カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜 作:1202155@
その昔、異世界セフィーロに訪れた一人の男によって造られた伝説の錠前。錠前の中には男のすべてをかけて造られた、剣と盾が納められていると言われている……。
本局の数ある会議室の内の一つに、多くの人が集まっていた。その中には、なのはやフェイト、さくら、小狼、知世の姿もある。5人は互いの顔を見ながら、他愛ない話をする。
向かい側の管理局側の席に座る想也は腕組みをして、眠っている。その右隣では、クロノが頭を抱え、想也の神経の図太さに呆れており、左隣のエイミィは、ディスプレイに凄まじい速さで何かを打ち込みながら、たははー、相変わらずだなー、と想也を見て笑っていた。
「……さて、時間か……」
アースラスタッフが全員集合したことを確認し、クロノがそう言うと、咳払いをして、立ち上がったクロノが周りを見渡したのを確認し、エイミィが号令をかける。
「これより、本事件の概要についてクロノ執務官より、報告があります」
クロノは壇上に上がるとディスプレイに画面に映像を映し、説明を始める。
「最近、魔導師や大型魔法生物を襲撃し、リンカーコアを蒐集していくという事件が発生した。これに伴い、アースラスタッフ及び、嘱託魔導師1人、そして、民間協力者は、この事件を迅速に解決してもらう為、以下のメンバーに分かれてもらう」
ディスプレイには二つの班が表示されていた。
・事件に使われたデバイスの探索及び、過去の事件及び、被害のあった次元世界及び、局員への聞き込み。
・第96管理外世界での現地対応及び、犯人グループの探索と確保を主体とした、現地組
「なお、今回、リミエッタ執務官補佐と僕は現地組の指揮に当たる。情報探索・捜査組はアースラの新装備及び、動けない間は、ユーノ・スクライアと一緒に無限書庫で過去の闇の書事件の情報を精査していてくれ」
「「「はいっ!」」」
「うん。それでは、これより、本日只今をもって、アースラは闇の書事件捜査を開始とする。艦長不在ではあるが、迅速な解決と犯人逮捕に全力を注ぐよう、各人、心してかかるように」
「「「了解ッ!」」」
クロノの言葉にアースラスタッフが返事をする。その中には勿論、なのはとフェイトの声もある。さくらは、その気迫に気圧され、あやー、と声を上げる。知世はそれを微笑ましげに眺め、小狼は相変わらずの仏頂面で話を聞いていた。
そんなとき、突如、会議室に通信が入った。
「こちら、武装隊!現在、B9地区に結界が張られましたッ!」
その言葉にクロノのは涼しげな顔で立ち上がると、想也を見る。想也はクロノの自然の意図に気付いたのか、既に立ち上がり、ウォーミングアップを始めていた。
「わかってるよ。クロノ。なのはとフェイトのデバイスのフルコートが終わるまで、中で時間を稼ぐ!武装隊は?」
「転送ポートから現地へ転送され、現在は、結界破壊に専念しているとのこと。現状維持の指示を出してます!」
想也の問いにアレックスがスラスラと答える。それに対して想也は頷くと、エクシアスをその手に握る。
「想也。あくまで、足止めで構わない。一人でー
「俺も行くぞ」
「まて!君はみんかんー
静かにそう言って想也の隣に降り立つ小狼。それにクロノが苦い表情を浮かべて引き止めようとするが、小狼はそれを無視し、想也に話しかける。
「立花。確認したいことがある。俺も一緒に行くぞ」
「そう……どうぞご随意に」
「あ……私も行く!」
「よし!……じゃあ……っ!」
突然、ブザーが鳴り響いた。それは、緊急事態を告げる警告音だった。クロノがジェスチャーで現地の映像をサブからメイン画面に切り替える。そこには、鮮血を吹き出して、落ちてゆく武装隊の面々が映っていた。その中心では、狂気の笑みと笑い声をあげて舞い踊る、祭司装束に身を包んだ少女が血に染まった大きな鉄扇を手に、舞い踊っていた。それを見て、小狼の声が震える。
「……桃花(タオファ)……アイツ!」
それは怒りで震えているようだった。想也はそれを見て、冷静にクロノに進言する。
「クロノ、あの血塗れの鉄扇少女は小狼の知り合いみたいだから、小狼が引きつけて……他の騎士はおれとさくらで引き受ける!」
「ああ……構わない!」
「頑張る!」
「頼むぞ……想也」
クロノは了承するように深く頷き、去り際にそう言葉を口にする。想也は背中越しにサムズアップをすると、光の中に消えた。
琥珀色の結界の中で、シグナムは手にした獲物を構える。その表情はいつになく、苦しげな表情を浮かべている。よく見ると、その鎧は所々傷ついており、純白の柔肌には切り傷が付いていた。
その対面では質素な誂えながら、作りの良さが伺える着物を纏った長身の美女が立っていた。一見すると、涼やかな表情を浮かべているが、視線は射貫くようにシグナムを見ている。
「あなたが……闇の書の守護騎士のリーダーね?」
「ええ……そうです」
愛剣レバンティンを諸手で構え、シグナムを淡々と答える。その言葉の裏で、思考を張り巡らせ、現状把握をしている。
(くっ……結界を張り、魔導師を襲撃するつもりが……まさか、逆手に取られて、襲撃されるとは……)
ベルカ式の空間隔絶タイプの結界は、硬さに優れているため、内部及び外部から攻撃しても、並みの攻撃では、破壊が不可能に近い。それ故、魔導師を襲撃する際は、この結界を使い、逃げ道を無くしてから襲撃する。今回も結界内に捕らえ、その上で蒐集を行おうとした。だが、シグナムの待機していたポイントには、先客がいたのだ。それが、今戦っている、女性だった。
(魔力も強いが、これ程までの実力とは……)
ついでと思い、襲いかかったのがそもそもの間違いだった。その実力は、シグナムの予想以上で、殆どの攻撃をいなされ、その隙に魔力を纏った団扇で切り裂かれるという、一方的な展開だった。
「訪ねたいことがあります。11年前の闇の書事件の際、貴女方は襲った人物のことを覚えていますか……?」
女性がそう問いかけると、シグナムはふるふると首を振る。その答えに女性は目を伏せながら、そう、とだけ答えると、女性は団扇を帯に挟み、静かに溜息をついた。
「闇の書の防衛プログラム……守護騎士ヴォルケンリッター……11年前にも、剣を交えましたが、その時は誰かの意思に乗っ取って、その背後に感じられたのに、今はそれを感じない。何故でしょうか?」
「11年前?それに、以前とは?」
シグナムが女性の言葉に疑問を感じた瞬間、頭の中に直接声が響き渡る。
《シグナム!ボサッとしてんじゃねぇっ!》
その念話と共にヴィータが空中へ現れる。その手に握られた鉄槌が浮かぶ鉄球を勢いよく打ち出した。
「燃えて消えちまえっ!」
爆発と同時に女性の周囲が燃焼する。その大火力の攻撃に流石に女性もやられてしまった、もしくは、反撃不可能な怪我を負わせたと思ったのだろう。シグナムは、レバンティンを納刀し、ヴィータはグラーフアイゼンを肩に担いだ。
「珍しいじゃねーか。おまえが、ぼーっとしてるなんて。なんかあったのか?」
「あ、ああ……」
ヴィータが心配そうに声をかけてくる。それにシグナムは生返事で返した。
「やれたかな?」
「あの爆発だ。やれたはずだ……!?」
直後に異変に気づく。炎の中で微かに魔力反応を感知したのだ。
「!?ヴィータ!下に気をつけー
その時にはもう、遅かった。身体を薄紫色の光の輪に拘束され、身動きを取れなくされてしまっていた。それに驚いていると、すさまじい風と共に眼下の炎が吹き散らされていく。そこにあったのは、風の盾を身に纏う女性と、甲冑姿の少年。
「ふぅ……危ない危ない。まさか、炎の中に転送されるなんて……ま、いいや」
浮かぶ少年はそう言うと、その手に弓を構え、シグナムとヴィータに向ける。少年の周囲に七つの魔力スフィアが回りながら展開される。
「悪いけど、お話し、落としてから聞かせて貰う!」
魔力スフィアが少年の周りを回転し、手にした弓には魔力がチャージされてゆく。シグナムはバインドを破壊するため、その身に鎧を纏う。
「くっ……!ならば!」
《パンツァーガイストッ!》
赤紫色の光を纏い、バインドに罅を入れると、急いでレバンティンを抜刀しながら、ヴィータの前に飛び出す。逃げる暇はない。それ故にシグナムは少年の攻撃を切り裂いてしまおうと考えたのだ。
「行くぞレバンティン!」
《エクスプロージョン!》
その声に応じ、レバンティンはその身に炎を纏う。
その下で少年は弓弦を極限まで引き、グリップのトリガーを引く。
「シューティングスター……」
その瞬間、魔力スフィアから、無数の魔力弾が放たれる。それらは、寸分違わずシグナムめがけて空を駆け抜ける。
シグナムはそれらをシュランゲフォルムにしたレバンティンで弾く。数発は誘導弾のようで、刀身をすり抜けるようにシグナムを襲う。それは対した威力ではないため、耐えることができた。
「この程度で!!」
「ブラストッ!」
少年の叫び声が響き渡る。その瞬間、弓弦がその手から離れた。直後、鏃の先端から光が放たれる。それは真っ直ぐシグナムの胸めがけて襲いかかる。
光がシグナムを包み込んだ。