ガンダムSEEDーカズイ奮闘物語ー   作:SS好きのヨーソロー

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PHASE 15 降り立った地、想定外の邂逅

決死の地球降下作戦。

メネラオスの奮闘とアークエンジェルの耐久。

そして元赤服のラスティ・マッケンジーのおかげで避難艇は守り切ることができた。

 

そして、その後ラスティの乗るTS-MA2PTプロトタイプメビウスと俺のTS-MA2mod.00メビウス・ゼロ二号機は赤服のイザーク・ジュールのGAT-X102デュエル、ディアッカ・エルスマンのGAT-X103バスターを連れて地球を降下し切ったのだ。

 

灼熱にも似た熱さ。コクピットではひたすらに計器の異常を伝えるアラームが鳴り響いている。

機体温度はどんどん上昇していき、しまいに体感は猛烈な頭痛に見舞われる。

 

ナチュラルのカズイ・バスカークはコーディネーターであるキラ・ヤマトが苦しんだ痛みを無理やり耐え忍んでいたのであった。

 

 

 

 

 

「っ・・・うう・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・」

「おぉ、目覚めたかね?連合のシークレットルーキーくん」

耳に響くのは置鮎龍太郎ボイスである。

 

ん?置鮎龍太郎ボイス・・・・・・!?

「んえっ!?あ、アンドリュー・バルトフェルド!?」

思わずベッドから飛び降りてしまった。

「ほぉ、俺のことを知っているのか。・・・・・・というかよく苦しんでたのに一気に起きたな?」

苦笑いしながらマグカップを握る彼を見て、警戒するのは無理もない話だ。

「・・・無茶言わないでくださいよ。仕方ないでしょう、あんたが砂漠の虎なら・・・・・・ここレセップスじゃねえか!?がっつりザフトの勢力圏・・・しかも艦隊に降りちまった」

「はっはっは!それはなんとも大変だったな少年!まあ安心したまえ。今の君は捕虜に近い。コルシカ条約に則り安全は確保しよう」

そう、このアンドリュー・バルトフェルドさんは後の三隻同盟の重要キャラである。常識人枠、良い大人枠である。

「・・・あ、ありがとうございます・・・えっと・・・アンドリューさん」

「あー、気楽でかまわんぞ。カズイ・バスカークくん」

「・・・わかりました、バルトフェルドさん。

俺の他にデュエル、バスターのパイロット。そしてプロトタイプメビウス・・・紫の戦闘機のパイロットがいたはずなんですけど・・・」

「あぁ、赤服の少年たちか。彼らはこっちだ、来るといい」

そう言いながら歩き出すバルトフェルドさんの後ろをついていく。

 

とある部屋に入る、その中には原作キャラが集合していた。

「カズイ!大丈夫だったのか!」

「あぁ、なんとかな。ラスティこそ大丈夫そうでよかった」

「・・・・・・貴様がカズイ・バスカークか」

「・・・その声、あんたがイザーク・ジュールか」

「へぇ、お前さんがあのメビウス・ゼロのパイロットねぇ・・・」

「・・・まあな。あんたはディアッカ・エルスマン・・・でいいな」

原作キャラに邂逅した。ガンダムSEED好きとしては嬉しいことだが、ここでアウェーなのは俺だけである。

「・・・たしか、ラスティ・マッケンジーくんが元々地球連合軍捕虜扱いになっていた、と」

「・・・えぇ、俺はカズイに助けられましたから」

「なるほどねぇ・・・それで、ラスティくんはどうするのかな?君の選択としてはこのままザフトへ復帰することも可能だが・・・」

「復帰、ですか・・・俺は・・・」

悩んでいる様子のラスティ、気持ちはわかる。

元の居場所に戻れるかもしれないという安心感は凄まじい。戻りたくなるのもわからなくもない話だ。

「ラスティ、戻ってもいいんだぞ。アークエンジェルの奴らにはうまく誤魔化しておくからさ」

「・・・・・・ありがとうカズイ。けど、いいんだ。

 

バルトフェルド隊長、俺はこのまま地球連合軍の捕虜・・・ないしは地球連合軍に所属したいと考えています」

「・・・ふむ。それが君の答えか」

「なぜだラスティ!?忘れたのか、俺たちコーディネーターとナチュラルの戦争を!」

「なわけないだろうイザーク。・・・でもな、俺たちはヘリオポリスを壊したんだぞ」

「けどよラスティ!ヘリオポリスは・・・」

「軍事開発だろ?それは本当だった。

けど、あそこにいた中立の奴らはどうなるんだよ。俺たちが襲撃したせいで何人もが死んだんだぞ・・・」

「それ、は・・・」

「しかも、挙げ句の果てにはイザーク・・・お前が撃とうとした船がその民間人を連れた船だった!」

ラスティの声に、イザークは目を見開く。

「・・・本当・・・だったのか」

「ありゃりゃ、それが本当なら軍法会議物だなカズイくん」

「・・・まあ、もみ消せそうですけどね」

「も、もみ消す!?ザフトはそのようなことは・・・」

「・・・対象がイザークくんなのがタチが悪いところだな。

君はいわば赤服というエリートだ。エリートが謹慎とかなんとかになれば損害はでかい。

ヘリオポリスは軍事開発施設もあるわけだし言い逃れしようと思えば簡単にできると思うな」

「・・・・・・ちっ」

心当たりがあるのか、バツの悪い顔で舌打ちをしていた。

 

「・・・でもよー、もともとは血のバレンタインがあったからだぜ?」

「・・・・・・いや、うん。ディアッカくん・・・それは間違いなく地球連合軍が100%悪い。もしそいつが戦場で出たら真っ先に殺しちゃってもいいしなんなら同族殺しも厭わないレベルだ」

「わお、急に過激になるな」

「当然だろう。当時の地球連合軍のやり方は明らかに悪質だ。自給すんな地球で買え、のくせに高いしそれに反発したから核で死ね、なんて民度が悪い以外になんて言えばいいんだ」

「・・・確かに、あれは胸糞の悪い事件だったな」

「と言うかそもそもこの世界自体が治安が終わってるだろ。ここまでクソみたいな世界はなかなかないと思うぞ」

「・・・そうか?」

「あぁ、だってもともとはコーディネーターはナチュラルが作り上げた存在だ。

それも近未来、皆が良い生活を送れるようにと言う願いを胸に研究を進めていたものなのにいざ上手くいき始めると欲望に溺れてその結果がこれだ。コーディネーターを生み出したくせに化け物呼ばわりなんて都合が良すぎるぜ」

「野蛮なのだ!ナチュラルは!」

「でもそれはコーディネーターと同じことだろ。

やってはやり返して・・・それじゃ変わらねえよ」

「変わらない・・・」

「俺たちは変わらないんだよイザークくん、ディアッカくん。

俺たちは変わらない野蛮人だ。やろうと思えば簡単に人を殺せる。

軍人が特にいい例だ。

どんな大義名分を持ってもやってることは人殺し、違うか?」

「・・・・・・それはそう、だが」

「まず、それを理解する必要があると俺は思うんだよ。

コーディネーターもナチュラルも、同じことを考えるんだ。

 

互いが互いの種族を否定している、今の現状がおかしい。

今目の前にいる男は何に見える!エイリアンか!?

俺は、俺は今目の前にいる二人はイケメンな男にしか見えないよ」

「・・・お前はあんまり整ってないように見えるけどな?」

「ちょっ!ディアッカくん!それは言わないでくれよ!・・・気にしてるのにさぁ」

「・・・貴様、不愉快に思わないのか」

「・・・へ?」

「コーディネーターは自分の見た目を作れると!知っているんだろう!?

醜くないのか!不愉快に思わないのか!ナチュラルは見下すんじゃないのかッ!!」

そう叫ぶイザーク。

その様子はかなり迫真だ。

・・・推察するに、何かしらの言葉をかけられたのだろうか、もしくは母である議員エザリア・ジュール氏に何か言われたのだろうか。

「い、イザーク・・・」

「貴様も同じように罵るのか!」

叫ぶ彼に返す返答は、これしかないだろう。

「・・・なわけないでしょうが。俺の友達はコーディネーターだっての」

「友達・・・!?」

「GAT-X105ストライク。アレに乗ってるのは君らと同じコーディネーターだ。

・・・俺とパイロットはヘリオポリスの学生でな。良く一緒にいたんだよ」

「・・・民間人・・・なのか!?」

「そうさ。機体に乗って戦って、生き残るしかなかった民間人だ。

そりゃあ、見た目はかっこいいやつはいいし頭がいいやつは羨ましい。

けどそれでコーディネーターのせいにするのはダサすぎないか?

だって努力って無限大だぜ?

人間が諦めないからコーディネーターっていう方法が見つかったんだ。

そんなことをできた人間様だぞ、ナチュラルだからって諦めるより最後まで抗った方がかっこいいじゃないか。

俺の好きな漫画のキャラがそんなことを述べていたのを思い出すよ」

 

「・・・チッ!貴様は本当に謎な人間だ!むしゃくしゃする!」

「い、イザーク・・・」

 

その場を止めたのは、バルトフェルドさんだった。

「はいはいやめやめ!お互い意見があるんだからいいじゃないの。

とりあえずイザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンの二名はジブラルタル基地に移動、すぐに手配しよう。

そしてカズイ・バスカークとラスティ・マッケンジーの二名は捕虜として大天使殿に帰還。

幸い、アレは今近くに落ちているらしいからな。

ま、連合としては最悪だろうがね」

そう述べるバルトフェルドさん。イザークとディアッカはすぐに案内されていった。

 

 

 

 

「・・・・・・バルトフェルドさん」

「おぉ、どうかしたかね?」

「・・・・・・捕虜の分際で偉そうに言って申し訳ないんですけど・・・コーヒー、飲ませてくれません?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりコーヒーを美味しく飲めるやつは同胞だなぁ!」

嬉しそうにコーヒーを飲むバルトフェルドさん。

「いえいえ、さっきから気になってたんですよ。コーヒーメーカーがあるのが見て。しかもこれ結構本格的なやつでしょう?」

「ふっふっふ、コーヒーに手間をかけるのは礼儀だよ。買い揃えたのさ」

「俺、ついインスタントで済ませちゃうなぁ・・・インスタントも好きなんですよ」

「ふむ、確かにインスタントも味わい深いものが多いな」

バルトフェルドさんとは、コーヒーの話で盛り上がっていた。

「・・・すごいなカズイ。怖くないのか」

「・・・そりゃあ怖いよ。バルトフェルドさん怒らせたら死にそうだし」

「そりゃあ敵軍だからな。問題が起きれば即戦闘になるかもしれん」

「じゃあなんで・・・」

「・・・今の状態ならまず確定で勝てないのと、バルトフェルドさんがそんな状態で手を出さない良識人だからさ。

・・・この人は戦闘狂とかそんなんじゃない。戦争の後を見据えてる人だ」

「ほぉ、良くわかってくれるねぇ。キミはそういうクチなのかな?」

「あはは・・・俺はお恥ずかしくまだそんな余裕はないですね。生き残るためにひたすら引き金を引く。そんな人生です。

けど、せっかくなら・・・見知った奴らが笑顔で暮らせるような世界だと気分はいいですね。

争いなんて、好きでやるようなもんでもないですし」

「あぁ、キミの考えには同意だ。・・・君と戦うハメになるのはなんとも悲しいが・・・これもまた運命だろうな」

「まぁまぁバルトフェルドさん。生きていりゃ人生なんだってあるんです。

もしかしたらそう遠くない時期に共闘してるかもしれませんよ?」

「はっはっは!それは楽しみだな」

「その時は何か豆でも差し入れしますよ。コーヒー淹れてください」

「ふっ、まかせたまえ。こう見えても淹れる経験はそこそこにあるからな」

お互い笑いながら握手をする。

すると同時にドアがノックされた

「ダコスタです。失礼します」

そう、バルトフェルドさんの部下ダコスタくんである。

「おぉ、ダコスタくん。悪いね、準備完了かな?」

「えぇ。しかし、バイク型しかありませんでしたよ?」

「それはまあ・・・仕方がないか。すまんなカズイくん。帰りは君の腕で頼む」

「バイクは乗り慣れてますから。ダコスタさん、ありがとうございます」

「えっ・・・あ、あぁ。二名は施設退去後横にあるバイクを使うように。

その機体はまあ、そのまま貴様に譲渡しよう」

とのことで、俺とラスティはバイクを手に入れることに成功した。

「しかし、驚きましたよバルトフェルド隊長。見てみれば捕虜とコーヒー・・・」

「いいじゃないか。コーヒーの良さを理解するのは良いことだよ。ラスティくん、どうだね?」

「はい、とても美味しいです」

「ふふ、気に入ってもらえて何よりだ。

せっかくだし、豆を土産に渡しておくよ。大天使殿の中にも飲めるやつはいるんだろう?」

「はい、俺の上司に当たる人や、技術担当者が好んでいました。機材もあります」

「そうか、ならいい。カバンに詰めておこう」

 

すると、女性が来た。

青に似た髪で独特の服を着た女性だ。

「あら、坊やたち。行くのね?」

「あ、はい・・・バルトフェルドさん、こちらの方は・・・」

「あぁ・・・アイシャだよ。俺の恋人さ」

「初めまして、私はアイシャ。・・・貴方たちは連合ね?」

「ええ。連合のカズイ・バスカークです。MSに乗っているので暫定的に少尉です。多分正式に決まりますけど」

「・・・ラスティ・マッケンジーです。元ザフトでした・・・けど、今はカズイたちと一緒に戦うために、除隊する予定です」

お互いに名前を述べる。

「そう・・・よかったらお昼だけでも食べていきなさいよ。すぐに作るから。

アンディもいいでしょ?」

「お、よかったな君たち。アイシャの手料理はめちゃくちゃ美味いぞ」

とのこと。なぜかご厚意でアイシャさんのご飯を食べさせてもらえることに。

 

「・・・ほんと、なんとも言いにくい感覚ですね」

「まぁ、軍人が常に争いをしているわけではないのさ」

しばらく待つと、ドネルケバブが用意された。

「おぉ、ドネルケバブかこれ!両親が食べたことはあったようだが・・・」

「おや、君の両親は今は地球に?」

「ええ。本国・・・オーブの方で。・・・よし、せっかくだし二つずつ貰うか。ヨーグルトソースを試してみたかったんだよな」

「お、ヨーグルトソースはうまいぞー?」

「チリソースのことも聞いてましたし、ぜひ食べてみたいと思ってたからありがたいです」

 

そう微笑み、いただきます。と手を合わせて食べた。

「んっ!!ヨーグルトソース美味いな!?クリーミーな味わいに肉の甘辛さが合ってる!」

「チリソースもスパイシーな感じでうまいぞカズイ!」

「これがドネルケバブか!こんな美味いのは初めてだ・・・!!」

ヨーグルトソースとチリソース。それぞれを美味しくいただいた俺たちであった。

 

「いやぁ、すいませんアイシャさん。昼飯ご馳走になって・・・とても美味かったです」

「気に入ってもらえて何よりだわ。じゃあ、またね」

手を振るアイシャさんに頭を下げ、そのまま俺たちは外へと出た。

 

「アンディ、私あの子たちと戦いたくないわ」

「奇遇だな、俺もそう思うよ。・・・けれど、そういうわけにはいかないんだよな」

やれやれ、と頭を掻くバルトフェルド。

 

「戦争は、あまりいい気はしないな。

ダコスタくん、いつでも出れるように、出撃準備だけは済ませておきまえ」

先ほどの朗らかな笑顔から、獰猛な狩人に変わるまで、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ラスティくん!カズイくん!」

出迎えてくれたのはマリュー・ラミアス艦長だ。

「ラミアス艦長、ただいま戻りました」

「遅れてすいません。お互い無事でよかった」

 

「よっカズイ。・・・メビウス・ゼロ。ダメになっちまったなぁ」

「えぇ、ボロボロでしたしね」

「・・・良く帰ってきたな」

「捕虜ですから。正当な手続きは済ませないと、ね?」

フラガ大尉・・・いや、少佐やバジルール中尉も来てくれていた。

 

大切なアークエンジェル組に、無事戻ってくることができたのであった・・・・・・

 


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