ガンダムSEEDーカズイ奮闘物語ー   作:SS好きのヨーソロー

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PHASE 0 後編 始まりへのカウントダウン

カトウ教授と見つめあって、数分が経過している。

俺を吟味するかの如く、見つめてくるカトウ教授。

内心焦りを感じつつも、顔に出さずまっすぐに見つめ直す。

 

先に口を開いたのは、カトウ教授の方だった。

「フッ・・・カズイ・バスカーク、君は実に興味深い。この瞬間からキラ・ヤマトくんと同等・・・いいや、もしかしするとそれ以上に題材になるくらいには面白い少年だ」

「それこそ買い被りすぎです。俺はそんな人間じゃない」

「いいや、そんな人間だ。中立国に住む人間は誰彼構わず平和を口ずさむ。カレッジの学生も同じだ」

「平和は悪いことではありませんよ。それに俺もその平和ボケしている人間と同じですよ」

「・・・どうかな。君の発言ではナチュラルとコーディネーターの戦争にヘリオポリスも巻き込まれるようなことを述べているが」

「OSはおそらく軍事用だ。その時点で巻き込まれる可能性は十二分にあるでしょう?」

「それを頭ごなしには否定しない。むしろ悲観的に、前向きに捉えている」

「楽観視し何も起きないなんてこと、あり得ませんよ。そんな美味しい話や世界はない。可能性がある時点で命の危機です。ならばその対策をするのが人間でしょう?しかも、何とキラ・ヤマトくんと工科カレッジの教育者として権威あるカトウ教授の力を借りれるのかもしれないチャンス。これを逃す方がもったいない」

「・・・ふふふ、興味の絶えない少年だ。

機体データや情報の提示は快く快諾しよう。君のような若者を、私は探していた」

「買い被りすぎ、と言いたいところですが・・・やれるだけのことはやってみましょう。その方が、生き残る確率が上がりそうだ」

 

 

 

と言うわけでカトウ教授を味方につけることに成功したゾ!(白目)

後半テンションが上がって調子乗っちゃったけどやべえわよ。まさかのカトウ教授が仲間になっちゃったよ。

連絡先を手に入れたけど、これ役に立つんか?

まあいいか。

 

 

時間はちょうど昼頃だ、そろそろ行くとしよう。

「トール、ヤマトくん。そろそろ行こう」

「あ、OK!ミリアリアは駅前にいるってさ!」

「なら好都合!そのままタクシー拾って駅前まで行こう。

では教授、よろしくお願いします」

「うむ、悪いようにはしない。よろしく頼もう」

 

 

外に出ると、タクシーが来たので乗り込む。

タクシーが動き出ししばらくすると声を出したのはヤマトくんだ。

「ねぇカズイくん。さっき教授と何話してたの?」

「あぁ。・・・あー、ヤマトくん。俺のことは呼び捨てでいいぞ。俺もキラと呼んで良いか?」

「うん、もちろん!」

「ありがとうキラ。さっき教授と話していたのはモビルスーツのデータを見せて欲しいと頼んだんだ」

「も、モビルスーツ?」

「軍用も気になるが、民事用のパワーローダーも気になる。あとはそうだな、それを使ってシミュレーション機器を作りたいとも考えているよ」

「し、シミュレーション?」

「・・・ヘリオポリスは確かに中立だ。けれどその中立が絶対的なものでは無いだろう?確かにここを叩けば軍の上層部なんかは黙ってないかもしれないが、それすらを誤魔化せることができたらどうする?危ないのは自分の身だろ?」

「・・・そう、だけどさ。それでモビルスーツに乗ってどうするのさ、人と戦うの?」

「もし有事になったら、そうなるかもな」

「・・・戦争は、嫌だけどね」

「無論、俺だって好きじゃ無いさ。けれどね、キラ。

俺は君たちが不慮の事故に巻き込まれることを1番警戒している。

あり得ない話なのかもしれないが、君たちが巻き込まれることになるなら俺は迷わず銃を取るだろう」

「・・・何でそこまで優しくするの?」

「俺が君と友達になりたいと思ったからだ。俺は友達を守りたいと思っている。だからトールやミリアリア、サイを守れるように強くなりたいと思う。

それで俺は君と友達になりたいと思った。君は良い子だからきっと仲良くしてくれるだろ?なら友達だ。

友達ってことは、守りたい人ってことじゃないかな」

「・・・なんだか、カズイってイメージと違ったんだね」

「はは、まさかのキラにまでそう言われるとは・・・。たまにはこう言うイメージチェンジをしてみたいのさ」

「・・・ねぇ、カズイ。僕は君に何か手伝ってあげられることはある?」

「・・・いい、のか?」

「友達は守るべき人・・・友達なら、手伝うのに理由はいらないんでしょ?」

「・・・ははは、言われてしまったな。君が仲間についてくれると心強い!俺は今シミュレーション機器を作りたいと思っている。君にはそのOSを作ってもらいたくてさ。

君が手伝ってくれるなら、俺も君の課題を手伝うよ。教授も認めるだろう」

「うん、頑張ろうね!」

「おいおい、俺はいる場所ねえじゃねーかー!」

「あはは、悪い悪い。これについては後日個人で話すか」

「うん、そうだね。ごめんトール」

「いや、良いよ。キラがそんな嬉しそうな顔をするの、久しぶりに見たから」

「えぇ?そうかな?」

「だってずっと引きこもって機械いじってるじゃないか」

「うぐ、それはそうだけど・・・」

「お、トレーニングはいいぞ。軽いジョギングをするだけでも心身は癒されるし、結構おすすめだぜ?」

「朝日を浴びるのって、良いよなー」

「えー・・・めんどくさいよ」

「めんどくさがるなよそれは・・・」

苦笑いしつつも、駅前に着く。

こちらに気がついたのだろう、ミリアリアが手を振ってくる。

「ハーイ!今日はお招きありがとう!」

「やぁミリアリア、待たせて悪いな」

「いいえ、気にしてないわー。それでトールから聞いたけど美味しいものを食べさせてくれるんだって?」

「あぁ。とびきり美味いやつだ」

「えー、それは気になるわね。じゃあ行くとしますか!」

 

と言うわけでついた場所は、寿司屋だ。

「・・・えっと、ここ?」

「あぁ、寿司屋だ」

「スシ・・・あの生魚のやつでしょ?美味しいの?」

「あぁ、とてもうまいぞ」

「別に否定するわけじゃないけど、物珍しいからな・・・」

「あー、まあ確かにこんな中立国とかじゃ食べることもないもんな。寿司ってのは旧日本って国の料理だ。文化自体がオーブに広がっていてな。確かに生魚を食べる文化は珍しいかもしれないが、これがなかなかにうまいんだ」

「ま、まぁそんなにお薦めするなら食べてみるけどよ」

「まあ、前から気にはなってたし良い機会ね」

「寿司かぁ・・・初めて食べるなぁ」

 

ここにあるのは大手スシチェーン店。なんと文化は残っておりヘリオポリス支店があるようだ。流石だなス◯ロー。

 

 

「お、おいカズイ!この白いのは何だ!?」

「あぁ、それはイカだな」

「ねえカズイ、このブツブツしてるオレンジのやつは?」

「あぁそれはイクラと言ってだな、サーモンの卵のようなものだ。ご飯・・・寿司ではシャリと言うんだがそれを海苔で巻いて上に乗せて食べるんだ」

「わっ!何これ、辛い!」

「あー、それはわさびと言ってな、辛いのが美味いんだがつけすぎないほうがいいな。皿をこっちに。程よいくらいにわさびを入れてやるよ。

 

この量で醤油を混ぜると・・・・・・よし。これでいけるかな」

「あ、ほんとだ!美味しい!」

「はは、そうだろ?」

「ええ、しかもとても安いのね」

「いわゆる回転寿司というものだからな。ファストフード店の寿司バージョンってところだ」

最初にス◯ローを見た時は驚いたが、久しぶりに食べる寿司は美味い。それに何より彼らがとても美味しそうにするのが見ていて気持ちいいのだ。連れてきてよかったと心から思う。

 

「・・・でも、いいの?奢ってもらっちゃって」

「ん?あぁ、別にこれくらいは構わないさ。俺の目的はキラと仲良くなってご飯を食いたい、だったからな。何より美味しそうに食べていたし、気に入ってもらってなによりだ。また今度付き合ってくれよ?」

「ええ、もちろん。今度は私たちで奢るのもいいわね」

「お、それいいな!」

「うん、そうしよう!」

「ほぉ、そりゃ楽しみだ」

 

そんな何気ない会話をしながら帰宅、家に着くとキラに連絡を取る。

『キラ、教授からもらったデータがこれだ。

シミュレーション機器は自分で作るからOSを組み込んでもらえないか?』

『うん、わかったよ』

『あ、でもキラの予定と体調優先な。時間はかかってもいいから』

『気にしないで、休憩がてらにするから』

『すげえなそれ。休憩って何だっけ・・・』

さすがメカニックに興味のある人間である。休憩ではないんだがそれ。

あれか?ゲームと同じ感覚だとでもいうのだろうか?

 

 

 

そのやり取りから、二週間後。

キラはすでにそのOSを完成させており、現在ではシミュレーションとして起動開始している。

「さすがはキラ、仕事が早くて助かる」

シミュレーションコックピット内でキラに対する称賛の言葉を述べる。

MS操縦プログラムを搭載したシミュレーション機器。

イメージとしては戦場の絆というゲームがあるが、それの上位互換といったところだろうか?

それに、これにはMSや戦闘機のデータをそのまま入力している。さながらZGMF-1017 ジンやTS-MA2mod.00メビウスゼロを操縦する感覚だろう。

「・・・ジンは鹵獲するしか手に入る方法がないから、今はメビウス・ゼロの方に集中するか。それにもしかしたらミストラルがあるかもしれないしな」

MAW-01ミストラルとは、地球連合軍の量産型モビルアーマーだ。さしずめSEED界のボール的立ち位置のMAだが、このミストラル、使い勝手が地味にいいのだ。

上部と下部が分離可能で、ワイヤーが伸び搭載物を固定できる性能を持つ。

荷物の運搬輸送が比較的楽にできるのが利点だ。

「・・・唯一の問題点と言えば、装甲が不安なのと装備が脆弱なところか」

描写ではジンのスナイパーライフルが掠っていたが、あれは接続部分の固いところがたまたま掠っただけ。装甲にあたれば危険なのは事実だ。それに武器も四門の機関砲のみ。自衛のための装備と考えればわからなくもないが、モビルスーツを相手取るには不安要素でしかない。

「・・・もしミストラルを使用する際はスラスターの改造だな。出力を上げないと逃げもできない」

シミュレーションで操作をしながら気になった点をまとめていく。

 

まあ、まとめたと言っても現段階では勝手に調整なんてできないので不安要素を出していくだけだが。

「・・・メビウス・ゼロの問題点は後々でムウ・ラ・フラガ大尉の機体に組み込めるか。人員メンバーも変わらず、マードック曹長がいてくれれば助かるけど。

まあ、それに関しては後々アークエンジェルの中でキラの意見を聞けばいいか、今はそれよりも慣れることが優先だな」

という訳で、仮想敵を作り出す。

仮想敵の相手はザフト軍最初のMS、ZGMF-1017 ジンだ。

 

搭乗機はTS-MA2mod.00メビウス・ゼロ。

「カズイ・バスカーク!メビウス・ゼロ、出るぞ!なーんちゃって!」

そう言いながらスロットルを握りスラスターを起動する。

 

飛行開始と同時に銃撃で撃墜されました。

「・・・えっ?いや、まだ10秒も経ってないんですけど」

悲報、10秒も経たずに撃墜された件について。

カズイ・バスカーク戦死。

 

いやこれ笑えねえよ!!ピーキーすぎんだろ!!というかおかしいだろジン!強すぎんだろ!銃の弾速すぎやしませんかねぇ!?

たまたま、そうたまたまだ。偶然に決まってる。

 

二戦目、15秒で戦死。

 

やっぱこれたまたまじゃない!難しい!いや難しいとかいうレベルじゃない!!!!

あっ、これダメだ。全ステージ相手が連邦の白い悪魔的なジオニックフロントだ。

 

ザフト脅威のメカニズム(涙目)。

 

という訳で、ここから地獄が始まっていく。

 

「うわぁぁぁ!!回避間に合わねぇぇぇ!!」

「ちょ、まっぶつかるぁぁぁ!!!」

「アイエェェェ!!ナンデナンデ!!MA-M3 重斬刀ナンデナンデ!!!!」

「ガンバレルゥゥ!!!!そっちじゃねえよぉぉ!!」

「まってガンバレル巻きついた!動けねえ!待ってジンさんやめてぇぇ!?」

 

散々な結果になっていく。まあ仕方がない。もともとメビウス・ゼロは空間認識能力がないと難しいんだ、うん、だから・・・うん。

「あ、あぁ・・・うぁぁ・・・」

つい、アークエンジェルが撃たれそうになった時の声が出てしまった。何が難しいから仕方がないだよ。絶望感でしかねえよ。

 

一旦シミュレーションを終え、部屋に戻ると飲み物を飲む。

「・・・くそっ、難しい。ロボットの操縦、シミュレーションだとしてもあんなに難しいものなのか」

コーヒーを飲みながら、そう悪態をつく。

まさかあんなにも操縦が難しいとは思ってもみなかった。今、現実の壁にぶち当たった感覚だ。

「・・・チッ、ただでさえアークエンジェルは人手が足りなくてパイロットもキラとフラガ大尉しかいないんだぞ。援護ぐらいできる人がいないときついだろうが。それにSEEDの時のアークエンジェルの動きもなかなかに運がよかったところが多い。できることはやっておく必要があるんだ」

自分に言い聞かせる。難しいのは百も承知だ。けれど、自分はこれからの惨劇、そして地獄を知っている。

 

キラ・ヤマトの苦悩。

フレイ・アルスターの死。

トール・ケーニヒの戦死。

サイ・アーガイルの悲しみ。

そして、自身ことカズイ・バスカークの逃亡。

 

「・・・このままじゃ、ダメなんだ。俺は、このままじゃダメなんだ!!」

原作知識を教訓に、自身の訓練は、止まることを知らない。

 

 

始まりへのカウントダウンは、着々と進んでいた。

 


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