カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜   作:1202155@

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久しぶりの投稿となって申し訳ありません。リアルが忙しくなってしまったもので……

今回の内容は、クッソ苦いブラックコーヒーを飲みながら読むことをお勧めします。

え?なぜかって?そりゃ、あまあまーな内容ですからねぇ~。


さくらと小狼の再会

橘寺神社。

古くから続くこの神社は、日本でも珍しい、神と仏を両方祀っている所で、広大な敷地の中には霊園も存在する。海鳴市の市民にとっては、ある種、神聖な場所というよりは、憩いの場として使われていた。お年寄りは杖を突きながら、併設された庭園を歩き、カップルはベンチに座りながら、作った弁当に舌鼓を打ったり、イチャイチャしたりしている。

また、神社の一角にある小高い丘の上に大きな杉の樹が生えている。樹齢900年の樹で海鳴市の人からは海鳴杉と呼ばれて親しまれていた。その樹の下では、一人の少女が冬の暖かな陽を浴びながら、読書をしていた。足は不自由なのか、車椅子に乗っている。もう、ご存知だろう。八神はやてだ。彼女は時折この場所にやって来ては、こうして本を読んでいるのだ。彼女は厚手のコートと足にブランケットをかけ、本を読んでいる。ここは、日当たりが良いため、冬でもそれなりに暖かいのだ。

その彼女の近く。草の上に座り、昼寝をしているのは橘寺想也だ。彼は橘寺神社の次男坊ではあるが、時空管理局の嘱託魔導師として週三日任務に勤め、それ以外は神社の手伝いをしている。今日は偶々暇なので、幼馴染であるはやてに付き合っていた。

 

「なぁ、想也くん?」

「んー?」

 

はやてが何気ない口調で想也の名前を呼ぶ。彼は気の抜けた返事をする。

 

「何でもない。ただ呼んだだけやよ」

「そっかー。呼んだだけかー」

「んもー、張り合いないなー。もうちょっと、こう、なんかあるー

「はやて」

「なんや?」

「呼んだだけー」

「〜ッ!」

 

からかおうとしたら、逆にからかわれてしまい、はやては言葉にならない叫びを上げる。それを見て、想也は得意げな顔で起き上がると、はやての鼻を指先で突いた。

 

「年上をからかおうとするからこうなるんだよーへへ」

「あーっ!ちょっと!?まち!」

 

そう言って想也の手を掴もうと、手を伸ばすはやて。しかし、車椅子に乗っているため、自由に動けないので、想也の手は掴めなかった。はやては、頬を膨らませた。

 

「もう、想也くんはわたしが自由に動けへんの知ってるくせに、そうやってすーぐ、逃げるんやから。男らしくないでー!」

「怒るなよ。今度おやつ作ってやるから」

「ほんとやね!?言質取ったで!約束やよ?」

 

はやては想也の作るおやつが大好きだった。喫茶翠屋のような洗練された味では無く、家庭的で素朴な味わいが好きなのだ。だが、そんな彼の大好きなお菓子をいつまで食べることが出来るのかを思うと、不安になった。

彼女は生まれつき足が不自由だった。理由は筋肉が硬直しているからだと、海鳴大学病院の石田先生が言っていた。治療や薬の投与をしているが、それも効果なしだった。

 

(いつまで生きれるんやろうな……わたし)

 

彼女は心の中でそう呟いた。その表情は悲しい程、嬉しそうな笑顔を浮かべたまま。一瞬、その笑顔を見て、想也が迷ったような、困ったような表情を浮かべたが、その後に彼も優しい笑みを浮かべて、はやての頭を撫でてきた。彼女は嬉しそうな笑みを浮かべると、先ほどの言葉を撤回した。

 

(想也くんの為にも、生きよう)

 

触れられた暖かさを胸に、はやてはそう心に誓い直した。

 

 

 

川沿いの道を夕暮れに染まりながら歩く2人の少女がいた。高町なのはとフェイト・テスタロッサだ。2人は学校の帰りである。2人と言っても、学校の帰りなのは、なのはの方であって、フェイトは使い魔であるアルフの散歩がてら、明日から通う学校の通学路確認の後で、なのはと共に帰ることにしたのだ。

朝に再会した時は長く話せなかったが、今はお互いに出会えなかった数ヶ月間の出来事について話していた。殆どはビデオメッセージなどに録画した内容もあったが、やはり、きちんとした受け答えをすると、話が弾んだ。

やがて、話す内容が尽きると、フェイトは恥ずかしそうに、彼女の名前を呟いた。

 

「なのは……」

「?」

 

彼女が笑顔で首を傾げた。その目は光を受けて、蒼く澄んで見えた。フェイトは意を決して彼女に話した。

 

「あのね、なのは。私、この世界に来たばっかりだから、その……色々と迷惑かけると思うんだ。だから、色々教えてくれたら、いいな」

 

恥ずかしそうにそう告げるフェイト。すると、なのははその手を掴んで、嬉しそうに頷いた。

 

「当たり前だよ!私だって、きっと同じことを言うもの」

 

満面の笑みを浮かべてそう答えるなのは。そして、頭を下げた。

 

「宜しくね!フェイトちゃん!」

「うん。宜しく!なのは!」

 

そう言うと、二人は手をつないで夕暮れの道を帰っていった。

 

 

友枝町にある、木之本家。そのリビングでは、さくらが顔を赤くしてソファに座っていた。時刻は午後16時55分。後5分ほどで約束の時間になる。

心臓が早鐘を付くように鳴る。それを感じ、さくらは胸元を掴んだ。

 

(落ち着かなきゃ……小狼くん心配させたらいけない……)

 

大きく息を吸い、そう心の中で唱える。すると、自然と心臓の鼓動がゆっくりになってくる。

 

(よし!これでー

 

ピンポーンッ!

 

大丈夫。そう思ったところへ、来客を告げるチャイムが鳴った。それに驚きつつ、さくらはドアカメラで誰が来たかを確認した。

 

「!!」

 

さくらはその人物を見た瞬間、勢いよく玄関に向かっていった。

 

 

 

チャイムを鳴らした小狼は落ち着いた様子で、家主が出てくるのを待った。暫くして、ドタドタと慌てるような足音が聞こえてきた後で、扉がガチャッと開いた。

そこにいたのは、共に背中を合わせて戦うと同時に最も会いたいと願った少女。辛い修行の最中も彼女から貰った手紙と写真で何とか乗り切ることが出来た。小狼は、万感の思いがこみ上げてくるが、それらを制し、たった一言、彼女に告げた。

 

「久しぶりだな、さくら」

 

その一言が彼女を、さくらの顔を笑顔にするのには十分だった。その直後、さくらが彼に抱きついた。

 

「おかえりなさいっ!小狼くん!」

 

勢いよく飛びついてきた彼女を小狼は驚きながらも、しっかりと抱きとめる。表情は余裕そうにしているが、彼の内心はドギマギしていた。

 

(ヤバイ……こんなにいい匂いなのか……さくらって……それに、こんなに柔らかいし……それに……前より可愛くなってないか!?)

 

久しぶりに出会ったことで、余計そう感じた小狼。そんな小狼を、さくらがじーっと見つめていた。それに気付き、小狼は気まずそうにさくらに問いかけた。

 

「ど、どうしたんだ……さくら?」

「えっとね……小狼くん、難しい顔してるから、どーしたのかなーって」

 

そう言われ小狼は急いで鏡を見た。すると、確かに言われた通り、難しい顔をしていた。それに気付き、小狼はため息を吐くと、さすがに内心でどう思っていたか、は話せないため、ポンッと頭を撫でながらこう告げた。

 

「気にするな。俺の悪い癖だ」

 

笑顔でそう言うと、さくらの顔がカァーッと赤く色付いてゆく。それを見て、小狼の顔もまた、赤くなるのだった……。

 

 

それから暫くして、二人は家の中に入った。お茶を淹れながら二人は、近況報告などをした。

 

「……っていうわけなんだ」

「そっか……小狼くんは向こうに帰ってたのは修行するためだったんだね」

「あぁ。色々と大変だが、いい経験になった」

 

小狼は手紙でもさくらに修行のことについて話していたが、大まかなことしか書いていないため、修行していた細かい背景や理由などを説明する。それをさくらは目を輝かせて聞いていた。

 

「どんな修行をしてたの?」

「あぁ。そうだな……やはり、今まで使っていた魔法は古い魔法らしい……お前のさくらカード然り、俺の魔法然り……だから、そう言う古い魔法を元に、現代風にアレンジされた魔法の修行をしたんだ」

「そうなんだ」

「あぁ。これが結構大変でな。元素記号だったり、数式だったり、色々と学ばなきゃいけないんだ」

「うわー。やだなー。私には出来ないかも……」

「そう言うと思った。お前は、算数が苦手だもんな」

「だって〜……難しいんだもん!」

「まぁ、俺も国語が苦手だからな……なんとも言えないけどな」

 

そう言って、苦笑いを浮かべる小狼。それに吊られて、さくらも笑った。

 

「そういえばお前もー

「さくら!」

「へ?」

「お前じゃないもん!さくらって呼んでよ!小狼くん!」

「え……あ……悪い」

「久しぶりに会ったのに、『お前』なんて他人行儀な呼び方は酷いよ……」

 

そう言って頬を膨らませ、拗ねるさくら。小狼はそれを見て、困ったような表情を浮かべた後で、言い直した。

 

「さ、さくらも魔法の修行していたって言ってたが、どんなことしてたんだ?複数の魔法を同時に使える……とか書いてあったが……」

「んっとね……こういう感じかな。話しながらカードの魔法が使えるんだよ!」

 

そう言いながらさくらは、手にした鉛筆を軽く振ると一瞬光った。それを小狼に渡してきた。

 

「小狼くん、食べてみて!」

「これをか!?」

「うん。失敗してないと思うから、大丈夫だよ」

 

笑顔で鉛筆を食べるように勧めてくるさくらに、小狼は若干恐怖を覚えながらも、口に咥えた。すると、口の中にほんのりと甘みが広がる。小狼はその瞬間に何のカードを使ったのか理解した。

 

「……なるほど。『甘』を使ったのか……杖も使わないで使えるなんて。お前の魔力は底なしだな……」

 

小狼は呆れと尊敬の念を言葉に込めながら、そう言った。それに対しさくらは胸を張った。

 

「うん!想也くん曰く、まだ伸びるんだって!」

「ブッ!」

 

目を輝かせながらそういうさくら。だが、小狼の耳に彼女の言葉は入っていなかった。何故なら、彼の目は、さくらのある部分を注視していたからだ。

 

(あいつ……案外とあるんだな……)

 

さくらの胸を見て、小狼はそう思った。前見たときは、お互いに忙しく、事件の最中だったため、そう言った感情は湧かなかったが、香港の知り合いによって、ソッチ方面の知識を教わった彼は『そういう目』で見てしまった。

 

(ーッ!何を考えてるんだ!さくらにそんな感情を抱いて!俺はバカかっ!あーっ!!そんなことなら、あいつにそんな知識を習わなきゃよかった!!!)

 

「ねぇ、小狼くん」

 

頭の中で自分のことを恥じていた小狼。そんな彼さくらが、呟くように彼の名を呼んだ。その声に顔を上げると、さくらが恥ずかしそうな顔で小狼の隣に座った。そして、彼の肩に寄り添うように、頭を乗せた。

 

「ねぇ、小狼君。今日は私のお家に泊まれるの?」

「……悪いな。母さんにばれたから、泊まれなくなった」

「そっか。なら、しょうがないね」

「あぁ」

 

 その返事を境に二人は何を話していいのか分からず、黙ってしまう。ようやく次の話題を思いつき、小狼がそれを口にしようとした瞬間、彼の第六感が危急を告げるように何かを鋭敏に感じ取った。それはさくらも同じなのか、二人して勢いよく立ち上がった。

 

「さくら!」

「うん。何か大きな力が一か所に集まってるみたい……結界……それも封絶型のタイプかな?」

「え?どういうことだ?」

 

 小狼はさくらの感覚の鋭さに驚きを隠せなかった。自分の力では、ただ魔力がそこに集まっているくらいにしかわからなかったからだ。それについて小狼が問うと、さくらは簡単に答えた。

 

「魔力が外に向いてなくて中に向いて動いてるように感じたからかな……」

「この距離でそれが分かるのか……」

「うん!修行してたら、いつの間にかできるようになってたの!」

 

 それを聞き小狼は呆れを通り越して感心した。昔からそうだが、さくらは魔法に関しての知識は殆どない。だが、観察力や感覚、魔力量などはどれをとっても小狼を上回る。知識と技能で戦うのが小狼だとすれば、さくらは経験と直感で戦うタイプだ。おそらく、さくらに魔法を教えている師匠という人物は、さくらのその特性を理解したうえで、さくらと戦い、実戦経験を積ませつつ、魔力探知の方法を学ばせていたのだろう。実技一辺倒でここまで学べてしまうさくらもさくらだが、そのさくらの特性を理解し、学ばせる師匠という人物に対して、小狼は尊敬の念を抱いた。そのことはお首にも出さず、さくらに場所を尋ねた。答えられると思ったからだ。しかし、返ってきたのは、否定を示す首ふり。

 

(やはり、そこまではわからなかったか……)

 

 習いたてで、どういう種類の結界か分かれば十分だと割り切ると、小狼は鞄から敵の位置を割り出すことのできる道具を取り出す。それはL字の形をした棒のようなものだった。それの短い方を左右の手で一本ずつ握る。さくらが、それに対して純粋に訪ねてきた。

 

「あや~……それ、ダウンジング・マ――

「違うッ!これは、李家に由緒正しく伝わる、魔力探知棒だ!」

「え?でも……」

 

 どう見てもダウンジング・マ――に見えるのか、もう一度話したが、小狼は必死でそれを否定する。さくらはその様子を見て、追及するのをやめた。さすがに好きな人のプライドをズタボロにするのは気が引けたからだ。

 

「魔力を感知すると、この棒がグルグルと回転するらしいが……」

 

 そう言って、小狼は棒を持って外に出ようとする。その瞬間、棒がグルグルと高速で回り始めた。それを見て二人は目を丸くする。と言っても二人とも全く違った理由で、驚いているのだが。

 小狼の方は、こんな近くで回るとは思っていなかったこと、さくらの方は、ホントに回るんだ、とそれぞれ心の中で思っていた。

 

「どうした、そんな鳩が豆鉄砲撃たれたような顔して」

 

 そんな軽口と共に現れたのは、さくらの魔法の師匠にして、時空管理局・本局嘱託魔導師、立花想也だった。

 探知棒は彼を指し示し、クルクルと回り続けている。そんなシュールな光景の中で、想也は親指で明後日の方向を指さし、不敵な笑みを浮かべて、二人に告げる。

 

「逢引の最中失礼!悪いが、これからカチコミに行くぞ。結界の中にな!ケルベロス!」

 

 突然現れたことに驚く二人。そんな二人を無視し、行き先を告げた彼は、さくらのケルベロスを呼ぶ。すると、リビングの窓が開き、その先にある庭に本来の姿である翼を生やしたライオンへと変わったケルベロスが降り立った。

 

「小僧にさくら!厄介なんが目を覚ましてしもうたようやで。詳しい話は移動しながらしたるさかい。はよ乗り!」

 

 ケルベロスの只ならぬことを予想させる口調に、先程までふざけ半分だった二人は、一気に真面目な表情に切り替え、お互いに頷くと、ケルベロスに跨った。二人が跨ったことを確認すると、ケルベロスが大空目指し、大きく翼をはためかせ、飛び立った。

 




無言呪文発動
 さくらが杖を使わずにカードを使った発動方法。使い方は簡単で、杖で行ってきたことを自身の体で行うだけ。

甘(スイーツ)
 さくらカードの一つ。無機物・有機物問わず砂糖菓子や砂糖に変える能力を持つ。クロウが甘いもの好きだからできたらしい。
 噂によると、甘いのだけでは不服に思ったさくらが今度、塩のカードを作ると聞きつけ、それを恐れている。

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