カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜   作:1202155@

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小狼くんのお母さんの性格がよくわからんので、いわかんを覚えると思いますが、ご了承下さい!


小狼と夜蘭さん

海鳴空港。

その到着ロビーに1人の少年が降り立った。彼の名前を李小狼。中国の有名な導師の家系である、李家。その本家の長男として生まれた彼は、とある任務を遂行するため、再び日本に訪れた。普通なら、日本に来ることは大変嬉しいのだが、今回はその気持ちよりも、恐怖が勝っていた。何故なら、その傍には、彼が苦手とする人物がいた。

 

「小狼、先程も言いましたが、男女七歳にして席を同重せず……。さくらさんの家に泊まるなど、言語道断です。わかりましたね?」

 

「分かっています……。母上」

 

本来であれば、彼は今夜、一人でさくらの家に向かい、さくらと二人っきり(実際は三人だが)で過ごす筈だった。ところが、その手紙を偶然、彼の姉に見られてしまい、あろうことか、その騒ぎを注意しに来た、彼の母。李夜蘭に聞かれてしまい、こっ酷く叱られた上に、母相手の死ぬ気の剣技と魔術の訓練。さらには、二人っきりで過ごすのを阻止する為に、小狼について来たのだ。

夜蘭は小狼のそれを阻止するだけでは無く、他にも用事があるのだが、それがあることを小狼は知らない。

 

「小狼、友枝町はどんなところなんですか?」

 

夜蘭が優しい口調で問いかける。小狼はキビキビした口調でその問いに答えた。

 

「はい。過ごしやすい町です。交通の便も良いですし、何より、物価も安い。暮らすにはこの上ない場所です」

 

「そうですか……なら、食材には困らなさそうですね。腕によりをかけて、料理を奮えそうですね。さくらさんに」

 

「い!?は、母上がお料理を作られる必要はありません。お、俺が作りますから!」

 

小狼はビックリした表情を浮かべた後で、すぐに首と腕を振って反対する。夜蘭はそれを見てため息を吐いた。

 

「小狼、私は料理を作れます。そんな、作れない前提で否定をするのはやめなさい」

 

「ですが……」

 

「これは決定事項です。さくらさんには、我が家の味を堪能して貰いたいのです」

 

夜蘭の言葉に小狼は渋々、引き下がった。こう言いだしたら母が止まらないことは分かっているからだ。

 

「よろしい」

 

そう言うと夜蘭は小狼とは違う出口に向かおうとする。それを小狼が不思議そうに見ていると、小狼に告げる。

 

「さて、小狼。貴方は先にさくらさんの家に向かいなさい。私は少し、知り合いに会ってから、向かいます」

 

夜蘭は去っていった。小狼は深々と溜息を吐くと、ゆっくりとした足取りで、友枝町方面のバス乗り場を目指すのだった。

 

 

 

小狼と別れた夜蘭は空港に隣接されたカフェに来ていた。

もう数十年にも渡る付き合いを持つ友であり、職業柄、物品を交換して来た間柄でもある。そんな友に彼女は会いに来たのだ。

 

「久しぶりね。夜蘭。また若くなったかしら?」

 

「貴女がそれを言うと、皮肉に聞こえてよ。侑子」

 

からかい半分、挨拶半分といった様子で声をかけてきたのは、黒髪を腰まで伸ばした女性。夜蘭はその女性、彼女の名前は壱原侑子という。夜蘭はその挨拶にツッコミを入れると、座るように促した。

 

「じゃ、失礼して」

 

「貴女と会うのは、彼が死んでからかしら?」

 

「そうねぇ。もうソンナニ立っていたのね」

 

そう侑子が呟いて、儚げに空を見た。その理由を知っている夜蘭はそれを問わずに、懐から一枚の写真を取り出した。

 

「侑子。今日、貴女を呼び出したのは、アレが見つかったからなのよ」

 

「……そう。だと……思ったわ」

 

侑子は写真を見て、ほぅ、と息を吐き、写真を見る。そこには、剣十字の飾りのついた茶色い本が荒い画質で写っていた。

 

「我が家の執事達が偶々転位するところを見つけてね。その反応を探った結果、友枝町がある海鳴市に転位したことが分かったのよ」

 

侑子は一瞬驚いた表情を見せたが、その理由に気付いたのか、なるほどね、と呟いた。

 

「強い力を持つものは、災いを呼びやすい……かつての貴女がそうだったけど、まさか、彼女がいる場所に転位するとは……ね」

 

そう言うと侑子は煙管をフーッと蒸かした。白い煙が喫茶店の天井に揺蕩いながら、登って行く。夜蘭は、ええ、と呟くと悔しげな表情で答えた。

 

「私の11年前はまだ、終わってないのだから……」

 

と。

 

 

 

ぼや〜とした表情でさくらは外を眺めていた。彼女の目には光が無く、窓の外で色付いた椛も彼女の瞳には写っていない。それもそうだ。彼女は現在、とある病に侵されているのだから。

 

(小狼くんと久しぶりに会える……)

 

恋の病だ。

彼のことを思い出すだけで、彼女は幸せになると同時に、心が躍り、何も考えられなくなる。そして、電話などで声を聞いた瞬間は……頭の上から湯気が出て、天にも登る思いだ。恐らく会えない日々が待ち遠しいため、自然とそうなってしまったんだろう。実際に会ったらどうなるかはわからない……。

 

(小狼くんと会った時に変な声を出しちゃったら……どーしよ。あ、でも、小狼くんは笑ってくれるかな?)

 

さくらは手を頬に当て、はにゃ〜ん、と呟いた。

その瞬間、さくらは視線に気付いて前を向いた。ハッとして前を向く。すると、丁度朝の挨拶をしようとしていた、担任の寺田先生と目が合った。寺田先生は首を傾げ、さくらに訊ねた。

 

「どうしたんだ、木之本。驚いた表情をして。先生の顔に何か付いてるか?」

 

「あ……いえ。すいませんでした」

 

さくらはそう言って謝ると、顔をリンゴのように真っ赤にして、俯いて縮こまった。

寺田先生はそれを見ると、再び不思議そうに首を傾げたが、咳払いをすると朝礼を始めた。

 

休み時間になると、朝の出来事について知世が訊ねて来た。

 

「さくらちゃん、先程、李くんのことについて考えていらっしゃいましたね?」

 

「!?」

 

どうしてそのことを!?、と言わんばかりに驚いた表情と共にさっと一歩引くさくら。そんなさくらに知世は、おほほほ、と口に手を当て、笑った後で言った。

 

「さくらちゃんのことなら、なんでもお見通しですわ!」

 

「あ、はははー……」

 

さくらは苦笑いをその顔に浮かべた。

 

「苦笑いと言えばね!」

 

「ほぇえええっ!?」

 

突然、知世とさくらの間に一人の男の子が割って入った。驚いて声を上げるさくら。現れたのは山崎貴史。同じクラスの友人だ。

 

「18世紀のフランスではねぇ〜、貴族の前で笑ったりしたら……それはそれは恐ろしいことになったんだってよ〜」

 

と、彼はこのように、そこはかとなく薀蓄のように聞こえるホラを話すのだ。当然、これはよく考えてみればわかることだが、言われたことを、ストレートに受け取ってしまうさくらは当然、彼の話をまともに信じてしまうのだが………。

 

「お、恐ろしいこと?」

 

「そう。とぉーっても、恐ろしいことだよ。この世のものとは思えーー

 

「山崎くん!またそうやって法螺をさくらちゃんに言って!」

 

山崎の足を女の子がギュムッと踏みつける。山崎は目を開けて、話すのを止めた。彼の足を踏みつけたのは三原千春。彼の幼馴染であり、恋人だ。

 

「ねぇ、さくらちゃん、今日は小狼くん帰って来るんだっけ?」

 

山崎の口にガムテープを貼りながら、千春が訊ねてくる。それに対し、さくらは嬉しそうに頷く。

 

「さくらちゃん、嬉しそうだね」

 

千春がさくらの表情を見て、そう言う。すると、当たり前だよ、と言わんばかりに別の女の子がさくらの代わりに答えた。

 

「好きな人に久しぶりに会うんだもの。嬉しくないわけないよ」

 

そう答えたのは、歳の割に大人びた仕草や口調が特徴的な佐々木利佳だった。彼女の言葉にさくらは顔を真っ赤にして俯く。

 

「ふふ。さくらちゃんはまだ、恥ずかしいか」

 

「仕方ないよー。相手が李くん。だもんねー」

 

「ふふふ。でも、そこがさくらちゃんの可愛いところでもありますわ」

 

いつものやりとりで、休み時間が過ぎてゆく。友枝小学校は、今日も平和だ……。

 

 

バスの窓から過ぎてゆく景色を眺めながら、小狼は頭の中で、彼女に出会った時の挨拶を考えていた。

 

(やっぱり、ここは気さくに『よぉ、さくら』か……?いや、それとも『ハァーイ、久しぶりだね。愛しのMyスウィートハニーのさくらちゃん☆』か……?)

 

そう考えて、小狼は即座に吐き気を覚えた。2番目の選択肢は無いな、と思った。こんな歯の浮くことを言ったら、彼女が恥ずかしさで茹で蛸になり、気絶するだろう。それどころか、彼女の使い魔のケルベロスには絶対に大笑いされる。それは、小狼の高いプライドが許せなかった。ので、2番目の選択肢を却下する。

 

(……こういう時は……)

 

取り出したのは、如何にも胡散臭い本。タイトルは『恋愛初心者もだいじょーV!これを読んで、貴方も彼女と結婚までのロードを突っ走れる!』と書いてある。その本はかなり読まれているのか、所々に付箋が付いている。小狼は迷うことなく付箋の付いたページを開く。

 

(何々……《久しぶりに彼女に会った時はいつも通りの挨拶をした後で、抱きしめましょう。もし、それが出来ないのであれば……頭を撫でてあげましょう。身体に触れるということは、彼女を何より安心させてあげられる行為なのです》……なるほど)

 

書かれてあることを見て、頷いていると、隣に人が座ってきたことに気づく。小狼は邪魔にならないように、端っこに詰める。その人は女性なのか、柔らかい声で「ありがと」と呟いた。小狼は軽く頷くと、再びその本を読み始めた。

 

どれくらいしたろうか。小狼はふと窓の外に目を向けようと顔を上げる。そこで、隣の女性がこちらを見ていることに気づき、女性の方を向く。女性は小首を傾げ、こちらを見ていた。その目の色は銀色と鳶色のオッドアイ。吸い込まれそうなほど、澄んだ色をしていた。女性は何か納得したようにポンと手を叩きながら、あぁ、と小さく声を出した。小狼は怪しさを覚え、睨みつける。すると、女性は魅惑的な笑みを浮かべて、呟くように小狼に話しかける。

 

「流石は李家次期当主候補。中々いい力を持ってるみたい……ネ」

 

小狼の中で、彼女に対する怪しさがさらに増した。

 

「何故、俺の名前を?」

 

「そうだねー……私も同じ力を持つからかナ?」

 

そう言うと女性は突然小狼に向かって腕を突き出してきた。咄嗟のことに小狼は頭を傾けて避ける。女性は相も変わらず魅惑的な笑みを浮かべて微笑んでいた。その腕の先ー伸びた指先は降車ボタンを押していた。

 

「さぁ、李くん。降りないの?」

 

「は?」

 

「ぼーっとしてないで、ここ、友枝町だよ?」

 

その言葉に小狼はびっくりして窓の外を見る。言われて見てみれば、確かに、見慣れた景色が広がっていた。小狼は急いで荷物を纏め、バスから飛び出してゆく。女性は、楽しそうな笑みを浮かべると、小狼に続いてバスを出た。

 

バスを出た2人は向かい合った。小狼は下から彼女を睨みつける。普通の人であれば少しは怖がりそうなものだが、彼女はそれに動じず、不思議そうな笑みを浮かべて頭を下げた。

 

「初めまして。橘百家流本家・陰陽術師の橘寺藺草と言います」

 

和かにそう言われ、小狼は頭を下げる。

 

橘百家流……中国の陰陽五行説を元にした陰陽術式を使う流派のことだ。李家と並ぶほど、古い歴史を持つと、言われており、近代の陰陽術の元を作ったとも言われている。現在も新しい陰陽術の使い方を模索し、研究している。

 

閑話休題

 

小狼は、それで、と呟いて問いかける。

 

「どうして橘百家流の人間が、俺に接触をしてきたんだ?」

 

何か裏がある、そう睨んだ小狼は自分に接触した理由を訊ねる。だが、女性はあっけらかんと答えた。

 

「とくに理由は無いよ。偶々君を見かけたから、声をかけただけ」

 

小狼は理由を聞いて、拍子抜けしてしまうと同時に、深く考えていた自分がバカバカしくなり、ため息をついた。

 

「……ハァ…まぁいい。俺はやることがあってここに来た。出来れば邪魔はして欲しくない。じゃあな」

 

そう言って、小狼は友枝小学校方面に向かって歩いていった。

 




用語時点
陰陽術師
本作では、魔を払い、邪を浄めるもの。また、場合によっては殺生を行い、悪霊や幽霊等を倒すもの。これには、少数の和尚や神主なども含まれる。
一を対価に一を生み出す術式を得意としている。その為、特別な素質に頼らずとも、対価を支払うことで術式を行うことも出来る。故に魔力や特別な資質がなくとも術式を行う事ができる。この点が魔法使いとは違う部分である。
なお、陰陽術の延長線上に、錬金術などがある。

特別な資質
この場合は『魔法を使える』ものを示す。魔法を使えるものは、不可視の存在を具現化させずとも『視る』事ができる。
魔導師には基本的にこの資質は無い。

魔導師
リンカーコアという特別な機関を持つものを示す。魔法を砲撃として放ったり、魔力刃として扱うなど、具現化して扱うことを得意としている。

魔術師
精神力を魔法として扱えるもののことを示す。故に感情に左右されやすいが、これを使えるものは大半が精神的に達観している傾向があるため、感情の暴走による魔法の暴走を起こしにくい。
魔導師と違い、魔法を具現化して扱うのは不得手だが、反面、大規模な転移魔法や身体治癒、物理操作等の細かな操作を必要とする魔法を得意としている。

嘱託魔導師
アルバイト魔導師であり、管理局から依頼された任務を派遣期間内に事件の解決・または犯人逮捕に協力する者のことを言う。普通は嘱託魔導師試験というものを受け、正式に契約するのだが、現地協力者として特別措置として、事件解決のために、民間人や違法魔導師が、協力する場合もある。
また、このほかに提督推薦というものもあり、提督からその実力を買われたものが、嘱託魔導師となる場合もある。

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