ガンダムSEEDーカズイ奮闘物語ー 作:SS好きのヨーソロー
崩れ落ちるユーラシアの連合施設、アルテミスの傘から脱出したアークエンジェル。
メビウス・ゼロから降り、見た景色はなかなかに珍妙な光景だった。
「もう!!本当!なんなのよあの地球連合の兵士!ありえない!ほんとうにありえない!!」
なんと、ガチおこフレイ・アルスターが地団駄を踏んでいる姿だった。
・・・いやいや、本当にこれどういう状況?
「・・・マードック曹長、これはどういうことです?」
「あぁ、あの嬢ちゃんか?無理もねえだろうさ、なんだってアルテミスでの地球連合軍の振る舞いを見たら誰だって怒り心頭、ってなるはずだ。
嬢ちゃんは人一倍それを表に出してる、って感じだろうな」
「・・・あぁ、ああ・・・まあ、いや、うん・・・まあ、確かになぁ」
頭を抱える。フレイの気持ちは全く理解できる、その通りすぎる。
「あ!カズイ!お帰りなさい!」
「ああ、ただいまフレイ、荒れてるな」
「当然よ!ミリアリアの腕掴んだり民間人に銃向けたりキラに敵対しようとしたり!ほんと!許せないわ!くたばって当然なのよ!バーカバーカ!!」
ついには後方、アルテミスがあった方向へ中指を立てながら暴れている。
「おうちょっと待って落ち着いてくれフレイ!?お嬢様キャラが粉々に壊れてるから!」
そこまで振り切って暴れられるとなにも言えなくなる。
「・・・あはは、僕たちのために怒ってくれてありがとうフレイ」
「いいのよキラ。というか聞いてよ!コーディネーターの悪口言われたのよ!?ありえなくない?ラスティだって艦の仕事手伝ってるのに!」
「それはここが特殊なだけだよ、俺は一応捕虜の扱いだからな。ナタルさんもマリューさんも仕方がなしに、って感じだし」
「まあ、人手もそうだけど色々足りてないからなぁ、この船・・・」
そう、元々アルテミスに寄港した理由はザフトの攻撃を防ぐために加え、必要な物資などの調達が主な理由だった。
しかしクズが担当していたため無論そんな余裕はなく、ただただ不快な思いをして出ていったのだった。
「本当にアルテミスの奴らクソだなぁ!?」
考え直したら普通にヤバい奴らだ。俺も暴れながら中指を立てよう。
「・・・し、死者への冒涜すぎる」
「不謹慎なのに動きが面白えなこいつら」
「フレイに変な動き教えるのやめてくれないかなぁ・・・」
「元々やり始めたのフレイだよ?」
「・・・Oh、なんてこったい」
真面目な話、アークエンジェルは本格的に不足しているものがある、それはやはり水である。
不足しちゃいけないものが不足してます、人間が死んでしまうものですこれ。
確か食事は取らなくてもそこそこ生きれるが、水はすぐに死ぬらしい。まあ仕方がないことだ。
「水ぅ・・・水ぅ・・・水をくれえ、水をくれぇ・・・・・・」
「トール、やめなよ。そのネタ洒落にならないよ」
「ネタじゃねーよ!マジで水が足りねえんだよ!」
「・・・はあ、まだ俺が持ってきた水があるから壊滅的ではないが、早いところ補給を済ませたいところだな」
「ほんと、水がないのは辛いよなぁ」
すると、サイがフレイの横に座る、けどフレイが避ける。
またサイが近づく、けどまたフレイが避ける。
「・・・どうしたの?」
「・・・水制限で、シャワーだって浴びれてないから、その・・・」
「あはは、そんなことないのに」
「おいそこ、イチャイチャだったらよそでやってくれないか。砂糖ゲロるぞ」
「い、いちゃいちゃなんてっ!!」
「それにフレイ、もし匂いが気になるなら俺が使ってる香水あげるよ」
「え、いいの?」
「いいよ、俺が使っても似合わないしな」
「・・・まあ、カズイだしな」
「・・・カズイだもんね」
「おいそこのリア充、喧嘩売ってんのか」
「もう、みんななにしてんのさ」
「おぉキラ!非リア充仲間!彼女いない仲間・・・やっぱお前敵だイケメンがよぉ!!」
「本当にどうしたのさカズイ!?」
「気にするな、単なる情緒不安定だ。・・・ストライクの整備終わったのか?」
「なんとかね。・・・にしても、大変だよ本当に。パーツ洗浄機もまともに使えないからさ」
「ああ、MSは特にパーツの消耗激しいもんな」
「そういうカズイこそ、メビウス・ゼロの整備大変だったでしょ。無茶苦茶な使い方するもん」
「あぁ、リニアカノンホームランショットな。マードック曹長に怒られたし、フラガ大尉も頭抱えてたよ。
あれ結構面白いんだけどなぁ、相手はそんなの予想してないから隙をめっちゃ作れるし」
「整備士泣かせだけどね?」
「返す言葉も滅相もございません・・・」
頭の中のマードック曹長のガチのため息とフラガ大尉のもう手遅れだってため息が心をグサグサ突き刺してくる。
しかし、本当にこの物資不足はどうしたものかねえ・・・。
アークエンジェルは出航初回から激戦続きで常になにかしらと戦うという状況が続いていた。故に時間が空くということが滅多に無くやるべきことに集中できなかったのだ。
ただ、ザフトの戦艦はこちらを見失ったらしくしばらく急な戦闘はないとのこと。なので俺はキラからもらったデータでシミュレーションを改造していた。
その名も、ザフニックフロント改だ。
新しくデュエル、ブリッツ、イージスの機体が入っている。
試しにやってみよう、と思い起動すると開始3秒で光の巨砲にその身を焼かれた。
「・・・スキュラってこんなに怖いんだな」
これが実戦ならおむつが大洪水になっていただろう、まあ多分その前にコクピットごとビーフシチューになるけど。グロテスクもいいところである。
そこから二時間、俺はただひたすらにイージスの駆るスキュラから逃げるという訳のわからない鍛錬を行っていた。
ちなみに、突如呼ばれブリッジに行った俺の顔を見てヒッ、と怯えの声が出るくらいには死んでいたらしい。
「ひっ!?・・・だ、大丈夫かカズイ・バスカーク?」
バジルール少尉がすごい怯えてた。
「・・・イージス怖い、イージス怖い、イージス怖い」
「本当になにがあったのだ!?」
「スキュラ怖いスキュラ怖いスキュラ怖いぃ!!」
「・・・二時間GAT-X303イージスのスキュラを連発するとかいう馬鹿げたシミュレーションで鬼ごっこしてたんだってよ」
フラガ大尉はやれやれ、こいつは頭がおかしいやつだぜ。と言いながらバジルール少尉に事情を説明する。その間俺はスキュラ怖いと叫び続ける。
本当に怖かったんだよ、あの光。トラウマなるわあんなん
「え、えぇ?・・・しかし、カズイ少年がこのままだと話にならんな・・・」
「・・・少尉、こうしたら多分元気出るぜ、カズイ」
ゴニョゴニョと耳元で何かを呟くフラガ大尉
「え、えっ!?な、ななな何を言っているのですフラガ大尉!?///」
「ほらほらー、早くしないと話が進まないぜー?」
「くっ!!・・・は、腹を括るしかないのか。
か、カズイ少年?大丈夫か?」
バジルール少尉が心配そうに声をかけてくれる。
「イージス怖い・・・」
「・・・んんっ!!・・・よ、よーしよーし。よく頑張ったな。えらい、えらいぞー・・・///」
優しく、包まれ頭を撫でられる。
柔らかい感覚が頭に広がる。
これは、これは!!これはまさしく!!
「イエスッ!!ナイスオッパ「やめんか!///」あべし!!」
ばちぃん!!とすごい大きい音が広がり・・・俺の頬は、真っ赤に染まり上がった。
ひとこと言おう、女性のビンタは何物にも勝らないほどただひたすらにクソ痛いものなのである。
「おー・・・言い出しっぺは俺だけど、なんていうかどんまいだな。綺麗な紅葉柄だ」
「やかましいわ大尉、泣きますよ」
「か、カズイくんは前も私のことぐ、グラマラス・・・っていったし、そっちの方が好きなのかしら・・・あ、いやカズイくんの趣味嗜好を否定するつもりはないのよ!?」
ラミアス大尉は身体を守りながら尊重してると言ってくれる。いや俺別にマジな目で見てませんから・・・
「大尉、掘り返さないでください。墓に埋まりたくなります」
「ま、全く、馬鹿者!」
「顔赤くしながら言われると恥ずかしいです、いろいろ」
おふざけな空気になったが、しばらくして話は物資のことになった。
「・・・さて、物資不足が問題になっている。特に足りないのが水だ」
「・・・そこで、可能性の一つとして出たのがデブリベルトなんだ」
デブリベルト、そこは人類が宇宙進出とともに放棄してきたゴミの漂流地点だ。
「・・・デブリ、ベルト・・・そこから物資を頂戴するんですか?」
「・・・まあそういうことになるな」
カレッジ生とラスティが集められ説明を聞いているがやはりいい顔はしていない。
「・・・そんな、こんなことって」
「・・・させたくは無いのだがな、ここあたりでしか補給できる方法がなく」
「とりあえずは出撃です。一体なにがどれくらいあるのかは調べないと始まらないですよ」
俺の一声で調査が進み、その結果驚愕の事実を見つけることができた。
それは、ユニウスセブン。
血のバレンタインと呼ばれる悲劇の事件、それが起きてしまった現場だったのだ。
粉々に砕け散った大地、巨大な氷の数々。
極め付けは、空気がなくなり綺麗な状態で残されてしまった、遺体の数々。
それら一つ一つはどれも良心を痛めつけるには十分なものだった。
報告をするために一度アークエンジェルに戻る。上官らの顔色もかなり悪い
「・・・ラミアス艦長、この作戦はやはり活動する人間を厳選するべきです。
流石に、こんな光景あまり気持ち良いものではありません。
正直、俺も・・・震えが止まりません」
逃げ惑う姿で固まった住人、子供を抱え走る親子。
これほどまでに精神的苦痛が与えられるとは思っても見なかったのだ。
アニメを見ていた時は俺だったらなにも思わずにできるけどなー、なんて呑気なことを考えていたけれども、こんな現実は耐えられない。
現実はこうも悲惨だったのか・・・・・・
「・・・カズイ」
「ラスティ、君こそ無理するな。・・・ここは君にとってもある意味関わりのある場所だろ?」
「元々血のバレンタインで壊されたユニウスセブンの記事を読んで入隊したんだ。
だから俺は連合に恨みを持ってたんだ。
けど、実際お前たちと関わってきてから連合のイメージも変わったよ。連合にもいい人はたくさんいるってことを学べたさ。
・・・戦争は、なにを産んでなにを残していくんだろうな、人々の幸せを、人々の命をいとも簡単に奪い去って・・・将来の夢もなにも、ひったくれない。これが現実、なんだよな」
ラスティが、そっと地面を見下ろした。
その様子が戦争というものの悲痛さを、物語っていたのだった。
「ラスティ・・・・・・」
「・・・ありがとう、カズイ。俺を気遣ってくれたんだろ?だけど俺はやるよ。やらないといけないんだ。
生き残るために、俺は同胞の力を借りなきゃいけない。
ザフトと敵対するというのは辛いことだけど、それよりも俺は・・・明日を、生き残りたいよ」
ラスティは生きたいと、そう言った。生きていけば新しい選択肢だって出てくる。
今は、生き残らなければならないんだ。
「・・・俺たちが向き合わないわけいかないよな」
「大尉、僕たちもやります、やらせてください!」
「・・・みんな、ありがとう」
事実物資が見つかったことは嬉しいが、内面は辛いという感情もある。
その辛さを隠すように、艦長はにこりと微笑んだ。
そうなるのであれば、俺のやることは一つ。
「マードック曹長、手伝いをお願いしてもいいですか?」
「いいぞ、なにをするつもりだ?」
「俺たちの使ってきたトレーラー合体式のミストラルを分解してそれぞれ別のトレーラーにつなげ、単機連結トレーラーを3台用意したいんです」
「そういうことか、もちろんだ!さっさと作業するぞ!」
曹長らの協力でトレーラー3台を用意し、ミストラル単機を前方に連結する。
「トレーラー1、カズイ」
「トレーラー2、ラスティ」
「トレーラー3、サイ。・・・カズイ、フレイが協力したいと言っているんだが・・・」
「・・・フレイが?わかった、一応作業は重労働になる恐れがあるから怪我にだけ十分留意するよう伝えてくれ」
「わかってる、俺たちは二人でやるよ」
「了解だ!艦長、トレーラー組準備完了です」
「艦長、ミストラル単走組も準備完了です」
「こちらメビウス・ゼロ、フラガ機偵察護衛準備OKだぜ」
「こちらGAT-X105ストライク、ヤマト機、こちらも準備できました」
「了解、物資運搬用意始め!」
艦長指示で全機が氷や弾丸の輸送を開始する。
「キラ、フラガ大尉。もし何か敵影を確認したら一応報告を、俺たちはその周囲を避けます」
「おう、任せろカズイ!」
「うん、わかったよカズイ!気をつけてね!」
ということで二人に伝言も終えたのでトレーラーを発進させ、氷へと向かっていく。
トレーラーで氷の前に立つ。
ミストラルは氷を破壊しながら、トレーラーに詰め込んで行っている。
ある程度満タンになるとアークエンジェルに運び込み、また運搬に従事する、それの繰り返しだ。
しばらく活動を続けると突如、ストライクから通信がくる。
『前方500メートル、ジン長距離偵察複座型を一機確認。半径100メートル圏内に入らないでください!』
それは敵機発見の報告だった。
「了解!」
そう返答し、その場を離れる。しばらくすると、ビームライフルの音が鳴り爆発音が響く。倒したのだろう
しかし、キラの駆るストライク、その腕はわずかばかり震えていた。
「キラ、キラ?」
『へ!?あ、ああ。カズイ!もう大丈夫だよ!』
「ありがとう、だが君が大丈夫じゃない」
『そ、そんなことは・・・』
「無理をすることじゃないんだ。俺も未だに慣れないしな。人殺しなんてもの、慣れちゃいけないもんなんだから。艦長には俺からいうよ」
『・・・ごめん、ありがとう』
「艦長!キラが敵機を撃墜し少し精神的ショックを受けたみたいです、おそらく着艦するかと」
『・・・ええ、了解よ。やはり、堪えるわよね』
「あの音からして結構爆散したんでしょう。・・・俺も、まだ慣れませんし」
『・・・そんなもの、慣れるべきではないわ。作業もそろそろ終了だから、警戒しながら撤退しなさい』
「了解です!」
格納庫へ戻ると、なにやら騒がしくなっていた。
何事だ?と思い見てみると、なにやらポッドのようなものがあったのだ。
「・・・君はつくづく落とし物に縁があるみたいだな」
「またキラが何か拾ってきちゃったのか・・・ちゃんと育てないとダメって言ったでしょ」
「どこのお母さんだよ!?仕方がないだろう、見つけちゃったんだからさ」
「はいはい、とりあえず開けるぞ!」
マードック曹長の一声でポッドが開く、まず出てきたのはピンクのハロ(CV葛◯ミ◯ト)
そして、次に出てきたのがプラントの歌姫だった。
はーい胃薬のお時間ですよー(白目)