されているか調べる為にも、彼女の正体をしらなくてはならいと

 

「そこで僕はある作戦を考えた……彼女にウェールズ皇太子が一人である場所に行くと嘘を付くんだ。そこに僕たちが待ち伏せして、現れなければよし。現れれば捕まえればいいんだ」

 

そこでようやく、しぶしぶといった感じでルイズは頷いた。

 

「いいか、使い魔もグルの可能性があり、この作戦の情報が何処からもれるか分からない。だからこの作戦は僕と君だけの秘密だ。決して誰にも言ってはいけないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルイズ!ってなんだまだ寝てなかったのか?」

 

それから時間は過ぎ、深夜になったころだろう。ドアがノックされた後、自分の使い魔が部屋へと入ってきた。

 

「とうしたんだ?もう夜遅いぞ、唯でさえ一回倒れてるんだから早く寝たほうがいいぞ」

 

「ねぇ……」

 

そこで才人はようやくルイズが顔を俯かせたままで元気がないのが分かった。

 

「落ち着いて聞いて……リアがレコン・キスタかもしれないって」

 

「はぁ?」

 

何を言ってるのだろう?

リアがレコン・キスタ……それは天地がひっくり返ってありえないと才人は断言できた。

それまで聞いたレコン・キスタの野望にリアは絶対に賛同しないだろう。

 

そんな馬鹿なことを誰がルイズに吹き込んだか知るためルイズに問う。

 

「だれに言われたんだ、それ」

 

「それは言えないわ……」

 

ワルドには秘密にしろと言われていたのに、才人を信じたいあまり言ってしまったルイズだがこれ以上のことはさすがに言う気はない。

 

才人はどうしたものかと悩む、恐らく彼女に襲撃された兵士がそんな噂話をしていたのだろうと結論ずけると、自らの思っていたことを話すいい機会だと考え、自らの考えを伝えることにした。

 

「ルイズ、落ち着いて聞いてくれ……リアじゃなくてワルド方に……レコン・キスタの可能性があるんだ」

 

それを聞いたルイズは怒りで顔をゆがませた。

 

「なに言ってるの!!ワルドが裏切り者!そのわけないじゃない!そんなに前のご主人様が大事なの!?だったら私の元から消えてとっとと彼女のもとに行っちゃいなさいよ!!」

 

そういって手当り次第に近くにあった物を彼に投げつける。

才人はそれでも彼女を宥めようとしたが「出て行って!!」と涙を流しながら言うと、素直にこの部屋から出ていった。

 

自分以外だれもいなくなった部屋で彼女は涙を手で拭いた。そして思った自分は何をやっているのだろうと。

ワルドが裏切りものだとは思ってないが、彼がそう言うのだ、そう思われても可笑しくない行動をワルドがしてしまったのだろう。

 

そんなことは理解できた、でも才人がリア……前のご主人様をかばってると思うと感情の制御ができなかった。彼女ではなく自分だけを見てほしかった。でもそれは、わがままな願いだ。

彼女を見ていたからこそ分かる。彼女は彼の主人として自分よりずっと上、足元に及ばないほど上なのだと。それなのに彼は対等に扱おうしてくれた。それ以上を求めるなんて無理な話だ。

 

でもこれで彼は自分に愛想を尽かしただろう。小舟で泣いていた時と同じだ……これで全て、婚約者であるワルド以外の全てを失った。

前に戻っただけ……それなのに彼女は瞳からこぼれる涙を止めることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、早朝。

城にある中庭にリアとフィア。そして真っ黒なローブで身を隠した一人の人影があった。

 

「リア、準備はうまく行ったのか?」

 

そこに才人が近づいてきた、でもその表情は暗かった。

 

「うん。大体は終わったよ。後はここから逃げ出すだけだけど……どうしたの、なんか合ったの?」

 

才人は「ルイズと喧嘩した」と短く言った。何が原因なのかは言おうとしなかったが何か言いにくいことがあったのだろう。

彼女はそれ以上の追及をしようとはせず、フィアに合図を送った。

 

するとフィアは元の巨大な竜の姿へと返っていく。

その背中に黒いローブの人物を乗せようとしている最中だった。後ろから声が聞こえてきたのだ。

 

「サイト~!!」

 

声のした方を見ればそこにはギーシュ、そしてその後ろのタバサとキュルケがこちらに向かってきていたのだった。

 

「ギーシュ!?それにタバサやキュルケまで、一体どうしたんだ?」

 

「どうした?じゃないだろ!?何時までも君達が船に現れないから心配して見に来たんじゃないか」

 

サイトがわりぃっと手を合わせながらあやっていると、フィアの上に乗っていたリアが飛び降りてきた。

 

「そこにいる二人もサイトのお友達?」

 

そういえばタバサ以外の紹介はしていなかったなと思い出したサイトは彼らの紹介を始める。

 

「金髪の男性がギーシュで赤毛の女性がキュルケだ。新しいご主人様の同級生だよ」

 

「そうなんだ。よろしくね」

 

そう言ってにこやかな笑みを浮かべるリアの前にギーシュは近づくと薔薇を取り出し、何時ものようにキザな言い回しを始めた。

 

「このギーシュ・ド・グラモン。あなた様に姿に心を奪われてしまいました。どうかこの青銅のギーシュとお付き合い…「無理だよ」」

 

即答だった。

見事に撃沈したギーシュはそれでも諦めきらなかったのか「理由をお聞かせいただいても」と言うと、リアは顔を赤く染めながらサイトをちらちらと見る。

そこで三人は確信した。彼女が好きな相手の事を、そして二人は彼女が才人の十股の相手の一人である事も理解した。

 

「くそ、なんで君はそんなにもてるんだ。女性に効く洗脳術でも持っているのかね」

 

「さすが十股」

 

「あたしはノーコメントにさせてもらうわ」

 

自らも似たような事をやっているキュルケ以外からは辛烈なコメントが投げかけられた。

才人も言い返せないため苦笑するだけだ。

 

「そういえばルイズは?船で待ってるの?」

 

喧嘩をした才人とは会いにくいから船で待っていると思ったリアがそう質問すると、予想外の答えが返ってきた。

 

「ルイズも同じ」

 

「へ?」

 

「君たちの姿だけでなくルイズの姿も見えなかったから探しに来たんだよ。どうだいサイト心当たりはないかね」

 

心当たりと言われても……昨日の夜にルイズに会いに行った際には思い詰めた表情こそしてたものの特に何も言われなかった。

すると、隣で「あ」と言う声が聞こえて来た。

 

「どうしたんだ、リア?」

 

「いや、関係ないかも知れないけどさ、皇太子に二人でお茶しないかって言われてたんだよね。断ったけど、暇があったら礼拝堂に来てくれっていわれてさ」

 

もうすぐ戦が始まると言うのに何を考えているんやら……皆がそんなため息をついているのに対して才人は真剣に頭を働かせて考える。

 

一体なぜ彼はリアをお茶に呼んだのだろうか?リアと彼の接点は少ないはずだ。すると才人の頭の中に昨日の事が浮かんできた。リアがレコン・キスタ……この噂話を考えるなら罠を張ったのだろうか?でもたかが噂話程度で皇太子が動こうとするだろうか?

でも実際は動いている。ならそれなりの人物に助言されたはずだ。ルイズに近いそれなりの地位を持った人物……才人は思わず舌を打ってしまった。

ワルドだ。彼ならそれができる。きっと彼は皇太子と一緒に罠を張っているはずだ。そしてそれにはきっとルイズもいるだろう。まずいと思って駆け出そうとした瞬間だった。

 

ルーンが急に輝きだすと共に、左目の視界が急に自分とは違う誰かの者に変わり始めたのだ。

 

「サイト?どうしたの?」

 

「左目が急に……ルイズの視界だと思う」

 

リアの視界であれば中庭が見るだろうが、今の彼の視界には建物の中が見えていた。

そして徐々にピントのボケた視界がはっきりとしていく、そこには血を流し仰向けになって倒れている皇太子と、視界の人物に杖を向けるワルド。

 

才人は舌打ちをすると共に走り出す。

そしてその後に慌てて、タバサ、キュルケといった面々が続く。リアもファイに合図を出して飛び上らせると後に続いてきた。

 

「一体どうしたの!?急に走り出して」

 

「やっぱりワルドが裏切りものだったんだ!今、ルイズがワルドに襲われてる!このままだとルイズが危ない!!」

 

「ちょっとまってくれ。子爵が裏切りって証拠があるのかい!?」

 

すると併走しているギーシュが話しに割り込んできた。すると才人の代わりリアが説明した。

 

「人が使い魔の場合は主人に危機に陥った際に、視界が共有されることがあるの。だから今才人はルイズの視界でワルドが襲いかかっているのが見えてるみたい」

 

するとキュルケが何な気づいたようで声を上げた。

 

「ねぇダーリン。やっぱりて裏切り者である可能性には気づいてきたの?」

 

その疑問を聞いたギーシュとリアも説明しろ視線を向け始めた。

 

「可能性だけならずっと前から気づいてたんだ。最初の襲撃、ラ・ロシェールに行く途中での襲撃のときだ」

 

「ちょっとまて、それは唯の夜盗だったんじゃないのか?」

 

「あれは、俺達を狙った襲撃だったんだよ。ギーシュには顔でばれるから黙ってたんだ」

 

ギーシュがキュルケとタバサに目を向けると二人とも頷く。自分は一体どんな評価を付けられてるんだと少し落ち込むギーシュだったが才人はそんなのをお構いなしに話を続ける。

 

「どう考えても襲撃が早すぎた」

 

「つまりダーリンは身内に裏切り者がいる可能性があるっていいたいのね」

 

キュルケの言葉に才人は頷く。

 

「ああ、でも急に参加したキュルケとタバサにはそんな事はできない。ルイズも俺がずっと見てたんだそんな事をやればすぐに分かる、ギーシュは……そんな事できるような奴じゃない」

 

キュルケとタバサがうんうんと頷くなか、それっていい評価なのかダメな評価なのかギーシュは首を傾げて考えている。

 

「後は消去法でワルドしかいないなかったんだよ」

 

「サイト、でもそれでは決め付けに……」

 

「んなことわかってんだよ!だから何も手がだせなったんじゃねぇか!」

 

そうフーケの時と同じなのだ。所詮は状況からの推察……確定的なものはなかったのだ。

だから途中で彼が最も警戒しているだろう自分があの場に残る事で、尻尾を出さないかタバサに協力を依頼して調べた事もあった。

自分の甘さに才人が悔いていると、急に首元を掴まれた。

 

「サイト、敵!!」

 

掴んだ相手はリアだった。

彼女が叫ぶのと同時に物陰から杖を持った十数人ばかりの集団が現れた。

 

「なんだね、こいつらは」

 

「レコン・キスタ」

 

「なんでこんな所にいるのよ!」

 

「たぶん、ワルドと同じ裏切り者がいたんじゃないかな」

 

タバサなどは杖を取り出し、戦闘の準備に入る。そんな中リアが才人の耳元で呟いた。

 

(私が隙を作るから才人はそこに飛び込んで)

 

そう言いながら、リアは才人の手に懐から取り出した一本の細長い剣……日本刀を才人に手渡す。

 

すると彼女は右手に弓を、そして左手に杖を逆手で構え始め、詠唱を開始する。

威力は要らない牽制のための一撃のため、ほんの数秒呟いただけで詠唱を終えその魔法を発動する。

 

「エクスプロージョン」

 

次の瞬間、突如集団の中ほどが爆発すると、そこから『ガンダールヴ』の力を発動させた才人が通り過ぎていく。

 

行かせるものかと、集団の中の一人が彼を追いかけようとすると首に矢が突き刺さり絶命した。

 

「どこ向いてるの?あなた達の相手は私達だよ」


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