リリカルにエロいことしたいんですが、かまいませんね!! 作:He Ike
八歳の誕生日を迎えたその日、俺には前世の記憶以外にとあるものを理解した。
そう、理解したのだ。生まれてから八年間ずっと持っていたのか、それとも前世の記憶と共に手にしたのかは定かではないが、とある力を手にしたことだけは理解できた。
一応、言っておくがカッコイイ感じの力だったり、バトルに役立つような能力だったりはしない。もしそんな能力なら、オリ主君、踏み台君で悩まんわ。
まあ、能力上使う機会は十年近く先だろうと気にしていなかったらこれだよ!
現在、保健室。
「すうすう。んんっ……」
二人きりの空間で高町さんは未だ俺に体を擦り付けてくる。本来なら嬉しいはずの時間なのだが、正直今に限ってはあせっている。
「あー、もうっ! 勝手に揉むとかどこのトラぶってる主人公だよ。つかこんなの聞いてないって」
俺が自覚した特殊能力。その一つの効果が今の高町さんだ。
俺の両手は、事に及んだ相手の性的快感を格段に高め、最善を尽くすという効果がある。それこそ今初めて知ったが、まだ初潮も来ていないような相手にも効果がある程のものだ。
恐らく異性の胸を一定時間触り続けたことで、事故ではなく行為だと認識したんじゃないだろうか。よく分からんけど。
「もうこれ絶望的じゃないかね」
高町さんの好感度的にもそうだが。それよりも、もしオリ主君と踏み台君がサーチャーだったか? そんなので高町さんの行動を見ていたりしたらアウトというわけだ。
SSSランクだかEXランクの魔力量で蒸発してしまうだろう。いや、比喩じゃなくて。
そんなことを考え戦々恐々としていると、高町さんに異変が。
「んぅ……もっ」
「あ、あの高町さん? 起きましたか?」
びくびくしている俺に、うっすらと目を開けた高町さんが一言。
「……もっと」
「待て! 待つんだ俺。その伸ばした手を引っ込めろ。よし、素数を数えろ」
不思議だね、不思議そう、不思議花。ダネフッシー……って違う! 図鑑順だそれ。
ダメだ俺。この頭イカれてやがる。
「ちょ、高町さーん。ダメだって。女の子がそんなこと言ったら。いや俺のせいなんだけど」
「んん、うん? 江口君……?」
「そうだよー。人畜無害、清廉潔白、一家に一人の江口君だよー」
「うぅ、国語嫌い」
どうやら失敗したようだ。高町さん起動しません。
いやいや、そうじゃなくて。とにかく、まずは高町さんの誤解を解かないと。……まあ、誤解なんてないわけなんだが。
「ごめんね。僕、大分調子乗ったわ。色々と謝りたいから起きて。お願い!」
「んん、うん? 江口君……?」
「いや、それさっきやった!」
俺のツッコミにより今度はきちんと起動したらしい高町さん。
眠そうな目をこすりながら、ゆっくりと開き固まった。
「高町さん?」
「ち」
「ち?」
「近いよ!?」
ああ、そういえば俺の胸に抱きついているわけだから、目を開ければ必然的に俺の顔がドアップに。
何が起こったのかとパニクリながらも、俺を突き放さず服を掴んでてくれるのが何気に嬉しい。まあ、特殊能力による効果と寝起きで頭が回っていないだけなんだろうが。
「ほら、とりあえず深呼吸。吸ってー」
「すぅー」
「吸ってー」
「すぅー」
「もういっちょ吸ってみようか」
「す……すぅー」
俺の指示通りに詰まらせながらも息を吸い続ける高町さん。
ベタなネタだけどこういう従順で可愛い子がやってくれると楽しいな。
さて、では名残惜しいけど真面目に。
「じゃあ、すすってー」
「す、ずっすぅ……ぷはぁー! できないよ!」
ごめん、真面目とか無理だったわ。
可愛らしく怒る高町さんをなんとかなだめながら状況を説明していく。
「……えっと、それから転んじゃって」
「う、うん」
「それで……」
問題の場面前まで説明したところで高町さんの顔が真っ赤になった。
そうだよね。そんな都合良く、その部分だけの記憶が抜けてくれるなんてのはオリ主イベントだもんね。
なんて謝ろうかと考えたが、結局は、まずは普通に謝るべきと判断。
「ごめんなさい。出来心だったんです」
「うー、えっちぃ……」
「もういっか……本当に申し訳ない」
危ない。本音が出かけた。この正直者め!
ほとんどアウトな気がするど高町さんが気付いていないならセーフなのだ。
というか高町さんが涙目でこちらを見上げながら、なんて……もうたまらんのです。ロリでもいいかな、と思い始めたが原作ではアインスさん派ということを思い出し事なきを得る。
そういや、オリ主君と踏み台君がいるということは、アインスさんが助かる可能性が増えるわけで。
つまり俺は、労せず救われた彼女を掠め取れば俺的に万々歳……最低の屑思考ですね。本当にありがとうございます。
「なんで……その、えっと、なのはのお、お……っぱいを揉んだの?」
ヒャッハ―、恥ずかしがりながらおっぱい発言とか最高だぜ! ……はっ!
失礼。それはこういった部分の俺がいるからなんだ、なんて言えるわけもなく必死に最適解を考える。
「え? えーっと」
「……」
必死に考える俺を前に高町さんは俺に何も言わない。
怒っているのだろうか?
当たり前だろう。どこの世界にセクハラをされて怒らない人間がいる。
俺に惚れてたり……?
ないない。チョロイン過ぎ。ワロタ。
けど、雰囲気がおかしくないか?
様々な思考がよぎる中、ようやく高町さんの現状に一つの考察が思い浮かぶ。
彼女は、ただ戸惑っているのではないか?
俺たちは現在小学二年生。正しい性知識を得るのはまだまだ先のことだ。高町さんもスカート捲りと同じ感覚で、えっちだから良くない程度にしか思っていないのではないか?
もしそうだとしても普通、胸を揉まれたら怒るはずだ。それをしないのは、
「気持ち良かったの?」
「……え、えぇっ!?」
自分でも驚くくらい馬鹿げた声色が出せた。
まるで呆れるように、バカにするように、どこか非難めいた声色で問う。
高町さんは戸惑っている。それもそうだろう。質問していたのは自分のはずなのに、いつの間にか主導権が入れ替わっているのだ。
「も、もう! ちゃんと質問に答え」
「ごめんね。高町さんが可愛くてつい」
「なにゃ、にゃぁっ!?」
普段ならとても言わないようなセリフで高町さんの言葉を制す。
ちなみにウソは言っていない。愛らしいペットのような感覚の可愛らしさも感じていたが、女性としても可愛らしいと、これからまだまだ
「ほら高町さんの質問には答えたよ」
今度は君の番だ。
「え、わたし……そんなこと」
どんどんと高町さんの目に涙が溜まっていく。
ああ、可愛いなぁ。俺の中の嗜虐心が沸々と高まっていくのを感じる。
だがその一方で、今はまだその時ではないと冷めた俺が行動を制する。それもそうだな。
「ごめんね」
「わ、わたし……え?」
まるで何か悪いことでもしてしまったかのようにぷるぷると震えだす高町さんに精一杯の人の良さそうな笑みを見せる。
ニコポこそないが、人の笑顔というのは状況によっては、対象に十分な安心を与えることができるのだ。
「僕の言い方が悪かったね」
「言い方?」
「うん。僕はね、いたずらして気絶しちゃった後の高町さんがずっと抱き着いて来るから嫌じゃなかったのかな、って思っただけなんだ」
「え、わたし、そんなことを……」
言って、再び顔を真っ赤にする高町さん。恐らく起きた時のあれが自分によるものだと理解したのだろう。
ふぅ、さてそろそろ良い時間だ。もう少し唆してから終わるとしよう。
「だから先に責めてるわけじゃないと言ってからまた質問するよ。気持ち良かったの?」
宣言した通り、責めるような、追い詰めるような聞き方はしない。もう必要ないのだ。彼女の心は既に乱れきっている。正確な判断は無理だろう。
そして彼女は、ゆっくりと首を縦に振る。
うん、いい感じだ。けど、そうじゃない。
「ほら、言葉にしてくれないと相手に正確に伝わらないよ?」
俺の言葉に僅かに視線を揺らしながら、言葉を紡ぐ。
「う、うん。気持ち良かった……の。なんでか分からないけど起きてからも胸がくすぐったいような感じで……またやって欲しい……かも」
「そっか」
高町さん、決死の告白に対してできる限りの優しい笑みで応える。そして後半のセリフはスルーする。
さて、では聞きたいことも聞けたし準備でもするかね。
えーっと、湿布は……。
がさがさごそごそ。
「あ、あのぉ」
「うん? ああ、もうそろそろ授業が終わっちゃうからね。高町さんもどこか痛いところある?」
見つけた湿布を見せながら高町さんにも問う。
首を横に振って答えてくれたので、湿布を一枚勝手に拝借して青くなったスネに貼る。
保健室の先生には戻る時に職員室に寄って、言えばいいだろう。
「まったく、この時間はどこも体育がないとはいえ、僕みたいなバカが来るかもしれないのにね?」
「ふふっ、そうだね」
おどけるように言う俺に高町さんは、いつもの柔らかい笑顔を見せてくれる。
「じゃあ、戻るけど僕に口裏を合わせてね?」
「うん、正直になんて言えないしね」
「ああ、あと今日のことは、二人だけの秘密ってことで。勿論、赤君にもだよ?」
「と、当然だよ!」
やったことが、えっちで恥ずかしいことではあるけど悪いことではないと思っている高町さん。うん、こちらに都合の良い倫理観になってきている。
「そうだ。……また二人だけになったらしよっか」
「……っ!」
二人だけしかいないというのに、小声で高町さんに尋ねる。
秘密や内緒話というのは良い。二人だけの共通の隠し事があるから、連帯感や信頼が生まれるし、秘密や隠し事が生み出す優越感に似た感情は、中毒性がある。
俺の言葉に高町さんが頷きかけたところで、保健室のドアが勢い良く開けられた。
「おい、俺の嫁はいるか!!」
「なのは! 良かった。授業が終わっても戻って来ないから心配したぞ」
オリ主君と踏み台君の登場である。ったく、邪魔を……いや考え方によってはナイスアシストってところか。
さっきまでは、サーチャーで見られてたらどうしようか、などと考えていたが今はそれほど心配していない。
だって、見ていたのならあれだけ高町さんに迫っていたのを、今の今まで邪魔しに来ないということはないだろう。
恐らくだが、この二人。不可侵条約のようなものを結んでいるのではないだろうか。どちらかが抜け駆けしたら、高町さんが魔導師になった日に盗撮をばらす、みたいな感じに。
それに心配していながらも授業が終わるまで、探しに来なかったのは学校が安全だと思っているからかな? まあ、踏み台君は今まで寝てただけだろうけど。
甘いよ、オリ主。一番危険なのは日常だ。
「おい、お前!」
俺だ。今まで高町さんにちょっかいをかけては、オリ主君に妨害されていた踏み台君が、鋭い眼光でこちらを睨んでくる。
ただ、オッドアイだとなんか中二っぽくてギャグにしか見えないんだよなぁ。
「今まで、なのはと何をしていやがった!」
「え、江口君は悪くないよ」
「いや、俺も気になるな。保健室へ湿布をもらいに来ただけじゃないのか?」
普段は寡黙なオリ主君も興味があるといった様子だ。自分のヒロインに何があったか心配なのだろうか。
「いや、実は転んでしまった時に高町さんを巻き込んでしまって」
「はぁッ!?」
こえーよ。
既に抹殺対象とばかりに血走った目でこちらを見る踏み台君。
「その時に気絶してしまったので、今まで様子を見てました」
「あ、あのね。江口君は悪くないの。なのはが支えれないのにかばおうとしたから」
必死に俺のフォローをしてくれる高町さん。
まったく可愛いなー。大丈夫だよ、少し近くで観察したらこの二人の共通点を見つけた。
「これからは気を付けろ」
「ちっ、役立たずが」
彼らは、エキストラになど興味がないのだ。見ているのは、まだ一年近く先の原作の解決法かな。
まったくいいのかね? 展開を知っている原作よりも真に注意しなくてはいけないのは、エキストラの方かもしれないというのに。
二人に連れられながら心配そうにこちらを見てくれる高町さん。こちらを見ているのは彼女だけなので、大丈夫だと手を振っておく。
さってと、俺も職員室に寄ったら教室に戻るとしよう。
高町さんたちとは反対方向に向かおうとして、ガラスに映った何かに気付く。
八年間、見てきたもの。自分の顔だ。いつもは、もっと没個性のような顔をしているのだが今は違った。
かつてない程に口角が上がっている。
それに気付いてようやく俺は今、楽しんでいたことに気が付いた。
楽しかったのだ。あの、いつもは関わりたくないと、面倒だと思っていたオリ主と踏み台の二人を相手にして、この上ない愉悦を感じていたのだ。
「ヒロインたちと表面上は友情を育むといいさ。それから先の展開は全部俺がもらっていこう」
なんとなくラスボスっぽいな、なんて思いながら口角を戻し、職員室を目指す。
ではでは、これより始まりますは、我らが高町なのはによる友情・努力・勝利の王道劇ではなく、オリ主のもたらすチートストーリーでもなければ踏み台による逆転劇でもない。
ただのエロ主が行う、魔法もシリアスもないエロコメディーでございます。お時間のある方は是非ともお付き合い願いたい、なんてな。
なんか、すっごい筆が乗った。行動によるエロスではなく、言葉によるエロスを感じていただけたら幸いです。主人公の変化は、あれだ。調教モードというか、愉悦モードみたいな。基本的には楽しくエロスで行きます。……背徳的な描写がないとは言ってない。
p.s.投稿初日でお気に入り78って紳士多すぎだろ。皆ありがとう。大好き!