ガンダムSEEDーカズイ奮闘物語ー 作:SS好きのヨーソロー
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ものすごい衝撃が身体全身に走り、機体は宇宙へ放り出されてしまった。
宇宙空間、それは真っ暗闇。
その周囲を埋めていく残骸の数々はヘリオポリスという平和が一気に粉々に粉砕してしまったと言う現実を、否応にも自分に突きつけてくる。
「くそっ、くそっ!!・・・防げなかった、ヘリオポリスの崩壊を・・・!!」
苦渋の表情を浮かべながらも、レバーを引く。機体は損傷をしておらず、問題なく飛行できそうだ。
しばらくすると、通信が聞こえる。
『GAT-X105ストライク!キラ・ヤマト!TS-MA2mod.00メビウス・ゼロ!カズイ・バスカーク!応答しろ!繰り返す!』
どうやらナタル・バジルール少尉の通信だ。
『キラ・ヤマト!カズイ・バスカーク!大丈夫なら応答してくれ!』
『こちら。GAT-X105ストライク!キラ・ヤマト、無事です!』
「TS-MA2mod.00メビウス・ゼロ二号機、カズイ・バスカーク!無事です!おむつも濡らしてません!」
『なっ、や、やかましい!!』
通信の後ろでフラガ大尉が噴いていた。と言うかキラも噴くのやめろ。
『アークエンジェルの座標はわかるな?』
『はい、わかります』
『よろしい、なら帰投しろ!』
「了解、キラ・ヤマト、カズイ・バスカーク両二名、帰投します」
と、アークエンジェルに向かおうとした時だった。
『カズイ!あれ、ヘリオポリスの救命艇だ!』
「なんだって!?」
『中級救命艇と初級救命艇の二つが浮いてる!推進部が破損してる!』
「なんだって!?チッ、さっきの爆発で推進部が壊れたか、これじゃ多分救助隊が来るまで間に合わないな。
キラ、中級救命艇の方を保護、こっちは初級救命艇を保護する!」
『うん、わかった!』
キラはシュベルトゲベールをしまうと中級救命艇を手に持つ。
俺はガンバレルのサイドを展開し、救命艇を保護する。
帰投したところで、バジルール少尉が怒ったが、頭を抱えていたラミアス大尉が許可したのだろう。問題なく帰還できた。
救命艇を置き、メビウス・ゼロから降りるとストライクのコクピットあたりに上がる。
「キラ、大丈夫だったか」
「あ、ああ。・・・ヘリオポリスが、全部・・・」
「気にするな。あれはザフトの奴らがD装備なんてものを持ち出したからな。
っと、確かあの子って・・・」
「あっ・・・!!」
そこから出てきたのは、キラも俺もよく知る人だった。
特に俺はよく知っている、フレイ・アルスターだった。
一瞬トラウマが甦っちまったぜ全く!!
しかもひどいもので思い出したのがこれ。
「あんた!本気で戦ってないんでしょ!!(CV西川貴教)」
そのせいで腹筋が痛い。笑いそうで辛い。
あとはキラの唸り声。俺の唸り声より面白い。そりゃそうか。
本人も気がついたのかこちらへと近づく。あぁ、そう言えばキラは知ってるのか、友人がいたら抱きつきたくなるよな。
「貴方たち、サイの友人の!」
「ふ、フレイ!フレイ・アルスター!?」
「おっふ」
結果キラと俺両方に抱きついてきましたこの子。
やわらかい。どこがとは言わないけど非常に柔らかいデュフ。
っと、いかんいかん。
「何があったの?!なんで、ヘリオポリスが・・・なんで、地球軍が!」
「フレイ・アルスター。そのことについては後できちんと説明する。話し合いの場を設けてもいいかな?」
「ありがとう・・・・・・でも私、怖くて・・・一人、迷子になって・・・!!」
「フレイ!」
「無事だったの!」
「ジェシカ!ミーシャ!」
「・・・不幸中の幸いかこれ。2個目のポッドに乗ってたみたいだな」
「ありがとう!あなた、確か・・・・・・」
「フレイの婚約者の友達の・・・・・・」
「カズイ、カズイ・バスカークだ。サイとはよく仲良くさせてもらっている」
すると、なんと言うことか。見知った顔をもう一人見つけたのだ。
「ふむ、君がポッドを回収したのか。ご苦労」
カトウ教授、再び。
「まさか、カトウ教授が避難しているとは」
カトウ教授の手を引き、ポッドから下す。
「教授!?」
「キラくんもいたのかね。案の定、か」
「本当だよ、全く・・・とりあえずラミアス大尉達に案内しないといけませんね。おそらく大尉達はブリッジの方に」
こちらです、といい目的地に案内する。
「カズイ・バスカークです!救命艇に乗っていた避難者のうち、一人をそちらへ会わせるべきと判断しつれてまいりました!」
「わかった、どうぞ」
「失礼します!」
「・・・おぉ、ラミアス大尉、バジルール少尉。ご無事で」
「ミスターカトウ、ご無事で何よりです」
「大尉、こちらの方が・・・」
「えぇ、共同開発に協力していたミスターカトウよ。ヘリオポリスではキラくん達工科カレッジの教授を務めていたの」
「キラにOSを作らせていたゴミクズなんですよ」
「口が悪くないかカズイ君」
「事実だろ教授。その結果こうなってるんですが?」
「・・・何も言えんな」
「まあ、教授だけじゃなくて地球連合自体がクソなんですけどね」
「目の前で中指を立てるな、しょっぴくぞ」
「拳銃向けますよ少尉」
「なんでお前持ってるんだよ」
「襲撃の時目の前で死んだ地球軍の!!兵士から拝借しました」
「こりゃあ、手厳しいねぇ」
「・・・まあ、今はこのアークエンジェルに乗ってるから助かってるのもあるし、協力しますけどね。・・・大尉、とりあえず進路って決まってるんですか?」
「・・・まだよ」
「艦長、私はアルテミスへの着艦を具申いたします」
アルテミス・・・アルテミス・・・傘のアルテミスか。
「傘のアルテミス・・・あの要塞か」
「知ってるのか?」
「ええ、周辺地図を知ってるだけです。・・・しかし、バジルール少尉、大丈夫でしょうか?」
「何がだ?」
「この船、およびMSに友軍識別コードってありますか?」
「私も同じことを心配していたわ」
「その心配もわかりますが今は悠長なことを話している場合ではないかと。現在我々は補給もままならない状態で脱出をしてしまいました。カズイ・バスカークの持ち込んだ避難物資も限りがありますし、補給はしておいた方が良いはずです。
向こうも事情を話せば理解してもらえるでしょう」
「・・・仕方がないわよね。他の宙域はきついか」
「しかし、簡単にそうこっちの思惑通りに行くかねぇ」
「ふふ、向こうとしては厄介なお荷物だものな。・・・はて、利用価値もあるだろうが」
「とりあえず。ミスターカトウはお休みください。
カズイ・バスカーク、ミスターカトウを案内してさしあげろ、構わないな」
「了解です。俺もそのまま休息に入っていいですか?」
「許可します」
「では失礼します!」
「・・・カトウ教授、後でキラにストライクのOSをコピーしてもらいます。教授は元のOSを少し改良してもらってもいいですか」
「ふふ、何やらなかなか面白いことを考えてそうだ。構わないとも。もちろん協力しよう」
みんなの元へ帰ると、何やら気まずい様子だった。
「・・・トール、何があった?」
「・・・実は、捕虜のラスティのことについてフレイが怒って」
「アンタ達の攻撃で私たちはこうなったのよ!?別に悪い話じゃないじゃない!!」
「・・・そうだったのか」
「すまない、カズイ。迷惑をかける」
「気にするな。今は君は軍則に則り捕虜だ。その扱いは変わらないよ。・・・とりあえずフレイ・アルスター」
「・・・何?」
「そのことについて詳しく説明をしたい。もしご迷惑でなければ二人で話をしたいのだが構わないだろうか?」
「・・・いいけど」
「ありがとう。感謝する。サイ、構わないな?」
「別に交友関係をとやかく言うことはないよ。・・・フレイのこと頼んだぞ」
「もちろんだ、任せられた」
フレイを連れ、近くの個室に入る。
「・・・よし、ラッキーだ。ポットがある。
フレイ、インスタントでよければ飲み物を入れるが、ミルクティーは飲めるかい?」
「ええ、好きよ」
「ならばよかった。これはラングドシャだ。有名店のものが手に入ってね。食べてくれ」
「あ、これ!気になっていたやつ」
「ほお、それはなんとも奇遇だ」
ふっ、と微笑みながらインスタンドでミルクティーを入れる。
カズイの顔でいれてるって想像したら笑うな。
おいお前笑うんじゃねえぞ!カズイの親に謝れ!(情緒不安定)
フレイの前にどうぞ、といいながらミルクティーを置く。
俺は一口、ブラックコーヒーを飲みながらゆっくりと口を開いた。
「・・・まあ、まず説明しよう。
地球連合軍とザフトが戦争をしているのは知っているね?」
「ええ、まあそりゃ。それが嫌でヘリオポリスにきたんだし」
「そうだ、俺もそれが理由だ。・・・さて、ザフトと連合軍、なぜ戦争が拮抗化しているのかわかるかな?」
「なぜって・・・・・・モビルスーツがないから?」
「ザッツライト。さすがお嬢様育ち、教育もしっかりとしているな」
「えへへ・・・って、それがどうしたの?」
「・・・さて、地球連合としてはザフトのジンには手痛くやられており、モビルスーツを開発しないといけないと言う考えに至った。
そこで彼らはヘリオポリスに目をつけたんだ。
ヘリオポリスは君も知っての通り資源採掘や工業系の技術、機械整備などが優れている。
連合としてはこれほどない優良物件だったんだ。
だから極秘でこの新造艦アークエンジェルとキラが乗っていたGAT-X105ストライク、他ザフトに強奪された機体を開発していたんだ。
ところがどっこい、ザフトの奴らも馬鹿じゃない。ヘリオポリスの中にスパイを紛れこませていたんだ。
その結果Gは奪取され、今こうなってしまった、ってわけ」
「っ・・・ザフトの!」
「連合もだよ。ザフトだけじゃない、俺たちは戦争に巻き込まれたんだ。
俺たちの敵は誰だ?コーディネーター?じゃあなんだ、俺たちのために戦ったキラはどうなる、ストライク、あの機体に乗って君を助けたキラは君にとっての敵か?」
「・・・そんなの、わからないわよ。コーディネーターは敵、としか学ばなかったんだから」
「フレイ、君の家庭環境に何かとやかく文句を言う権利は俺にはないし、そんなことをするつもりもない。
だがコーディネーター全てを悪だとは思わないでくれ。
それは抹殺、殺戮となんら変わらない」
「・・・それはそうかも、しれないけど」
「・・・・・・サイは俺の大切な友達なんだ。そんな友達の、こんな綺麗な女の子の手は殺戮に汚れるべきじゃない。
ほら、ミルクティーにお菓子、それの方がずっと似合ってるさ」
「・・・ふふ、カズイくんはイメージと違ったのね。もっと気の抜けた人だと思ってたけど」
「前までの俺だったら間違い無いよ。これは単なるイメージチェンジってところだからな。
どうだい、俺のイメージチェンジ」
「ええ、いいと思うわ」
「ふっ、そう言ってもらえて何よりだ。・・・俺はとりあえず機体の調整をしに行く」
「・・・気をつけてね」
「ありがとう、フレイ」
どう思ってもらえるかはわからない、だが時間をかける必要があるんだ。
フレイ・・・君に戦争はきっと、似合わないだろうから。
格納庫に到着し、メビウス・ゼロの調整をする。
するとちょうどフラガ大尉が入ってきていた
「カズイ、お前さっきの戦闘でやけに遅かったよな」
「それ、みんなも言ってましたけどなんなんですかね?ノロマノロマ言われててひどかったですよ。元々性能差あるんだし」
「それを踏まえても、だ。お前メビウス・ゼロの本来の力の半分も出てなかったぞ」
「え、どう言うことですか?」
「とりあえずお前OS俺に見せろ」
「了解です」
「・・・ふむふむ。って、なんじゃこりゃぁ!?!?」
「な、なんですかフラガ大尉!?」
「お前馬鹿じゃないのか!?この回路!本来の半分程度の力しか出せないぞこれ!!」
「えっ!?お、俺ちゃんとジンとメビウス・ゼロの性能差反映しましたよ!?メビウス・ゼロ5機分・・・」
「5機分になってねえよ!これじゃ10機分だ!!」
「え゛っ!?じ、10機分!?」
「逆にお前なんでこんなピーキーな設定でシミュレーションしまくったんだよ、意味あったのか」
「そ、そりゃ最初は負けましたよ。開始数秒で撃墜されましたし。
そこからなんとか練習して・・・」
「そりゃすぐ落ちる!それによく練習で乗りこなして見せたなお前!?」
「い、いや僕も今それ言われて驚きましたよ。じゃあ本来の推力なら逆に速すぎませんか?」
「お前が慣れてるだけで本来それが正しいんだよ・・・」
「うーん、しばらくはこれでいいかもしれないですね。僕がそのピーキー仕様に慣れてるのもあるし、何か危ない時に咄嗟に高機動になれる、でいいかな」
「まあお前がピーキー仕様を使い慣れてるならいいよ。・・・しっかし、本当に驚いたぜ。そんな性能を使いこなす奴がいるなんてな」
「俺的には正規の情報のつもりだったから俺まじ下手くそすぎ、って萎えてましたけどね」
「萎えられたら俺たちの立つ瀬がねえよ。・・・さて、そろそろ作戦説明しないとな」
俺とキラを呼ぶ声がアナウンスされ、キラが到着する。
「よし、説明するぞ!今回は俺が隠密行動をとる。アークエンジェルはデコイを撃ち込んで陽動するだろう、俺はその間に敵陣真っ直ぐに突っ込む」
「・・・俺とキラはとりあえずその間に注意を引きつけないといけないか。
・・・キラ、特に気をつけて行こう、奴らはジンをほぼ導入してるはず、だから次に来るとしたら・・・連合のMS達だ」
「お前も気をつけるんだぞ」
「もちろんです。俺はストレスを与えることを優先的に意識しますよ」
「ストレスだぁ?」
「えぇ、性能が向こうが勝るならこっちは嫌がらせ意識です。
キラはまあ、艦と自分の身を守ることを優先するべきだな。たぶん今回はエールストライカーってやつを使うがビームライフルが使えるようになる。しかしエネルギーは本体から補給することになってるから無駄撃ちはやめろよ」
「うん、わかった。気をつけるよ」
「うっし!キラ、宇宙戦だ。パイロットスーツに着替えるぞ」
「あ、うん!わかったよカズイ!」
キラと共に着替えに行く途中、トール達に出会った。
そしてなぜかフレイ・アルスターまでいたのだ。
「キラ!カズイ!」
「トール!それにみんなも!」
「フレイまで!?どうしたんだ!?」
「キラにばっか戦わせるわけにはいかないだろ?」
「・・・私は、まだコーディネーターに対する恨みがある。
けど、それだけじゃこの戦争のことはわからない。自分の置かれてる現状がわからない。だから今は、自分にできることをやりたいの。
それを、自分自身で探したいのよ」
「・・・みんな」
「・・・フレイ。大丈夫、君なら大丈夫だ。
なんたってサイがいるんだ、君たちは共に協力すればなんだってできるさ!
それに俺たちがついてる!このアークエンジェルは俺とキラ、そして大尉で守ってやるさ!」
「うん、僕も頑張るよ!」
お互い顔を見つめ、頷く。
「しっかし、制服はザフトの方がかっこいいよなー」
「そうか?俺は地球連合の方が好きだぜ、なんだかシュッとしてるから気が引き締まるよ。チャンドラさん、皆のことよろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ!」
部屋に入ると、ロッカーからパイロットスーツを手に取る。
キラは例の青いパイロットスーツ、そして俺は地球連合の一般兵の着る、オレンジ色の制服だ。
「あ、いい感じに気合い入ってんな」
「はい、・・・僕にできることを、やりたいです」
「・・・ま、女の子のために戦えるってのも役得でしょう」
にっ、と笑うとMSに搭乗する。
俺の発進担当はフレイだった
「フレイ!」
『・・・カズイ、気をつけてね』
「もちろんだ、今度はサイや皆も呼んでお菓子パーティでも開こう」
『ふふ、そう言うの憧れてた。・・・ふぅ。
カズイ・バスカーク!発進どうぞ!』
「メビウス・ゼロ二号機!カズイ・バスカーク!行きますッ!!」
俺は自分のやるべきことをやるために、迷わずレバーを引いたのだった。