ガンダムSEEDーカズイ奮闘物語ー   作:SS好きのヨーソロー

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PHASE 0 前編 転生 カズイ・バスカーク

CE(コズミック・イラ)70年

血のバレンタインの悲劇によって、地球・プラント間の緊張は、一気に、本格的武力衝突へと発展した。

誰もが疑わなかった、数で勝る地球軍の勝利。が、当初の予測は大きく裏切られ、戦局は疲弊したまま、すでに、11ヶ月が過ぎようとしていた。

 

 

 

これはとあるアニメの冒頭のナレーションである。

三石琴乃さんの聞きやすい声と映像、見覚えのある人はきっと多いだろう。

 

機動戦士ガンダムSEED・・・コズミック・イラの戦いを記した21世紀のファーストガンダムと称されるこの作品は、賛否両論の出る作品として広く知られている。

 

なぜ今、そのようなことを言い出したか・・・それは目が覚めて、鏡を見た瞬間思い出したからである。

 

「・・・そりゃさ、SEEDのコズミック・イラに転生したとかなんとかって話は聞くぜ?そりゃ、気持ちはわかるぜ?

けどさぁ・・・けどさぁ・・・?

 

 

よりによって、なぁんでカズイ・バスカークに転生しちゃうかなぁ・・・・・・」

ただでさえ絶対に行きたくない世界の常連として名前をあげられるコズミック・イラ。しかもカズイだぞ、カズイ・バスカーク。前世で俺が一体何をややらかしたっていうんだよ今畜生が!!!

 

カズイ・バスカークの名前を聞いて少しでも顔を顰めた人、もしくは鼻で笑った人。あなたたちの反応は間違っていない。なんてったってカズイといえばアークエンジェル墜落の危機の時に素っ頓狂な声を出しながら逃げようとしたところが有名シーンだろう。むしろそこしか彼の見せ場はないように思える。と言ってもヘイト要員だけどねこいつ。

鏡の前に立ち、自分の頬を触れる。確かに感触はあり、頬をつねると痛覚すら感じる、その事実が今この現状を現実であると理解させる。

「・・・現実なのは良しとして、これからどうするかだな、ここにいる限りヘリオポリス襲撃は巻き込まれるだろうし・・・キラ・ヤマトや他のカレッジの生徒たちのことも気になる。・・・逃げるとしたら、容易いとは思うけど」

戦時中故、どこに降り立っても戦闘に巻き込まれる可能性は少なからずある。ナチュラルとしての一般人の思考からすれば、ここはオーブ首長国連邦に避難するのが適策ではあると思うが、それも危うい。

「・・・ダメだな、第二世代GATシリーズが出た時点で戦場になる。かと言って宇宙に逃げる場所もない。

中立は・・・偽りの中立なんて言われるレベルだ。それにヘリオポリスから便を出すにも時間と労力がかかる。・・・・・・むしろ、その時間と労力を悲劇回避に費やすべきじゃないか?」

頭の中に考え事が幾つも浮かんでくる。ここは一つ冷静になるためにコーヒーを飲むことにしよう。

 

 

リビングでポットに水を入れ、湯沸かしをしているとパソコンに通知が来る。

画面をクリックすると、それは通話連絡であり、差出人はカズイの両親であった。

 

 

そうだったのか、両親は本国へ・・・。

湯を注ぎ、コーヒーを飲みながら画面をクリックし、通話許可を触ると音声が聞こえ始める。

「もしもし、カズイ?聞こえている?」

「あぁ、もしもし母さん父さん。おはよう、聞こえているよ、俺の声は聞こえているかい?」

「聞こえているぞ。口調を変えたのかカズイ?」

「あぁ、イメージチェンジだよイメージチェンジ。単なる気まぐれさ」

「そうかそうか、カズイももうそんな年頃かぁ。自分で起きれるようになっているなんて偉いなぁ」

「・・・ははっ、前まで起きれなかった方がやばいよなこれ」

カズイくん・・・ほんと、だらしないわよあんた。

「ふふ、大人に近づいたってわけね。ヘリオポリスはどう?楽しい?」

「あぁ、とても過ごしやすいよ。カレッジの生徒たちもみんな優しいんだ。特にトールって子は誰にでも気さくに声をかけられるし、サイって子はとても温厚で頭もいいんだ」

「あらあら、ならよかったわ」

「本国はどうだい?周辺は結構被害酷いって聞くけど」

「そんなこともないよ。確かに本国から離れると結構危ないところが多いけど、まだまだなんとか安全に暮らせそうさ」

「そっか、よかった」

「なんだ、カズイ。戦争に興味を持ち始めたのか?」

「え?あぁ、いや。・・・この戦争、史実の戦争とかと違って目的が雑というか、酷いでしょ?やれナチュラルを滅ぼせ、とかコーディネーター抹殺だとか。そういう記事を読んで疑問に思っただけさ。それにこっちは中立国を名乗ってるけど、引き金を引けば簡単に崩壊できてしまうでしょ?だから無知よりかはいいかなと思ったんだよ」

「そうだったのか、何か資料とか送ろうか?」

「え、いいの?」

「あぁ、父さんの知り合いに戦争を記事にしている人がいてだな。兵器の開発や戦術を記事にする人がいるんだ」

「ちょっと、あなた」

「いいじゃないか。確かにカズイの言うとおり何があるかわからないのが現状。それを自分でなんとかしないといけないと考えたカズイのためにもできることをするべき、だろう?」

「それはそう、だけど・・・」

「安心してよ母さん、俺が言ってるのはもしもの話だから必ずあるわけじゃないし。今度家族で久しぶりに出かけようよ」

「ええ、そうね!」

「はは、本当にカズイは大人になったな。資料は後でデータとして送っておくよ。振り込みは大丈夫か?」

「あー、ごめん!振込ももっと増やして欲しいかも。無駄遣いするわけじゃないんだけど、カレッジでの作業とあと備蓄買っておきたい!」

「・・・まあいいか、無駄遣いをしている様子ではないし。わかった、けど今月だけだからな?」

「ありがとう父さん!それじゃ俺そろそろカレッジに行かなくちゃ!」

「あぁ、気をつけるんだぞ!」

そういうと音が途切れる。

「・・・ふぅ、振込とデータが手に入ると。これで無知よりかはマシで物資も多少はなんとかなりそうか?

・・・確か水不足が目立っていたよな。あとはそうだな、娯楽もあった方がいいか」

コーヒーを飲みながら何が必要かをメモに記す。

ひとまずの内容が出来上がると、コーヒーを飲み干しカレッジに向かう。

タクシー的なやつに乗り込むと、工業地帯の方にある工科カレッジに向けて車が走り出す。

「おっほほぉ、すげーぞこれ!自動!気になってたんだよなぁ乗ってみたいって!」

ハイテク機器、憧れていたのだ。オープンな空間なため、風も感じられる。

コロニーというのはやはり凄いものであるようだ。

「いやぁ、中立国の風は気持ちいいですなぁ・・・・・・今のところは」

 そう考えればここは平和とは無縁な国かもしれない。

まあそりゃそうか、モルゲンレーテの会社があるわけだし。マジで何してんだよオーブは・・・大戦犯じゃねえか。

 

ここでは、秘密裏にモビルスーツが開発されている。

 

初期型 GATシリーズの5機だ。

バスター、ブリッツ、デュエル、イージス・・・そしてストライク。

 

時限爆弾であるそれらは、着々と開発が続けられている。

 

「・・・まあ、俺が考えたり動いたりしたからって何かが変わったりするわけじゃないもんなぁ・・・、ヘリオポリスにいる時点で意味ないか」

もはや乾いた笑いしか出ない。いまさら手遅れでしかないのだ。

 

つっても、無駄に危険を感じたくないしなぁ。

 

そう考えながら、カードを機械に読み込ませるとシャッターが開く。

すると車は再び動き出す。工科カレッジ内のカトウゼミ前に到着すると、カードを車に挿入し読み込む。金額を差し引かれるとタクシーは元の場所へ戻り始める。全く近未来は便利なものだ

 

カトウゼミの内部に入り、奥の部屋に進むと他にも人を確認する。

「お、カズイ!きたか!」

「やぁトール。作業はどうだい?順調に進んでいる?」

デスクに着くと目の前で作業をする友人の1人、トール・ケーニヒに声をかける。

「おう、なんとか進んでるぜ。ただちょっとここが難しくてな・・・あとでキラに聞こうか悩んでたんだよ」

「ん?あぁ、これか」

パソコンの画面を覗き込むと情報がスッと頭に入ってくる。

カズイ自身は臆病者ではあるが工科カレッジの学生ということもあり内容をすぐ理解できる。これはなんとも嬉しい誤算だ。

と言うのも、キラ・ヤマトはコーディネーターである。

 

あぁ、別に反コーディネーター思想ではないしむしろコーディネーターとは話をしたいし仲良くなりたい。ヤマト少年とはいい友達になりたいとさえ思える。しかし彼はコーディネーター故、作中でも序盤は悪い意味で注目を浴びてしまうものだった。なので彼自身に負担になると考えてしまうのだ。

それに、もし彼に頼むことがあるのなら、一つ自身が頼みたいことだってある。ここは彼の代わりに動くのも大切だろう。

「あートール、これに関して何だが・・・これは多分俺でも対応可能だ。そのヤマトくんに負担をかけてしまうだろうし、わざわざ俺ができることなら俺がやったほうが彼に迷惑をかけずに済む・・・んだけど、ダメかな」

そう言うと、トールは思わず目を見開き、驚いたようにこちらを見つめてくる。

いやわかってるよ、俺のキャラとは似合わないしそもそも君達の仲を指摘するようなことになるかもしれないから怒られる覚悟は決めてるけどさ!!

「・・・何だよトール。何かついてるか?」

「いや、すまん!カズイの言う通りだよ。確かに最近、キラに頼りっぱなしだったからなぁ・・・」

「・・・それに、彼コーディネーターだろ?」

「・・・薄々は思ってたけどさ、うん。で、でも」

「なら過度な期待は余計なプレッシャーになる。ただでさえ本国も危険、この中立国も形だけの中立、危険に晒された時ヘイトは彼に行く可能性も出てくるだろ?」

「・・・じゃ、じゃあ」

「もちろん、2人が仲いいのは知ってるさ。だから仲違いなんてしてほしくなくてね。まあトールは良い友人だからそれくらいは熟知してるはずか」

「なんだか、お前雰囲気変わったな。なんかカッコよく見えるぜ」

「はは、ハンサム寄りの君にそう言われると光栄だ。まあ俺自身がヤマトくんと仲良くなりたいだけなのだけどね」

「え?そうなのか?」

「あぁ、ただ彼は物静かなイメージがあるからグイグイと話しかけに行くのもな・・・」 

「あ、じゃあ俺がキラに言っといてやろうか?」

「本当かトール!いや、しかし・・・迷惑にはならないか?」

「いや、大丈夫だろ。あいつもそう言う愚痴たまに聞くからさ。

あ、早速来たし言ってきてやるよ!」

トールがドアに向かう。確かにちょうどタイミングよくキラ・ヤマトがきた。

 

おほぉ、SEEDの主人公だぁ。テンション上がるなぁ・・・!!

カズイに転生したことで絶望に近いが、原作キャラたちに、それに主人公に会えるのはモブ冥利に尽きると言う話だ。これがテンション上がらないわけないだろう!!

 

そんな喜びを噛み締めていると、ヤマトくんがこちらへ向かってきた。

「や、やあカズイ。こんにちわ」

「お、おうヤマトくん。こんにちはだな」

「トールから聞いたよ、仲良くなりたい、って」

「あ、あはは・・・急にすまないな。いつもトールと楽し気に話しているだろう?それに工科カレッジの中でも特に異彩を放つ君に興味があったんだ。お話でもと思ってね。・・・迷惑でなければ、一緒にランチはどうだ?」

「あ、うん!もちろん!」

「じゃあトール。あとで君もミリアリアを誘って合流しよう」

「え、俺たちもか?」

「当たり前だ。彼は優しいが俺と2人で会話とかは慣れてないんだぞ。仲のいい友人がいた方が心強いに決まってる」

「う、うん・・・確かにトールたちがいると、話しやすいかも」

「だろ?だから頼むよ」

「まあ、そう言うことならいいよ。誘っとくわ」

「あぁ、頼む。飯はそうだな、近くに美味い店を知ってるんだ。ぜひそこを案内しよう」

「お、マジか!それは楽しみだ」

「じゃあヤマトくん、またあとで」

「うん、また後で!」

 

 

と言うわけで、トールから預かった作業を終わらせながら、片手間で自分の作業を終わらせていく。

暇な時間を見つけたら、自身の目的のための必要情報を適宜メモに記し、まとめていく。

「・・・ふむ、今まで平凡な雰囲気を匂わせていたからあまり目立つことはなかったが、キミもなかなかの作業スピードだ。なかなかに優秀じゃないか」

「買いかぶりですカトウ教授。俺は彼のように自由自在にOSを書き換えるほどはできません。

・・・しかし、カトウ教授、少し良いですか?」

「ふむ、なんだろう」

「このOSですが、民間用のパワーローダーや作業用のOSにしては複雑ですね。一体何のOSなんでしょうね」

「・・・何が言いたいのかな?」

カトウゼミのカトウ教授は鋭い目つきでこちらを吟味する。

原作では出ていないシーン。

 

キラの発言からみてモビルスーツ開発に関係のあるようなもの。確かナチュラル用MSのOS開発責任者だったはずだ。

 

ゆえに、ここで仕掛ける!!

「まるで、これじゃモビルスーツですね。

それに、OSの程度はまだ上等なものではないが、この経路で可能な動作、ってことは・・・ZGMF-1017 ジン、でしたっけ?あれよりも高性能になりそうだ」

「・・・ふふ、洞察力もなかなかの器のようだ。しかしそれを私に言ってどうするつもりなのかな?私が軍の人間だとしたらどうするつもりなのだね?」

「ないね。もし軍だと言っても始末する理由がないし、カトウ教授、あなたが手を汚すメリットがない。あなたが手を汚せば疑われるのはあなただ。それでたとえばヤマトくんの協力を失ったらどうなる?

ヤマトくんに出している課題。あれは正確にはOS関係でしょう?違いますかな?」

「・・・参ったな。とんだダークホースだ。教授相手に君は何を考えている」

「俺はただ情報が欲しいだけですよ。欲しい情報としては・・・そーですねぇ。ZGMF-1017 ジンの機体データ。あとはTS-MA2mod.00メビウスゼロのデータ。貴方がOS関係に配属されているのであれば、機体データあたりはあるのでは?」

「確かにある。それをどう活かすつもりかな?」

「シミュレーション機器を作るんですよ。ヘリオポリスは中立国です。けれど、その中立が終わりを迎える可能性はゼロじゃない。・・・現に、カトウ教授らの行なっていることがありますから。

ザフトの連中がここを攻めても、仕方のない理由にはなってしまう。これが今のヘリオポリスの現状です。なら命を守るために、緊急時に最適な動きができるために、ロボットに乗るための練習の一つや二つ、行なって損はないと考えていますよ」

「・・・まったく、君は本当にあのカズイ・バスカークかね?」

「ええ、俺は正真正銘カズイ・バスカークですよ。全てにおいて平均的な人間です。ただ、唯一言うとするならば・・・。

 

 

生き残るためなら、何だってやってみせる、それがこの俺ってところでしょうか」

この時の自分の表情はわからない。しかし、目の前にいるカトウ教授が口角を上げるくらいには面白い顔をしていたのだろう。

 

 

せっかくのチャンス、自身が生き残りそして安全に物事を進めるための機会。

 

一つでも、取りこぼしてみせるもんか。全てを拾い上げて、全てを吸収してみせる。

 

 

カズイとしての努力は、今この瞬間から始まっているんだ。


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