リリカルにエロいことしたいんですが、かまいませんね!!   作:He Ike

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 過程が大事なんです。


バカめ! すぐにエロが始めると思ったか

「あら、ちょっとひどいわね。擦り剥いたのは肘と膝の二カ所だけ?」

「はい」

 

 じゃあ、ちょっと染みるわよー、なんて会話から消毒液を塗られて、ぴくんぴくんっ、と跳ねる高町さんを見て照れた俺を責められる人間がどこにいようものか。

 

 十九歳でもあるが、八歳の部分も確かに存在するのだ。だから俺は悪くない。

 

 ボーッと壁にもたれながら高町なのはを観察する。

 前世の記憶がよみがえったあの日。事態を整理しながらもクラスに彼女がいたことを思い出し、ここがアニメの世界であることをすぐに察することができた。

 

 そこで俺は、よくある二次小説のようにオリ主になって美女ぞろいである彼女たちと仲良くなろうなどと考えたのだがすぐに断念した。

 

 まず魔法が使えるのか、魔法の源であるリンカーコアがあるのか分からないのだ。まだ十年近く経たないと使えないであろう能力が備わっていることにも気付いたのだが、魔法とは関係ないので後回しだ。

 

 そして肝心なのがとある二人の存在だ。実はこの世界には既にオリ主君がいたのだ(踏み台君も)。更に言えばオリ主君は、高町なのはの幼なじみらしい。そして残念なことについ最近覚醒した俺には当然ながらそんなフラグは建っていない。

 よく訓練されたオリ主は入念なフラグ建てを忘れないのだ。

 

「はい、終わったわよ。あら? えらいわね。ちゃんと待っててくれたの」

「……ん? あ、はい。保健係なので」

 

 いや普通待つだろ、と思ったが、よく考えれば小学二年生だとそんなものかな。とくに今は体育のドッチボールの時間だ。相手が特別仲の良いわけでもない女子なら送るだけ送ってダッシュで帰る子もいるかもしれない。

 

「あの……」

「うん?」

 

 気付けば患部にガーゼを貼ってもらった高町さんが申し訳なさそうな顔でこちらを見ている。

 信じられるか? この子、十一年後には魔王になるんだぜ。うーむ、エロい体になるだけなんか勿体ない。

 

「ごめんね」

 

 さて、何かと思って待ってみれば、彼女の口から出てきたのは謝罪の言葉だ。いや、さっきも聞いたけど?

 

「別にいいよ」

「でももう終わっちゃうし」

 

 言われて時計を見れば、確かにもう五分もない。走って戻ったところでロクに参加できないだろう。

 なるほど。小学校、それも低学年の頃なら体育のドッチボールの時間なんてものは退屈な学校生活の数少ない憩いの時間だろう。彼女は、それを申し訳ないと思っているわけだ。

 もっとも、当然ながらにそんなことはさほど気にしていないんだけどね。

 

「むしろ高町さんをダシに次の時間をサボるチャンス」

「だ、ダメだよ! ちゃんと勉強しないと」

「消毒液を嫌がって逃げた高町さんを追いかけていたことにすればワンチャン」

「ひ、ひどいよ! わたしそんなことしなもん」

 

 ちょっと辛気臭いのをどうにかしようと、からかってみれば思ったよりも効果があった。心配してるに! とばかりにぷりぷりと起こっている。何この子、すっげー可愛いんだけど。

 

 まあ、子供特有の単純さでなんとかなったかな、と思っていればすぐに次の事案が発生。

 高町さんがやってしまった、という顔で俺を見る。俺というか肩の位置……ってああ。

 なんてことない。ただ体操着が汚れているだけだ。最初に肩を貸していた方には血と泥が。洗ってからまた汚れないようにと貸した反対側の肩にはこれまた血と水で。

 

「ああ、このくらいなら」

「ご、ごめんね。洗って返すから」

 

 俺が言い切る前にさえぎっておれの服を掴む高町さん。

 いや、弁当箱とかじゃないんだから服はいいでしょ。というか、

 

「ここで半裸になれと?」

「へ? あ、あああ、あの違うの。そうじゃなくて、その、えーっと」

 

 途端、真っ赤になって右往左往する。やっぱ楽しいな、なんて思っていれば今まで傍観していた先生がからかったらダメよ、と視線で注意を促してきた。

 えー、先生も今まで楽しんでましたやーん。

 

「冗談冗談」

「うぅ……」

「まあ、あれだよ。体操服はあげられないけど、翠屋に行った時にちょっとおまけしてよ」

 

 ね? と頼んでみれば高町さんも落とし所として納得してくれたのか頷いてくれた。

 ふぅ、良かった良かった。時間もいいところだし、そろそろ教室に戻らないと。

 

「じゃあ、戻ろうか」

「うん。ありがとうね、江口君」

「僕は保健委員だからね」

 

 高町さんから俺の言葉を受け取り、保健室を後にする。

 どうでもいいことだが江口秀(えぐちしゅう)とは俺の名である。どうでもいいついでで言えば、対外的には一人称が僕なのは、八歳の方の影響だ。どうでもいいが。

 

 さてさて、このまま何事もなく甘酸っぱい青春風で終われば、いい話だね、で済むんだがどうにもそうはならないらしい。

 

「大丈夫かなのは」

「おいモブ、どさくさにまぎれて俺の嫁に手を出してないだろうな」

 

 オリ主と

 踏み台に

 からまれた。

 

 三行にするならこんな感じだろうか。もっとも、別にオリ主君は絡んでるわけではないけど。

 

 少し長めの黒髪で普段は赤い瞳を隠しているのがオリ主君。名前は、まあいいか。高町さんからは赤君と呼ばれてる。

 物静かで普段は男子から男子のグループに絡まないため若干ハブにされてるこの世界のオリ主だ。

 原作にしか興味がないのかもしれないけどもう少し上手く立ち回ってくれないとクラスがギスギスして困るんですけど。ちなみにニコポ系の技はない。見たことないし。

 

 

 俺に絡んできた銀髪ロングで金銀のオッドアイが踏み台君。ロン毛が鬱陶しいな。五分刈りにでもしてろよ。ちなみに彼の名前は面白いので表記しておく。

 巫魅戴刹那とかいう非常にセンス(笑)あふれる名前だった。ちなみに刹那は名前ではない。巫から那までで苗字だ。確かカタカナっぽい読みだったけど忘れた。

 とりあえず最初の三文字で『ふみだい』なので心の中で踏み台君と呼んでいる。

 あと彼も多分ニコポ系のものは持っていない。彼に対して赤面したのなんて俺と担任教師くらいなものだ。

 黒歴史的な意味でだが。

 

「あー、えっと、僕は高町さんを保健室まで運んだだけだから。じゃあ」

「あっ」

「待てお前! まだ話は」

「やめろ、巫魅戴刹那」

 

 さすがにこれらと一緒にいたときにボロを出して、転生者とバレると怖いので退散する。

 後ろで名残惜しそうにしてくれる高町さんに、後ろ髪を引かれる思いをしながらも今回はさっさと戻る。踏み台君を止めてくれるオリ主君が正確に名前を呼んでいた気がしたけどまあいいか。




 というわけで今回はここまで。こんな感じに進んで行きます。
 次回くらいでエロ主を目指し始めるかな?


 これを執筆中に既にお気に入りが13件。感想が1件もあったぞ。
 ハッ!? 気をつけろ! 新手のスタンドだッ! 近くにスタンド使いがいるハズだ!
 ありがとうございました。

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