カードキャプターさくら&リリカルなのはA's〜Love in their hearts〜   作:1202155@

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知世ちゃんの気持ちがわかる方、感想を宜しくお願いします(*^^*)


それは、心に小さく刺さったトゲ

黄金の風が管理局の転送ゲートを輝かせた。その光と共に降り立ったのは、さくら達一行だ。その光が止むと、さくらは安堵したように溜息をついた。その横に小狼と知世が心配そうに彼女の肩を支えた。

 

「大丈夫ですか?さくらちゃん?」

「無事か!?さくら」

「うん……大丈夫……かな?ちょっと使いすぎたかも……」

 

若干、ふらふらした足取りのさくら。無理もない。並みの魔導師では倒れてもおかしく無い程の転送距離を初めてでやってのけたのだから。すると、そんな彼女に高町なのはが、手を握った。もう片方の手をフェイト・テスタロッサが。その行動に三人が首を傾げていると、なのはが朗らかに理由を説明した。

 

「魔導師はデバイスが無いと、手を握って魔力を回復するんだよ」

「だから、さくらも私達の魔力で回復するかも……ね?」

 

そう言って、二人は頷くと、目を瞑る。デバイスが無い為、細かな制御は自分たちで行わないといけない。下手に大きな魔力を流し込めば、さくらの手が壊れてしまう。最悪、二度と使えなくなるだろう。魔力を最も放出しやすく、吸収しやすい掌といえど、その魔力を放出するためのリンカーコアから流れるラインドライブはとても細い。それら一つ一つに魔力を流し込むのは、至難の技。受け渡す方は細心の注意を払わないといけない。

 

「くっ……!」

「ふっ……!」

「凄いな……」

 

札による多彩な魔力変換攻撃を得意とする小狼にとって、魔力の精密作業は最も重要だ。事実、彼は魔力制御と精密操作は最も得意としてる。そんな彼が、凄いと呟いた。その理由は莫大な魔力を上手く制御しているからだ。なのはの方は、魔力を細くし、持続させており、フェイトの方は魔力を圧縮させ、球体状にして、それぞれ、送っている。この運用方法は自分でも無理だ、と小狼は思った。

 

そうこうしていると、着いて早々、手続きをしに消えた想也が戻ってきた。手にはチケットを握っている。不思議そうな表情で駆け寄ると、その理由を小狼に訊ねて来た。小狼が答えると、想也は目を丸くして、なのはとフェイトの手を掴んだ。集中していた彼女達は、驚いた様子で彼を見る。そんな彼女達に想也は優しく諭した。

 

「おいおい。さくらの魔力はお前達の魔力二人足しても、賄えないぐらいデカいんだぞ?それに、こいつらの場合は、使う魔力の根幹が違うから、無駄とは言わないけど、少しなぁ……」

「え?そうなの!?」

「まぁ、死ぬことも、悪くなるわけもない。大丈夫さ。……小狼?」

 

突然名前を呼ばれ、小狼が首を傾げながら隣にやって来た。

 

「こいつの手を握ってやってくれ」

「え?それは……」

「まぁまぁ。精神的な疲れは、精神的な癒しで回復されるもんさ……頑張れよ?少年」

「え?……っておい、ちょっと!?」

 

引き止めようとしたが、彼はヒラヒラと手を振り、なのはとフェイトとを引き連れ、どっかに行ってしまった。残された3人。小狼は顔を赤くしながら、さくらの手を握った。その様子を知世は、オホホホ、と笑いながらビデオカメラに撮影している。

 

「李君とさくらちゃんの貴重なラブシーン!お二人の結婚式で流すために撮りますわ!」

「撮るな!勘弁してくれ!」

「ほぇええ……小狼君の手、暖かいよぅ……」

「さ、さくらさん?声が……声が妙に色っぽいのは止めてくれる?」

「ふふふふ。小狼君を籠絡するさくらちゃん、素敵ですわ……!」

 

なお、知世の持つビデオカメラは想也が撮影用のインテリジェントデバイスとして創り出した、ハイエンド機だ。当然、他のデバイスに動画を送ることも、知世が手を掛けずとも、映像編集、BGM編集もこなしてしまう。想也曰く「知世の為の、さくら撮影用、デバイスだから….、TSDでよくね?」と名付けられた。

閑話休題

 

撮影大会はエイミィが来るまで続けられたとか……。

 

 

 

想也によって連れてこられたそこは、薄暗い研究室のような場所だった。その奥に緑色の髪をした眼鏡をかけた女性がレイジングハート、バルディッシュの浮かぶメンテナンスディスプレーを眺め、最終チェックを行っている、

 

「ここは、デバイス管理室。管理局のデバイスを治したり、改修したりする場所だよ」

 

なのはとフェイトは手短にそう説明されて、なるほど、と頷いた。確かに、精密機器がそこら彼処にズラリと並んでいる。

 

「マリエルの姉さん、どう?この子達は」

「あはは……なんとか、期日までに間に合ったよー……想也くんの提案書に書いてある通りの基礎フレームを組んだからねー。いやー、助かった……」

「これでも、デバイスマイスターの資格は持ってますし、頑丈かつ精密なデバイスは何にも替えられないですから」

「確かにね……。さて、君達が、なのはちゃんとフェイトちゃんかな?」

 

そう尋ねられ、なのはとフェイトは元気よく返事をする。それを聞いたマリエルは和かに自己紹介をする。

 

「管理局技術部のマリエル・アテンザです。主にデバイスの整備や改修を担当してます。それで、今回君達のデバイスを担当したんだけど……」

 

そう言って、マリエルは2人に紙を渡した。その紙には『デバイス仕様書』とかかれていた。

 

「口頭では大まかなことしか話さないから、細々したことについては、その紙を読んでもらえるとわかるよ。それで、君達のデバイスだけど……」

 

そう言ってマリエルは空間投影ディスプレイに2人のデバイスの使用書を映した。

 

【レイジングハート】

起動コード:エクセリオン

使用:中・長距離・弾・砲撃型デバイス

モード:アクセル、バスター、ライザー、エクセリオン

 

【バルディッシュ】

起動コード:アサルト

使用:全距離対応型・対要塞・攻略デバイス

モード:ハルバード、ハーケン・サイズ、シザース、ザンバー

 

これを見て、2人は目を丸くする。各モードについては、概ねそのままだったが、そのスペックが改修前よりも高くなっているのだ。そのスペック差は凡そ3倍。レイジングハートに至っては、それ以上とも言える。

 

「元々、バルディッシュはフェイトちゃんの個人使用限定で作られたワンオフ機で、且つ、最新型のインテリジェントデバイスだからある程度、基礎フレームを改修出来るから、問題は無かったんだけど、レイジングハートは、最初期のインテリジェントデバイスだから、新システムを組み込むには無理だったの。それに、歴代の使用者がちゃんとした整備やオーバーホールをしなかった所為で、自己修復でも快復不能なほど、フレーム自体にガタが来てたの。そこで」

 

そこまで、話すと、マリエルはディスプレイにレイジングハートを映した。

 

「考案段階だったけど、想也くんの考案した新型の追加フレームを組み込んで、完全になのはちゃんが扱えるように造り変えたの」

「え?今まではどうして……」

「えーと、今までのレイジングハートはなのはちゃんの戦闘スタイルに合わせて複数のモードから、最適なものを選んで戦ってたの」

「そうだったんですか……それじゃあ新しいレイジングハートはもしかして……」

「砲撃・射撃以外の全部のシステムの消去をして、なのはの個人使用限定で、その戦闘スタイルを元に組み直した各モード。そして、なのはの今の肉体に負荷をかけない程度の最強装備。それが、お前の新しい相棒だよ」

 

なのはの言葉を引き継いで、そう話した想也がフェイトとなのはにそれぞれの愛機を託す。それぞれの愛機はネックレスとペンダントの姿こそ変わらないものの、その形は可愛く、かっこよくなっていた。

 

「わぁ……!」

「バルディッシュ!カッコいい!」

 

2人が感嘆の呟きを零す。そんな2人にマリエルは、ごめんね、と言って、2人を再び注目させる。

 

「新システムについて説明するね?今回、搭載したのは、CVK792……ベルカ式カートリッジシステム」

「ベルカ……確か、あの剣士の女の人が言ってた!」

 

なのはが思い出したように、ポンと手を叩いた。それにマリエルが頷くと、ベルカ式の魔法発動プロセスを説明し始めた。

 

「魔力を圧縮させた弾丸を炸薬させることで、瞬間的な魔力出力や魔力強化を行うことが出来る魔法だよ。だから、今までよりもスムーズに魔法が使えるけど、当然、術者とデバイスに相当不可がかかる。だから、二人とも、くれぐれも無茶しないように……ね?」

 

それを聞いて2人はゆっくり頷く。

 

「さて……それじゃあ、アースラに向かうとしますか」

 

そう言うと想也はなのはとフェイトを伴って、外に出て行った。

残されたマリエルは、はぁ、と溜息をつくと、机の上にドサッと倒れた。

 

「やーっと、溜まってたお仕事が終わったよー……あとは、長期観察のコレのレポートを纏めれば終わりかな……」

 

そういったマリエルの手に握られていたのは、漆黒の錠前。一切の光も寄せ付けないほど、光沢の無いその錠前には、金色の魔法陣と、月と太陽のレリーフが刻み込まれていた。それは、マリエルの手の中で静かに刻が来ることを待ち望んでいた……。

 

 

 

 

次元航行艦アースラ。数ある管理局次元航行艦の中で、最も優秀な局員もが集まる、ツワモノ揃いの艦船として有名な艦だ。その艦は現在、長期航行の任務から帰り、本局のセントラル・ドッグに係留され、各部の補修と点検が行われている状態だった。

それを見下ろすようにある、セントラル・ドッグ展望ブロックには、小狼、知世の姿があった。先程のやり取り取りの後で、アースラクルーの一人、エイミィに声を掛けられた三人は、彼女の案内のもと、管理局本局を見学。現在は、この展望ブロックでアースラのことについて、教えて貰った後だった。

 

「しかし……魔法と聞いて、俺は呪術的なことだったり、不可解な現象ばっかりを想像してた……実際、俺もそう言った類の魔法を使ってるしな。だが、高町やテスタロッサの使う魔法……いや、魔導は、なんというか……科学的だな」

 

小狼は腕を組みながら、誰に語りかけるわけでもなく、独り言ちた。それは、どこか、自分の使う魔法が古臭く感じたからだ。すると、それに対し、知世が仕方ありませんわ、と悲しげに答えた。

 

「どんな技術も、何れは機械がどうにかしてしまいますわ。李くんの使うお札も魔法を効率良く使おうと試行錯誤した結果でしょうし……元来、人は生活を豊かにしようとして、生み出されたのが科学でその結果の機械ですから……魔法も当然、そうなるのかもしれません……」

 

その言葉に小狼は何も答えず、ただ、渡されたパンフレットを眺める。そこに書いてある標語を見て、薄ら寒くなった。その感情を見せぬように、小狼は常の仏頂面で、階下のアースラを眺める。

 

「誰もが魔法が使える世界……本当に幸せなんでしょうか?」

「さぁ……な」

 

魔法が使える=幸せ

 

その方程式が罷り通るとは小狼も知世も思っていない。それは、最悪で最高の方程式を身を持って体験してきたからこそ、言えることだ。

 

強い魔法が使える=それだけ、自分の身に降りかかる災厄は大きい=しかし、同時に得るものが大きい

 

この世界でも、もしかしたら、その方程式が罷り通っているかもしれない。

自分やさくらはまだ幸せだ。何せ、たった一人の男の人掌の上で、魔法を使う意味とその大切さ、そして、人を想う大切さを学べたのだから。

 

「……俺たちがそれを考えたところで、どうにもならない気がするが……」

「でも、考えることは大切ですわ。考えるのを止めたら、人は止まってしまいますわ」

 

そう言うと知世はエイミィに入れてもらったインスタントティーを静かに飲み干した。それは、この湿っぽい話を終わりにする合図のように。それを機敏に察知した小狼はほぅ、と溜息をついた。

 

「ふふ。李くんは、女の子の扱いがお上手ですわ。お姉さんがいるからでしょうか?」

 

からかうように、だが、しっかりと褒める知世。小狼は呆れたように頬を掻きながら、ぶっきらぼうに答えた。

 

「さ、散々、姉上や苺鈴に特訓させられたからな。この数ヶ月間」

「ふふふ。特訓でどうこうなるわけではありませんわ。元々、李くんがちゃんと人に気遣いと配慮が出来る証拠ですわ」

「だと……いいがな」

 

小狼はそう言うと、明後日の方向を向く。それは、さくら関係で何かあることを知世は感じ取った。辺りを見渡し、誰も来ないことを確認すると、その内容を話すように要求する。

小狼は仕方なさそうに、話した。

 

「いやぁ……その……女のお前に話すのもアレなんだが……さくらと未だに……キスが出来なくてな……」

「………その、聞いてしまって申し訳ないですわ」

 

内容が内容の為、流石の知世も答えられなかった。女性の心、況してやさくらの思考パターンだったり、配慮なら兎も角、こんな込み入った話は流石に予想していなかったのか、面を喰らうと同時に、珍しく顔を赤くした。

そんな中で、知世はふと、思ったのだ。

 

(自分はこのまま、二人の間にいていいのか……と)

 

 

 

 


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