カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜   作:1202155@

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それは、必然的な出会いでした。
 夢を見た少女を強くするために
 大切な誰かを守れる力を彼女に与えるために
生まれ変わりである彼は、その前に知り合った一人の少年に、少女のことを託したのでした。

カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜
始まります。


さくらとボルケンリッター
なのはと再会の彼女


6月3日 PM9:05

海鳴市 中丘町

閑静な住宅街の一角に八神と表札のついた一軒家がある。このごく普通の一軒家に住むのは、足が不自由な少女ただ一人。他は誰も住んでいない。ひっそりと悲しい静寂だけが、その家を覆っていた。

少女は車椅子を手で動かしながら、電話が置いてある場所まで向かう。電話のボタンが点滅している。おそらく、留守電が入っているのだろう、と考え、そのボタンを押した。

《ルスデンメッセージ、イッケン、デス》

機械的な音声の後で、メッセージが再生された。

《「海鳴大学病院の石田です。明日ははやてちゃんのお誕生日よね?良かったら、検査の後に一緒にお食事でもどうかなって思って、お電話しました。明日病院に来る前にお返事くれたら嬉しいな」メッセージ、ハ、イジョウ、デス》

それを聞いて少女は悲しそうに小さなため息をついた。

本来であれば両親や親類が誕生日を祝ってくれるはずなのだが、そのような親類は彼女にはいない。悲しいことだが、幸いにして、物心ついた時から車椅子で生活をしていたため、ヘルパーなどを雇う必要もなかった。知り合いと呼べるのは、先程電話してきた、石田先生くらいで、近所の人達ともまともに話したことさえない。

そのような生活をずっと続けてきた彼女は次第にこう思うようになっていた。

(私はこのまま、誰も知らないうちに、この家で朽ち果てて、死ぬんやろか)

と。

ずっと前に買い物に行ったときに風の噂で聞いた、何でもネガイを叶えるというお店。そんなお店があれば彼女はすぐにでも、何もかも投げ捨てて、こう願うだろう。

「家族を私に下さい」

と。

だが、現実にそんな店があるわけ無いし、あったとしても、法外な料金を請求されるだろう。

彼女は段々と誕生日を越すごとに自暴自棄になっていった。

「よいしょ」

慣れた手つきで車椅子からベッドへ移り、横になる。そして、ベッドライトを付けて、風芽丘図書館から借りた本を読み始めた。

 

 

 

暫く時間が経ち、彼女は眠気を覚えた。ふと時計を見ると、時刻は午前0時に差し掛かったところ。

「もう、こんな時間か……早く寝ないと、明日に触るな……寝よ」

彼女の心を唯一癒してくれるもの。それは、本の世界。とくにファンタジーものは彼女のお気に入りだった。彼女はスッキリした気持ちで布団をかけようとする。だが、そこで違和感に気づいた。本が浮いていたのだ

「」

《起動》

ドイツ語でそう告げる、茶色のハードカバーに銀色の鎖が交差するように巻かれた高級そうなその本は、気付いたときにはこの家にあったようにおもう。多分、父か母のどちらかが残した本なのだろう、とはやては勝手に思っていた。毒々しい紫色の光を放ちながら、心臓が鼓動するような音ともに、本はその鎖を引き千切らんと、動く。やがて、勢いよく鎖は引きちぎられ、本はページをバラバラとめくってゆく。そして再び閉じられると、本はゆっくりと少女の元に降りてくる。そして、驚きと恐怖の入り混じった少女に近づくと、再びそれが、光だした――。

 

 

 

side.なのは

朝。太陽の光が寒空に登り、海鳴市を照らし出す。

その市の一角にある家では、一人の少女が眠っていた。女の子らしいピンクのカーテンが特徴の部屋だ。

机の上にはこれまた、ピンクのガラパゴス携帯が充電されている。どうやらピンクは彼女のパーソナルカラーのようだ。少しして、携帯のアラームがなる。それと同時に液晶画面に『6:30アラーム♩運命の日』と表示される。そのアラームがなる少し前に少女は起きていたのか、アラームが鳴った直後に、その携帯を取り、アラームを解除。携帯をそっと、抱きしめた。

《おはようございます。マスター》

机の上に大切に置かれた紅い宝石のついたネックレス。それが点滅しながら、英語で挨拶をする。少女はそれに対して笑顔で返す。

「うん!おはよう。レイジングハート!」

彼女の名前は高町なのは。彼女の見た目は至極普通の女の子だが、今年の春にその常識を覆す不思議な出会いと、闘い、そして、最愛の友人と巡り会った。

偶然出会った淫獣もとい、ユーノ・スクライアという少年を助け、彼から貰ったレイジングハートを武器に、魔法少女として、ジュエルシードという、人の願いを歪めて叶える宝石を集めていた。

その途中で出会った同じくジュエルシードを集める少女。フェイト・テスタロッサとの出会い、そのジュエルシードを集める中で、フェイトとすれ違い、ぶつかり合い、お互いを理解する。悲しいこと、辛いことを一緒に乗り越えてゆくことで、なのはの思いは彼女へと伝わり、二人は友達になった。

閑話休題。

今日はそんな彼女と半年ぶりに再会出来る大切な日だった。

身支度を整え、彼女は玄関を勢いよく飛び出し、走り出した。

 

辿り着いたのは海鳴湾の見える海鳴海浜公園。なのはは、膝に手をついて、下を向いて息を整えた。

すると、一人の少女がゆっくりと振り向いた。少女は驚いたような表情を一瞬浮かべ、やがて静かに笑みを浮かべた。

「ただいま、なのは」

涼やかな、だが、優しい声で彼女はそう言った。なのはは涙と笑顔を同時に顔に浮かべると、勢いよく抱きついた。

「おかえり!フェイトちゃん!」

二人は離れていた時間を埋めるように、抱きしめあった。

 

 

 

海鳴市にある大きな一軒家。近くに人気の喫茶店『翠屋』があることや、駅から近いこともあり人気の住宅地に出来た家だ。その家に女性が引っ越して来た。彼女の名はリンディ・ハラオウン。時空管理局に所属している。階級は提督だ。

彼女は受け取った荷物の整理をしながら、新居を眺める。長い間、次元航行艦に詰めており、住居も時空管理局・本局の居住ブロックで暮らしていた彼女にとって、こういった普通の家で暮らすのは、久しぶりであると同時に、長年の夢でもあった。

ここで暮らすのは彼女だけでは無い。

「リンディ提督、もう荷物は運び終わったよ」

長髪の女性が彼女に話しかけて来た。リンディはそれを聞くと、そう、と頷いて、お茶にしましょうか、と言って女性を座るように促した。

女性の名前はアルフ。彼女は人間では無い。死にかけた狼がとある少女によって、使い魔という魔導生命体として生まれ変わった姿だ。

その少女の名をフェイト・テスタロッサ。

半年前に起きた、プレシア・テスタロッサ事件。通称:P.T事件の際、主犯であり、実の母であったプレシアの命令に従い、『ジュエルシード』を管理局と奪い合った少女だ。その事件の際、彼女は母を失い、使い魔であるアルフと二人きりになってしまった。

彼女は、罪を償う代わりに、嘱託魔導師として管理局に務めることになった。だが、管理局では、親がいなければ、局員になることは出来ない。そこで、リンディは彼女を養子として引き取り、この家で暮らすことに決めたのだ。

閑話休題

引っ越し業者から受け取った荷物を粗方片付け終えた二人は、休憩していた。リンディはカップに口をつけ、緑茶に牛乳と砂糖を混ぜた緑茶を飲む。その横では、アルフが湯気を出すコーヒーを前に顔を紅くして座っていた。リンディは彼女が何か言いたそうにしていることに気づいたが、気付かない振りをする。アルフが自分から何かを話してくれることを望んでいるからだ。

「あ……あのさ……」

アルフが恥ずかしそうに声を上げる。リンディは優しい表情を浮かべて、首を傾げる。

「フェイトのこと……ありがとね。あれから色々守ってくれたりとか、大好きななのはと同じ学校に通わせてくれてさ」

リンディはふふ、と笑いながら、あたりまえよ、と言った。

「あれだけ苦労したのだもの。少しくらい、フェイトさんの我儘を叶えて上げたいわ。それに、親族を無くした悲しみは、ずっと心の中に重くのしかかるわ。ましてや、目の前で失ったのなら尚更……ね」

思い出されるのは、プレシアの今際の際。フェイトはプレシアを助けようと手を伸ばした。だが、彼女はそれを拒み、アリシアと身を共にした。

今思えば、あれはプレシアなりの贖罪なのかもしれない。

何の贖罪なのか……。フェイトを傷つけ、モノ扱いしたことに対してか、娘を生き返らせようとしたことに対してのものなのか。それはプレシア本人にしかわからない。だが、推測することはできる。落ちてゆく彼女の表情はどこか、悲しさと後悔と少しの安堵が入り混じった風に見えた。それはまさしく、子を思う親の表情。

(それを言っても、フェイトさんを悲しませるだけ……ね)

そのことは誰にも話さない。一つは過ぎたことだから、もう一つはフェイト本人のことを考えているからだ。養子になる子に、実母のことを聞くのは、タブーだと、彼女は思っているからだ。

(まぁ、時が解決してくれるかしらね)

難しく考え過ぎた、と思い、クッキーを口に入れた。優しい甘みが口に広がる。それが、彼女の思考を溶かしていくリンディは緑茶をのんで一息つくと、アルフに提案する。

「お茶が終わったら、一緒に買い物でも行きましょう?この世界のことは、まだあまり分からないから、案内とか、フォローとか、よろしくね?」

「うん。まかせてよ!」

 アルフの言葉を聞いて、リンディは笑顔を浮かべる。アルフも恥ずかしそうに、だけれど、嬉しそうに笑った。

 その様子は、傍から見れば、親子のようにも見えた。

 

 

 

 時空管理局 本局。それは、傍から見れば、建物に見えない。巨大なデブリの内部をくり抜き、最下層に造船および、艦船ドッグを設け、その上に本局の施設を置いている。

 その艦船ドッグを見渡せる、連絡通路を、二人の男女が進んでゆく。

 一人は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウン。もう一人は、そのクロノの親友であり、執務官補佐でもある、エイミィ・リミエッタ執務官補佐である。

 二人は所属する、次元航行艦アースラの次の任務を受諾するため、直属の上司である、レティ・ロウラン提督のもとに向かっている途中だった。本来であれば、この仕事は、艦長であるリンディの仕事であるのだが、現在彼女が不在であるため、艦内で彼女の次に役職の高い、二人が向かっていた。

「失礼します」

 提督室に入る二人。デスクには一人の女性が座っていた。彼女がレティ・ロウラン提督だ。レティは二人を見ると笑顔を浮かべて、隣の応接室へ案内しようと立ち上がった。

「久しぶりね。クロノ君、エイミィ」

「お久しぶりです。レティ提督」

「ご無沙汰してます」

挨拶を交わした二人。クロノは促されるままに、エイミィとともにソファに座る。レティはクロノにある少女のことについて尋ねた。

「クロノ君、フェイトちゃんはどうなったかしら?」

「はい。無事現地入りしました。今頃はなのは達に挨拶をしているところでしょう」

「そう。なら大丈夫ね。リンディもしばらくはゆっくりできるでしょう」

 そういってから彼女は親友とその養子の身を案じる友の表情から一遍、仕事の話をする表情へ変わる。その表情を見て、二人は思わず息をのむ。

「さて、今日ここに来てもらったのは、クロノ君にお願いしたい仕事があったからなの」

 そういって彼女は空中投影ディスプレイを操作し、いくつかの資料映像を宙に浮かべた。それには傷ついた管理局局員や、魔法生物が横たわる映像が映し出されていた。それを見た二人は思わず顔をしかめる。

「違法渡航グループの追跡と確保。主な犯罪行為は、大型魔法生物の狩猟行為と魔導師を狙った略奪」

「りゃ、略奪って……」

 

 エイミィが驚愕する。魔導師を狙って略奪行為を働くということは、管理局に喧嘩を売っているようなものだ。つまり、相手は管理局と面と向かって戦えるだけの戦力を持っているか、もしくは少数精鋭の実力者集団のどちらかだ。

 そう考えていると、レティが説明を続けた。

「みんな奪われているのよ。魔導師の魔力の源……リンカーコアが」

 

 そう言ってレティは自分の胸を指さした。

 クロノとエイミィはその言葉に、言い表せない不安が重くのしかかってきた。

 

 




 前後編に分けた二話。次回はついにあの子が出てきますよー。

 プレシアの下りは、劇場版のプレシアの言葉を聞いて、その時の表情がリンディに見えていたら、というIFのはなしなので悪しからず

 ゆっくりと休みたいエイミィ、残念。また新しく厄介な仕事が舞い込んできてしまったようだ。
 万能指揮官魔導師クロノ君、レティ提督に厄介な仕事を回されてどう思ったのか……

 なのはとフェイトの出会いの場面。どことなくフェイトを大人びて見せてみたのは、テレビ版がクールビューティーに見えたので、そっちに近づけて書いてみました。、

 













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