カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜   作:1202155@

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さくらと魔法の家庭教師

第97管理外世界『地球』

某所

11月31日

午後9時

満月が公園を照らす幻想的な夜。それを背景に一人の可愛らしい少女が静観な表情を浮かべて現れた。

少女は自身の胸に下げられた星の意匠の施された鍵を両手で包み込む。

 

「星の力を秘めし鍵よ!真の姿を我の前に示せ!契約の元、桜が命じる!レリーズ!」

 

そう呪文を唱えた瞬間、少女の身体の周りに魔法の風が舞い、鍵はその姿を杖へと変化させる。少女はその杖をクルクルと回すと、両手で構えた。

 

「想也くん!勝負だよ!」

「おっしゃっ!来いっ!」

 

少女が目の前にいる少年にそう告げると、少年は勿論と言わんばかりに、自分の武器を構える。それは弓矢にも剣にも見て取れる不思議な武器。異世界の技術で作られたと聞く。

 

「フライッ!」

 

取り出したカードを空中へ投げ、それを杖で叩く。すると、少女の背中に純白の翼が現れる。それをはためかせ、少女は夜天の空へと舞い上がる。

対して少年は一瞬で陣羽織を纏い、その手の武器を肩に担いで空へ浮かび上がる。

 

「やっぱり、想也くんの魔法はいいなぁ。カード使わないでも空飛べて、防御も攻撃も出来るんだもん」

「よく言うよ。汎用性と扱いやすさじゃ、そっちの方が上なんだけど……なっ!」

 

少年が先に動いた。大振りな動作でその武器を振るう。桜はそれを杖で流れるように受け流し、距離を取ると、新しいカードを発動させる。

 

「ソードッ!」

 

カードを叩き、魔法を発動させると、杖はその姿を細身の剣へと変える。

 

「やぁあああっ!」

「だぁああありゃぁああっ!」

 

お互いの剣と剣がぶつかり合い、火花を散らす。少女は自分の方が力では負けるとわかっているので、持ち前の運動神経を生かして、それをいなし、少年の体制を崩す。

だが、少年も負けてはいない。体制を崩されながらも、武器の弓弦を引く。先端の砲口に光が集まり、離すと同時に光の矢が放たれる。

 

「シールド!」

 

杖を使わず取り出したカードをコール(呼ぶ)するだけで発動させる。翼の意匠が施された盾で防ぐ。

 

(このままショットで……!)

 

次の一手を考え、カードを取り出そうとする少女。そこへ、注意を促す使いますの声が突然聞こえてくる。

 

「さくら!次来るで!」

 

その声で前を向くと目の前には少年が剣を振り下ろしていた。それをシールドで受け止める。だが、如何せん受け止め方が悪かった。この姿勢では、明らかに押し切られて

 

「くっ!」

「力押じゃこっちが……上なんだよぉっ!」

「きゃぁっ!」

 

押し切られて吹っ飛ぶ少女。それを待ってましたと言わんばかりに、少年はゆっくりと弓を引き絞る。さくらは体制を整えながら、それを確認すると、一回転しながら着地。すかさず、カードをコール(呼ぶ)する。

 

「ジャンプ!」

 

カードが腰のケースから現れ、光ると同時に少女は跳躍力を強化。勢い良く飛び上がる。その高さはビル二階分に匹敵する。

少年は思わず、やるねぇ、と呟きながら弓を構えたそこにはエネルギーがチャージされた状態の弓があった。

 

(まずい!)

「相手の行動を見ながら回避。そこは重要よ。お嬢さん?」

 

あんな威力で撃たれれば、盾なんて意味が無い。そう思った時にはもう遅く、彼女は微妙に痛い無数の矢に貫かれていた。

 

 

カードキャプターさくらtoリリカルなのは

A'sLove in their hearts

第一話

『さくらと魔法の家庭教師』

 

広い12畳ほどある洋風の部屋で3人の男女が先程の闘いの映像を見ていた。

一人は先程杖とカードを使い戦っていた美少女。名前を木之本桜。(以下、さくら)

もう一人は先程、弓矢を使い戦っていた、平々凡々な顔で、長い髪を一括りにした和服姿の少年。名前を立花想也。

最後の一人は、黒髪をストレートにしたこちらもまた美少女だ。名前を大道寺知世といい、この家の主だ。

 

三人は思い思いの表情で映像を見ていた。

想也は再生されるビデオを見ながら、この対決の良かった点、悪かった点をビデオを止めながら説明する。

さくらはそれを聞きながら、メモを取る。

知世はそれを聞きながら、気になることを質問している。

 

「ん。ここでジャンプを使ったのは良かったね。出来れば、ダッシュのほうが、良かったかもしれないけどねー」

「ダッシュだと、どういう戦術が立てられるのですか?」

 

知世の問いに想也は笑顔で頷くとこう答えた。

 

「まず、ジャンプだと複数の足場が無いと、頭上に一直線にしか飛べない。フライはあの勢いだと、体制を立て直すのがやっとってところだね」

 

そこまで説明すると一旦言葉を切り、ジュースを飲んでから説明を再開する。

 

「さて、ダッシュの場合は、話が違ってくる。相手の攻撃もあの速さなら当てられないし、短時間、不規則に動けば、予測出来ないしね。その加速状態でフライを使えば、余計な魔力を消費せずに十分な速さで、空へ復帰出来る」

 

その説明を聞いて、頷くさくら。

 

さて、この場を借りて何故、さくらがこのようなことをしているのか、理由を説明しておこう。

一ヶ月前。彼女は不思議な夢を見た。そこで、そのことをエリオルに話すと、彼は手紙で

『ここ数ヶ月以内に哀しい事件が起きる。それを止めるために僕の知り合いの魔法使いを呼びましょう。彼が滞在する間は、彼に魔法などについて習ってみてはいかがでしょう?とても勉強になるものばかりだと思います』

こうして、哀しい事件を解決するために現れたのが、さくらの目の前にいる立花想也だった。

彼の教え方はとても面白かった。最初は単純にさくらカードの召喚からはじまり、次は二枚、三枚、四枚の同時召喚を行い、現段階では、五枚の同時召喚と長時間における連続魔法行使・持続が可能となった。また、実戦訓練と言う形で、彼と一週間に一度、模擬戦を行うことも、さくらにとっては新鮮だった。想也の住むところではそう言う教え方が当たり前だと言う。魔法と言うものを詳しく理解せず、教えられても、使い魔であるケルベロスことケロちゃんのカードの知識だけだったさくらにとっては、想也から教えられた魔法についての知識や技術は、学ぶ価値があった。

 

閑話休題

そうこうしているうちに、昨日の反省会が終わった。さくらは今日の朝に書いた反省文を想也に手渡した。

 

「はい、想也くん。これ、反省文」

「はい。確かに受け取ったよ」

 

渡したさくらは安堵の溜息をついた。それが気になったのか、想也が訊ねてくる。

 

「どうしたよ。そんな溜息をついて」

「うん。今日の朝、それ忘れそうになっちゃって……」

「ほぉー。忘れたら面白かったのになー」

「ほぇえええーっ!?やだよー!町内120週なんてーッ!」

 

反省文の書いてあるノートやさくらカードなど、授業で忘れ物をした時は、ペナルティが与えられる。そのペナルティはあまりにも凄まじく、内容を見た瞬間、さくらは震えが止まらなかったほどだ。ちなみに、想也曰く「やって出来ないことはないだろ?死ぬ気でやれば問題ない」とか。

内容よりも彼の発言のほうが大いに震えたた。

 

「ふふふ。でも、ちょっとドジなところがさくらちゃんの可愛いところでもありますわ」

 

彼女の親友である知世が口に手を当てて、おほほほ、と笑う。

それを聞いて、想也も肯定するように花で笑った。

さくらはそれについて、講義する。

 

「ちょ、ちょっとぉ!私、ドジじゃないもん!今日はたまたまだもん!」

 

そう言って頬を膨らませるさくら。それを見てその場にいた全員が笑った。

ひとしきり笑った後で、知世が手を叩いた。

 

「さてと、そろそろお昼ご飯にしましょうか」

 

知世の意見に真っ先にケルベロスがくいついた。

 

「よっしゃ飯やぁあああっ!なぁなぁ、知世〜、今日の飯はなんなんやー?」

 

ケルベロスがそう叫ぶ中、さくらは一人、窓の外を眺めた。そして、一枚のカードを取り出した。

それは最愛の彼と自分の中を取り持った一枚のカード。半年前に起きた『無のクロウカード封印戦』で生まれた、さくらの作り出したカード。『希望』を眺める。

 

「シャオランくん……」

 

カードを眺めながら、最愛の彼の名前を呟いた。先日送られてきた手紙によれば、香港でやらなければやらないことも、粗方、終わったようで、細々したことは、日本にいても出来るらしい。なので、明後日、12月2日の夜ごろにはさくらの家に向かうと書いてあった。

 

(私のお家に来るってことは、つまり、そ、そそそそ、そう言うことだよね)

 

さくらはシャオランが自分の家に泊まるのだと思い、一人顔を赤らめる。同時に様々なことを思考する。

 

(ダメダメダメダメ!私からしようなんて言ったら、シャオラン君に嫌われちゃうよ!それにこう言うのは、利佳ちゃん曰く、男の子はどうしてもそう言うのガマン出来ないって言うし……男の子から来るものだって……)

 

様々な葛藤で頭がいっぱいのさくら。

そこに誰かが声をかけてきた。

 

「おう。どうしたよ。顔めちゃんこ赤くして」

「ほっ……」

「?」

「ほぇえええええええーっ!」

 

一瞬驚きと共に声を漏らし、虚をついたところで、叫び声を上げる。

想也はその攻撃を受けて、床に倒れる。思わぬ攻撃に受け身が取れなかったようだ。

 

「さ、さくら……どういうわけか、説明してもらおうか……と、知世」

「はい。なんですか?」

 

知世が返事をする。想也は耳を抑えながら、わけを話す。

 

「この赤面妄想娘の話しを聞いてくる。飯は先に食っててもいいぞ」

「いえ。待ちますわ。皆さんで食べた方が美味しいですもの」

 

そう言うと、知世は微笑んだ。想也はそれに対して、ありがとと頷いた。

さくらも知世に礼を述べると、想也に頭を掴まれ、ズルズルと引きずられていった。

 

 

 

大道寺家の庭。そのベンチに腰をかける二人。想也はどこからかオレンジジュースを取り出すと、それをさくらに渡した。さくらは取り出したことに対して、疑問を投げかける。

 

「それも想也くんの魔法」

「ん?あぁ。まぁ、どっちかって言えば、お前らの魔法に近いんだけどな」

 

そう答えて、オレンジジュースを飲む想也。コスモスの咲いた庭を眺めながら、さくらに問いかける。

 

「何をそんなに葛藤してたんだ?」

 

さくらはもじもじとした、はっきりしない態度を取る。想也はさくらの顔を盗み見る。顔が真っ赤で、目が潤っている。その症状がなんなのか、一瞬で気付いた。

 

「彼氏のことか」

「ブフーッ!」

 

チビチビとか飲んでいたオレンジジュースが彼女の口から噴き出し、コスモスにかかった。想也はなるべく彼女の方に目を向けないようにする。

 

「か、かかかかかか……彼し……シャオランくんが、わわわ、私の彼氏……はにゃ〜ん……」

 

狼狽えたような口調の後で、ひじょうに蕩けた表情を浮かべるさくら。

 

(この様子じゃ、彼氏って言葉を理解はしていても、実感わかないって感じだな)

 

そう思った彼は、スッと手を上げ、彼女の脳天めがけて、チョップを叩き込む。ちなみに角度は斜め45度。

 

ガゴンッ!

 

凄まじい音がすると、さくらは頭を抱えて、蹲っていた。

※さくらちゃんファンの皆さんすいません。想也はさくらちゃんを唯一殴ることの出来る、破天荒なキャラなんです。

 

「い、痛い……」

「たり前だ。痛くしてんだから。んで?彼氏のことで悩んでんだろ?そう言うのは経験がある。聞かせてみな」

想也がそう言って笑みを浮かべると、さくらは引きつった表情で想也に訊ねた。

 

「想也くん、彼女さんがいるの?」

「あぁ。いたな」

 

さくらがそれを聞いて驚いたが、すぐに咳払いをして質問する。

 

「お、男の子を……女の子の家に泊まらせるのは……いけないことですか?」

 

単純な質問に想也は鼻を鳴らしながら、答えを述べた。

 

「まぁ、特別なことだろうさ。特に家族がいないときに家に誘う行為ってのはさ」

「特別な行為?」

「あぁ。男の子はオオカミだかんな。家内で二人っきりになりゃ……どうなるかわからん」

 

想也は肩を竦ませた。自分もこのことについては経験があるからだ。どこか後悔してるのかも、と今の行動を客観的に見て気付いた。

さくらは、オオカミと言う言葉に反応し、眉間に皺を寄せ、唸る。

想也は近くの屑篭目掛けて、オレンジジュースを放り投げた。それは綺麗な放物線を描いて、小気味いい音とともに屑篭に入る。

 

「男の子を家に招き入れるってのはさ、有る意味キス以上のことをしてもいいよって意味になるんだ」

「」

 

その瞬間、ボンッ!と言う音がした。振り向くと、さくらは顔を真っ赤にして、頭から蒸気を吹き出しながら、ほえほえほえ、と呻いていた。

 

「ほぇ〜……き、キス以上……ほぇ〜、い、一体どんなことすればいいんだろ〜ほぇ〜、わたし、とんでもないこと……

「落ち着けよ。そんな悩む必要はねぇ。そうなるのにもちゃんとムードってもんが必要なんだ。それに、キスするのにもムードが必要なんだよ。したくないなら、そう言うムードを作らないようにしとけばいい。どっかの大阪弁の使い魔なんかを交えてな」

 

そう言って不敵に笑う想也。さくらはそれを聞いて頷いた。

 

 

「恋愛なんてのはさ、誰もみんな、小難しく考えてるんだよ。実際は簡単なもんで、悪いことしたら、ごめんなさい、してくれたことに対して、ありがと。そんで、相手の顔を見て話す。これから始めりゃ、大抵はうまく行くからよ」

 

それを聞いてさくらは自然とさっきまでの恥ずかしがりが消えて、正常な思考に戻ってゆく。

それを横目に想也は心の中で盛大にため息をついた。

 

(あーあ。そんな恋愛経験豊富じゃねぇんだけどな)

 

と。




次回予告

さくら
「半年の歳月を経て、ついに再開する二人」

子狼
「だが、そんな二人の前に立ちはだかる、ヴォルケンリッターという敵」

知世
「倒れる二人の魔法少女」

想也
「その二人を救ったのは、ご近所の平和を護る最強のカードキャプターとクロウ・リードの子孫の魔法使いだった」

全員
「次回、カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜
『さくらとヴォルケンリッター』

さくら
「あなたの心に、ドライブ、イグニッション!」

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