ガンダムSEEDーカズイ奮闘物語ー   作:SS好きのヨーソロー

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PHASE 14 降下作戦、もう一人の戦士

覚悟を決めたヘリオポリス学生組。

すると、すぐに警告音が鳴り響く。

「ちっ、襲撃か!?」

「相手さんもアークエンジェルを落としたくて仕方がないのさ!流石にしつこいことこの上ないけどな!」

やれやれ、と着替えをしにロッカールームへと向かう。

 

ロッカーを開け制服を取り出すと、つい笑ってしまう。

「はは、民間人だったくせしてまさかこの服を自分の意思で羽織ることになるとはね・・・」

「確かに、前までは早く逃げたいってことしか頭になかったけど」

 

「「今は明確に、みんなを守りたいと思えるよ(な)(ね)」

連合の一般オレンジカラーのパイロットスーツ、青い主人公カラーのパイロットスーツを着るとすぐさま整備室に向かった。

 

「マードック曹長!ストライクの状態どうですか!」

「フラガ大尉!今回の戦闘では二機編成での相手機撹乱を目的にするべきですよね!」

「坊主!?」

「カズイ!?」

整備室で二人に声をかけるがとても驚いたようだった。

「僕は、・・・逃げないと決めましたから」

「せっかくだ、臆病者脱却のために最大限できることをするのも悪くないでしょうよ」

 

「・・・ったく。坊主!ストライクはいつでも起動できるぜ!お前さんの好きなタイミングでやりな!」

「ったくよぉ!おーし!まず俺とカズイでジンを迎撃しつつ援護するぞ!GATシリーズにも気を配れよ!」

 

「「了解!!」」

 

 

 

「ハルバートン提督!アークエンジェルはこれより単独で大気圏突入を敢行します!」

『貴様、逃げるつもりか!?』

「ホフマン大佐!ラミアス艦長はそのつもりではありません!

奴等の狙いは我々です!我々さえ離脱できれば損害も抑えられるはずです!」

『し、しかし・・・』

『構わんホフマン!ラミアスとバジルールの言う通りだ!全艦に告ぐ!

これよりアークエンジェルは単独大気圏突入を敢行する!彼らを逃すことが第一種の目的である!酷く厳しい戦いになるだろうが、連合の明日は我々にかかっている!全部隊健闘を祈る!!』

艦放送では、ハルバートン提督がそう豪語していた。

 

「ったく・・・あのハルバートン提督って人は本当に格好のいい人だな。そうまで言われちゃ、俺もできることを最大限・・・やってみせないとな」

コクピットで静かに呟く。

 

「フラガ大尉!今回の戦闘は危険度が跳ね上がります!しっかりと帰投してください!

って、キラくん?!カズイくん!?」

「ストライクなら、スペック的には大気圏突入も可能な筈です!」

「まぁ俺のメビウス・ゼロもスペック的には大気圏突入艇としては動けるな。艦長、俺たちはちゃんと覚悟してここにいるから安心してください」

「・・・ヤマト少尉!バスカーク少尉!スペックが可能といえど君たちは民間人だったのだ!慣れないことはできるだけ避けるように!限界地点のPHASE3までには船に戻れ!場所とタイムだけは常に確認するように!!

 

・・・気をつけてな」

「そんな顔しなさんな。・・・少尉は笑顔の方が似合いますって」

「ばっ・・・バカなことを言うな!全く」

俺が揶揄うと、顔が真っ赤になるナタルさん。

「ひゅう、顔真っ赤だねぇ」

「い、言わないでください大尉!」

 

「ははっ・・・・・・これで、まだ俺も戦えるな」

今度こそ、覚悟を決め正面を向く。

 

アークエンジェルの大気圏突入を、そして逃走予定の民間艇の完全護衛。

 

SEEDの一区切りつく一戦に、深呼吸をして臨む。

「 ムウ・ラ・フラガ!メビウス・ゼロ!いくぜ!」

「キラ・ヤマト!ストライク行きます!」

「カズイ・バスカーク!メビウス・ゼロ二号機!ちょっくら行ってきますわ!」

そうしてアークエンジェルから、一機のMSと二機のMAが発進していくのだった。

 

 

 

 

戦場はまさしく、地獄へと変わっている。

「チッ、どんどん艦隊が潰されちまってる・・・!!」

「まぁ護衛も全てTS-MA2メビウスですし・・・仕方がないところはありますよ・・・っと!!」

ジンのMMI-M8A3 76mm重突撃機銃の弾丸の雨四方に飛び回り回避しながらリニアカノンの引き金を引く。

「いよぉっし!まず一機!」

その流れに乗るようにスピードを早めガンバレルの砲門を展開。バラバラバラと弾をばら撒きながら一機、また一機と破壊していった。

「ちぃっ!!倒せるが数だけは多いな奴ら・・・!!」

数のしつこさに舌打ちをする。味方艦の数も多いが、ザフト軍も負けじと投入してきている。地球連合とザフトの消耗戦となっている。

「見つけたぞ・・・メビウス・ゼロォォ!!」

突如ビームライフルが飛んでくる。

 

「くそっ、デュエルか!厄介な・・・」

「貴様らのせいで・・・貴様らのせいで傷が疼くんだよぉ!!」

 

きっと目に傷があるだろう。全ての動きが激しく、必ず始末しようとしているのがわかる。

「おっとぉ!?サーベルは危ないなぁ・・・オラァっ!!」

サーベルの斬撃を回避すると、そのままリニアカノンで腕を叩く。

どうせメビウス・ゼロは使い物にならなくなるんだ。ここで畳み掛ける。

「ぐぅっ!?」

「持ってけダブルだぁ!!」

その隙を逃さず砲撃を加えていく。

「がぁぁぁぁっ!!」

「イザーク!全く、調子乗り過ぎなんじゃないの?ナチュラルのくせしてさぁ!!」

後方からはディアッカ・エルスマンの駆るバスターガンダムが来ていた。

「ちぃっ!バスターのパイロットォ、学習してきてるか・・・!!」

何度も出撃をしていれば機体の特性など理解するもの。

武装を理解している彼は広範囲にミサイルを展開、回避運動を誘発させてきている。

「くっ・・・動きを強制させられると不愉快だな・・・!!」

この回避運動も、タチが悪い。

普通に考えもせず回避しているとメインの砲撃が直撃をする。

流石は赤服と呼ばれているだけある。その実力は折り紙つきといったところだろう。

「味方だとありがたいが・・・敵だとこうも面倒臭いな!」

よくネットでは狡猾で残忍ということが迂闊で残念とネタで親しまれているチャーハンことディアッカ。

それだけしか知らない人にとってはSEEDでの彼の活躍はあまり印象深くないだろう。

しかし、実戦を経験すると確かに理解してしまう。

ザフトのアカデミーで極めて優秀な記録を残し、赤服と呼ばれたエースパイロットの実力は確かなものであった。

「・・・ハハッ、こりゃ気を引き締めないと簡単に墜ちてしまうな・・・。

冷静にいけよ・・・ここは機動戦士ガンダムSEEDなんかじゃない。

本当に、目の前で起こっている・・・本物の機動戦士ガンダムSEEDなんだ・・・!!」

改めて自分に喝を入れ、フットペダルを踏む。

一区切りの大切な1話。

あきらめないことを決意した今、簡単にやられるわけにはいかないのである。

 

 

 

 

「カズイッ!大丈夫!?」

「キラ!グッドタイミング!思ったよりザフトの攻撃が激しい!こりゃ下手すりゃメネラオスもアークエンジェルも宇宙の藻屑になりかねんぞ!」

「わかってる!」

「とりあえずメネラオスは必ず死守だ!最悪全機大気圏突入はできる!問題はメネラオス!艦内部に避難艇が入ってるはずだ!」

「というか避難艇が入ってるのに殿しようとしないでよ!!」

「あぁもう激しく同意する!とりあえずGAT-Xシリーズ4機は俺たちで食い止めるしかない!」

 

「カズイ!キラ!聞こえるか!」

「フラガ大尉!」

「なんですかフラガ大尉!」

「お前たちはデュエルとバスターに意識しろ!あいつら相当やる気なのか、防衛線を越えてこっちを敵対視してやがる!」

「・・・おいおい、だいぶ恨み買ってるな俺たち」

「とりあえずはメネラオスに向かおうとするMSの撃破だ!アークエンジェルの座標と降下限界点を忘れるなよ!」

「「了解!!」」

 

それと同時に、後方で砲撃戦が始まる。

 

メネラオスと・・・ローラシア級か!?

「嘘だろ、あそこのローラシア級・・・限界点が近いんだぞ!?」

艦隊のデータというものも拝見したことがある。

しかし、ローラシア級は大気圏突入はスペック上不可能だったはずだ。

それが何を意味するか。

差し違えてでも倒すつもりなのだ。

 

そう、そしてメネラオスは避難艇を脱出させるのだ。

「くそっ、くそっ!来ちまう・・・あのシーンが来ちまう・・・!!」

 

運命にも似たあのシーン。キラが心に傷を負うきっかけになったあのシーンが来てしまう。

 

俺はコクピットの中で、ただ一人悩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

ラスティside

 

アークエンジェルは降下・・・メネラオスは戦闘、か。

ザフトとしての俺なら、これは喜ばしいことなんだろうな。

 

けど、何か引っ掛かる。

あいつが・・・カズイが・・・本気で今回の戦いを考えていること。

俺の、ザフトとしての存在意義。

 

俺がやってきたことは・・・正しかったのだろうか。

 

『・・・最悪、戦闘中に避難艇が出た場合破壊されるかもしれない。

ザフトとしては脱走兵を排除できるならしたいはずだ。だから俺は避難艇を守らないといけないんだ』

カズイが言っていた言葉、それが頭に残る。

コルシカ条約に則れば本来はあり得ないし、あってはいけないこと。

しかし、それはお互いがコルシカ条約をきちんと守った結果だ。

片方が一方的に物事を考えれば、そんな条約なかったものになる。

 

ザフト軍が避難艇を破壊する姿が簡単に思い浮かんでしまっていた。

 

「・・・・・・イザーク・・・アスラン・・・ディアッカ・・・ニコル・・・ミゲル・・・・・・クルーゼ隊長。

 

 

ごめんなさい、やっぱり俺は・・・俺がしたいことは」

みんなを守りたい。

 

 

 

「・・・フレイ!」

「ラスティ!?どうしたのその格好!」

「メネラオスが戦っている!・・・俺も戦闘に参加する!」

「あなた、正気!?相手はザフトよ!?」

「わかってる!わかってるよ!

・・・俺はこれまで、ザフトのために。プラントのために。コーディネーターのためにと戦ってきた。

けど、その結果がヘリオポリスの崩壊だ!あの時疑問に思わなかった俺が恐ろしいよ。

民間人がいるのに簡単に引き金を引けてしまう、俺たちザフトが恐ろしい!!

俺は・・・祖国のためにと考えてきた。けど今はみんなの為に・・・アークエンジェルのみんなの為に戦いたい!」

 

俺の悲痛な叫びに、フレイはただ頷いただけだった。

「・・・それがあなたの覚悟ね。

 

私はザフトのあなたを許さないわ!

・・・だから必ず帰ってきなさい。

みんなの、仲間としてのラスティとして!」

そうまっすぐ伝えるプレイに、俺は強く頷いた。

 

 

「ラスティくん!あなた何をしてるの!?」

「艦長!このままじゃ避難艇もろともやられる!あのローラシア級は自分の身を犠牲にしてもメネラオスを堕とすつもりだ!」

「ラスティ・マッケンジー!貴様の行為はプラントに敵対することだぞ!?貴様の命がどうなるかわからんのだ!」

「覚悟の上です少尉!!けど今は、今だけはカズイ達のために戦いたい!」

「・・・・・・必ず帰ってこい。捕虜としても罰則は与えなければならんからな。死に逃げるのは許さん!」

そう述べる少尉に敬礼をすると、メビウスに乗り込んだ。

 

それも単なるメビウスではない。

 

TS-MA2PT プロトタイプ・メビウスだ。

 

これは先遣隊の補給機メビウスのことだ。

プロトタイプ・メビウスはメビウス・ゼロとメビウスの間の機体

ガンバレルを廃止、左右の2門のメビウスの砲撃武器で機体中心に突入艇としてパーツを取り付けた機体だ。

左右にはブースターが取り付いており、メビウス・ゼロに引けを取らない加速を可能とする。

 

その機体で、ザフト最後の赤服

 

そして、友達のために裏切りをも厭わない覚悟の少年

ラスティ・マッケンジーは出撃をするのだった。

「ラスティ・マッケンジー!TS-MA2PT プロトタイプ・メビウス!発進します!!」

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

「くそっ!!避難艇が射出された!もう時間はないか!!」

メネラオスから避難艇が発射されるところを目視した。原作のカウントダウンも佳境である。

神経を全てGAT-X102デュエルに集中させる。

「・・・撃たせない、撃たせないぞ」

 

「ええい!しつこいぞメビウス・ゼロ!貴様らなんかに・・・!!」

ひたすらに攻防戦が続いている。俺のメビウス・ゼロもだいぶ消耗し切っている。

 

「くそっ、まだ・・・まだぁ!」

「良い加減にぃ!!」

バスターのミサイルが掠る。

「しまった・・・バスター!」

「ディアッカ!・・・あれは突入艇か!?敵を背に逃げるなど臆病者が!

ナチュラルの中でも恥晒しめ・・・今葬ってやる!!」

デュエルにマークをされてしまった。

「バカ、やめろ!デュエル!そいつは突入艇じゃない!!避難艇だ!!」

思わず叫ぶ。しかしそんな声は届くはずもなく・・・無情にもビームライフルが撃たれたのだった。

 

 

ビームライフルは避難艇にまっすぐ向かって・・・途中で爆発を起こした。

「なにぃ?!」

「うぉぉぉぉっ!!あっぶねぇぇぇ!!!!」

その声は、よく聞いた声だ。

 

「・・・ラスティ!?」

「カズイ!ギリギリセーフだったな!・・・ほんと、イザークならやりかねんと思ってたけど・・・も!!」

 

「ちぃ!邪魔をしおって!援軍か!?」

『おい!お前イザークだろ!』

「通信!?しかもこの声・・・ラスティか!?」

『何考えてやがるイザーク!あの中にいる奴らは民間人だぞ!』

「民間人!?貴様騙されているのか!?」

『バカ言え!俺たちがめちゃくちゃにしたヘリオポリスの民間人だよ!!中には小学生だっていたんだ!』

「なぜ貴様が足つきにいるんだよ!」

『捕虜だよ捕虜!!カズイ・・・メビウス・ゼロのパイロットに助けられたんだ・・・ぐぁぁっ!!』

「助けられただと!?・・・ぬぉぉぉっ!!」

 

イザークとラスティの通信。

気がつけば大気圏突入ラインに来ていた。

 

「おいイザーク!まずいぞこれ!機体が言うことを聞かない!」

「わかっているディアッカ!ええい、巻き込まれたか・・・!!」

・・・ここは一つ、未来の戦友になるかもしれない。言葉を出そう。

『デュエルのパイロット!バスターのパイロット!聞こえるか!』

「貴様!メビウス・ゼロのパイロットか!?」

「なんだって!?」

二人とも驚いている。というよりかそんなことしてる暇ないのだ。

『二人ともよく聞け!GAT-Xシリーズは大気圏突入が可能だ!!

各機!地球に身体の正面を向けろ!』

「ええい!偉そうに!」

『早く!ラスティも大気圏突入はいけるがお前らに比べて耐久性は落ちる!!』

「なんだって!?」

『か、カズイ・・・』

『今はどうであれ元赤服だろう!?頼むから!』

「チッ!どうすれば良いカズイとやら!!』

『デュエル・・・イザークはシールドでラスティの機体を保護!バスター、ディアッカは逆サイドに停止!!二機で熱を受け止めろ!

機器のセッティングだ!数値をOSに組み込め!

変則数値3!7!5!6!繰り返すぞ、変則数値3!7!5!6!・・・っつう!』

「・・・あぁもう!!カズイ!俺たちの後ろに入れ!」

「ディアッカ!!」

「ナチュラルだけどこれで死なれたら目覚めが悪い!!早く言うこと聞きやがれ!」

『くっ・・・・・・すまん・・・!!』

ワイヤーをプロトタイプメビウスにつける。

 

そうして、俺のメビウス・ゼロはデュエル、バスターを護衛としてラスティのプロトタイプメビウスと共に地球へと降下していったのだった。

 


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